■バックルームズ
■オススメ度
一風変わった映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2026.9.5(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:Backrooms
情報:2026年、アメリカ、126分、G
ジャンル:店の奥の謎の空間に魅了される店主を描いたスリラー映画
監督:ケイン・パーソンズ
脚本:ウィル・スーディク
原作:ケイン・パーソンズ
キャスト:
キウェテル・イジョフォー/Chiwetel Ejiofor(クラーク/Clark:家具屋「クラーク船長の家具帝国」のオーナー、元建築家志望)
Kelly Craig(バーバラ/Barbara:クラークの元妻)
レナーテ・レインスヴェ/Renate Reinsve(メアリー・クライン/Mary:クラークのセラピスト)
(幼少期:Ember Ambrose)
Krista Kosonen(ノーラ・クライン/Nora:メアリーの母)
フィン・ベネット/Finn Bennett(ボビー/ロバート・フランクリン/Bobby:キャットの恋人)
ルキータ・マクスウェル/Lukita Maxwell(キャット・テイラー/Kat:クラークの店の従業員、ボビーの恋人)
マーク・デュプラス/Mark Duplass(フィル/Phil:バックルームを研究するASYNC研究所の研究員)
Natalie Moon(フィルの妻)
Calix Fraser(フィルの子ども)
Sawyer Fraser(フィルの子ども)
Avan Jogia(ナレン・ウォレン/Naren Warne:AYNIC ケロワナ支局の研究者)
Robert Bobroczkyi(海賊のクラーク/Pirate Clark)
Philip Granger(電気の検針員)
Katharine Isabelle(ロビン/Robin:メアリーの友人、ホームパーティー)
Peter New(「Big Wayne」のCM出演者)
Mel Kostas(「Big Wayne」のCMに出てくる客)
Sarah Hayward(精神病院の看護師)
Patrick Baynham(太っちょの食える男/Bearded Still Life)
Rhiannon Roberts(赤い髪の女/Redheaded Still Life)
Dana Mahmood(車椅子に乗ったランプのそばにいる男/Archibald Leland Sutter Still Life)
Matthew Patrick Savage(家具店の駐車場のホームレス)
Ramona Kim(パーティーの参加者、メアリーが凝視する母親)
Milana Wan(パーティーの参加者、メアリーが凝視する娘)
Steven Chase(パーティーの参加者)
Allison Chassagne(ジェシカ/Jessica:?)
Noah Pierre D.(アリ/Ali:?)
■映画の舞台
どこかの国にある家具店
ロケ地:
カナダ:バンクーバー
15 King Edward St
https://maps.app.goo.gl/eVmuFmrC73km1wUj7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
1990年6月18日、新型MRIを開発しているASYNC研究所のケロワナ支局の研究者ナレン・ウォレンは、ある奇妙な空間の調査を行なっていた
空間にはその記録ビデオだけが残されていて、ナレン自身の行方は不明のままだった
時を同じくして、「クラーク船長の家具帝国」のオーナーであるクラークは、店員のキャット、ボビーとともに「店のCM撮影」を行なっていた
だが、うまくいかずに断念し、バックヤードで仕事に打ち込むことになった
店は大赤字で、なぜか電気代だけが高騰していて、作業員に漏電がないかを調べさせていた
問題はないと判断されたものの、その後も電灯の不調は続き、とうとうテレビまでつかなくなってしまった
そこでクラークは作業員が指摘した謎のスイッチを切ってみた
何も起こらないと思ったものの、同じ壁に光の線を見つけた
クラークが恐る恐るその壁をさわると、手が壁の中に入っていき、その向こう側に抜けることができてしまったのである
テーマ:記憶の世界に残ったもの
裏テーマ:恐怖を乗り越えた先にあるもの
■ひとこと感想
アメリカのネットの掲示板でミーム化した写真が元ネタで、そこからYouTubeを中心に元ネタとなる映像コンテンツがアップロードされることになりました
ありきたりだけれど、ちょっと異質に感じる画像というものが取り沙汰されていて、こんな感じの画像を貼り付けてくれというのが発端となっていました
そこから派生して、色んな映像コンテンツを作った中の一つという感じになっています
物語性というのはほとんどなく、不条理に話は展開しつつ、向こう側に行ったことでクラーク自身が何かを得た、みたいな流れになっていきます
現実世界(こちら側)では、妻に追い出されて店で寝ている男であり、客もほとんど来ない店を運営していて、生活の質が高いとは言えません
冒頭では、セラピストのメアリー相手に妻との経緯を再現するというくだりがありますが、はっきりと「誰かのせいだと思っている」と言われていたりします
そんな彼が、向こう側に出たことで変化が起きていました
それがどのような理由で起きたのかはわかりませんが、現実世界よりもイキイキしていて、メアリーとの立場が逆転しています
彼曰く「記憶の世界」というもので、そこにあるものは「クラーク自身の過去」を重ね合わせたような世界になっていました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画の中で描かれる向こう側は「リミナルスペース(Liminal Space)」と呼ばれるもので、「不気味で、寂しげで、不可思議で、しばしば超現実的に見える空間」を意味しています
このスペースに入ることを「リミナリティ(Liminalty)」と呼び、それは「通過儀礼として移行段階」というふうに呼ばれています
そこは、アイデンティティや時間などを構築する「敷居」とも呼ばれ、いわゆる「そこを通過して確立されるもの」というものが「敷居の前後」にある、という概念になっています
映画で説明すると、クラーク自身が現実世界から逃避して、次なる現実に向かう途上という感じになっていて、そこで彼が超えなければならない敷居というのは、妻との過去だった、ということになります
冒頭でメアリーが妻の代わりをしてトークを再現するというものがあり、それが立場を変えて再度登場していました
建築家になれなかったことに対する負い目を感じていたクラークは、いまだに夢を追いかけている妻を論破することでそれを越えようとしているように見えました
結果的には、妻の代役ではないメアリーが「クラークの記憶の世界から脱出する」という構造になっていて、物語全体は「メアリーが過去のトラウマから脱する」というものに姿を変えていきます
彼女の母ノーラは精神病院に入っているのですが、その過程において、クレストリッジ・タワーズの建設のための解体というものがありました
おそらくは、その場所に彼女たちの思い出があって、それを失ったことによる精神崩壊のようなものがあったのでしょう
メアリー自身は母を理解するためにセラピストになったのだと思いますが、この物語自体も「メアリーが敷居を跨ぐために必要なものだった」とも解釈できるのかな、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、理解した方が良いのか、あくまでも不気味さを楽しめば良いのかわからない作品で、元々は学問的な見地を語るような「このような事実があった」というテイストで物事が進んでいきます
映画のラストには16分にも及ぶ「記録映像」というものがあり、何の研究をしているのかはわからないが、その現象を科学的に解き明かすという方向性の記録映像として作られていました
リミナルスペースにある奇妙な現象を科学的に考察するというもので、それぞれの看板のサイズを測り、その位置取りから数学的な論証をして、壁の向こう側にあるものというものを発見するに至っています
この際に彼らは「壁を壊して向こう側にいく」のですが、この行為そのものまでを不可思議に描いているのが本作であるように思います
研究者たちは「科学的かつ数学的に」というアプローチでしたが、メアリーの場合は「心理学的に」という手法になっていて、敷居(壁)自体の存在意義と通過方法というものが変わっていると言えます
真面目に考察する映画なのかはわかりませんが、直感的に思うのは、建築家という数学的な素養と心理学という真逆に思えるアプローチを混在させているところに意味があるように思います
いわゆる「メアリーの通過儀礼に必要なのは数学的な見地」というもので、それを必要だと思わせているのは「彼女の過去を作り出している母親の存在」というものになります
彼女をどう処理し、どう理解するかという過程において、ロジカルシンキングで生きている人間の変容を見ることは、彼女にとって不可欠なことだったのかもしれません
なんとなく、それっぽいことを書いてみましたが、このブログの手法も「本当にあったかのような学説」みたいなテイストになっているので、それを体現できていたら面白いのかな、と思ったりもしています
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/106287/review/06924761/
公式HP:
https://a24jp.com/films/backrooms/
