■表現の先にあるダンスには、感情が宿っている
Contents
■オススメ度
インドのダンスバトルに興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.3.14(アップリンク京都)
■映画情報
原題:Street Dancer 3D
情報:2020年、インド、146分、G
ジャンル:兄の無念を叶えるためにダンス大会に向かう弟を描いた社会派内包ダンスムービー
監督:レモ・デソウザ
脚本:トゥシャール・ヒーラーナンダーニー
キャスト:(わかった分だけ)
バルン・ダウン/Varun Dhawan(サヘージ・シン・イルラ:怪我をした兄の代わりに大会に出るストリートダンサーズ)
シュラッダー・カプール/Shraddha Kapoor(イナーヤト・ナージ:サヘージのライバル的存在のストリートダンサー、ルールブレイカーズ)
プラブ・デーヴァー/Prabhu Deva(ラーム・プラサッド:サヘージたちの行きつけのカフェのオーナー)
Khatri(チョートゥー:ラームのカフェの店員)
サルマール・ユスフ・カーン/Salman Yusuff Khan(ゼイン:イナーヤトのいとこ、ルール・ブレイカーズ)
Amerjit Deu(イクバル・カーン:イナーヤトの叔父)
Monisha Hassen(イナヤートの母)
Javed Khan(イナーヤトの父)
Umair Khalil(ファリス:イナーヤトの兄?)
Dahab Shahzad(ダニエル・アナスタシア:イナーヤトの妹)
Hibba Shahzad(ドルナテッラ:イナーヤトの妹?)
フランシス・T・ラフリー/Francis T Roughley(マーク:ロイヤルズのリーダー)
ノーラー・ファーテーヒー/Nora Fatehi(ミア:サヘージの彼女、ロイヤルズ)
Jai Hickling(ジャイ:ロイヤルズのメンバー)
Corinne Holt(ロイヤルズのメンバー)
Dominykas Karcemarskas(ケイリー・アシュワース:ロイヤルズのメンバー?)
アパルシャクティ・クラーナー/Aparshakti Khurana(アムリンダル・スィン:サヘージが関わる不法移民)
Zarina Wahab(ランジェット・スィン:アムリンダルの母)
Adnan Khan(不法移民、アムリンダルの友人?)
Rehaan Khan(不法移民、アムリンダルの友人?)
Praminder Singh(不法移民、アムリンダルの友人?)
ダルメーシュ・イェーラーンデー/Dharmesh Yelande(D:サヘージの友人、ストリートダンサーズ、アンティークショップの店員)
ラーガヴ・ジャヤール/Raghav Juyal(ポディ:サヘージの友人、ストリートダンサーズ)
スシャーント・プジャーリー/Sushant Pujari(スシ:サヘージの友人、ストリートダンサーズ)
プニート・パターク/Punit Pathak(インデル:サヘージの兄、ストリートダンサー創始者)
演者不明(サヘージの祖母)
Caroline Wilde(アリーシャ:ポディの彼女、ルール・ブレイカーズ)
Vartika Jha(サマイラ:ルール・ブレイカーズ)
Pravin Shinde(ナウセフ:ルール・ブレイカーズ)
Pavan Rao(ファハド:ルール・ブレイカーズ)
Nikita Anand(レア:ルール・ブレイカーズ)
Sonam Bajwa(パミ:ストリートダンサーズ)
Jesus Soria Antalen(Bボーイ:ストリートダンサーズ)
Aayan Aziz(アンナ・タラカノワ:ストリートダンサーズ)
Pravin Bhosale(プラビン:ストリートダンサーズ)
Kristina Chudo(アーラフ・シャム:ストリートダンサーズ)
Shashank Dogra(アミール:ストリートダンサーズ)
Vinay Khandelwal(ファイズ:所属不明のダンサー)
Nivedita Sharma(ニヴィ:所属不明のダンサー)
Chandni Srivastava(チャンドニー:所属不明のダンサー)
Adriano Ratto Gal(アレックス:所属不明のダンサー)
Nisha George(グラウンド・ゼロのホスト?)
Leo Graham(アマイラ・グプタ:グラウンド・ゼロの主催者?)
Vickrem Gill(不法滞在者)
Michael Lumb(不法移民)
Raj Phagania(移民)
Dimple Kumar(ホームレス移民)
Bharat Mistri(ホームレス移民)
Atul Sharma(ホームレス移民)
Avinashi Sharma(ホームレス移民)
Jaydeep Tank(ホームレス移民)
Ramesh Vethanayagam(ホームレス移民)
スシャート・カトリ/Sushant Priyanshu Khurana(シク教徒)
Parvinder Nandhra(ラジャ:移民のボス)
Manisha Nagar(マニシャ:アンティークショップの客)
ムラリ・シャルマー/Murli Sharma(マイケル・ドナルド:喧嘩を仲裁するUKの警官)
Manoj Pahwa(チャーウラー:不法入国の仲介人)
■映画の舞台
インド:
パンジャーブ/Punjab
https://maps.app.goo.gl/aD2HtBKWm4WBSdF29?g_st=ic
イギリス:ロンドン
ロケ地:
イギリス:ロンドン
インド:パンジャーブ
■簡単なあらすじ
インドのパンジャーブに住む青年サヘージは、著名なダンサーの兄・インデルに憧れを抱いていた
だが、兄はダンサーの大会「グラウンド・ゼロ」の決勝にて大技の着地に失敗し、大怪我を負ってしまった
サヘージは兄を元気づけようと、スポーツくじで得たお金でダンススタジオを作った
サヘージは兄の跡を継いで「ストリート・ダンサーズ」にて技を磨いていたが、街では「ルール・ブレイカーズ」と一触即発状態になっていて、ダンス対決&喧嘩に明け暮れる毎日だった
ある日、グラウンド・ゼロが復活すると聞いたサヘージはチームを結成して、大会に臨むことになった
ルール・ブレイカーズの中心人物のイナーヤトもいとこのゼインとともにスキルを磨くものの、ある日彼女は行きつけのカフェの違法行為を目にしてしまう
オーナーのラームは、「同じ国の人々だ」と言い、「君たちが残したものを彼らは食べている」と伝えた
イナーヤトは彼らに何かできるかを考え、ゼインとともに「グラウンド・ゼロ」の賞金で彼らを救おうと心に誓う
その頃、サヘージは恋人のミアが所属するロイヤルズのマイクに実力を認められ、そのチームに加入することになった
サヘージは何としても優勝したいと考えていて、手段を選ばなかったのである
テーマ:施しのダンス
裏テーマ:自己顕示と表現の違い
■ひとこと感想
どうやらシリーズもののダンス映画のようでしたが、前2作に関しては鑑賞する間もなく突入することになりました
IMDBをさらっと眺めていたら、登場人物がやたら多くてビビりましたが、さすがに全部のキャストを調べるのは不可能でしたね
なので、わかった分だけを載せていますが、自信のないところもたくさんありました
チーム対抗のダンスバトルということで、およそ8チームが登場し、それぞれのチームに10名ぐらいのダンサーがいました
メインキャストのほとんどがどこかに所属しているダンサーなのですが、ぶっちゃけルール・ブレイカーズだけは説明があるのに、メインのストリートダンサーズの紹介がないのはびっくりしてしまいます
見どころはラストダンスだと思いますが、個人的にはラーム登場のシーンがとても大好きですね
店員のチョートゥーもキレッキレのロボットダンスを披露しているし、後半でも結構中心となって踊っていたのは仰天してしまいました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
兄の意思を継ぐ弟と、インド社会の闇を覗いてしまった二人のダンサーが対決する物語で、後半はチーム名が変わろうが、途中で乱入しようがお構いなしという大会になっていましたね
とにかく「熱狂させたら勝ち」というもので、あれだけ入り混じると予選の意味があったのかは分かりません
とにかくダンスを観たいんだ!という人向けの映画で、所狭しとダンスシーンで埋め尽くされていました
これをスクリーンで観れたのはラッキーだったと思いました
物語はインドの貧富の拡大と、イギリスの移民問題が背景にあって、結構重たいストーリーになっていました
パンジャーブから出稼ぎ名目で不正に出国した太鼓4人組がラストダンスを盛り上げるのですが、わかっていても胸熱なシーンになっていましたね
サヘージがイナーヤトの屋敷に乗り込むシーンで祖母の言葉が引用されるなど、きちんと作り込まれたシナリオになっていたと思います
■インドの貧困問題
ウィキペディアによるインドの経済の欄によれば、GDP(2021年、名目)は3兆0.5億ドル、GDP(2021年、PPP=購買力平価説)は10兆5100億ドルとなっています
一人当たりの名目GDPは2191ドル(33万円弱)で、GDP成長率は7.6%となっています(日本の2021年の一人当たりの名目GDPは3万9803ドル=597万円)
これだけ数字が悪いのは、貧困線未満の人口が21.2%(2011年推定)であること、失業率が7.2%(2007年推定)であることなどが挙げられるかと思います
人口は多いけど、5億人いる労働人口のうち7.2%が失業状態で、全人口(12億人)の2割が貧困線を下回っていることになります
世界銀行の試算によれば、インド人の11.9%の人が「1日、2.15ドル未満で過ごしている」とされていて、この問題の解決が叫ばれています
しかも新型コロナによって、これらの貧困問題は悪化していると予測されていて、インドの労働人口の80%にあたる4億5000万人が「路上販売、行商、臨時雇い、ゴミ拾い」などの仕事で生計を立てている状態になっています
インドの貧困率は、1970年代で60%程度あったものが、1994年には40%、2010年には32.7%まで減少しています
順調に減少していった矢先のパンデミックなので、予測値を遥に下回るであろうと懸念されています
インドの経済格差も問題視されていて、富の85%は上位10%が所有しているとされています
日本の場合の上位10%が占める富は57.8%程度とされていて、この数字を単純に比べても結構な格差化が進んでいるように思えます
ちなみにアメリカだと上位10%は72%だそうで、インドほどではなくても、結構な格差社会であると言えます
映画では、イナーヤトが富裕層で、サヘージが中間層というイメージの描かれ方になっていますね
キャラクターが仕事をしている場面がほとんど描かれないのでわからない部分はありますが、カフェでクリケットの試合を観戦し、そこそこ良い食事をしているので、行きすぎた貧困層でないことだけはわかります
また、映画ではホームレスや移民問題も取り上げていて、その問題に寄与するために賞金を稼ごうとするイナーヤトたちが描かれていました
■SWATとは
映画に登場する「SWAT」は「Sikh Welfare & Awareness Team(シク教徒の福祉と啓発チーム)」の略で、特殊部隊のことではありません
「Nishkam S.W.A.T」という実在の団体の活動をヒントにしていて、これは西ロンドンを拠点としたシク教徒によるチャリティ団体となっています
2009年に南アジア系移民が多く住んでいるロンドン西部の街サウソールで路上生活者に食事と寝る場所を提供し始めたのを皮切りにしていて、徐々に活動範囲を広げています
シク教とは、主人公の住むパンジャーブ地方を中心に広まっているインドの一神教(イク・オンカル)で、経典は「グルムキー」と呼ばれるものを使います
西暦15世紀ぐらいにパンジャーブ地方で生まれ、現在では2500万人〜3000万人くらいはいるとされています
「ਬੋਲੇ ਸੋ ਨਿਹਾਲ(発言するものは成就する)」「ਸਤਿ ਸ੍ਰੀ ਅਕਾਲ(真実は時を超える)」という言葉を唱えます
ちなみに映画の中では、不法移民のアムリンダルがシク教で、主人公サヘージはヒンドゥー教、イナーヤトはイスラム教となっています
「Nishkam S.W.A.T」のことをもっと知りたい人は、ホームページのトップページに「About Us(私たちについて)」があります
ここにはビジョンなどを含む行動理念などが書かれているので、翻訳機能を使えばイメージが捉えられると思います
↓「Nishkam S.W.A.T」ホームページ
https://nishkamswat.org/about/about-us
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、ダンスバトルをメインに描いていて、総勢100人近いガチのダンサーが登場しています
レモ・デソウザ監督もテレビのダンスコンペティション番組の審査員を務めていて、本作ではダンス大会の入賞者をメインキャストに据えています
劇中に登場する「Bird Gang」「Unity UK」「Team Recycle」は実在のグループで、後半のダンス大会はガチの様相を呈しています
映画は、単なるダンスバトルだけにとどまらず、インドとパキスタンの問題、ロンドンの移民問題、シク教徒による慈善活動などを背景にしていて、さらにダンスに向き合う姿勢というものもクローズアップしていきます
主人公サヘージは兄のために踊りますが、兄の願いが「グラウンド・ゼロ」の優勝だと勘違いして、勝利に執念を燃やし、ロイヤルズに加入することになります
イナーヤトは自分を解放させるためにダンスを利用しますが、彼女は家族の理解が得られていないことで抑圧の対象となっています
この二人がライバル関係になっているのですが、当初は「同じ穴のムジナ状態」で自分のために踊っていました
そんないがみ合いが続く中、彼らが通っていたカフェでは、違法ながらもホームレスに食事を与えていたことがわかります
イナーヤトがそれに気づき、自己表現で踠いていたものに目的というものが生まれていきます
親は裕福なので、彼らを助けるための寄付をすることもできますが、イナーヤトたちの富は貧困層の犠牲によって成り立っているという部分がありました
そこで彼女は、自分の力でできる支援というものを考え始めます
この時点で二人のダンスに向き合う性根というものに変化があり、それが最大限までズレていくことになります
サヘージは徐々に自分の行動に対する責任を放棄し始め、対称的にイナーヤトは自分の行動に責任を負わせていきます
行動に対する責任はダンスを変えていくのですが、それはダンスが単なる体を使った動作ではないからなのですね
ラームがバカにされた時に見せるダンスには怒りがこもっていますし、ロイヤルズのダンスは自身に満ち溢れています
最終的に、サヘージが心を入れ替えてルール・ブレイカーズに参入するのですが、ダンス大会のルールがあってないようなところが無茶苦茶だなあと思ってしまいます
途中参加はまだしも、チーム名が変わるのは良いのか?と思ってしまったので、そこはルール・ブレイカーズのままじゃないとダメだろうとツッコんでしまいます
そのラストバトルも「停電したら、その時点の熱狂度で決める」という「ルールは主催者である俺」という無茶な流れになっていましたね
このあたりの何でもありな部分を許容できないと楽しめない映画だったかもしれません
個人的にはラーム&チョートゥーが最高だったので、あのシーンだけでもYouTubeに切り貼りしてくれないかなあ(違法はダメよ)と思っています
DVDが出たら是非買いたいなあと思っていたら、まさかのアマプレ特典で観られるのですね!
劇場鑑賞できない地域でもアマプレ会員特典対象(執筆時点)なので、可能なら大きめのデバイス&ヘッドホンで堪能していただけたら良いなあと思いました(ちなみに字幕はありませんが、何となく話はわかるんじゃないでしょうか)
Amazon Link (Amazon Prime Video) → https://amzn.to/4a3A6mX
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100762/review/03600420/
公式HP:
https://spaceboxjapan.jp/streetdancer/