■PEACOCK ピーコック
■オススメ度
ブラックコメディに興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2026.7.28(アップリンク京都)
■映画情報
原題:Pfau – Bin ich echt?(クジャク、私は本物かな?)、英題:Peacock(クジャク)
情報:2024年、オーストリア&ドイツ、102分、G
ジャンル:クライアントの要望に応じた人物を演じる男を描いたブラックコメディ映画
監督&脚本:ベルンハルト・ベンガー
キャスト:
アルブレヒト・シュッフ/Albrecht Schuch(マティアス/Matthias:レンタル会社「マイ・コンパニオン」の社員)
ユリア・フランツ・リヒター/Julia Franz Richter(ソフィア/Sophia:マティアスの恋人)
アントン・ノーリ/Anton Noori(ダーヴット/David:マティアスの同僚)
サルカ・ビーバー/Salka Weber(ノーラ/Nora:マティアスの同僚)
テレサ・フロスタ・エッゲスボ/Theresa Frostad Eggesbø(イーナ・ソールバーグ/Ina Solberg:マティアスが色んなところで出会う女性)
マリア・ホーフステッター/Maria Hofstätter(ヴェラ/Vera:夫と口論したいクライアントの老女)
ブランコ・サマロフスキー/Branko Samarovski(ヨハン/Johann:ヴェラの高圧的な夫)
Tilo Nest(60歳の誕生日を祝う老人、マティアスのクライアント)
クリストファー・シェリフ/Christopher Schärf(クリスティアン:Applicant:マティアスの会社の応募者)
マルレーネ・ハウザー/Marlene Hauser(配管業者の女性)
【その他の出演者(ほぼ登場順)】
Magdalena Kronschläger(ゴルフ場の女性プレイヤー、マティアスのクライアント)
Martina Spitzer(ゴルフプレイヤー)
Thomas Sigwald(ゴルフプレイヤー)
Christina Trefny(ゴルフプレイヤー)
Sebastian Thiers(ゴルフプレイヤー)
Tara Michelsen(自撮りするホテルのクローク係)
Yishu Jiang(ホテルの中庭のチェロ奏者)
Petra Morzé(コンサートの女性、マティアスのクライアント)
Markus Hamele(イエロージャケットの男)
Wolfgang Oliver(ブラウンジャケットの男)
Fabia Matuschek(スパの受付、「Palm House」の従業員)
Daniela Kong(コンサートの来客)
Erika Mottl(コンサートの来客、老女)
Michael Gampe(コンサートの来客、老人)
Michael Edlinger(イーナの連れの男性)
Lena Kalisch(「マイコンパニオン」の秘書)
Oliver Leidenfrost(「マイコンパニオン」のプロモーションビデオのナレーターの声)
Deniz Cooper(マティアスの同僚)
Sabine Herget(マティアスの同僚)
Maria Fliri(60歳を祝うホテルの支配人)
Nina Fog(60歳を祝うホテルの従業員)
Ines Miro(カルラ/Karla:ダーヴィドの妻)
Nino Tatzber(ダーヴィドの息子)
Jona Tatzber(ダーヴィドの息子)
Stefan Wancura(ナタリー/Notary:ダーヴィドの娘の声)
Claudia Kainberger(小学校の教師)
Lion Tatzber(セバスティアン/Sebastian:パイロットの父を持つ少年、マティアスのクライアント)
Ariana Stöckle(クラスメイトの元気な女の子)
Katrin Daliot(マティアスの自宅で流れるTVのプレゼンターの声)
Alexey Hartlieb-Shea(「Rent-A-Dog」の従業員)
Doris Drechsel(配管業者のスタッフの女性)
Katharina Holoubek(レストランのウェイトレス)
Albert Meisl(レストランのマネージャー)
Wilhelm Iben(レストランの男性客)
Alice Schneider(レストランの女性客)
Roland Silbernagl(ヨガ教室の講師)
Petra Klotzberg(ヨガ教室の参加者)
Tomheinz Breitenecker(ヨガ教室の参加者)
Paula Carbonell Spörk(ヨガ教室の従業員)
Oskar Gregorowitsch-Palikukovski(トランポリンで遊ぶ少年)
Celina Aishata Fatty(若いウェイトレス)
Eva-Maria Frank(テレーザ/Theresa:恋人がDJのクラブで出会う女)
Joseph Lorenz(マディアスの隣人)
Clemens Berndorff(「Open House」の内覧者)
Christopher Korkisch(アパートを借りたい男性、マティアスのクライアント)
Katharina Haudum(不動産業者)
Hannes Bauer(ひとりぼっちの内覧者)
Friedrich Röhrbacher(アパートを見る老人)
Elfriede Klem(アパートを見る男の妻)
Birgit Linauer(路地を歩く女性)
Paul Matic(路地を歩く男性)
Philipp Auer(絡んでくるチンピラ)
Rina Juniku(劇場の赤い髪の女、マティアスのクライアント)
Manfred Lang(全裸パフォーマー)
Elena Maria Müller(マティアスを慰める女)
Oliver A. Gross(マティアスを慰める男)
Karl Wozek(マティアスにイラつく客)
Christoph Thim(劇場支配人)
Selina Graf(ヨハンの担当看護師)
Gabriela Schmoll(生け垣の向こうにいるヨハンの隣人)
Brigitte Kren(60歳の誕生日を祝うクライアントの妻)
Angela Rief(ハープ奏者)
Barbara Gassner(大統領、誕生日会のゲスト)
Michael Fuith(壇上で歌い出す男)
Maxi Blaha(誕生日会のゲスト)
Herbert Forthuber(誕生日会のゲスト)
Patricia Hirschbichler(誕生日会のゲスト)
Ernst Brückler(誕生日会のゲスト)
■映画の舞台
オーストリア:
ウィーン
ロケ地:
上に同じ
■簡単なあらすじ
「演じてほしいキャストを送り出すマイ・コンパニオン」では、クライアントの要望に応じて、恋人、息子、父親、パートナーなどを演じる社員を派遣していた
その中の一人マティアスは顧客からの要望も熱く、ゴルフ場で英雄になりたい女性の彼氏、60歳を祝う老人の息子、コンサートで知的な感想を言ってくれる彼氏などを演じていた
そんな彼らの元にヴェラと言う老女が訪れ、彼女は「夫と口論をしたい」と言い出す
演じることへの指導を行なっていない「マイ・コンパニオン」だったが、口論をする練習相手のレンタルと言うことで、ヴェラの要望に応えることになった
マティアスは、あるコンサートにて前衛的なパフォーマンスに対して含蓄のある感想を述べ、それと同じような感想を持っていたイーナと言う女性と出会った
その後も、ヨガ教室、クラブなどで出会うようになり、恋人ソフィアを失っていたマティアスは、彼女に執着するようになる
だが、イーナは一夜限りの関係しか望んでおらず、その関係はあっさりと終わってしまった
その後も仕事をこなしていくマティアスだったが、ある日のこと、ヴェラと別れたヨハンがやってきて、離婚したのはマティアスのせいだと言い出す
マティアスはヨハンを無視するものの、彼も渋とくマティアスを追求してきた
マティアスはソフィアの喪失も重なって精神的に不安定になり、仕事もおぼつかなくなってしまう
だが、上司のダーヴッドは「60歳を祝う男の息子」を今更変更はできないと言い、この仕事だけはやり遂げるように励ますことになったのである
テーマ:自分がわからなくなる瞬間
裏テーマ:設定を見抜く眼力
■ひとこと感想
日本のレンタルファミリー業者に着想を得た作品で、一人のレンタル男が自身の存在価値に不安を覚えると言う内容になっていました
恋人ソフィアもレンタル彼女のように思えるし、プライベートと仕事の境目がほとんどわからない感じになっていましたね
ソフィアとの一連の騒動の方が芝居掛かっている感じですが、そっちの方がリアルというのは皮肉が効いているなあと思いました
映画では、レンタル人をやり過ぎたことで自分自身が何者かわからなくなるという感じで、それに思い悩むというよりは徐々に壊れていく様子が描かれていました
ラストのアレをどう解釈するかですが、人は「都合の良いように物事を理解する」というところがあって、面白い帰結になっているなあと思いました
なんで「ピーコック(クジャク)」だったのかよくわからない部分はありましたが、おそらくは「自分をよく見せるための装飾=マティアス」というメタファーのようなものだったのかな、と思いました
マティアスは色んな人物を演じてきましたが、色んなシチュエーションを配置していたのは面白かったですね
60歳を祝う老人の「息子」、ゴルフ場で目立ちたい女性の「恋人」、コンサートで自慢したい女性の「知人」、「パイロットの父」、アパートを借りたい男の「パートナー」、前衛的な舞台を一緒に見る「恋人」など多彩な顔ぶれだったと思います
そんな彼の仕事を知っている恋人のソフィアは、路上のチンピラなども「やらせ」だと思っているし、マティアス自身も自分に近づいてくるイーナという女性も「自分を慰めるためにダーヴィドが寄越したもの」と思っていたりしましたね
どこまでが本当かわからない感じで進んでいくのは面白いのですが、実際にやるとすぐバレそうだなあと思ってしまいました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作は、作品自体が前衛的なところがあり、劇場のパフォーマー、ホテルのクラーク係、スパの受付、ヨガ教室の講師などもキャラが濃い人ばかりだったと思います
そんな中で、一番無茶なパフォーマンスをするのがマティアスになっていて、それを見た人は最初戸惑うけど、「アートだ!」と誰かが言ったために、それに追随するようになっていました
おそらくは理解不能なものを好意的に理論づけようとしたのだと思いますが、その式の主役を傷付けないための配慮だったようにも思えます
結局のところ、マティアスは仕事を途中で放り出してしまうような感じになっていて、全てを捨てて裸一貫になるという、どう解釈したら良いのかわからないエンディングになっていました
彼自身が自分がわからなくなるのと並行して、他人のことが信用できなくなるのですが、その起点が恋人に逃げられたからというのは笑って良いのか悩むところでしょうね
ソフィアとのやりとりも芝居に見えるところもあるし、あの大型犬もシュールすぎて反応に困ってしまいます
これら一連の出来事はマティアスを素に戻す効果があったのかはわからず、自暴自棄になった挙句、周囲がフォローした、みたいな感じになっていました
「アートだ!」と声を上げたのは、おそらくは参加者に紛れ込んでいたダーヴィドだと思いますが、それで場が納得してしまうのは笑いどころのように思います
あの老人が会長になれたかどうかはわかりませんが、息子が立派だから会長になれるというものでもなく、その実力がないことを本人が自覚している以上、進まない方が良い道のように思えてしまいましたねえ
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
日本のレンタル業者に着想を得たということなのですが、日本でこの職業が外国人に認知されるほどの職業になっている、ということの方が驚きだったと思います
授業参観に来れない父親の代わりとか、1日だけ恋人になるみたいな人のレンタルと言うのはありそうですが、まるでウーバーのように「気に入ったら高評価を!」と言う世界線はギャグのようにしか思えません
あのサービスを知っている人なら、ハイパフォーマンスで評価の高そうなマティアスを知っていると思うので、そのうちにバレて商売にならないように思います
そこまでして「見栄」を張りたいのかはわかりませんが、この「見栄」が社会を動かしているのも事実であると思います
人が人の視線を気にしなくなったら人間で無くなってしまうようにも思えるし、それが現代の資本主義を支えているもののように思います
元々、人材派遣というものはすでにあって、それを労働力ではない使い方をする、というのがレンタル人間の世界のように思います
人は少なからず多数の人間を演じているもので、それは社会的な立場の多さによって、いくつかの人格を分けていると言えるのかもしれません
誰かの息子であり、誰かの配偶者であり、誰かの恋人であり、誰かの父親でもある
また、仕事のポジションによって役どころは変わってくることもあるし、年齢とともに「小中学生、大学生、社会人」などのようなカテゴライズでも見せる顔は違うと言えます
そんな中でも、自分自身の力だけで自分を飾れないことの方が多く、そんな時にマティアスのような装飾品が必要になってくるのでしょう
マティアス自身が己の存在に疑問を持っていると思いますが、それが「自分が何者なのか」という広すぎるものだとピンとこない部分はあったりします
それを思うと「ピーコック」というのは言い得て妙という感じがしますね
クジャクを見たことでソフィアが離れていくというシナリオにもなっている部分があるのですが、あの瞬間は「ソフィアの方が先にマティアスの存在意義に気付いた」とも言えるのかもしれません
そして、自分の中にあるマティアスが単なるアクセサリーのように見えるし、マティアス自身も自分をそういう目で見ているかもという疑念を持っているかもしれません
そうした時に生まれる感情が「醒める」というものだとしたら、人は死ぬまで酔っていた方が人生を楽しめるのかもしれないと思ってしまいました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/106220/review/06781450/
公式HP:
https://culturallife.co.jp/peacock/
