■ゴースト・オブ・ウエノ
■オススメ度
雰囲気系社会派映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2026.8.13(アップリンク京都)
■映画情報
情報:2026年、日本&中国&韓国、92分、G
ジャンル:「ゴージョー」というホームレスを探すソーシャルワーカーを描いた社会派ブラックコメディ映画
監督:ワン・チイ
脚本:リ・ヤン&ワン・チイ&ウェイン・ワン
キャスト:
門脇麦(サツキ:「ゴージョー」というホームレスの身元を調べるソーシャルワーカー、NPO法人「みんなの家」のスタッフ)
(幼少期:池﨑凜歩)
竹中直人(トシ:「ゴージョー」を知るホームレス)
原田文明(ゴージョー:姿を消すホームレス)
村松和輝(小川:サツキの同僚)
一本気伸吾(社長:支援しては逃げるホームレス)
野崎ゲレーロ聡史(丸山:ゴージョーに仕事を紹介した男)
比佐仁(古田: 配給所で文句を言う利用者)
前原実(次郎:金の無心をするホームレス)
平野貴大(リュウ:金貸しのチンピラ)
愛い姫(リカ/さくらかなえ:姿を消す地下アイドル)
メノニューイヤー(地下アイドルグループ)
フェルナンデス直行(アリ:喫茶店の店員)
佐々木史帆(ゆみ:犬を飼いたい女)
もねちゃん(クロ:ゆみの愛犬)
花子(まゆみ:マリを知るソーシャルワーカー)
輝有子(マリ:荒川のホームレス)
宇乃うめの(ジュンコ:公園の妊婦)
竹邑貴司(修二:ジュンコの夫)
芦原英樹(立川の警察官)
楊心彦(山口:ぼっちのリーマン)
大辻賢吾(山口の先輩)
山本裕太(山口の先輩)
アライジン(市役所の職員)
楊宇安(市役所の職員)
花田健人(ニュースの声)
花澤杏樹(ニュースの声)
ランディ井上(ニュースの声)
千葉尚之(インタビューの返答者の声)
雨宮舞香(インタビューの返答者の声)
■映画の舞台
東京都:上野近辺
荒川&立川
ロケ地:
東京都:葛飾区
水元公園
https://maps.app.goo.gl/bBoGKrm4oaKALpTk6?g_st=ic
東京都:台東区
喫茶 古城
https://maps.app.goo.gl/kHordiecNcwee9PF6?g_st=ic
上野公園
https://maps.app.goo.gl/mvaFHpeu38kr6jjeA?g_st=ic
東京都:中央区
立呑み酒場 ニューカヤバ
https://maps.app.goo.gl/wUC3NrUuY9sPQjxj9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
NPO法人にてホームレスの支援を行っているサツキは、ある時に上野公園にて亡くなった「ゴージョー」について身元を調べることになった
彼のテントの中を探していると、そこには日記らしきものがあり、その中に書かれていることを身近な人に聞いて回ることになった
長年、上野公園を根城にしているホームレスのトシはゴージョーのことを知っていると言い、彼の私物を欲しいと言い出す
規則で預かることになっているというものの、ゴージョーの作った「パックンチョ(パクパクおみくじ)」を使った賭けで負けてしまう
その後、日記を頼りにゴージョーを知る人をあたって行くものの、実情が掴めるわけはなかった
ゴージョーに抱いていたイメージが徐々に崩れて行く中、サツキは自身が抱えている闇とも向き合うことになった
それは彼女の父が失踪していて、その面影をゴージョーに重ねていた
当初は「他人からお金を借りていること」すらイメージの外側にあったものの、あるホームレスから言われた言葉がサツキの根幹を揺るがして行くことになった
わかったふうなことをいうサツキだったが、ホームレスからゴージョーの話を聞いている自分が安全圏にいることを突きつけられる
そして、サツキ自身がゴージョー自身を喪失した父の理由探しに使いつつ、自分自身が何者かが定まっていないことを理解し始めて行くのである
テーマ:喪失を埋めるもの
裏テーマ:快楽と脱力
■ひとこと感想
日本のホームレス事情に切り込んだ社会派っぽい感じの導入でしたが、どちらかと言えば、そう言った活動に従事する人の内面探しのような作品になっていました
サツキ自身も同僚の小川に「なぜ、この仕事を選んだのか?」と訊いていました
その答えは描かれないまま、今度はサツキ自身が「どうしてこの仕事を選んだのか」を突きつけられるようになります
実際には誰かに直接言われるわけではないのですが、自分の行動を第三者的に指摘されたときに、心の中に瞬間的に過ったイメージというものが明確になっていきます
彼女の勤務態度を見ていると、ホームレスを憐んで支援しているという感じはしなくて、とにかく自分を殺して生きられる場所のような抜け殻になっているように見えます
おそらくは、このような活動を通じて失踪した父とのコンタクトが取れるのでは、と考えていたのだと思いますが、その方向に父が行ったと思うことこそ、彼女自身の傲慢さというものの露呈のようにも思えてしまいます
家族を捨てた父がどのように生活しているのかを想像する中で、サツキの中に芽生えるものが「ホームレス生活を送って、惨めに死んだ」というものなのですね
そして、死んだ男を父認定することで、自分自身の中にあるわだかまりのようなものが解消されると思っていたのでしょう
実際には、そんな彼女の心理状態を知っていたのかどうかもわからない展開を迎えますが、この帰結もある意味においては、サツキの消化不良を解消する手助けになったと言えるのかもしれません
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作は、実は全てがお芝居でしたという感じの結末になっていて、サツキは「この時間は何だったのか」と振り返る展開になっていました
社長が書いたものをトシがあの場所に仕込んだというもので、おみくじも彼の仕業で、何を引いても同じ答えが出る、みたいな仕組みになっていました
トシはサツキに日記に集中して欲しくてその他のものを持ち去るのですが、その仕込みによって、行き着く先というものがある程度見えていたのだと思います
トシは巧妙にサツキを誘導し、彼自身が見せたいものを見せていくことになります
それを一言でまとめるのは難しいのですが、ざっくりとした感じだと「家を失ったからホームレスになったわけではない」ということなのだと思います
トシ自身も「家はあっても帰っても何もない」わけであり、そこにはトシ自身の生きがいなどが詰まっていた空間だったのでしょう
そう言った居場所から何かが抜け落ちた時、そこは帰る場所ではなくなってしまいます
トシ自身は外の世界に転生する妻を探す旅に出ていて、それは自我を保つために必要な儀式のようにも思えます
そして、サツキ自身も父の喪失によって、そこは帰る場所ではなくなり、今はかつての生活圏とは違うところに移り住んでいるように思えました
そこが新しい居場所になるかどうかは、昔いた場所との決別を意味するのですが、それを進めるためには「区切り」が必要だった、ということなのかな、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は、ホームレスの生態に近いところにいるサツキが、父親探しを兼ねてNPO法人に関わっているように描かれていました
彼女がどうしてそのような場所なら見つけられるかもと思ったのかは分かりませんが、失踪者を探す仕事をしていれば、いずれは手がかりが掴めると思ったのかもしれません
失踪者の身元を特定するNPO法人というものが実際にあるのかは分かりませんし、このような団体がホームレスの支援活動をしているというのも少しズレているようにも思えます
映画では、トシの作り話に騙されるサツキという構図になっていましたが、彼自身は嘘をついていたのではなく、社長が取りまとめた日記を読ませることで、ホームレスがどうして今の生活をしているのかを理解させたかったのだと思います
そして、行き着く先にあったのは無縁仏を納めている合同墓地となっていて、死んだことでようやく安住の場所を手に入れる存在であると示唆しているように見えます
トシがどうしてサツキにそれを見せたかったのかは分かりませんが、彼自身はサツキが父親を探していることを知っていたのでしょう
そうした先に、たまたま身元不明の遺体が見つかり、そこで一芝居を打つことになったのだと思います
行く先々でサツキが出会う人々が仕込みなのかは分かりませんが、ゴージョーの金銭欲、性欲と言った側面を見せて行くことで、サツキ自身が抱えている残像のようなものを自ら否定する行動に向かって行くように思えました
さっさと顔を見れば「違う」とわかったと思いますが、それを先にしないのは、司法解剖などの時間もあると思いますが、「父であって欲しい」という願望が少なからずあったのではないでしょうか
サツキとすれば、まだどこかにいるかもしれない父という存在はネックで、生きていて何をしているかを知るか、死んだという事実がある方が完全に離別できるのでしょう
それは、失踪という事象に「自分の責任はあるのか?」という自問が付随し、これは「自殺」でも感じるものと同じようなものなのかもしれません
結局のところ、話は振り出しに戻ってしまうのですが、今後もサツキが父を探し続けるのかは分かりません
でも、嘘話で笑い転げたことは、ある種の区切りにも似ていると思います
そう言った意味において、残像との決別は果たせたと言えるのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/106045/review/06838820/
公式HP:
