■巻き込まれ系のキャラに好感度要素がないと、「あ、そう」という冷めた感じになってしまいますね


■オススメ度

 

台湾ホラーに興味のある人(★★★)

初七日の意味を知っている人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.7.18(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題:头七(頭七=初七日)、英題:The Funeral(お葬式)

情報:2022年、台湾、103分、G

ジャンル:祖父の葬儀のために帰省した娘とその子どもが奇怪な出来事に遭遇する様子を描いたホラー映画

 

監督:シエン・ダングイ

脚本:チャン・ケンミン

 

キャスト:

セリーナ・レン/任家萱(リー・チュンファ/李春华:実家に帰るシングルマザー)

   (少女期:シエ・ハンユー/謝涵羽

 

ウー・イーファン/吴以涵(リー・チンシェン/李沁萱:チュンファの娘)

 

チェン・イーウェン/陈以文(リー・チュアンツァイ/李传财:チュンファの父)

シェリー・ワン/赫容(ワン・ユージェン/王玉珍:チュンファの母)

 

ナードゥ/纳豆(リー・チュアンデ/李傳徳:チュアンツァイの異母弟、チュンファの叔父)

 

ジーン・カオ/高宇蓁(リー・チュウファ/李秋华:チュンファの姉)

シュー・ウェイチエ/舒偉傑(ジン・チャン/俊卿:チュウファの夫)

 

ヴェント・テン/邓志鸿(リー・ティエンヤオ:亡くなったチュンファの祖父)

 

チェン・ジアクイ/陈家逵(ミン祈祷師/法师、チュアンデの友人)

 

ファンジン・タイジー/范姜泰基(スーパーのオーナー)

シャオ・チョンボ/邵崇柏(スーパーの店員)

パン・ジアン/潘子安(医師)

シエ・ジンシ/謝靜思(叔父の家の婦人)

ホン・シェンウェン/洪晟文(シャーマン/廟公)

リン・シュアンミャオ/林玄妙(看護師)

シー・ホンシン/石鴻興(家主)

テンダー・フアン/黃騰浩(警察)

 

チェン・グァンロン/陳冠蓉(春華のスタント)

シュアン・シァンデ/莊仙蒂(秋華のスタント)

サイ・ジエミン/蔡介銘(天耀のスタント)

 


■映画の舞台

 

台湾のどこか

 

ロケ地:

台湾のどこか

 


■簡単なあらすじ

 

台北に住むシングルマザーのチュンファは、娘・チンシェンを育てるために、コンビニで生計を立てていた

だが、オーナーから気に入られることもなく、子育ての余波から勤務に支障が出ることもあって、とうとう解雇されてしまった

 

そんな折、祖父が亡くなったという知らせが叔父のチュアンデから入り、娘を連れて実家に帰ることになった

父とは険悪の仲で、姉もよくは思っていない

祖父の初七日が終われば帰ると伝えるものの、なぜか家族はすぐにでも追い返し違っていた

 

初七日までの我慢だと思っていた二人だったが、夜な夜な奇妙な夢を見始める

そして、チンシャンは夢ばかりか、誰かから付けられているようだと言い出す

チュンファは何とかして娘を守りながら、初七日を耐えるしかないと考えていた

 

テーマ:風習の裏側

裏テーマ:死者からのメッセージ

 


■ひとこと感想

 

台湾のホラーということで、死者を送るための初七日がテーマになっていました

祖父が亡くなって、疎遠の実家に戻ると、相変わらず家族は冷たい視線を送るというもので、それが「実は」という展開を迎えることになりました

 

ネタバレなしで観た方が良いとは思いますが、「へえ~」という感じですね

想像以上だけど、驚きもないという微妙な感じになっていました

 

いわゆるお化け屋敷的なノリで、突然現れる系が多いので、それらの恐怖というのは段々と薄れてきます

ご都合主義的な展開も多いので、冷静になった瞬間に終わってしまう映画だったように思えました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

初七日というのがどこまで世界的な認知があるのかはわかりませんが、いわゆる仏教系だとよく似た概念があるのかな、と思いました

いわゆる、故人が三途の川に到着するのが初七日で、どこに行くのかが決まるという感じになっています

 

そこまではこっちの世界に影響を与えられるということで、祖父をはじめとした家族は、チュンファとその娘を守るために、サインを送っていた、という流れになっていました

敵としては、初七日を越えれば彼らの影響を無効にできるので、それがタイムリミットということになります

 

このあたりの概念がわかっていると、タイムリミット系のハラハラ感が味わえるのですが、映画内では説明がないので、その緊迫感はあまり伝わりません

せめて、コンビニバイトを解雇ではなく、祖父の初七日のために帰省しますという感じにして、そこで店長から「初七日」の逸話とか意味を聞くというのでも良かったように思います

このあたりの導入と犯人(敵)の焦燥というものが伝わらないので、怖さというものが倍増はしていないように思えました

 


初七日について

 

本作は、祖父の死に対して実家に帰る孫を描いていて、その葬式に参列するチュンファを描いていました

チュンファには娘のチンシェンがいて、彼女とともに「初七日」が終わるまではいようと考えていました

映画の原題は「初七日」という意味になっていて、これが英題になると「お葬式」になってしまうのは、初七日というものが仏教における概念だからだと思います

 

初七日とは、命日を含めた7日目のことを言い、それは「故人が三途の川に到着する日」というふうに言われています

故人が激流か急流か緩流のいずれを渡るのが決まる日とされていて、緩い流れを渡れるように法要を行う日でもあります

三途の川を渡ってしまうとこの世に戻ることはできず、それは故人が現世との繋がりが絶たれる日であるとも言えます

 

映画では、この初七日を終えれば、故人の力も消え失せると考えていて、葬式の場所から2人を遠ざけようと考える犯人がいました

両親や姉たちは「危険だから去れ」という感じで2人を拒絶するのですが、祖父だけは違って、チュンファたちを救う力を見せつけます

このあたりの設定がちょっとブレブレになっていて、家族総出で2人を守る方向に力を使うことができなかったのかは謎でしたね

初七日を超えると影響力がなくなるということがわかっていても、死んだ側の思惑や能力に一貫性がなく、不可思議なことが多いような展開になっていたように思えました

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、実家に帰ったら家族全員が自分達を追い返そうとするという導入があって、それが実は警告だったというオチになっていました

祖父以外の家族には祈祷師たちに対抗できる能力を持っておらず、それゆえに驚かせて去らせようとしていましたが、彼女たちを呼んだ叔父が引き戻す展開になっていました

叔父たちはチュンファも殺そうと考えていたのですが、目的が一家惨殺であるならば、故人の影響が消える初七日を過ぎてから、チュンファの居場所に行って殺した方がイージーゲームだったように思います

わざわざ、故人の影響が強い場所に呼び込んで、そこで他の故人(家族)の影響下を選んでいくので、彼らの目的というものがよくわからないものになっていました

 

叔父は祖父(叔父から見れば父)の隠し子のような存在になっていて不遇を受けてきました

そこで、祖父を殺し、さらに自分を馬鹿にしてきた本家的な一族を抹殺することを考えます

根絶やしにする意味もあって、チュンファとチンシェンをも殺そうと考えます

ここまでは一箇所に集めた方が効率的ということは理解できますが、そこで彼らにとっては予期せぬことが起こってしまいます

 

彼らが初七日の影響をどこまで知っているか、というのが物語の核になっていて、知っているのと知らないのとでは物語の質が変わってきます

映画では、そのあたりが実に曖昧な感じになっていて、感覚的には「はっきりしたことは知らないが初七日はヤバい」ぐらいの感覚なのですね

なので、対抗するチュンファの方は「初七日の意味を知っている」という方が効果的な対比になります

それを考えると、「チュンファが田舎に帰る前に店長から初七日の意味を聞く」というシーンがあった方が良かったでしょう

 

このシーンでは「初七日の俗説的な意味=故人が三途の川を渡る」ということだけを聞かされ、その後の様々な出来事を通じて、「三途の川を渡るとどうなるか」に興味を持つことになります

そこで「初七日を過ぎると故人が現世との繋がりを失くす」ということを何らかの形で知り、そして起こっていることを解釈していくことになります

 

祖父が犯人を呪い殺すと、今度は犯人たちの初七日の影響を受けることになります

なので、最終的には葬式を放っておいて、初七日が過ぎるまでは田舎から姿を消すということになります

そして、時期が来てから、家族たちの弔いをする、というエンドになった方が良かったのかな、と思いました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

犯人たちの思惑によって、家族の初七日に安静を願うことはできなかったのですが、家族たちもチュンファを助けるためなら、犯人たちとともに激流を彷徨い、地獄に行くことも厭わなかったと思います

そうしたことをチュンファが知り、チンシェンに正しい初七日の意味を伝達することになるでしょう

死が死を呼び寄せるカラクリというものがそこにあって、その負の連鎖を断ち切るためには特別な初七日が必要になる

それを探す旅というものがあっても良かったのかもしれません

 

映画は、葬式のために戻ったら、親戚が実はヤバい人だった系で、主人公たちには特殊な能力がないために逃げ惑うだけになります

彼女たちの味方になってくれそうな祈祷師も実はグルで、どうしようもない展開になっていきます

そんな中で彼女たちを救うのが迷信の類になっているのですが、それがなぜ起こっているのかの説明が皆無なのですね

なので、ある程度のスピリチュアル的なロジックをきちんと提示しないと、何が起こったのかわからないまま、とりあえず主人公たちの知らないところで戦いがあって終わった、みたいな感じになっていました

 

主人公が迫り来る恐怖とどう対面するかというのは物語の醍醐味で、本作のように理解ゼロで終わってしまうのはナンセンスだと思います

何もできなくても良いけど、どうして巻き込まれたのかを解説するキャラが必要になってきます

本作の場合は、祈祷師もグルだったので、別のキャラを用意するしかないのですが、彼女が頼る先をゼロにしていたのは微妙な流れを作り込んでしまいます

せめて、田舎に帰ったら疎遠の友人と再会したとか、都会のコンビニをあのような形で辞めずに助けてくれる存在になるとかの方が良かったでしょう

元々、素行の悪い人が悪いことに巻き込まれても可哀想とはならないので、そのあたりの設定が距離感を生んでいると思います

それを考えると、根本から作り直さないといけない案件なのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101648/review/04050462/

 

公式HP:

https://jyusou-movie.com/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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