■白パンと独裁者
■オススメ度
ナチス系映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2026.8.19(京都シネマ)
■映画情報
原題:Amrum(アムルム島)
情報:2025年、ドイツ、93分、G
ジャンル:ナチス信奉者の母に悩まされる息子を描いたヒューマンドラマ
監督:ファティ・アキン
脚本:ハーク・ボーム&ファティ・アキン
キャスト:
ジャスパー・ビラーベック/Jasper Billerbeck(ナニング・ハーゲナー/Nanning Hagener:母のために白パンの材料を揃える12歳の少年、ハンブルク出身)
(BD:Florentine Panizza)
ローラ・トンケ/Laura Tonke(ヒレ・ハーゲナー/Hille Hagener:筋金入りのナチス党員、ナニングの母)
Tチャード・ニッセン/jard Nissen(マッカー・ハーゲナー/Macker Hagener:ナニングの弟)
マヨラ・リヒター/Jola Richter(メルトヒルト・ハーゲナー/Mechthild Hagener:ナニングの妹)
ステッフェン・ウィンク/Steffen Wink(ヴェルハイム・ハーゲナー/Wilhelm Hagener:戦争に行っているナニングの父)
ラース・イェッセン/Lars Jessen(アヤン/Grandpa Arjan:ナニングの祖父)
リーザ・ハークマイスター/Lisa Hagmeister(エナ叔母さん/Aunt Ena:ヒレの姉)
キアン・ケップケ/Kian Köppke(ヘルマン・ベンディクセン/Hermann Bendixen:島で仲良くなる少年)
ダイアン・クルーガー/Diane Kruger(テッサ・ベンディクセン/Tessa Bendixen:ナチスを嫌う農民、ヘルマンの養母)
リタ・フェルドマイヤー/Rita Feldmeier(インゲ・ベンディクセン/Inge Bendixen:テッサの母)
デトレフ・ブック/Detlev Buck(サム・ギャングスターズ/Sam Gangsters:ヒレが嫌う島民、燻製カレイ職人、漁師)
ジャン・ゲオルグ・シュッテ/Jan Georg Schütte(オンノ叔父さん/Uncle Onno:隣のフェーハ島に住む叔父、ナチス信奉者)
マティアス・シュバイクホファー/Matthias Schweighöfer(テオ叔父さん/Uncle Theo:ナイフをくれたアメリカに行った叔父さん)
ポリ・ロイナー/Polli Leuner(東プロイセンから来た難民の少女)
トニー・カナル/Tony Can(オスカー/Oskar:難民の少年)
ジーメン・リューハーク/Siemen Rühaak(ボーイ・クルーガー/Boy Kröger:馬車乗り)
モーテン・ボー・ハイネ/Morten Bo Heine(リヒャルト・ペータース/Richard Peters:島民の少年)
ベルント・モス/Bernd Moss(シュナイダー博士/Dr. Schneider:島のグループリーダー)
マレク・ハーロフ/Marek Harloff(テーヴェ/Tewe:片腕のないパン屋)
マックス・ホップ/Max Hopp(マイン医師/Dr. Mayn:小麦粉を分けてくれる医師)
ヨリッド・ルカチェック/Jorid Lukaczik(ヘディ・シュトルム/Hedi Storm:養蜂家)
トーマス・パーキンス/Thomas Perkins(軍法会議を告げる親衛隊)
ディルク・ブーリン/Dirk Böhling(イェンス/Jens:精肉屋)
ハーク・ボーム/Hark Bohm(海に佇む老人、老齢期のナニング)
■映画の舞台
1945年、
ドイツ:アムルム島
ドイツ:フェーハ島
ロケ地:
ドイツ:シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州
アムルム島/Amrum
https://maps.app.goo.gl/H2Qy8ugthaEdc61C6
■簡単なあらすじ
1945年、ハンブルクから疎開してきたナニングは、島民のテッサの畑仕事を手伝い、わずかな施しを受けていた
テッサの養子ヘルマンと仲の良いナニングは、学校では「よそ者」扱いをされていた
ナニングには臨月間近の母ヒレがいて、彼女はナチスの信奉者だった
父ヴェルハイムは戦地に赴き、幼い弟マッカー、と妹メルトヒルト、叔母のエナとともに慣れない土地で暮らしていた
ある日のこと、東プロイセンからの難民が島に到着し、彼らも島の学校に通うことになった
そんな折、ラジオからヒトラーが死んだとニュースが流れ、島民たちは戦争が終わったと喜ぶ
そのニュースを聞いたヒレは破水し、4人目の子どもを産むことになった
なんとか無事に出産できたものの、ヒトラーに陶酔していたヒレは鬱状態になり、ろくに食事を摂らなくなっていた
母は「はちみつとバターを塗った白パンが食べたい」と言い、ナニングはそれを手に入れようと奮闘する
パン職人のテーヴェは「白パンには小麦粉がいる」と言い、それは軍人たちの薬のようなものだと言う
そこでナニングはマイン医師のもとに出向き、小麦粉を処方してほしいと言う
マインは少し考えて、家にあった小麦粉を分け与えることになった
そして、それをテーヴェのもとに持ち帰ると、「卵がいる」と言い、さらにはちみつとバターを手に入れるために島中を奔走することになったのである
テーマ:心の支えを失うこと
裏テーマ:人としての誇り
■ひとこと感想
ナチス敗戦濃厚の時代で、それでもナチスを信じている母を持つ子どもが主人公となっていました
手伝いに出ているテッサはナチスに懐疑的で、その発言が告げ口のように伝わって事態がややこしくなっていきます
それでも、ナチスの減速は急速な状況にあり、ラジオからのニュースだけを頼りにしていました
そんな中、島の外からの難民を受け入れているクレーガーを通じた情報が拡散され、反ナチスの人々の声が大きくなっていきます
ナニングとしては、戦争のことはよくわからないし、両親がナチス側の人間なので間違っているとは思っていません
でも、島民は長引く戦争の余波を肌で感じていて、戦争を理由に色んなものが搾取されている状況を耐えてきた歴史がありました
そんな中で板挟み状態になっていて、それでも母親のために何かをしたいと言う思いがナニングにはあったと思います
白パンを探すくだりは後半になってからで、白パンを通じて「ドイツの経済状況」と言うものが見えてきます
また、ナチスによる搾取構造のようなものも見えてきて、戦争が終わると同時に、ナニングのアイデンティティーは脆くも崩れ去っていくこととなりました
この島にはナニングの立場と想いを理解してくれる存在はおらず、親友のヘルマンですら、それを理解するには遠い存在のように感じていました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、戦争終了と同時に訪れるアイデンティティの崩壊と、それを立て直す幼い心が描かれていたと言えます
ナニングにとっては何が正義なのかは判別つかず、実際にナチスがやってきたことも知りません
家族と親族がナチス信者なので、それを疑う環境にはなく、それでも多くのことが「島民から入ってくる」と言う状況になっています
家族が言うことのどこまでは正しいのかを感じる年頃であり、それよりも自分の周りの親しい人がナチスの党員などによって酷い目に遭わされていることの方が多く飛び込んできていました
島は疎開先として機能するほど裕福ではなく、はちみつやバター、小麦粉でさえ党本部に搾取されていたりします
ここまでナチスから遠いところにいると、日々の生活が評価基準になっていきます
いつしか、ナチスが負けることを願うようになるのですが、その後の別の国の統治に対する恐怖心を覆い隠すほどに現状がひどくなっている、と言えるのかもしれません
母親に食べさせたい「白パン」ですら右往左往して、ようやく1個作ることができると言うもので、それが無碍に扱われたことでスイッチが入ってしまいました
映画のラストでは、おそらくはハンブルグに帰る彼らが描かれていて、ヒレは島民を自認しているので「いつの日か帰ってくる」と言うスタンスになっていました
直前の行いを考えるとかなり厚顔無恥な神経をしているように思えますが、これくらいの図太さがないと生きて行けない世の中のように思います
あの事件を目撃したナニングがどのような気持ちになったのかは察するしかないのですが、ラストの「海に佇む老人」のことを考えると、母親は結局戻って来れなかったのかな、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
戦争を仕掛けた側を支持している家族ということで、自分の意思でそれを支持しているわけではないけれど「影響を与えている側だ」と言われてしまう状況になっていました
ナニングに何かができるということもなく、ある意味、「二世」的な立ち位置で生きづらさを感じていたと思います
それでも、まだ状況がわかっていない子どもでもあり、大人たちが抱えている鬱憤の正体までは理解していないのでしょう
自伝的な物語のようで、ラストの佇む老人は「老齢期のナニング」でしたね
共同脚本として関わっている作品でもあり、ボームの幼少期の体験がそのまま描かれているのだと思います
ちなみにボームはこの映画がドイツで公開された2ヶ月後に永眠されています
子ども目線による「ドイツの敗戦」なのですが、遠い島なので「何を持って敗戦だったのか」ということは、ハンブルグに戻るまではわからなかったのでしょう
母親の態度、島の家を売らなければならなかった背景などはわからず、この島の八代目であるにも関わらず去ることになったのは、ナチスの信奉者だったからであると思います
居心地の悪さ的なものもあったと思いますが、それよりは経済的に立ち行かなくなっていたことの方が大きいのでしょう
ドルでなければ物は買えないし、ツケで買わせてくれるような善良な人はどこにもいない
勝てば官軍と言えますが、それでも「ドイツ経済に与えた影響は大きい」ので、加担者であるという見方をされているのでしょう
実際には、島民も少なからずナチス党を躍進させた責任の一端を担っていると思うのですが、そのあたりに関しては映画からは読み取れなかったので、見逃してしまったのかもしれません
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/106053/review/06861206/
公式HP:
https://www.bitters.co.jp/shiropan/
