■リセットできるものもあれば、できないものもある


■オススメ度

 

軽快なラブコメが好きな人(★★★)

夫婦の危機を抱えている人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.4.4(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:30일(30日)、英題:Love Reset(愛のやり直し)

情報:2023年、韓国、119分、G

ジャンル:離婚が決まった夫婦が事故によって記憶喪失になってしまう様子を描いたラブコメ映画

 

監督:ナム・デジュン

脚本:パン・ギチョル&ナム・デジュン

 

キャスト:

カン・ハヌル/강하늘(ノ・ジョンヨル:司法試験に落ちまくった弁護士)

チョン・ソミン/정소민(ホン・ナラ:映画プロデューサー)

 

チョ・ミンス/조민수(ト・ホベ:裕福な暮らしをするナラの母)

イム・チョルヒョン/임철형(ホン・ジャングン:ナラの父)

ファン・セイン/황세인(ホン・ナミ:ミュージシャン志望のナラの妹)

ナ・ホスク /나호숙(ナラのおばあちゃん)

 

キム・ソニョン/김선영(チュ・スクジュン:質素一筋のジョンヨルの母)

イム・ジンテク/임진택(イジャン:ジョンヨルの父)

 

ユン・ギョンホ/윤경호(ペ・ギベ:ジョンヨルの友人、バーのオーナー)

イ・サンジン/이상진(オム・ギドン:エオクのストーカー、ジョンヨルの友人)

ウォンウ/원우(チャン・タクホ:仮想通貨にハマっているジョンヨルの友人)

 

ソン・ヘナ/송해나(チョン・エオク:ギドンに付き纏われて困るナラの友人)

オム・ジユン/엄지윤(コ・ヨンジ:ジョンヨルの友人、年下好きの遊び人)

 

カン・ジヨン/강지영(サンア:ジョンヨルの後輩)

チョン・ソク/정형석(法律事務所の代表、ジョンヨルの上司)

ホン・ソクグン/홍석빈(法律事務所の老紳士)

 

キム・ジンマン/김진만(ナラと噂になっている男性監督)

チョン・サンウ/정상우(ダメ出しされる新人監督)

イ・ナヒョン/이나현(勝手に書き換えられる脚本家)

イ・スビン/이수빈(現場の女優)

テ・インホ/태인호(現場の俳優)

 

チャン・ジア/장지아(スクチョンが連れてくる催眠術師)

 

キム・ソンファ/김선화(離婚調停委員長)

ユン・セウン/윤세웅(調停委員会の委員)

チョ・ヨンフン/조영흔(裁判所の書記官)

パク・チョンヨン/박청용(仲裁人)

 

ホン・ジュヌ /홍준우(ギチョル:ナラのいとこ)

チョ・ヨンジ/조영지(ギチョルの母)

ノ・ジョンヒョン/노정현(ギチョルの父)

 

チン・ノミン/전노민(チョウ医師:二人の担当医師)

リュ・ガンジュ/류강주(二人の担当看護師)

ヤン・ハクジン/학진(ウジョン:ハンサムな医師)

シム・ウソン/심우성(ERの医師)

 

ク・ユジン/구유진(結婚式場のスタッフ)

チョン・ユンギョム/정윤겸(ナラの元新郎)

クォン・ジュンヨン/권정윤(ナラの元新郎の父)

イ・ゴンチャン/이건창(ナラの元新郎の母)

 

ユン・ジウク/윤지욱(クラブのオーナー)

イ・ウォンウク/이원욱(野球場の管理人)

 


■映画の舞台

 

韓国:ソウル

 

ロケ地:

韓国:ソウル

 


■簡単なあらすじ

 

好きな人を結婚式から強奪して夫となったジョンヨルは、司法試験浪人を繰り返しながら、ようやく弁護士になることができた

妻のナラは映画プロデューサーとして活躍し、試験期間を支えてきたものの、そこから夫婦関係は徐々におかしくなっていった

 

お互いの許せないところが目立ち、悪い思い出ばかりになった二人は、とうとう協議離婚を決意する

離婚調停で相手を罵りあった二人は、その意思の固さを認められ、ようやく離婚へと漕ぎついた

 

だが、その帰り道に二人は事故を起こしてしまい、目覚めた時には記憶の一部を欠損していた

二人の両親は結婚生活が破綻するのは目に見えているので、なんとかして二人を引き離そうとするものの、記憶は戻らないまま、お互いの距離が再び縮み始めてしまっていた

 

テーマ:愛と記憶

裏テーマ:変われるかどうかの試練

 


■ひとこと感想

 

タイトルと設定から気になっていた作品で、険悪な夫婦の記憶が消えたら、愛情までも消えてしまうのか、という命題がありました

実際には大きなカラクリがあるのですが、結婚生活の破綻の原因が日常生活にあるというのは説得力がありました

 

苦労人家族と裕福な家族の結婚なので、姑問題なども紛糾しますが、それ以前に二人の罵倒合戦が活発なものとなっていました

離婚調停であらぬことを罵り合うのですが、二人ともやってることがおんなじだったりしますね

 

彼らの友人たちも濃いキャラばかりで、特にナラの妹ナミは強烈なスパイスになっていました

監視役のはずが見てはいけないシーンを見てしまうという感じになっていて、コミカルなシーンもたくさんあって良かったと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

離婚が決まると30日間の猶予があって、さらに届出を出す猶予が90日あるというのは驚きましたね

その間に離婚をやめる人もいたりして、一旦は気持ちがフラットになる効果はあるのかな、と思います

勢いで結婚すると、勢いで離婚するものですが、この二人の出会いを考えると、劇場型の結婚だったように思えます

 

映画では明確に示されていませんが、記憶を失ったのはジョンヨルの方だけで、ナラの方は早めに回復していたように見えましたね

ジョンヨルの話し方が変わって、元に戻ったことがわかるのは、結婚当時の彼を知っていないと無理な話だと思います

一応は標準語云々の話は出てきますが、やり直せるのならやり直したいのは、ナラの方の気持ちの方が強いように思えました

 

すれ違いの意味に気づくことで冷静になれるものですが、あそこまで「引くには引けない」という感じに意地が張ると、思いとは別の方向に行かざるを得ないのでしょう

そう言った意味において、事故はそのきっかけを作れる最後のチャンスだったように思いました

 


韓国の離婚事情

 

韓国の統計庁による2022年のデータでは、婚姻件数は19万2千件で前年比0.4%減、男女ともに20代の後半のデータが減少していました

婚姻種別は、初婚が77.4%、再婚が12.3%という比率になってます

平均初婚年齢は男性33.7歳、女性31.3歳となっていて、それぞれ0.4歳、0.2歳の上昇がありました

 

これに対する離婚件数は9万3千件で、前年比8.3%の減少が見られました

離婚の平均年齢は男性49.9歳、女性46.6歳という数字が出ています

詳しいデータは下記の韓国・統計庁(ハングル)のページで詳細が書かれていますよ(PDFもあるけど翻訳できるかはわかりません)

→ https://kostat.go.kr/board.es?mid=a10301010000&bid=204&list_no=424356&act=view&mainXml=Y

 

統計はあくまで統計ですが、2022年の時点では晩婚化が進み、離婚率が下がっているという感じになっています

それだけ「若い頃に勢いで」というものがなくなっていて、初婚の平均年齢が30歳越えというのは驚いてしまいますね

ちなみに日本の初婚平均年齢は男性31.1歳、女性29.4歳(2020年)で、「20代で結婚したい」という幻想のような傾向はいまだに根強い感じになっています

こちらのデータは内閣府の男女共同参画局のHPからいろんな統計とコラムなどが読めるようになっています

↓内閣府 男女共同参画局 男女共同参画白書 令和4年版 URL

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/index.html

 


記憶喪失が彼らに与えたもの

 

本作では、離婚協議を終えた夫婦が事故に遭い、それによって記憶喪失が起こってしまう様子を描いていました

記憶喪失になって、良い思い出も嫌な思い出も消えてしまうとどうなるのか、という実験的な生活が始まりますが、見知らぬ人との生活は嫌悪感を伴うことの方が多いと思います

そこから相手のことを知り、自分に危害がないとか、生理的に無理というものがなくなることで、一緒に住むことは可能になってくるかもしれません

また、「二人は夫婦でした」と言われても、それを許容するまでには相当時間がかかるように思います

 

記憶がないということは、初対面の状態なのですが、これに「記憶がない」という普通ではない状況があるので、自分以外の問題を受け入れる余裕というものがありません

家族のこともわからないので、知らない人に囲まれていて、それぞれが主張をして、彼らなりの普段の接し方というものに晒される事になります

この状況は、同じ悩みを持つ者という効果をもたらし、目の前にいる「配偶者と呼ばれる人」が同じ状況に陥っていることが理解できます

それによって妙な連帯感というものが生まれ、それによって親近感が生まれてくるのかな、と感じました

 

個人的な感想では、ナラの方は早く記憶を取り戻した、もしくは記憶喪失ではなかったという感じに思えていて、少なくともジョンヨルの記憶が戻った段階ではナラの記憶は戻っていたと思います

ジョンヨルの喋り方がおかしいという指摘が彼の母からあって、それが治っているのですが、元々のジョンヨルの話し方を知っていないと変化というのものを「瞬間的」には察知できません

記憶がなければ、何となく話し方が変わったような気がするという感じになっていて、確信的に思えるとは思えません

でも、あの時のナラは、二言目ぐらいで「元に戻っている」ということがわかっていたように思えます

 

彼女が記憶喪失を偽装し続けたのは、相手が自分の悪い部分を知らなければやり直せるのではないかと考えたからだと思います

双方に問題があることは承知でも、記憶がなくなれば行動や習慣が変わってくる可能性もあるのですね

なので、それを試そうと考えて演じていたのかなと思います

想像の領域になりますが、ジョンヨルの色んな話を聞いていくうちに、離婚に至った原因というものが理解できたので、それを前提として正せるのではないかと感じたのかな、と思いました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作の二人が離婚に至ったのは、いわゆる格差婚だったからというものが根底にあります

司法試験に向けての勉強中で、浪人を繰り返している状態で結婚に至っていて、収入はおろか家族のスケールも格差が明確にありました

ナラの母が貧乏人との結婚を許容できたのは、彼女自身が格差婚をしてきたからだと考えられます

娘の結婚と同じように、激情が先立ち、愛で何とかなると思っていた若年期があり、その想いを押し殺すことの弊害を知っているのでしょう

 

司法試験浪人中に、ジョンヨルは度重なる失敗を経て、性格が歪んでいっていました

そこに来て、試験の前日に騒動が起こったことで二人の関係にヒビが入ってしまいます

実際には、ジョンヨルのことを思ってお粥を作ろうとしていて、その想いが行動に結び付かなかったという経緯がありました

このトラブルによってジョンヨルはさらに追い詰められ、性格がさらに捻じ曲がってしまいました

 

二人の現在地を考えると、そこには格差というものはなく、弁護士と映画プロデューサーとしての立場があります

ジョンヨルの駆け出しの頃でも、仕事を成功させまくるナラを見て劣等感を抱いてきたので、それがフラットになることで状況が一変すると考えられます

この状況で1から関係性を積み上げていくことができるのは奇跡のようなもので、神様が与えてくれたギフトのようなものでしょう

 

映画では、夫婦になった途端に相手のアラが見えて悪化する様子が描かれていて、これはよくあることなんだと思います

同棲生活をすればそのアラが意外と早く見えてくるので、結婚によって失敗ということは少なくなります

どこまで相手の本性を許容できるかにかかっていますが、その全ては愛では何ともならないというのが現実なので、人としての節度ある行動と相手への尊厳というものは忘れないようにしなきゃ、と思わされますね

心当たりのありそうな人は、今すぐに襟を正した方が良いと思います

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/100933/review/03680466/

 

公式HP:

https://www.rakuten-ipcontent.com/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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