■自分がそこにいる理由を知っている人は、その立場を維持する人をリスペクトしているものですよね
Contents
■オススメ度
スタントマンの映画に興味がある人(★★★★)
ハリウッドの王道ラブロマンスが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.8.16(イオンシネマ久御山)
■映画情報
原題:The Fall Guy(身代わり人)
情報:2024年、アメリカ、127分、G
ジャンル:トップスターのスタントマンがある陰謀に巻き込まれる様子を描いたアクション&ラブコメ映画
監督:デビッド・リーチ
脚本:ドリュー・ピアーズ
原作:グレン・A・ラーソン/Glen A. Larson『THE FALL GUY(邦題:俺たち賞金稼ぎ!! フォール・ガイ、1981年)』
キャスト:
ライアン・ゴズリング/Ryan Gosling(コルト・シーバーズ/Colt Seavers:トム・ライダーのスタントマン)
エミリー・ブラント/Emily Blunt(ジョディ・モレノ/Jody Moreno:映画監督、コルトの元恋人)
アーロン・テイラー=ジョンソン/Aaron Taylor-Johnson(トム・ライダー/Tom Ryder:アクションスター、スペースカウボーイ役)
ハンナ・ワディンガム/Hannah Waddingham(ゲイル・マイヤー/Gail Meyer:映画のプロデューサー)
テリーサ・パーマー/Teresa Palmer(イギー・スター/Iggy Starr:トムの恋人、共演者、エリアナ役)
ステファニー・シュー/Stephanie Hsu(アルマ・ミラン/Alma Milan:トムの個人秘書)
Winston Duke(ダン・タッカー/Dan Tucker:コルトの友人、スタントコーディネーター、アクション監督)
【「Metal Storm」制作スタッフ】
Adam Dunn(ナイジェル/Nigel:撮影監督)
Zara Michales(べンティ・クシュナー/Venti Kushner:VFX担当)
Ioane Saula(バーディー:音響機材担当)
Gregory J. Fryer(ラッシュ・マッケイブ/Rush McCabe:爆破担当)
Madeleine Wilson(AD)
Kalkidan China(ドーラ/Darla:シナリオライター)
Angela Nica Sullen(エディター)
Di Smith(脚本家)
Megan O’Connell(小道具係)
Jack Doherty(車両担当)
Tony Lynch(ヘリのパイロット)
Georgia Nottage(軍用車のオペレーター)
David Collins(レイ/Ray:サウンドミキサー)
Diego Retamales(銃器係)
Justin Eaton(ヘンリー・ヘレラ/Henry Herrera:新人スタントマン)
演者不明(ジャン・クロード:スタント犬)
【ライダー関連】
Matuse(ドゥーン/Doone:麻薬の売人)
Jack Newell(マーティン・ウォーリアー/Martian Warrior:ドゥーンの手下?)
ベン・ナイト/Ben Knight(ドレスラー/Dressler:ライダーの警備主任)
Andy Owen(アームストロング/Armstrong:ドレスラーの手下)
Dan Reardon(フライ/Fry:ドレスラーの手下)
Marky Lee Campbell(ハイメス/Hymes:ドレスラーの手下)
Chris Matheson(ロンデル/Rondell:ドレスラーの手下)
Ben Gerrard(ケヴィン/Kevin:ホテルマン)
【その他】
Semu Filipo(マイク・マイク/Mike Mike:エル・カカトゥアの従業員)
Nathaniel Langworthy(シドニーの駐禁警官)
Tim Franklin(LAのライダー)
Scott Johnson(「NYC Film」のディレクター)
Beth Champion(NYの広告)
Emily Havea(NYCの救命士)
Lawrence Ola(NYCの救命士)
Cassandra Sorrell(ホテルのフロント係)
Simon Brook McLachlan(ニュースのデスクアンカー)
Alex Lee(NBSのニュースキャスター)
Andrew Ryan(カラオケのMC)
リー・メジャー/Lee Majors(The Fall Guy:ライダーを追い詰める警官、テレビドラマの出演者)
ヘザー・トーマス/Heather Thomas(ジョディ・バンクス/Jody Banks:ライダーを追い詰める婦警、テレビシリーズの出演者)
Nathan Bates(コルトに車を預ける客)
Thomas Borgeot(ナイトクラブのセキュリティ)
Owen Dyson(Rag tag/一般市民)
Jason Momoa(ジェイソン・モモア:本人役、新作映画の主役)
【ライダー&コルトのスタント】
Ben Jenkin
Justin Eaton
Logan Holladay
Troy Brown
■映画の舞台
オーストラリア:シドニー
ロケ地:
オーストラリア:シドニー
■簡単なあらすじ
トップスターのトム・ライダーのスタントマンに従事してきたコート・シーバースは、ある撮影の事故によって、映画業界から姿を消していた
カメラオペレーターの恋人ジョディとも連絡を断ち、16ヶ月もの年月が過ぎていた
ある日、ホテルの駐車係をしていたコルトの元に、映画プロデューサーのゲイル・メイヤーから連絡が入った
彼女はジョディが初監督を務める映画のスタントマンを探していて、コルトに復帰のエールを送ろうと考えていた
コルトはその頼みを受け、いざ撮影に向かうものの、ジョディは彼の起用に反対し、疎遠だった時間が気まずい時間を作り上げていた
なんとか撮影を続行していたコルトだったが、ゲイルはトムが良からぬ仲間とつるんでいて、今は行方不明の状態になっていた
コルトとトムの仲を知るゲイルは、なんとかしてトムを探し出し、撮影現場に戻らせて欲しいと頼み込む
ジョディのキャリアに傷をつけたくないコルトはその願いを受諾し、トムの行方を追うことになったのである
テーマ:映画に潜むリアル
裏テーマ:作品を愛する心
■ひとこと感想
1980年代のテレビシリーズのリブート作品で、当時の出演者がポストクレジット後の映像にサプライズ登場していました
また、ライダー&コルトのスタントマンをしていたジャスティン・イートンがスタントマン役で出演していましたね
映画は、スタントマンがある事件に巻き込まれるというもので、それが主演が巻き込まれたと思われる殺人事件だったというのが予告編でバレています
物語としては、ほぼ中盤の出来事なので、予告編はネタバレしすぎな部分があるかな、と思いました
基本的にはラブコメで、映画監督になった元恋人ジョディとの復縁なるかという内容になっていて、色んな映画のオマージュが登場する作品になっています
コルトと友人たちの掛け合いで「映画の決めセリフ」を言って映画名を当てるみたいな会話がちょくちょくあるのですが、かなり有名な作品ばかりなので、生粋の洋画ファンならわかるんじゃないかな、と思いました
映画には挿入歌が欠かせないものですが、本作でもテイラー・スイフトの「All To Well」とか、フィル・コリンズの「Against All Odds(Take A Look At Me Now)」などが効果的に使われていました
アメリカにもカラオケ文化があったことに驚いてしまいましたが、日本のカラオケパブみたいな感じになっていましたねえ
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
スタントマンと映画監督のラブコメという内容で、ある事故によって疎遠になってしまい、ギクシャクした再会の物語になっていました
夢を叶えた元カノを支えたいという男の悲哀がそこにあって、トップスターの影でひっそりと佇んでいる男の哀愁がそこにあったように思います
映画は、予告編で登場するトップスターの死が実はミスリードだったというものになっていて、パッと見でそっくりだったので見間違えるというものになっていました
よく見ると思いっきり別人なのですが、それが明かされるのは後半になってからでしたね
でも、開始数分のジョディのセリフで「新人スタントマンのヘンリーはいないの?」みたいなセリフがあって、彼も行方不明になっていたことが仄めかされていました
物語は、映画プロデューサーを悪党と断罪する感じに描かれていて、映画のためなら何でもする骨太なキャラとして描かれていました
映画監督の方が観客の馴染みが深く、プロデューサーの存在ってイマイチわからなかったりするのですが、最近では「誰々がプロデュースしている」みたいな言葉も飛び交うようになりました
映画の全てを牛耳っている存在ですが、かと言って非合法はダメだよね、という展開になっていたのは良かったと思います
■虚構に落とし込むリアル
本作は、スーパースターの専属スタントマンが主人公になっていて、スターが撮影現場に来ないので探してきて欲しいという導入がありました
実際には、スターは事件を引き起こしていて、それを隠蔽するために巻き込むという思惑があったのですが、それをうまく回避するという流れになっていました
企みを持ち込んだプロデューサーとスターを騙すために、元恋人の監督ジョディを巻き込んでいくのですが、それによってお仕置きされることになっていましたね
スタントマンは、映画にリアルを持ち込むためにスターの代わりに体を張る人たちなのですが、場数を踏んでいるとしても危険には変わりありません
監督のこだわりで何度も同じシーンを撮ることもあるのと、脳内イメージと合致させるのはかなり難しいことだと思います
簡単な爆発のシーンとかでも、そのイメージにはリアルはなく、火力による影響などは計算されていません
あくまでも脳内イメージで、そのイメージはかつてみた虚構を参考にしている場合があります
これらのリアルを作品に落とし込むためにギリギリのところまで攻めることになり、あとは編集や特殊効果などで盛ることになります
かつての撮影は実際に爆破していたりしましたし、演者がスタントなしで落下するなどの危険な撮影を行ったりもしていました
今ではCGとの組み合わせなど、いかにして危険を取り除きつつ、危険に見えるシーンを撮るかという工夫がなされているのですが、それでも全てをカバーすることはできません
実際に起こる爆発の光と圧、それによって人体に及ぼす影響は見本がないとCGも作れません
そう言った観点からも、補えないものを実際に撮ることになるのですが、その体制に慣れたスターは、その恩恵を忘れがちになってしまいます
映画では、コルトへの感謝を忘れて増長しているトム・ライダーが描かれていて、彼自身はコルトの後の新人スタントマンに対しても敬意を1ミリも持っていなかったことになります
事件はその性根が起こした事件の隠蔽となっていて、これは映画界に対するメッセージのようにも見えてしまいます
■映画の裏方について
本作は、いわゆる映画の裏方を主役にしていて、スターの起こした事件をも押し付けようとするプロデューサーが描かれていました
スターは自分では何も考えられない人間で、スタントマンを馬鹿にして、その果てに事件を起こしています
彼がスターでいられるのも、スタントマンを含めた裏方の尽力であり、彼の評価は=裏方の評価だと言えます
総合的に作られたスター像というものがあって、そのイメージを作ったものを蔑ろにしているのですが、これではそのうちに内部から腐っていって、いずれは地に落ちていたと思います
映画に限らず、裏方の仕事というものは重要で、その表に立つ人物をいかにして偶像化するかというところに力を注いでいます
この構造はどの業界でも同じで、組織の看板が何であれ、それを支える人々で成り立っています
なので、その柱の一つであるという意識が必要で、それを統制するマネジメントというものが存在します
このあたりの構造は社会生活を営んでいる人ならばわかるもので、個々が与えられたパフォーマンスを最大限発揮できるように、相互関係として多くの部署が存在します
かつて、裏方の仕事を馬鹿にした女優がいて炎上したことがありましたが、彼女のイメージを作るために誰が尽力しているのかというところをわかっていなかったのでしょう
今でも同じ気持ちでいるのかは分かりませんが、大衆を魅了するイメージキャラを支えているという自負もあるでしょうし、目の前に見えている仕事だけをやっているとは限りません
このように、自分の視野だけを盲信して決め込んでしまう人がいますが、何かしらのサービスにしても、見えていない部分で見えている部分を支えているというのが社会構造であることはわかります
この場合に、露出している人が勘違いしている時があり、それは商品価値が自分自身であると考えている場合が多いと思います
本作におけるトム・ライダーもそう言った人間の一人なのですが、それは彼の周りにいる人間もその構造をわかっていないからか、もしくはわかった上で天狗になるように仕向けているかだと思います
彼を増長させることで、その取り巻きの人間もある程度の社会的なステータスの底上げができると勘違いしていて、それはスターが自分の裏方であると認知しての行動になっていると思います
構造を知っているスターはこのような取り巻きの養分になることを嫌うので、そのような構造に持っていこうとする人を排除する傾向があります
そう言った人はそもそも自分の人気やイメージが自分だけで構築されていないことを理解しているので、そういった勘違いが近寄る隙もないのですね
ある種の運命共同体のようなリスペクトがそこにあって、そう言った関係性を紡ことが人生においては必要なのではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作の骨子は、巻き込まれ系ミステリー映画ですが、実際にはヨリを戻すためのラブロマンス映画の側面がありました
コルトもジョディも過去の恋愛を引き摺っていて、音楽が癒しや引き起こしにもなっていましたね
この関係性を知って利用するプロデューサーもタチが悪いのですが、ジョディに未練があることは彼女の作品を観ればわかるので、公言しているようなものになっています
ある爆発のシーンを撮る際にも、ジョディは遠回しに「主人公の気持ちがわかるのか」というようなことを言っていて、さらに「このキャラクターならば何を言うか?」と言うのを公開質問していました
明らかに「あなたはどうしたいのか?」を問うていて、それに対するコルトの答えは「チャンスが欲しい」というものになっていました
その答えは周囲の笑いを引き起こし、コルトもジョディも衝突をスルーできなくなっていたのは面白かったと思います
そんな二人を引き裂くきっかけになったのがコルトの事故だったのですが、それがトム・ライダーが引き起こしたことだとわかります
これによって、コルトの中で何かが切れ、報復から手心が消えるようになりました
クズは改心しないことを悟ったとも言えますが、同じ轍は踏まないけれどスタントマン流の仕返しをすることになりました
ラストでは、テレビドラマ版の主演二人が登場するのですが、トム・ライダーにはお仕置きで、ゲイル・マイヤーには容赦がなかったところは面白かったと思います
その後、頓挫するかと思われた映画は、主演をジェイソン・モモアに変更して成功したことが描かれます
コルトはまたしても表舞台には出ないのですが、それは過去の仕事に誇りを持っていることと、彼の生き方にスターは合わないからだと思います
そう言った適性の果てに彼は自分の居場所に戻るのですが、それが却って後味を良くしていたように思えました
モモアの代役というのは体格的にどうなのかと思いますが、そのあたりはマシマシにすることで対応していて、さらに危険なスタントになってしまったのではないかと心配してしまいますね
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100947/review/04144068/
公式HP: