エクソシスト不在の『エクソシスト』というのは攻めた内容だとは思うのですが、ねえ


■オススメ度

 

悪魔祓い系映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.12.7(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:The Exorcist: Believer

情報:2023年、アメリカ、111分、

ジャンル:亡き母の交霊会を行った娘が悪魔に取り憑かれるホラー映画

 

監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン

脚本:ピーター・サットラー&デヴィッド・ゴードン・グリーン

キャラクター創造:ウィリアム・ピーター・ブラッティ

 

キャスト:

レスリー・オドム・Jr/Leslie Odom Jr.(ヴィクター・フィールディング:シングルファーザーの写真家)

トライシー・グレーヴス/Tracey Graves(ソーレン・フィールディング:12年前に亡くなったヴィクターの妻)

リディア・ジュエット/Lidya Jewett(アンジェラ・フィールディング:ヴィクターの娘、中学生)

 

オリヴィア・オニール/Olivia O’Neill(キャサリン・ウェスト:アンジェラの友人、ミランダとトニーの娘)

ノーバート・レオ・バッツ/Norbert Leo Butz(トニー・ウェスト:キャサリンの父)

ジェニファー・ネトルズ/Jennifer Nettles(ミランダ・ウェスト:キャサリンの母)

Rory Gross(テイラー・ウェスト:ミランダの弟)

Norah Murphy(ハンナ・ウェスト:ミランダの妹)

 

Lariah Alexandria(デシャナ・ヤング:口裏合わせを頼まれるクラスメイト)

 

ラファエル・スバージ/Raphael Sbarge(ドン・レヴァンス:バプテスト派の牧師、ヴィクターの友人、ミサの牧師)

アン・ダウド/Ann Dowd(アン/メアリー・ゼイヴィア:元修道女の看護師、ヴィクターの隣人)

 

エレン・バースティン/Ellen Burstyn(クリス・マクニール:かつて悪魔祓いをしたことがある元女優)

リンダ・ブレイアー/Linda Blair(リーガン・マクニール:作家、クリスの娘)

 

Okwui Okpokwasili(ビーハイブ:「ルートワーク」を扱う医師)

Danny McCarthy(スチュアート:ペンテコステ派の牧師、ビーハイブを連れてくる友人)

E.J. Bonilla(マドックス:悪魔祓いに協力する神父)

Joseph Morris(ミーチャム:悪魔祓いを認めない神父)

Antoni Corone(フィリップス:悪魔祓いを認めない神父)

Dwight Longenecker(フェルプス:悪魔祓いを認めない神父)

Allen Underwood(モンタル:教会関係者)

Dean Crownover(悪魔祓いに参加するペンテコステ派の説教者)

 

【ハイチ・パート】

Lafortune Joseph(ヴィクター被写体の漁師)

Gastner Legerme(ヴィクターの被写体の漁師)

Marie Michelle Bazile(ヴィクターの被写体の職人)

Rodrigue Lucien Louissaint(鏡の露天売り)

Albert Wollf II Saint Felix Nolasco(ソーレンに声をかけるハイチの少年)

Viergeue Charles(ソーレンの安産を祈願するスピリチュアルの施術者)

Prince Jayden Constant Felix(ビーチの少年)

Jake Arsene Joseph(ビーチの少年)

Yomayli Joseph Louisimus(ビーチの少女)

Dieunanne Hercule(地震で祈る母)

Eliseo Antonio Paredes(ハイチの医師)

Gardy Helve(ハイチの医師)

 

【ジョージア州パーシー・パート】

Patrick Roper(アンジェラの中学の教師)

Ian Godlewski(ポーランド人の交換留学生、クラスメイト)

Justin Paul Warren(肖像画を撮る家族の父)

Gina Jasinski(肖像画を撮る家族の母)

Edward James Warren(肖像画を撮る家族の息子)

Nettie Nichols(肖像画を撮る家族の娘)

 

Celeste Oliva(コニク:行方不明を捜査する刑事)

Eddie Craddock(キーザー:聴取を受けるホームレス)

William Hariss(ウィリアム:ホームレス)

 

Carson Tinkler(アンジェラとキャサリンを発見する農夫の男)

Brad Napp(発見者の父、農夫)

Jonathan De Olano(デ・オラノ医師)

Richard Carr III(カー医師)

Layla Jaffree(ジャフリー医師)

Jabeen Taj(タージ医師)

Vince Canlas(精神病院の代表)

Susan Kokotoff McKenna(精神保健福祉士)

Lize Johnston(ラマシュトゥ:憑依する悪魔の中の人)

Helen Leahey(悪魔の声)

J. Moliere(悪魔の声)

Christopher Allen Nelson(悪魔の声)

 

Chloe Traicos(ジョディア・マックスウェル:

 


■映画の舞台

 

ハイチ:ポルトフランス

https://maps.app.goo.gl/Uvx7vYR7Gv1jdSWz8?g_st=ic

 

アメリカ:ジョージア州

パーシー

 

ロケ地:

ドミニカ共和国:

サント・ドミンゴ/Santo Domingo

https://maps.app.goo.gl/uStkf6eBjLFV8rKJ7?g_st=ic

 

アメリカ:ジョージア州

サヴァンナ/Savannah

https://maps.app.goo.gl/L2FQPmFZsPeCydhPA?g_st=ic

 

アメリカ:ジョージア州

アトランタ/Atlanta

https://maps.app.goo.gl/L2FQPmFZsPeCydhPA?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

ハイチ旅行に来ていた写真家のヴィクターと妻ソーレンは、ハイチ地震に見舞われてしまう

倒壊したビルに巻き込まれたソーレンは重傷を負っていて、救命医は妻か子どものどちらかしか助からないと言う

 

それから13年後、ヴィクターは娘のアンジェラと暮らしていて、彼女は中学校にキャサリンと言う親友ができていた

アンジェラとキャサリンは「友人の家にいく」と嘘をついて、学校の近くにある森へと向かう

そこで、ココット占いを始めた2人だったが、その後2人は行方不明になってしまう

 

それから3日後、2人はとある農場の納屋で発見され、目立った外傷は無いものの、魂が抜けたようにぼうっとしていた

そして、2人はともに奇妙な行動を始め、それは何かが取り憑いたのでは?と思わせるようなものだったのである

 

テーマ:選択と代償

裏テーマ:悪魔が喰らうもの

 


■ひとこと感想

 

これまでの『エクソシスト』を観た記憶はほとんどなく、それでも内容を聞いたことがあると言うくらいの知識で鑑賞

第1作目の正統な続編ということですが、関連があるのはリーガンとその母クリスぐらいのように思えました

 

冒頭はハイチ地震なので、おそらく2010年で、それから13年後なので、現在パートは「今」ということになります

この手のホラー映画が怖いかどうかは、「悪魔を信じるか否か」というところがあって、そうでは無い人は「ビジュアル面の怖さ」しか味わえないでしょう

 

日本では「悪魔祓い」自体が一般的ではなく、「何でも悪魔のせいにするな」というセリフの方に共感性を感じてしまいます

ラストでは、異文化&異宗教&無宗教が悪魔祓いに挑戦しますが、「誰?」という感じになっている人が数名いましたね

あまり脚本を上手く練れていないようで、集合する理由もあまりインパクトが無いものだったと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

日本で言うコックリさんをしたら悪魔に取り憑かれたと言うもので、今回の悪魔は2人同時に憑依すると言う離れ技を持っていました

それによって、心配する人が増え、様々な宗教観が揃うことになります

とは言え、ラストの悪魔祓いの緊張感のなさはどうしたものかなと思いました

 

映画では、ハイチ地震の影響で選択を迫られたヴィクターの誰にも話せない苦悩というものが描かれていきます

隣人アンの修道女を辞めた理由などは深掘りされますが、肝心のキャサリンの人物像と家族との関係性がはっきりとはわかりませんでした

 

三姉妹弟の長女で、コスメ(口紅)に興味を占める頃というのはわかりますが、彼女と両親の距離感があまり掴めなかったので、ラストにおけるトニー(キャサリンの父)の選択の重みというのが褪せてしまっているように思えました

このあたりを綿密に描いて、それぞれの両親の子どもへの愛情と距離感が伝わってこそ、自分の子どもを助けて罪悪感を抱え続けるか、それを拒絶して子どもを失う悲しみに打ちひしがれるかの二択に意味が生まれるのでは無いでしょうか

 


エクソシストとは何者か

 

エクソシスト(Exorcist)とは、主にカトリック教会の用語で、エクソシスム(Exorcismus)を行う人のことを言います

エクソシスムとは、憑依された人という意味があり、その邪悪な力を追い出すことを目的とした行為という意味があります

シャーマニズムによる古代宗教の悪魔祓いに始まり、キリスト教、イスラム教、仏教、ヒンドゥー教、道教などに「悪魔祓い」というものが存在します

 

シャーマニズムでは、「悪霊の影響下にある人、動物、物」とという考えが広く浸透していて、それが派生して、ユダヤ教やギリシャ文化の中に根付いていくことになります

キリスト教では、「新約聖書」の中でイエス・キリストが呼びかけて癒すという描写がなされています

この「癒し」という行為が「悪魔祓い」だと考えられているのですね

「新約聖書」は悪霊の存在を当然のことと考えていて、パウロの手紙などでは、悪霊から身を守るための助言というものがたくさん記されています

キリスト教では洗礼が行われるのですが、その際に悪魔祓いが行われることがあります

 

イスラム教では、コーランの中に「邪悪な存在による憑依」の記述があります

預言者ムハンマドは、コーランの一節、アッラーへの嘆願、祝福されたザムザムの泉を用いて、信者の体の中から邪悪な存在を追い出したとされています

 

仏教では、初期の頃から「危険から身を守るための特定行為」というものがあり、上座部仏教、大乗仏教、金剛乗仏教などにも悪魔祓いというものがあります

ヒンドゥー教では、女神カーリーやその化身が体に入った場合には、神聖な状態と見做されることがありますが、異国の霊などが出てこない場合は、祓魔師などによって追い出すことをします

道教では、悪魔祓いを僧侶が行い、取り憑いた霊媒は神や故人の代弁者に成ことがありますが、それを聞くのと同時に浄化させるという役割を担います

 

映画はキリスト教圏の物語で、登場するのはエクソシストと呼ばれる聖職者たちでした

クリスの助言によって、異教徒の力も合わせるとありましたが、この映画の世界では「キリスト教以外の悪魔祓い」を許容している世界であり、その結束によって強力な悪魔を退治できると考えられています

でも、いわゆるエクソシストと呼ばれるのはクリスぐらいで、腰砕の神父、修道女になれなかった看護師、説経者、牧師などが立ち向かう構図になっていました

最終的にはクリスが悪魔を追い払うことになるので、本作中のエクソシストは彼女だったということになります

いわゆる脇役がエクソシストなのですが、せめてアン(修道女になれなかった看護師)がエクソシストの道を歩むために覚醒するぐらいのことがないと盛り上がりません

映画は、遠隔エクソシストに負ける悪魔(実質的には悪魔の勝利)ということになっていて、彼らの一致団結は「足止めレベル」になっていたのは微妙だったように思えました

 


勝手にスクリプトドクター

 

映画は、やたら登場人物が多いわりに深掘りがなくて、最後の決戦に誰が参加していたのかすらわからない感じになっています

あの場所にいたのが、ヴィクター、トニー&ミランダ、アン、ビーハイブ、説教者で、教皇庁からダメ出しを喰らったマドックス神父が追加で参加し、返り討ちに遭っていたクリスがリモート参加することになっていました

ここにアンジェラとキャサリンがいて、総勢10人ほどがあの場にいたことになります(ひょっとしたらレヴァンスもスチュアートもいたかもしれません)

 

彼らをあの場に招聘するのが中盤のパートになりますが、クリスとマドックス神父はガッツリと描かれていますが、ビーハイブと説教者に関してはかなり影が薄いなあと感じてしまいます

ビーハイブは家に勝手に入ったスチュアートが連れてきた女性で、当初はハイチの祈祷師なのかなと誤認していました

ハイチの祈祷師は「スピリチュアルのリーダー」という役名があったので違うことはわかっていますが、ぶっちゃけ「彼女が参加した方が良かった」ように思えました

 

映画は「エクソシスト」の映画なのですが、誰がエクソシストなのかが漠然としていて、神父「教皇庁がダメ」、クリス「返り討ち」からの流れで、修道女になれない看護師が素人状態で悪魔祓いに臨みます

アンがエクソシストとして覚醒する流れならOKなのですが、結局のところ、素人では立ち行かず、クリスの助言通りに「異教徒集め」をしても役には立ちません

マドックス神父が心を入れ替えて、「教皇庁に反発してでもやる」という路線で進むのかと思えば、あっさりとやられてしまいます

これらの「確固たる意志と能力のないエクソシストではダメ」という絶望感は良いのですが、そこで遠隔クリスを出してはダメなのですね

この物語の流れだと、アンが再度立ち向かい、彼女がエクソシストとして覚醒するとか、ハイチの祈祷師が助けに来るという流れの方が良いと思います

 

本作がつまらないのは、エクソシストの映画なのにエクソシストが出てこないことで、ラストの「悪魔の囁き」も微妙な感じに仕上がっています

悪魔の言うことを聞いたトニーが騙され、悪魔勝利のエンディングになっているのですが、これで良いのか?という感じになっています

小気味の良いバッドエンドという感じでもなく、エクソシスト誕生という話でもないので、盛り上がりようがないなあと思ってしまいました

アンがもっと若い女性で、ソーレンの代わりになるような存在だったら盛り上がると思うのですが、そうしなかったことで次作以降へのつながりもない作品になってしまっているのではないでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は、これまでの『エクソシスト』シリーズの続編的な作品ではありますが、初期の作品の正統続編のような感じに仕上がっています

クリスと娘リーガンの物語の「何十年後」というものなのですが、さすがに感覚が空きすぎているし、返り討ちに遭うしでグダグダな展開になっています

前作にて有能だったクリスが無双するとか、実はリーガンがエクソシストの系譜を繋いでいて助けに来るとかなら繋がりがあるのですが、結局のところ「親子関係の修復」の一環として配置されたキャラクターというところに残念感が漂っているのですね

 

『エクソシスト』は1973年の作品で、悪魔に取り憑かれたリーガンを助ける物語で、クリス自体が悪魔祓いを行なったという物語ではありませんでした

クリスは悪魔祓いの現場にいた母親で、メリン神父とカラス神父が共闘して悪魔祓いをしています

この戦いにおいて、2人の神父は亡くなってしまうのですが、リーガンは奇跡的に助かっていました

その後、『エクソシスト2』『エクソシスト3』にてリーガンが登場し、『エクソシスト:ビギニング』へと続いていきます

『エクソシスト:ビギニング』は『エクソシスト』にて悪魔祓いをしたメイン神父の話なので、リーガンは無関係だったりします

 

映画は、グダグダになった『エクソシスト2』以降を無かったことにする勢いで作られていますが、確固たるヒーロー的な存在がいないとダメなのですね

なので、神父がエクソシストになって差し違えるシリーズの失敗を踏まえると、誰かが真のエクソシストとして覚醒する物語の方が支持を得られるのだと思います

その方向にいくこともなく、異教徒合わせ技で返り討ちに遭って、そして悪魔さん大勝利の展開になっているので、ぶっちゃけ何をしたかったのかはわからないのですね

なので、あそこまでアンの過去と関連づけるのなら、彼女がエクソシストとして覚醒するというのが最低限の展開だったのではないかと感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

Yahoo!検索の映画レビューはこちらをクリック

 

公式HP:

https://exorcist-believer.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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