■開戦前夜
■オススメ度
太平洋戦争関連の映画に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2026.7.5(MOVIX京都)
■映画情報
情報:2026年、日本、138分、G
ジャンル:模擬内閣にて日米総力戦の結果を予測する研究を描いた戦争映画
監督&脚本:石井裕也
原案:猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』
キャスト:
池松壮亮(宇治田洋一:「模擬内閣」の内閣総理大臣、産業組合中央金庫の調査課長)
【模擬内閣】
仲野太賀(樺島茂雄:内国書記官兼情報局総裁、同盟通信社の記者)
岩田剛典(村井和正:海軍大臣、海軍少佐)
中村蒼(高城源一:陸軍大臣、陸軍少佐)
塚家一希(田中耕:陸軍次官、陸軍主計大尉)
福田航也(山本尚:陸軍欧州戦研究班、陸軍整備局整備課長、陸軍大尉)
三浦貴大(峯岸草一:企画院総裁、物価局事務官)
笠原秀幸(宮本達夫:企画院次長、日本製鐵の社員)
前野朋哉(前島俊樹:企画院次長、日本郵船の社員)
長村航希(甲斐田悟:国務一班・大蔵大臣、大蔵省事務官)
大津尋葵(安西博:国務一班・外務大臣、外務省事務官)
高根沢光(米山則男:国務一班・農林大臣、農林省事務官)
今村裕太郎(木村啓介:国務一班・内務大臣、内務省事務官)
長森要(磯部直政:国務二班・日本銀行総裁、日本銀行書記官)
角谷良(後藤田茂:国務二班・厚生大臣、厚生省事務官)
薮内大河(松浦巌:国務二班・文部大臣、文部省事務官)
山岡竜弘(岡直太:国務二班・司法大臣、東京地方裁判所の判事)
伊藤公一(久保廉太郎:海軍・軍政・思想戦研究班、対満事務次長、満洲国大同学院教官)
瀬良俊(三井文男:海軍・軍政・思想戦研究班、朝鮮総督、朝鮮総督府事務官)
前田勝(住吉進:海軍・軍政・思想戦研究班、拓務大臣、拓務省事務官)
【実務方】
北村有起哉(近衛文麿:第三次近衛内閣の総理大臣)
嶋田久作(鈴木貞一:第三次近衛内閣の企画院総裁)
佐藤浩市(東條英機:第三次近衛内閣の陸軍大臣)
中野英雄(武藤章:陸軍省の少将、軍務課降級課員、和平支援)
江口洋介(西村良穂:陸軍省の中佐、発案者)
國村隼(板倉大道:総監部の陸軍少将)
佐藤隆太(瀬古明:総監部の陸軍中佐)
松田龍平(昭和天皇)
奥田瑛二(木戸幸一:内大臣)
【洋一関連】
別所哲也(井川忠雄:産業組合中央金庫の職員)
二階堂ふみ(宇治田小百合:洋一の妹)
浅利香那芽(宇治田初子:小百合の娘)
杉田雷麟(宇治田英二:洋一の弟)
渡辺いっけい(宇治田一郎:洋一の父)
久藤今日子(宇治田ヤス:洋一の母)
【その他】
大鷹明良(及川古士郎:海軍大臣)
大森立嗣(佐藤賢了:陸軍省軍務局の軍務課長、東條英機の側近)
松尾貴史(岩畔豪雄:陸軍少将)
宇野祥平(中村明人:陸軍中将)
木村知幸(富田健治:内閣書記官長)
新居直哉(赤松貞雄:東條英機の秘書官)
芹澤興人(役場の男)
二階堂智(内閣書記官)
川口貴弘(内閣書記官)
橋本佳奈(タイピスト)
久保田光男(総監部の職員)
山田浩司(総監部の職員)
荒井しき(総監部の職員)
安藤彰則(憲兵)
小原澤遼典(若い憲兵)
当來庵(若い将校)
青野敏行(写真屋)
ゆかわたかし(ある男)
パラゴンつよし(伊藤整一:海軍中将、開戦反対派)
勝野賢三(杉山元:陸軍参謀長)
酒田かおる(永野修身:軍令部総長)
タイソン大屋(塚田攻:陸軍の軍人、開戦論者)
小川惇貴(辻政信:日本軍の参謀)
杉山こうへい(原嘉道:東條内閣の枢密院の議長)
古川隆信(東郷茂徳:東條内閣の外務大臣)
みーさん(賀屋興宣:東條内閣の大蔵大臣)
高橋政美(嶋田繁太郎:東條内閣の海軍大臣)
平田芳幸(岸信介:東條内閣の商工大臣)
大崎光泰(寺島健:東條内閣の逓信・鉄道大臣)
城明良(森山鋭一:東條内閣の法制局長官)
正木健久(星野直樹:東條内閣の内閣書記官長)
尾鷹信幸(谷正之:東條内閣の外務大臣)
小林浩司(岩村通世:東條内閣の司法大臣)
加藤重樹(井野硯哉:東條内閣の農林大臣)
たなか和宏(橋田邦彦:東條内閣の文部大臣)
国本彰久(小泉親彦:東條内閣の厚生大臣)
宮島質男(平沼麒一郎:近衛内閣の枢密院の議長)
安井寿(田辺治通:近衛内閣の内務大臣)
内藤和己(小倉正恒:近衛内閣の大蔵大臣)
山下悦郎(左近司政三:近衛内閣の商工大臣)
高田稔(村田省蔵:近衛内閣の逓信大臣)
窪田弘和(柳川平助:近衛内閣の国務大臣)
谷垣宏尚(村瀬直養:近衛内閣の法制局長官)
宇野正剛(伊藤述史:近衛内閣の情報局総裁)
鈴木英次(柄澤好三郎:近衛総理の運転手)
■映画の舞台
1941年夏、
東京のどこかにある「総力戦研究所」
ロケ地:
セット撮影
滋賀県:蒲生郡
ヴォーリズ和風建築
https://maps.app.goo.gl/S4iu3ZqbpuHHzgRU6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
1941年夏、第三次近衛内閣では、来たるべき日米総力戦に向けて、国内の優秀な人材を集めて、模擬内閣を作って研究することになった
銀行の融資調査をしていた宇治田洋一は、理事の井川の推薦で内閣に入ることになり、そこでまさかの総理大臣役を受け持つことになった
地方の農民の財政などを見てきた身でもあり、国家の総力戦に関することは素人同然
だが、そこに集められた各省庁、民間からの若者は、次世代を担える人材とされていた
洋一はそれぞの省庁出身の事務官たちが持ち寄る資料をもとに独自に算出を行う
それは絶望的なもので、この戦争を起こすべきではないと結論づける
監督官的な立ち位置の総督府の板倉は「南方に戦線が拡大することは既定路線」と言い、そこからどのような展開を見せていくかを研究しろという
だが、楽観主義的な立場の軍人でさえ、洋一が出した数字を目の前にして精神論すら語れない
洋一にはすでに焼け野原になっている東京のイメージが浮かんでいて、それは避けようのない未来のように思えた
陸軍大臣の東條英機たちが見学に来る中、結論によっては赤紙で戦地最前線に送り込まれても仕方ないと言われ、自由な議論は事実上封印されたものだった
だが、洋一たちは、総理たちへの報告会までに「いかに敗戦が濃厚か」を突きつけ、政府の方針に待ったをかけようと奮起することになった
そんな折、洋一の弟・英二に赤紙が送られてきて、戦禍はますます身近なものに感じられるようになってしまうのである
テーマ:日本の未来
裏テーマ:数字と力学
■ひとこと感想
太平洋戦争における「日本はどうして戦争に向かったのか」という内容が描かれ、知能が集結して、実務的な数字を出し合うことで、その正確性というものを描いていくことになりました
実際にホルムズ海峡問題に遭遇している最中なので、いかに「資源のない国」が国際的に弱い立場にいるかがわかります
映画でも、石油はほとんどアメリカから輸入という時代で、それがなければ戦争すら起こせないと考えられていました
実際に、余力があるうちには戦えたとしても、長期戦になれば不利であることは明白で、のちの歴史を知らなくても「無謀である」ということは感覚的に理解できるものだと思います
それでもなお、動き出したものは止められないという現実があり、特に軍部が戦争に向かおうとする論理は暴走と捉えられても仕方のないことのように思えました
石油の備蓄が残っている今ならば仕掛けられるという計画的とは思えない内容で、「どうやって終わらせるのか」という明確なビジョンもないまま突き進むことになりました
当時の空気を作り出したのは軍部であると描かれ、それをマスコミ各社が煽った結果、国民の中にある「共通認識」のようなものが生まれていきます
それを止めることができなかったことは知られているところだと思いますが、当時の空気を知る人はほとんどいないと思います
それゆえに伝聞と資料によって補完されてきた過去があり、この映画もそういったものの伝聞の集大成のようなものになっていると感じました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、事実をベースにしたフィクションで、そこで算出されたものなどはそのままで、登場人物は架空のものということになっていました
それでも、当て書きにならざるを得ない部分があり、誰がモデルになっているのかは一目瞭然という感じになっていました
それゆえに軋轢が生じている部分はあると思いますが、実際のところはわからないので、他人が口出しすることでもないのだと思います
映画は、どこまで当時を知っているかで評価が分かれる感じで、全く知らないと何が起こっているのかわからないという感じでしょうか
ある程度、知っている前提で物事は進み、それでも一般教養レベルで何が話し合われているのかはわかると思います
当時の日本の軍部がアメリカをどのように評価していたのかはわかりませんが、石油の禁輸に伴うやむを得ずということもあれば、生まれてしまった空気感に抗えなかったということもあったのだと思います
元々は、総力戦になった時にどのようにすれば勝てるのかを考える予定だったと思いますが、改めて数字を洗い出すと「勝つどころの騒ぎではない」という結論が早々に出てしまいました
これによって「戦争回避」の方向に向かうのかと思いきや、「戦争できるならしよう」みたいな流れになっていましたね
それすらも打ち砕くだけの数字が出ても、「じゃあ、東條英機に直に言えや!」みたいな恫喝が起こったりします
冷静になれない時点で終わっているのですが、想定外の研究結果が出て行動を変えられないのなら無意味だったんじゃないかな、と思ってしまいました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、具体的な数字の羅列こそありませんが、その戦況がどのようになるのかというのは想像がついてしまうと思います
とは言え、当時の人にそれがイメージできるはずもなく、満州建国あたりで「なんでもできる」という空気感は醸成されていたのでしょう
結果論で語っても意味のない事例ではありますが、ここまで秀才たちを集めて、出た結論は軽く扱われることの方が意味不明のように思えます
軍部としては、すでに始まったものを止められないし、これまでの犠牲者に何と言えば良いのか、という気持ちはあったと思います
それでも、すでに亡くなった人やその遺族の心情を慮ることで、これまで以上の死者と遺族を生み出した責任は重いと言えます
かと言って、方針転換ができたとも思えないのですね
それゆえに「いかに被害を最小限度にして戦争に向かい、落とし所を作るのか」という研究の方が大事だったように思います
結果として、一億総玉砕も辞さない覚悟で総力戦に臨み、原子爆弾を二発落とされてようやく止まるのですが、ここまで被害を拡大させずとも、復興を見据えた負け方というものがあったように感じられます
それでも、そう言った戯言は未来に生きているから言えるわけであり、殺し合いをしている相手が「勝利と同時に何を行うのか」というのは読めないし、最悪の展開を考えても無理はなかったと思います
そう言った意味でも、どんな研究結果だったとしても突き進んだと思えるし、前のめりだったからこそ今があると言えます
結局のところ、始める前に何をどう思うかということが重要で、それを踏まえた上での言い訳作りになっていたのでしょう
そう言った意味においては無意味だったけれど、敗戦後のことを先に考える叡智はあったわけで、それが復興に寄与したという意味では、結集させた意味はあったのかな、と思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/105306/review/06808340/
公式HP:
