■君の見る世界をなぞる
■オススメ度
繊細な十代の心情に惹かれる人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2026.8.24(京都シネマ)
■映画情報
原題:Enzo
情報:2025年、フランス&ベルギー&イタリア、102分、PG12
ジャンル:得体の知れない怖さを抱える少年を描いた青春映画
監督:ロバン・カンピヨ
脚本:ローラン・カルテ&ロバン・カンピヨ&ジル・マルシャン
キャスト:
エロワ・ポユ/Eloy Pohu(エンゾ/Enzo:両親と不仲な16歳の少年、建築現場の見習い)
ピエルフランチェスコ・ファビーノ/Pierfrancesco Favino(パオロ/Paolo:エンゾとヴィクターの父、数学教師)
エロディ・ブシェーズ/Élodie Bouchez(マリオン/Marion:エンゾとヴィクターの母)
ナタン・ジャピ/Nathan Japy(ヴィクター/Victor:エンゾの兄、大学進学を控える高校生)
マクシム・スリビンスキー/Maksym Slivinskyi(ヴラド/Vlad:ウクライナのレンガ職人)
ブラディスラフ・ホリク/Vladislav Holyk(ミロスラフ/Miroslav:ヴラドのルームメイト、ウクライナ人)
フルップ・プティ/Philippe Petit(コレリ/Corelli:建築会社の社長)
マルー・ケビジ/Malou Khebizi(アミナ/Amina:エンゾの同級生)
Charline Paul(レア/Léa:エンゾの叔母)
Mounir Margoum(マックス/Max:エンゾの叔父)
Rosalie Lauer(ヴィクターの友人)
Julie Nicola(ヴィクターの友人)
Adriel Sorrente(ヴィクターの友人)
Yelyzaveta Afonina(リザ:ヴラドの恋人)
Samir Sadoun(アリ:ナイトクラブの受付)
Frédéric Féraud(工事現場の責任者)
Saïd Hamada(ハマダ:作業員)
Fraj Talbi(フラ:作業員)
Hamza Talbi(ハムザ:作業員)
José Gonzalez Caso(作業員)
Sébastien Piquer(作業員)
Alexis Molla(アリス:作業員)
Robert Valentin(学校の先生)
Mohamed Soumaré(エンゾの友だち)
Thomas Pirrodi(エンゾの友だち)
Fabio Bianciotto(エンゾの友だち)
Baptiste Doncarli(エンゾの友だち)
Fanny Roger(両親の友人、ホームパーティ参加者)
■映画の舞台
南フランス
ロケ地:
フランス:
ラ・シオタ/La Ciotat
https://maps.app.goo.gl/PfPeuzyoPZzzf95K8
■簡単なあらすじ
南フランスの港町に住んでいる16歳のエンゾは、父・パオロ、母・マリオン、兄・ヴィクターとともに裕福な生活を送っていた
だが、エンゾはその生活に嫌気が差し、高校を中退し、建設現場の見習いとして働いていた
だが、そこでもボスのコレリから仕事ぶりを指摘され、世話役ヴラドとも上手くは行っていなかった
ヴラドは同郷のミロスラフとともにウクライナから移住してきた青年で、もうすぐ兵役の時が近づいていた
2人はウクライナに戻ることを拒んでいたが、それを避ける手立てはない
エンゾはその事実を知ってショックを受けていたが、彼にはそれ以外にも多くの悩み事があった
ある日のこと、エンゾの仕事ぶりにキレたコレリは、両親のもとを訪れることになった
豪邸に驚いていたコレリだったが、両親に「何かしたいことがあるのでは?」と、エンゾ自身の意思を確認した方が良いと忠告する
だが彼は、両親の前で「仕事が好きだ」と言い、そのまま仕事を続けることになった
それでもエンゾは心ここにあらずといった日々が続き、父はエンゾの不安定さに心配の日々を募らせていたのである
テーマ:怖さと向き合う方法
裏テーマ:残ることの意味
■ひとこと感想
多感な16歳が社会とふれあう中で自分を確立していく物語で、ウクライナ人のレンガ職人ヴラドへの淡い想いというものが描かれます
ヴラドとミロスラフの会話は字幕表示されないのですが、これはエンゾ目線を再現しているということなのでしょう
エンゾが彼に興味を持っている理由は分かりませんが、おそらくは男性性というものへの憧れがあったのだと思うます
彼は父と不仲で、母とはそこまででもない感じでしたね
父は数学教師で、その仕事を「退屈な生徒を相手にしているだけだ」と言っていて、表面だけを見てわかったふうになっていました
それでも両親の稼ぎはそこそこあるので、プール付きの豪邸に住んでいたりします
この生活が嫌になる理由の一つとして、「この豪邸は親の家だ」という感覚があって、ヴラドも「親が金持ちなら起業するか、何もしないかだ」と言っていました
エンゾは「自分を確立させたい」という想いがあって、それゆえに「自分が残せるもの」かつ「父が評価しないもの」に固執していたように思います
ここまでの想いをどうして持ってしまうのかは分かりませんが、エンゾの叔母が言っていたように「ある日突然自立する」ということの土台づくりを行なっているのかな、と感じました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、同性愛っぽいなあと思いながら、双方に恋人らしき人が出てきて、あれ違うのかな?と思っていたら「やっぱり」みたいな展開になっていました
エンゾはゲイもしくはバイだと思いますが、ヴラドの方はノーマルのようでしたね
ラストでは、戦地に向かったヴラドがエンゾに電話をするのですが、それは恋愛とは別の話なのだと思います
映画では、エンゾ、ヴラド、パオロがそれぞれに「怖さ」を抱えていて、それらがそれぞれの関係性を歪なものにしています
エンゾはアイデンティティの確立の中で、自分とは何者かに悩んでいて、褒められることを好ましく思っていません
おそらくは、褒められたものが自分の全てだと思われることが嫌で、得意なこと=自分自身ではないという感覚があるのだと思います
ヴラドの怖さは戦争に巻き込まれるというもので、この戦争に価値を見出してはいません
彼は父親から暴力を受けていたことを告白し、暴力そのものを毛嫌いしていると考えられます
彼がフランスに来たのは、これ以上の暴力を行わないためでもありますが、ウクライナにはそれ以上の暴力というものが要求されていたりします
パオロの怖さは、エンゾの繊細さに対する恐怖で、それは兄や自分の生徒と比べてナイーヴすぎるところだと思います
妻からは「支配したいのか」みたいなことを言われて否定するのですが、彼の数学者的な論理思考というものはエンゾの感性とは真逆のものなのでしょう
それゆえに「答えありきの父親の感性」というものをエンゾは受け入れられず、その拒絶を恐れているのがパオロという人間だったように感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、繊細な少年が自分自身の「かたち」を模索する物語となっていて、その揺らぎというものは周囲を困惑させていました
エンゾは「みんな平気なふりをしてパーティーをしている」と言い、自分自身と同じ怖さを感じていない人々と距離を置いていました
それぞれの内面は見えないものですが、誰がどのような怖さを持っているのかは気になっているように思います
父も怖さを有していますが、それは彼自身の内面ではなく、エンゾの行動によって自身の生活が脅かされることを怖がっています
彼は数学教師として働いていて、その思考は至って論理的のようの思え、同じ建築の道に進むとしても、ちゃんとした学校で学ぶべきだと考えていました
エンゾ自身は勉強ができ、建築の図面なども理解できるようですが、彼自身がやりたいことというものはかなり感覚的なもののように思いました
エンゾは「人が死んでも遺るものを作りたい」と感じていて、その過程において、死を恐れていないと強がっているように思えます
偽物の銃を咥えてパーティーの客を驚かせたりしますが、実際の戦場の怖さなどはわからず、画面越しに暴力の後に魅了されているように思えます
パソコンで見る兵士たちの動画などを見ますが、それをリアルと捉えているかは分かりません
ラストでは、戦場に出たヴラドから電話を受け、その背後で砲弾の音などが聞こえていました
そう言ったものよりも、ヴラド自身の心境の変化の方がエンゾにリアルを感じさせているのでしょう
そこでエンゾは自身の気持ちを伝え、拒絶されて感じたことを伝えますが、その想いが叶うことはないのでしょう
ヴラド自身が彼を想っているということはないと思うのですが、死ぬかもしれないという瞬間に話したい相手がエンゾだったということは本音を話せる相手が彼しかいないということなのかもしれません
それはエンゾにとっては大きな出来事であり、「怖さの言語化」に似た体験を与えたのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/105616/review/06878665/
公式HP:
