■部屋の使用表記を無くすだけで、別の想像ができるので、それを利用してもよかったかもしれません


■オススメ度

 

奇妙なホラー映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日2024.3.15(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報2024年、日本、109分、G

ジャンル:ある物件の秘密に迫るYoutuberを描いたホラー映画

 

監督石川淳一

脚本丑尾健太郎

原作雨穴『変な家』

Amazon Link(文庫本)https://amzn.to/4clg9cE

 

キャスト:

間宮祥太朗(雨男/雨宮トオル:ホラー系の配信を行うYoutuber)

佐藤二朗(栗原文宣:雨宮の知人の建築家)

 

川栄李奈(宮江柚希:雨宮にコンタクトを取る夫を殺された女)

   (中学時代:井上栞那

森廉(宮江恭一:柚希の夫)

斉藤由貴(松岡喜江:柚希と綾乃の母)

阿部岳明(喜江の夫?)

 

瀧本美織(片淵綾乃:柚希の姉)

   (中学時代:宮部のぞみ

長田成哉(片淵慶太:綾乃の夫)

   (中学時代:萩原護

 

浅井陽太(片淵桃弥:本家から預かった子ども)

黒石波琉&鈴木惟冬(片淵浩人:綾乃と慶太の実子)

 

高嶋政伸(森垣清次:柚希の叔父)

 

石坂浩二(片淵重治:本家の当主)

根岸季衣(片淵文乃:重治の妻)

長井短(高間潮:片淵本家の女中)

 

DJ松永(柳岡:雨宮の動画プロデューサー)

しゅはまはるみ(変な家の近隣住民)

 

神尾優典(イメージとして登場する子ども)

 


■映画の舞台

 

都内某所

静岡県:浜松市

 

ロケ地:

静岡県:浜松市

静岡県立森林公園 森の家

https://maps.app.goo.gl/CnR3V5dDGBDeQoDJ6?g_st=ic

 

静岡県:駿東郡

豊門公園

https://maps.app.goo.gl/LnJCz7SztSwmS9cK6?g_st=ic

 

東京都:港区

512 CAFE&GRILL

https://maps.app.goo.gl/JtNG1AhXC5AFHmwc9?g_st=ic

 

東京都:北区

支那そば 大陸

https://maps.app.goo.gl/8YKB7pMHcMhRpuyB6?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

雨男の名前でホラー系動画を投稿している雨宮は、ある日、マネージャーの柳岡から引越し予定の間取りについての相談を受けた

雨宮は知り合いの建築家・栗原にコンタクトを取り、この物件に問題がないかを問いかける

栗原は「この家の間取りは変だ」と言い、子ども部屋が二重扉になっていること、室内に備え付けのトイレがあるなどを指摘し、子どもを外部から隔離する部屋になっているのではないか、と推測する

 

さらに栗原は一階の台所の横にある奇妙なスペースを見つけるも、その意味はわからず仕舞いだった

自宅に戻った雨宮は、一階と二階の図面を重ね合わせると、子ども部屋の棚の下にその奇妙な空間があることに気づく

そこで雨宮はこの変な間取りをネタに情報発信を行うと、意外なほどにバズってしまった

 

それから数日後、雨宮の動画に奇妙な投稿をした女性・柚希がDMを送ってきて、雨宮は彼女と会うことになった

柚希は「夫が殺された家の間取りと似ている」と言い、奇妙なことに巻き込まれてしまったのではないかと考えていた

そこで柚希は雨宮を母・喜江の元に連れて行くものの、母は頑なに「その家に行くこと」を制止し、その家で夫がおかしくなったことを仄めかすのであった

 

テーマ:因習としがらみ

裏テーマ:洗脳と盲目

 


■ひとこと感想

 

予告編だけの情報で「変な間取りの家の謎に迫るミステリー」だと思っていましたが、まさかの「家系因習系ホラー」とは思いもしませんでした

原作読んでる人なら予告編の酷すぎるミスリードに気づけたのかもしれません

 

映画は、冒頭からホラー映画のテイストだったので、「ああ、予告詐欺か」とすぐにわかったので何とかついていくことができました

とは言え、ちょっと前に別の映画の黒幕の人が同じようなキャラで出てくるのはどうなのかなあと思ってしまいます

 

物語はあってないようなものですが、とにかく回想で全てを語って終わりという手法なので、映像化の意味をほとんど感じません

回想シーンは基本的に「語り手の脳内映像」になっているので、実際にその場にいて話を聞かされた人がイメージできるのかは微妙なのですね

そう言った点も含めて、それぞれのキャラが感じる恐怖も違うし、違和感も違うのではないかと思いました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

本作の構成は、前半がミステリーで後半がホラーなのですが、ホラーであるということがネタバレになるのかは微妙な感じに思えてしまいます

後半のホラー部分は、明治ぐらいの時代に起きた事件を機に、呪術師みたいな人の話を真に受けて「左手供養」の儀式を続けている、というものになっていました

その左手をどうやって用意するのか、という確信部分はぼやかされているような感じで、一応は喜江が加担しているという理解で良いのだと思います

 

映画は、変な間取りの家を調べていたら、もっと恐ろしいことが見つかった系ではあるものの、雨宮の配信だけを聞いて「それ、ウチの旦那関係ありそう」という時点で怪しさ満点のように思います

ラストでは、雨宮の部屋にも謎の部屋があって、そこには誰かがいるという感じになっていますが、その家に住んでいることを喜江は知っていたりします

 

また、変な家の隣人が「見知らぬ子どもを見た」というだけで盗撮して赤の他人に見せるのですが、このあたりの流れもおかしくて、この慣習を終わらせたい人の思惑が絡んで、外部の人間を取り込んだようにも思えました

続編があるのかはわかりませんが、変な家の中を捜索するシーンが怖いので、何度も見返そうとは思わないってのが本音ですねえ

 


どうやって作るの問題

 

本作は、変な家が登場する変な話で、その最たる部分は「あの間取り図の家を建ててもらえるのか?」ということだと思います

設計の段階から「子ども部屋から一階に降りて、そこから二階の浴室に通じるスペースを作る」という必要性が生じていて、実現可能ではあるものの、実際に作れるのかが疑問に思えてしまいます

間取り図の段階だとごまかせても、あの場所を改造するなりしないとダメで、しかも子ども部屋の床に穴を開けるだけではダメなのですね

「子ども部屋の棚の部分の床に穴を空ける」「一階部分の台所のキッチン横に壁を作る」「浴室の脱衣所の床に穴を空ける」

最低でもこれだけの作業が必要で、素人にできるとは思えません

 

映画に登場する片淵家は特殊な家族なので、そう言った改築ができる人間がいたことになりますが、田舎にある古い木造建築でそういったものを作れても、築数十年程度の比較的新しい物件をあそこまで改造するのは無茶なように思います

近隣に音でバレるでしょうし、台所の梁とかどうなってるんだろうなあと思ってしまいます

台所のガスコンロがある場所の隣なので冷蔵庫を収納するスペースだと思うのですが、他の壁と同じように見せかけるために土壁と作るのも無茶だと思うのですね

そもそもリビングのソファの真後ろになるので、そこを誰かが通るとバレると思います

 

映画は、立体的になった分だけ「無茶だろう」と思ってしまう部分が露骨にあって、いっそのこと「片淵家は大工一家だった」ぐらいの振り回しがあっても良かったかもしれません

とは言え、そんな設定を入れ込むだけで陳腐になるのですが、そもそも論として「そんな危ないことに使っていた住宅を売って誰かに貸す状態にするのか?」というところが引っ掛かります

あの家が中古市場に回ってきたことで、雨宮たちが調べることになったのだと思いますが、本来なら「使用しなくなったら解体する」と思うのですね

せめて他人にわたることを想定するならば、元に戻す(注文で作っていたら無理ですが)なり、改築して「スペースを収納棚にする」ぐらいの細工は必要なように思えてきます

後付けでも、既成でも、二階部分の二つの穴を完全に塞ぎ、一階の空きスペースのコンロ側の壁を取り除いてリフォームすれば良いので、そこまでハードルが高いように思えないのにしないのは不思議でしたねえ

 


勝手にスクリプトドクター

 

映画の後半は、特殊な家の特殊なしきたりホラーになっていて、その起点は「当主が女中と関係を持ったこと」で、その後始末をしたために「呪いが生まれた」みたいな感じになっていました

祈祷師みたいな人に「左手を供養しろ」と言われて、その通りにしてきたけど、それができなくなったので「ホームレスなどの足がつかない人をターゲットにして左手を奪う」ということをやってきた、という流れになっていました

これらの慣習的なものは、強迫観念に囚われることで継続されていき、それが当たり前の文化になって行ったのだと推測されます

家ごとに変な慣習があるのは不思議でもなく、この家には忌まわしい過去と共に、このような慣習があったということで、無茶な設定とまでは思えません

 

とは言え、この映画でそれをやって面白いのかは別の話で、変な間取り図から導き出される答えとしては陳腐な部類になってしまうと思います

それは、呪いなどの目に見えない方向に話を持っていくと、それを信じるか否かという問題に突き当たってしまうから、なのですね

それが映画内のキャラクターが感じる「呪いなんかあるわけない」というものとは違って、観客側にも同じものが生じてしまいます

なので、具体的なミステリーで入った物語を、真逆の属性にあたる抽象的なものに落とし込むことは、反応を悪くするだけだと言えます

 

この映画を「結果として呪いだった」と持っていくことは可能ですが、そのために「あのような呪術っぽい演出」をする必要がないのですね

呪術っぽさなどはビジュアルに訴えかけることはできますが、女中の肖像画とか、これ見ようがしの左手っぽいオブジェクトだけではインパクトしかありません

見た目のインパクトが重要だとしても、あの世界線に逃げてしまうと何でもありになってしまうのですね

 

導入がミステリーだったのに、実質は慣習系ホラーになっていて、いわゆる「思考」を放棄した状態になってしまっています

間取りのおかしさから「子どもが監禁されている」とか、「殺人のために作られた」というものを読み解いていくことになるのですが、動機が何であれ「この間取りの家を建てることになった経緯」を避けては通れないのですね

彼らが左手供養を継続するために旧家を改築もしくは新築することになったけど、そこから分家が派生した際に「同じ構造のものを作れるのか」という問題が生じます

それが「変な間取りの変な家の誕生」であり、それをどのようにして作ったのか、という具体的な解答を提示することによって、ミステリー部分の完結がなされたのでは無いでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

あの変な家がどのように生まれたかというのは技術の問題になってきますが、わかりやすいのは旧家の改築がどのように行われたのかを紐解くことから始まります

あの邸宅もかなり昔のものですが、今回の左手供養の歴史も明治ぐらいから始まっているということになっていました

なので、元々「左手供養のために作られた祠」などが先にあり、それを外界から遮断するために家が建てられたというふうに繋がっていくことになります

旧家は「妙な空間が先にあって隠すための建築」で、それは「この祠を守る必要がある」という先祖代々の使命などをでっち上げれば、親しい大工は腕を振るったでしょう

それが分家ができ、別の場所に住むようになると、元々そこには祠のようなものがないので、同じ理由をつけることができません

それゆえに、同じようなものを作れそうな既存の住宅を探す必要性が出てくることになりました

 

このような間取りを偶然見つけることは難しいので、結局は注文住宅として作ることになります

この際も一階の妙なスペースは元からなく、子ども部屋と浴室の床も普通に作ってもらいます

二階の奇妙な子ども部屋に関しては、隔離された作業部屋が必要ということで、家族の誰かの職業が「気難しい作家」という設定にしておけば実現可能だと思います

間取り図に「子ども部屋」と書いてあっても「作業部屋」であっても問題なく、間取り図にそう書いてあることも後付けのミスリードのようなものであると言えます

あるいは介護用に必要で、徘徊しないようにすぐに出られないようにする、でもOKでしょう

 

そして家が完成し、この家に住み始める準備段階で、二階の二箇所の床をぶち抜いて一階の台所スペースへの通路を確保します

通路の壁に関しては、いくつかの薄手のパーテーションを購入して設置し、壁紙を貼るとか、床面に近いところにはモノを置くなどしてカモフラージュすれば大丈夫でしょう

二階から降りるための階段もわざわざ設置する必要はなく、大きめの脚立を運び込めばOKで、それを運び込んだ後に「短い方の壁面」を閉じれば完成となります

この家を手放す時は短い壁面から昇降用の部材を取り出して閉め、それぞれの穴を塞ぐために備え付けの家具をそのまま置いて見取り図に組み込むことになります(本来ならば元に戻せば普通の家に見えますが、それをしなかった理由については除外します)

 

この部屋がおかしく感じる導入が「子ども部屋」表記になっていることで、単に「寝室」と書かれていたら、「介護が必要な人の部屋」のようにも思えるし、「独立して隔離された書斎」のような部屋にも思えてきます

でも、そこに備え付けの置き去りにされた家具が「子ども用のものだった」ことから、不動産屋は「子ども部屋」と表記することになり、あの見取り図ができることになったのかもしれません

「子ども部屋」は寝室兼勉強部屋として使われる部屋で、「クローゼット、勉強机、本棚、ベッド」などが置ける程度の広さを確保している部屋になります

それらを満たしていたこと、ベッドや棚が子ども用のものだったことからそのような表記になった経緯があった、というカラクリになっているのでしょう

 

この隠したいものを隠すためのカモフラージュが「この部屋の間取りは変だ」と思われるきっかけを作ってしまい、意図せぬ客を招くことになってしまう

そうした経緯を経て、主人公たちが秘密に近づいてしまう、というのが本筋になるのだと思います

あとは、雨宮の部屋の妙な壁面の問題がありますが、ぶっちゃけると「蛇足」以外の何者でもなく、妙な間取りに取り憑かれた雨宮が「ないものをある」と感じるようになったというオチでよかったように思いました

ミステリーとして、あの家の設立経緯に踏み込み、そこから妙な人たちを追っていくことで、あの旧家にたどり着く

 

そして、本当のラストとして必要なのは、あの家の妙な風習を知り、それを止めようとする人物がいる、ということになります

それは「変な家の隣人」に他ならず、その関係性は首謀者が行なってきた「ホームレスの左手切断に関する人物」すなわち「犠牲者の家族(年齢的には娘)」ということになるのでしょう

そうすることで、あの変な家に近づいて調べようとしている人にそれとなく情報を提示し、その目論見を壊してもらおうとする、という思惑まで提示してこそ、全ての謎が解けるのだと思います

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/99694/review/03604711/

 

公式HP:

https://hennaie.toho.co.jp/

アバター

投稿者 Hiroshi_Takata

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA