法廷劇が好きな人(★★★)

司法制度の解釈が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.11.10(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報:2023年、日本、97分、G

ジャンル:ロースクールの学生が卒業に再会し、容疑者、被害者、弁護士の立場になって事件に向き合う法廷サスペンス映画

 

監督:深川栄洋

脚本:松田沙也

原作:五十嵐律人『法廷遊戯(2020年、講談社)』

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キャスト:

永瀬廉(久我清義/セイギ:ロースクールから弁護士になった青年)

   (幼少期:渡邉斗翔

杉咲花(織本美鈴:セイギの親友、ロースクールの同級生)

(幼少期:戸簾愛

北村匠海(結城馨:セイギの友人、在学中に司法試験に受かった天才)

(幼少期:平野絢規

 

戸塚純貴(藤方賢二:セイギと馨に恨みを持つロースクールの同級生)

豊田裕大(八代公平:ロースクールの学生)

芳村宗治郎(安住尊:ロースクールの学生)

安野澄(杉本佳奈:ロースクールの学生)

高橋春織(衛藤麻衣:ロースクールの学生)

重徳宏(中野竜也:ロースクールの学生)

 

筒井道隆(佐久間悟:馨の父、警察官)

潮田玲子(馨の母)

黒沢あすか(結城葵:馨の実母の妹)

 

大森南朋(大沼大悟:盗聴を請け負う男)

 

倉野章子(隅田春江:セイギの下宿先の女主人)

 

柄本明(奈倉哲:大学教授)

生瀬勝久(釘宮昌治:セイギの弁護士)

 

やべけんじ(古野雄一:美鈴の事件の担当検察官)

タモト清嵐(留木慎介:美鈴の事件の担当検察官)

 

宮澤美保(裁判長)

松澤仁晶(裁判官)

大塚ヒロタ(荻原誠:裁判官)

 

松田陸(傍聴する記者)

三浦俊輔(記者、キャップ)

政修二郎(傍聴する記者)

田中麻代(傍聴する記者)

 

石川彰子(気分が悪くなる裁判員)

板倉佳司(谷口:悟の同僚の警察官)

荒木誠(痴漢するサラリーマン)

 

市原洋(裁判員?)

五十嵐律人(裁判員?)

笠井美穂(刑務官?)

安部康二郎(配達員?)

 

池谷美音(駐車場で遊ぶ子ども)

濱崎司(駐車場で遊ぶ子ども)

 


■映画の舞台

 

都内某所

 

ロケ地:

埼玉県:狭山市

西武文理大学

https://maps.app.goo.gl/tFMQGBf5rLTNeDX77?g_st=ic

 

東京都:八王子市

日本文化大學

https://maps.app.goo.gl/UieXsLiwUq2mVtvX8?g_st=ic

 

柘植大学

https://maps.app.goo.gl/QaWMDQWQDB8RGH7i8?g_st=ic

 

山梨県:南都留郡

西湖キャンプ場

https://maps.app.goo.gl/3XJzoRw5Hk1dFn898?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

大学のロースクールに通う清義は、在学中に司法試験に合格した親友・馨と、かねてからの友人・美鈴と共に勉学に励んでいた

彼らの通う大学では「無辜ゲーム」というものが行われていて、それは「模擬裁判」によく似たものだった

 

馨が中心となって行われる「無辜ゲーム」は、告訴人が事件に対して証言者を募り、その罪を暴いていく

参加者の藤方は馨の判断に憤り、敵意をむき出しにしていく

 

ある日、教授に呼ばれた清義が教室に戻ると、そこには彼の過去の事件に関するビラが撒かれていた

また、美鈴の家にも嫌がらせがあることが発覚し、馨の元にもバタフライナイフによる脅迫が起こってしまう

 

美鈴が盗聴されていたことに気づいた清義は、その犯人を見つけるものの、ネットでやり取りをしただけで、依頼者が誰かはわからない

そして、2年の月日が経ち、馨は研究者として大学に残り、清義は弁護士になった

そんなある日、清義は「最後の無辜ゲームをする」という馨の誘いに乗り大学に向かう

 

だが、その指定された場所には、刺されて死んでいる馨と、血まみれになっている美鈴の姿しかなかった

美鈴は「私の弁護をして」と言い、容疑者・美鈴を巡る裁判が開かれることになったのである

 

テーマ:司法と正義

裏テーマ:冤罪と無罪の違い

 


■ひとこと感想

 

『法廷遊戯』というタイトルから、遊びの裁判をしていたらガチの事件に発展する系かと思っていました

無論、原作は未読なので、どのようなテイストなのかはわかりません

アイドル起用だったので、ファンムービーになるのかなと思いましたが、そんな余地のないほどに硬派な物語になっていました

 

映画は、法廷劇がメインにはなりますが、いわゆる漫画的な展開が続くので、ファンタジー感もありましたね

一応は「法律的にはアリ」というギリギリのラインなのですが、この辺りのリアリティラインは素人にはわからない感じになっていましたね

 

物語は、過去の事件が起点となって、それぞれの過去が掘り起こされる感じになっているので、あまりネタバレを喰らわない方が良いでしょう

原作ファンがどのような見方をするのかは分かりませんが、ファンムービーとしての黄色い声援が起こるような映画ではなかったと思いました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画は、現在の司法制度に真っ向から事実を突きつける格好になっていて、法律の隙間を縫って裁判が進行していきます

検察の面汚し的な感じもあって、このあたりに溜飲が下がる要素があったかもしれません

でも、裁判で殺害シーンが映った映像を出すのは反則でしょうね

決定的な感じに映りますが、検察官が「検証させてくれ!」というのはわからないでもありません

 

あのビデオ映像では、馨が美鈴に向かっていくような流れになっていますが、美鈴はガッツリと体重をかけて倒れ込んでいます

なので、印象論で議論するよりも、なぜ美鈴は殺しに行ったのかというところに疑問を持たないとダメなのですね

それは最後に明かされるのですが、あのまま結審してしまうところにファンタジー感がありました

 

映画は結構考えさせられるところがあるものの、ある程度の司法制度の知識がないとほぼ何が起こっているかわからない感じになっています

パンフレットで用語の説明があるのですが、これで理解できるならまだ知識がある方なんじゃないかなと思ってしまいました

 


無辜ゲームが与える印象論

 

本作内で行われる「無辜ゲーム」ですが、「無辜」とは「何の罪もないこと」という意味があります

そして、馨はジャッジメントとして、「告訴人」が被疑者を犯人であると納得させることができるかを見極めています

冒頭の藤方のゲームでは、彼の告訴には根拠が足りないという理由で無罪にするのですが、このシーンは誰がどうみても言いがかりのようにしか思えません

なので、無辜を示すとしても、少しばかり題材が乱暴なようにも思えました

 

2回目の無辜ゲームは清義の中傷ビラについてで、清義は冷静に状況を分析し、被疑者たる人物を特定するに至ります

藤方のゲーム同様に、この中に犯人がいるというテイストで進むものの、そのロジックを綿密に立てていきます

とは言え、藤方が蒔いたということを清義が見つけたのではなく、証言を得るという流れを汲んでいて、美鈴との関係性を考えれば、彼の味方になるのは当然だったと思います

 

無辜ゲームは告訴を退けるゲームになっていますが、それだけ立証というものが難しいことを示しています

彼らは科学捜査などはできないので、拙い経験則と知識で起こったことを分析するのですが、ここで使われるロジックというのは司法の現場よりは、捜査の現場で役に立つものでしょう

裁判の場合だと、被疑者は特定され、それに至る根拠を検察が提出しています

その根拠というものを判断材料にして、それが法的に問題ないかとか、犯行を決定づけるものかを吟味していくことになります

なので、裁判の場で行われるのは、検察が犯人であるとするロジックを裸にできるかにかかっていると言えるのでしょう

無辜ゲームは「告訴人の印象論」をいかにして現実的なものとしてロジカルにできるかというところを競い合っているのですが、映画内で行われているものは、そこまで複雑なものにはなっていませんでしたね

 


同害報復について

 

「同害報復」とは、被害に相応した報復または制裁のことを言い、いわゆる「目には目を」というものになります

日本の司法制度では、あらかじめ形に対する処罰が決まっていて、これまでの判例に倣ったものが判決に使われます

それが「同害報復」にはなっていないのですが、これは日本の司法が同害報復を採用していないからだと言えます

 

同害報復が現代でも行われているのはイスラム法(キサース)ぐらいなもので、かつてはハンムラビ法典や古代法には存在していました

この考え方は、過剰な報復を避ける意味合いがあり、例えば目をつぶされた場合は、同じく目をつぶすのであって、他の箇所への報復や、命を取るということはしないのですね

人を殺したら死刑という感じなのですが、では二人殺したら二回殺すのかという問題に行き着きます

なので、刑によっては可能だが、全てを当てはめることはできないとされています

 

日本の法律の慣例だと、一人を殺しても死刑にはならないのですが、それは更生の方に重きを置いているからだと思います

実際にはケースバイケースであると思いますが、懲役刑と民事訴訟による賠償をセットにして、被害者もしくは被害者遺族に対しての責任というものを果たそうと考えているように思えます

刑事裁判で目には目を行うと、民事裁判の賠償請求は過剰ということになるので、この並行的な裁判の構造を考えると、今の日本では難しいのかなと思います

被害者及び被害者遺族の生活を立て直したり、心情的なものを支援することも必要になってくるのですが、事件によっては「同害報復」があっても良いのではと感じるものがあるのも事実だと思います

 

日本の法体系が欧米からイスラム法にシフトしていくようなことがあればそのような刑罰も行われるかもしれませんが、現実的には起こり得ないものでしょう

でも、欧米的な司法よりは、イスラム法に近いことをかつての日本では行っていたので、適用されれば支持されるのかなと思ったりもします

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、過去の事件をきっかけとして、その報復を行なっていくのですが、現在の司法を利用しながら、同害報復に近い手法論を取っているように思えます

美鈴の幼少期の性的被害がベースにあって、彼女を助けた清義を今度は美鈴が助けることになっていました

でも、その目論見を壊すのが全てを知っている馨であり、彼は命を賭けて父の名誉を回復させることに躍起になっています

 

美鈴の虐げられた過去をベースとして、痴漢冤罪を行い、その被害者に馨の父・悟が巻き込まれるのですが、この際の悟の言葉に美鈴が反発し、結果として不幸を呼び込んでいきます

痴漢冤罪をでっち上げる行為も然ることながら、悟の言葉に過剰反応するところも悪魔的で、それが過去が悲惨だったからというものが言い訳にはならないのですね

同じ過去を持つ人間が同じように犯罪者になるとは限らず、最終的には悟に感じた感情を別の人間である馨にぶつけるという最悪の展開を迎えています

馨がこの殺傷を受け入れるのは、ある種の殉教に近いものがあると思うのですね

それに感化されている清義は、美鈴と距離を置いて、過去を暴露する方向へと動いていきました

 

映画は、ある程度の司法の知識が必要とされるのですが、法定劇はテレビドラマでもたくさんあるし、映画内でも説明は過剰なほどにありました

なので、そこまで心配する必要はないのですが、やはりテレビ映画の域を出ないのかなと思ってしまいます

登場人物の未熟さというよりは、やはり裁判ごっこ感がとても強くて、現実ではあり得ないことばかりが起こっています

この漫画的なものはアニメとかテレビドラマだと笑って見過ごせるのですが、実写の映画となるとやはり陳腐に思えるのですね

裁判が始まってから、重要な証拠を司法の場に提示したりするのですが、最初から司法と戦うつもりなら、人が一人死ぬ意味もないと思います

 

再審請求を検察にさせることが主たる目的ではありますが、それが為されたのかわからないままに映画は終わっているので、ちゃんと完結していないところも微妙かなと思いました

まさしく「遊戯」なのですが、同じような問題提起をもっと重厚に、司法制度の根幹を変えるような映画というものは作れると思います

そう言った意味を考えると、本作は「軽い映画」だったのかなと思わざるを得ませんでした

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

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公式HP:

https://houteiyugi-movie.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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