■人類の危機に際して、その悪あがきとは対称的なところにいる主人公は斬新に映りましたね


■オススメ度

 

シリーズを観てきた猛者(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.6.28(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

原題:A Quiet Place: Day one

情報:2024年、アメリカ、100分、G

ジャンル:突然、無慈悲な宇宙人に襲われる人々を描いたパニック&スリラー映画

 

監督&脚本:マイケル・サルノスキ

 

キャスト:

ルピタ・ニョンゴ/Lupita Nyong’o(サミラ/サム:ホスピスの末期癌患者)

Schinizel&Nico(フロド:サムの愛猫)

 

アレックス・ウルフ/Alex Wolff(ルーベン:サムの介護士)

 

ジョセフ・クイン/Joseph Quinn(エリック:サムに助けを求める男性)

 

ジャイモン・フンスー/Djimon Hounsou(アンリ:サムを助ける男性)

Eliane Umuhire(ゼナ:アンリの妻)

Takunda Khumalo(オサハール:アンリの息子)

 

Alfie Todd(マックス:噴水に隠れている男)

Avy-Berry Worrall(マックスの妹)

 

Ronnie Le Drew(マーヴィン・モンロー:マリオネットのパフォーマー)

Benjamin Wong(店のレジ係)

Michael Roberts(ドウェイン:路上でこっち見てくる男?)

Gavin Fleming(ビジネスマン)

Eljjah Ungvary(車の下で怯える男)

Alexander John(司祭)

Thara Schoon(ボートの女)

Thea Butler(叫ぶ女)

Choy-Ling Man(怖がる女)

 


■映画の舞台

 

アメリカ:ニューヨーク州

マンハッタン

 

ロケ地:

イギリス:ロンドン

アメリカ:ニューヨーク

 


■簡単なあらすじ

 

郊外のホスピスに入っている末期癌患者のサムは、痛み止めを貼ってやり過ごし、いつ来るかわからない死に怯えていた

楽しみといえば、みんなと共に外に出ることで、その日はマンハッタンに行って、マリオネットショーを見ることになった

その後、ピザを食べる約束だったが、急遽帰院を余儀なくされてしまう

 

渋々バスに乗ることになったサムだったが、誰もがバスの後方の景色に気を取られていた

サムも気になって後ろを眺めるものの、そこには空から無数の何かが落ちてきているところだった

そして、その一つが近くに落ちてしまう

 

あたりはパニックになり、落ちてきた何かから、謎の物体が出てきて、人々を襲っていく

サムは意味がわからぬまま砂埃の中を逃げ惑うものの、爆風に巻き込まれて気絶してしまう

目が覚めた時、そこは何かのシェルターのようなところで、誰しもが音を立てることに敏感になっていたのである

 

テーマ:生き延びることの意味

裏テーマ:生ける者に託すもの

 


■ひとこと感想

 

シリーズの前日譚ということで、どうして世界から音が消えたのかみたいな話になるのかと思っていました

とは言え、第1作で何が起こったのかはバレバレなので、今更感があったように思います

ともかく、1日目にあったことを描いているだけで、そこに登場するのが「余命幾許もない女性」になっていました

 

わかりやすく、もうすぐ死ぬとわかっていても心残りというものがあって、それが失くなるまでは生き延びたい意志があるという感じでしょうか

彼女とは違って、死ぬ予定のない男が登場し、彼女に同行することになりますが、会話が交わせない割にはコミュニケーションがスムーズという不思議な映画でもありましたね

 

あとは、猫がいつ鳴くんだろうかとドキドキしていましたが、野生本能がそうさせているのか、とっても行儀の良い猫ちゃんでしたね

突っ込んだら負けの展開ではありますが、あまり『クワイエットプレイス』感というものはなかったように思えました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

『クワイエットプレイス』シリーズに登場する生き残りキャラが出ていないと、陸続きになっているのかわからないスピンオフになっていましたね

ホスピスに入っている女性が主人公で、彼女が死ぬ前に後悔を残したくないという動機のもと、決死の覚悟でピザを食べにいくという感じの展開を迎えます

 

その手助けをするのが、どこから来たかわからない男で、当初はほぼストーカー状態になっていましたね

何者か全くわからないので、宇宙人よりも怖い存在のように思えました

 

映画は「音を立てたら即死」という映画の割には結構音が出ていたように思います

めっちゃ音に敏感な宇宙人ですが、知能が低いようで、水しかない惑星に来ること自体が意味がわからん感じになっていましたね

雨が降ったら死ぬんでしょうか

そのあたりもよくわからないまま、とにかく驚かすための装置のようになっていたのはどうなんだろうと思ってしまいました

 


こうなったらどうする論

 

本作は、Day1ということで、突如宇宙人らしきものに襲われた瞬間というものを描いています

これが地球におけるDay1なのか、アメリカにおけるDay1なのかはわかりませんが、「NASAや政府などのファーストコンタクト」を抜きにしたDay1であることは変わりないように思います

基本的には、地球外から何か来た場合は、NASAおよびアメリカ軍が認知をし、それはDay1を遡る相当な前の段階になります

これまでの多くの隕石墜落系、エイリアン侵略系も、その予兆から覚知、対策に至る空白部分があって、国民はそれを知ることなく過ごしている、ということになります

 

映画は、本当に一国民の目線によるDay1になっていて、この強襲に関して、政府は国民に何も知らせていないし、そう言った情報は漏れていなかったと考えられます

なので、避難場所を知るのはごく一部で、多くの国民を救えないという前提で、救出作戦のようなものが展開され、そういったところから1番遠くにいるのが主人公ということになりました

主人公のサムは、若くして末期癌の状態になっていて、明日をも知れぬという病状でしたね

それを考えると、エイリアンが来ようが、それを政府が隠蔽しようが、全く関係ない立場になっていたと言えます

 

この設定は結構斬新なもので、通常は「生き残ること」というのが主体になるパニックサバイバル映画において、その危機感を真逆に捉える存在になります

彼女の行動は介護士ルーベンと交わした約束である「マンハッタンのピザ」になっていて、その目的に巻き込まれるのがエリックということになっていました

エリックはいつもの「なんとかして助かりたい人」なのですが、サムを放ってはおけず、その旅に同行することになっています

彼が最終的に助かったのは運以外の何者でもありませんが、こういうのをキリスト教圏だと特別視するように思えてなりません

 

このような事態に陥った場合どうするかですが、初動で死ななければ、とりあえず逃げるということになります

初動によって大半の人が亡くなるので、そっち側だと何もすることはできませんが、それを避けて生き残る可能性が残った場合は、本能に従うしかないと思います

敵が何かわからずに攻撃を受けている場合は、相手に関わらず「気配を消して距離を置く」ことになり、状況を理解していて、同じ対処を試みている人と出会うまでは、すべてのことから距離を置くことが良いと思います

いわゆるマインドが同じでないと危険度が増すので、パニックになっている人には近づかないのが鉄則だと言えます

 

もし、家族がいて、パニックになりそうな人がいたら、ぶっちゃけると気絶させるつもりで静かにさせるしかないと思います

言ってわからない人は、実力で鎮めるしかなく、安全圏に行けたら話を聞いてあげるわぐらいの覚悟で接するしかないでしょう

また、敵に通用するかは無視して、パニクった人間から自分を守るという意味合いで、人間に対処できる武器を手に入れる必要はあります

武器ショップなどはすでに手垢がついていると思われますが、まずは十分なものを確保する以外に、その後の旅を続けられるとは考えられません

 

ともかく、全体図が見えるまでは沈黙、秘密裏に動いて武器を確保、食料はそれからという感じでしょうか

他の人間も「自分を人間だと認識してくれるかわからない」という前提があるので、コンタクトは知人友人でなければ、最大限の慎重さを持つしかないと考えられます

そして、ある程度の物資が手に入ったら、人間界と距離を置くというのは最適解であるように思えます

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、世界の危機に際して、命の価値に対して真逆の立ち位置にいた二人が同行するという流れになっています

サムはいつ死んでもおかしくない体で、ホスピスの外にいつ出られるかもわかりません

ようやく巡ったチャンスでわずかなやりたいことがあったものの、宇宙人の襲来によって、その夢を絶たれることになりました

 

対するエリックは何としても生き延びたい人ですが、生き延びて何を成すのかというところは空白になっています

彼にも夢があったと思いますが、あの世界に彼の夢を継続させる希望はありません

なので、ともかく生き残ることで何かを見つけようと考えているのですが、あの状況では明日どうするということさえ、考えるには及ばないと思います

 

そんな二人が協力しあって生き延びようと考える中で、お互いの背景というものが見えてきます

どこに向かえば正解かわからない中で彷徨い、結果として、サムの望みを叶えるに至っているのですね

彼女自身のこだわりをどこまで理解できたかはわかりませんが、ともかく必死で生きようとするエリックよりも強い信念があったために、彼はサムの後をついて行くことになりました

 

この流れを考えると、なぜ介護士ルーベンではダメだったのか、という疑問が湧きます

彼はサムのことを理解していて、1番の枷になる存在だったと思います

事情がわからず同行するエリックよりも共感性が強いのと同時に、自身が生き残りたい葛藤というものが強い存在だったと言えます

なので、終末において、ユーベンがサムの想いに折れる、もしくは共感するということの方が、メッセージ性が色濃くなったように思えました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、音を立てたら即死の『クワイエット・プレイス』シリーズの前日譚なのですが、相手の正体がわからない状態なのに、なぜか「音を立てたらだめだ」という対応策があっという間に浸透していました

前線にいれば何となく感じられるものだし、こと襲われている段階で身を潜めるときに音を出してはダメというのは常識の範囲だと言えます

なので、本能的に「静かに移動しないとダメ」ということはわかるので、そう言った暗黙知が徐々に広がっている段階だと思います

 

あの状況だとインフラは完全に死んでいますが、SNSなどのデバイスがどこまで動くのかは何とも言えません

今ではほぼ全員が持っていて、そのシズテムがダウンしなければ、場所によっては使えると考えられます

なので、様々な情報がネット関連で飛び交い、通信不能の場所が徐々に広がっていくという状況になるのだと考えられます

 

Day1というのは、このような日常の当たり前が侵食されていく状況下になっていて、そこでどうやって生き延びていくのかを紐解く流れになると言えます

そんなサバイバルが主体になりそうな中で、「いつ死んでも良い」と思っているキャラが主人公というのは結構斬新なんだと思います

世界がもうダメで、誰もが助からないので覚悟を決めるというディザスタームービーはありますが、本作は覚悟も何もない状態で、世界が滅びようが自分には関係ないというマインドになっていました

そこで、今の自分がしたいことを目指し、その途中で死んでも構わないというスタンスなのですね

これが、目標も何も持たないエリックを動かすことになり、彼女を実家へと連れてくるという結果につながっています

 

エリックは猫とともにボートに乗り、おそらくはどこかの安住とされる土地に行くのでしょう

その船には、シリーズに登場するアンリも載っていて、Day2(正確には何日か経ってるのでDay10とかになるのかな?)はエリックとアンリの物語になるのかも知れません

とは言っても、これまでのシリーズと差別化できるとは限らないので、これ以上は蛇足のようにも思えます

それよりは、Day0として、地球外で覚知し、その対策を秘密裏に行っている政府目線の方が、本シリーズとしては真新しく感じられるのかも知れません

でも、音を立てないとは無関係にならざるを得ないので、シリーズ化すること自体がもう無理なのかなあと感じてしまいます

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101230/review/03979740/

 

公式HP:

https://quietplace.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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