■新凱旋門物語


■オススメ度

 

新凱旋門(グランダルシュ)に興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2026.7.29(京都シネマ)


■映画情報

 

原題:L’inconnu de la grande Arche(大いなる方舟の異邦人)、英題:The Great Arch(偉大なるアーチ)

情報:2025年、フランス&デンマーク、106分、G

ジャンル:グランダルシュ建築に関わったデンマーク人建築家を描いた伝記映画

 

監督&脚本:ステファン・ドゥムースティエ

原作:ロランス・コセ『La Grande Arche』

 

キャスト:

クレス・バング/Claes Bang(ヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセン/Otto von Spreckelsen:コペンハーゲン出身の建築教師)

シセ・バベット・クヌッセン/Sidse Babett Knudsen(リヴ・フォン・スプレッケルセン/Liv von Spreckelsen:オットーの妻)

 

グザビエ・ドラン/Xavier Dolan(ジャン=ルイ・シュビロン/Jean-Louis Subilon:プロジェクトの責任者、相談役)

スワン・アルロー/Swann Arlaud(ポール・アンドリュー/Paul Andreu:フランス人建築家、施工担当)

 

ミシェル・フォー/Michel Fau(フランソワ・ミッテラン/François Mitterrand:フランスの大統領)

 

Micha Lescot(ルルー/Leloup:シュビロンに対抗する官僚、資金調達係)

Jiang Hong Chen(I・M・ペイ/Pei:中国出身のアメリカ人建築家、ファサードの解決に協力)

 

Jean des Forêts(アラン・ジュペ/Alain Juppé:フランスの国会議員、新しく赴任する予算大臣)

 

Alessandro Bressanello(トスカーナの石工職人/Le marbrier)

Ilaria Cabras(石工職人の娘/La fille du marbrier)

 

Cédric Appietto(クレーンの技術者/Tavelli le grutier)

Viilbjørk Malling Agger(コペンハーゲンの建築学生/L’étudiante en architecture)

 

François Raison(エリゼ宮の守衛)

Benjamin Clery(エリゼ宮の警備員)

 

Olivier Marguerit(デワスネ/ Jean Dewasne:内装デザイン、アーティスト)

Patrick Sobelman(サンジェルマン/Saint-Germain:施工業者、サンジェルマン社の社長)

Axelle Bossard(ルイーズ:シュビロンの秘書)

 

Guillaume Foresti(森林管理人)

Cécile Ducrocq(女性のゲスト)

Olivier Galliano(労働者)

 

Kristian Hedegaard-Petersen(墓地の庭師)

Jérôme Lanvin(政治顧問)

Jean-Yves Freyburger(「Passant parvis」の護衛)

Thomas Garcia(プロジェクトのの共同研究者)

Pierre-François Grunenwald(フランソワ・ミッテランの顧問)

Olivia Hahn Reichstein(建築学生)

Stéphane Soubiran(レストランの給仕係)

 


■映画の舞台

 

1982年、

フランス:パリ

 

イタリア:トスカーナ地方

 

ロケ地:

上に同じ

 


■簡単なあらすじ

 

1983年、フランスのミッテラン大統領は、自身の思想を誇示するがごとく、パリのデファンス地区にモニュメントを建設するプロジェクトを立ち上げた

責任者にジャン=ルイ・シュビロンを配してコンペを行ったところ、ベンマーク人の建築家ヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセンの作品が選ばれることになった

だが、誰もスプレッケルセンの事を知らず、デンマークの大使館を通じても誰も彼の事を知らなかった

 

その後、シュビロンは彼の住む村に行き、そこで受賞した旨を伝える

そして、プロジェクトの進行に際して、シュビロンはチームを編成し、ポール・アンドリューと言う建築家を加えさせた

スプレッケルセンは自身の思惑と違う方向に行くことを懸念したが、ポールは彼の理念を理解し、施工担当として裏方に回ることになった

 

だが、進めていくうちに納得のできないことが増えてきたスプレッケルセンは、苛立ちを隠せないままプロジェクトに関わり続けた

ある日のこと、妻のリヴと旅行に出かけたスプレッケルセンは、ミッテランが選挙に負けたと知らされる

急いでパリに戻るものの、新しく就任したアラン・ジュペ予算担当大臣は民間委託を含めた予算の圧縮を行なっていく

そして、スプレッケルセンはイメージとは違うプロジェクトに難航を示し、とうとう離脱することになったのである

 

テーマ:理想の完遂

裏テーマ:執着と視野狭窄

 


■ひとこと感想

 

「新凱旋門」なるものがどんなものかを見たことがなく、てっきり凱旋門の建築の話だと思っていました

建て替えでもしたんだろうかぐらいの知識しかなく、「ラ・グランダルシュ」と言うモニュメントの存在自体を知りませんでした

こんな建築があったのねと言う感じで、建築好きだと楽しめるのかな、と思いながら観ていました

 

映画は、コンペで選ばれたモニュメントを作る中で、予算とか法律とかが障壁になると言う感じになっていて、方々と対立する主人公が描かれていました

妻は架空に近い存在のようで、プロジェクトの進行と同時に不仲になる、という感じに描かれています

映画の冒頭でも「妻に関してはフィクション度強め」みたいなニュアンスの但し書きがあったので、「天才の孤独」を演出する上で誇張されたもののように思えました

 

物語は、「ラ・グランダルシュ」の建築にまつわるもので、設計者でもあるスプレッケルセンがプロジェクトから離脱してしまう過程を描いていきます

ミッテラン大統領肝入りのプロジェクトとして始まったものの、選挙の大敗が祟って、プロジェクトが暗礁に乗り上げようとしていました

その中で、理想の仕事ができないと感じたスプレッケルセンが自身の生活を取り戻すという方向転換をします

史実ベースではありますが、天才ゆえの孤高さというものがあり、本当ならどんなものが完成したのかは気になるところかなあ、と思いました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

本作は、ラ・グランダルシュの建設にまつわる裏側を描いていて、設計者がいかにして離脱することになったのかを描いていきました

デンマークで教鞭を執っている建築家のアイデアが採用され、「projet Tête Défense 」が具体性を帯びていきます

プロジェクトの責任者であるシュビロンは、オットーの他にフランス人建築家のポール・アンドリューを共同建築家としてメンバーに組み込みますが、そこで衝突が起こっていきます

 

完成されたものはカッラーラ産の大理石を使用したり、側面には5cmのガラスで覆ったりしていて、これだけを聞くと、オットーの思惑通りに完成されたように思えます

オットーは1986年の夏にプロジェクトから身を引くことになり、その後はアンドリューが引き継いで完成させていました

オットーは完成を見ることなく逝去しましたが、彼がフランスの政治的なものとは合わなかったように思えます

完成させるには様々な軋轢が生じると思いますが、あの段階で「ガラスの接着をOKにする法案を通す」とかは無理難題だったように思えます

 

彼の中にあった理想系をミッテランも支持していましたが、それ以外のことが問題となって、政権基盤を失うことになります

彼はそのまま大統領の職を続けていたけれど、議会運営は鶴の一声というわけにはいかないねじれ状態になっていましたね

それによって、巨額すぎるプロジェクトの民間委託のような感じに話は進んでいき、アーチを完成させるために、オフィスフロアを拡大するなどの妥協をせざるを得なかったのですね

この方針の転換と、蔑ろにされている感覚、そして自身の生活を犠牲にすべきかという判断のもと、オットーは身を引いた、という風にまとめられていました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、感性豊かな建築家の苦悩を描いていて、実務的な洗礼を受けるという感じになっています

使う材料、国による安全基準の違いなどがありますが、オットーが一番こだわったのは「細部にどこまで心血を注げるか」という部分だったと思います

アンドリューとの会話の中で、人には見えない部分の妥協の話があって、そこでオットーは「神は見ている」と言います

この感覚を共有できなかったことが離脱の原因となっていて、これがデンマーク人とフランス人の違いだったのかはなんとも言えないと思います

 

アンドリューを自分が建てた教会に連れてきて、そこでオットーのこだわりを理解しましたが、それでもシュビロンが推し進めていく実務がオットーを襲っていきます

そうした僅かなものが積み重なった末に、これは私の作品ではないと感じ、撤退することになりました

これは彼の健康的な側面もあったと思いますが、実際には「自分の名前を残したくない」という本音があったように思います

 

その後、オットーの離脱、訃報を受けたのちに完成に至りますが、オットー自身が見ていたものがどこまで再現されたのかは分かりません

彼はフランスの歴史軸を理解し、その延長線上に必要なものを構築しようとしていて、それが時の実務者に理解されなかったとも言えます

その後のフランスの歴史を見ると、何を見誤ったのかという部分はあり、それはラ・グランダルシュの建築が示しているようにも思えます

そう言った意味において、フランスの現代史の1ページとして収まりきらないプロジェクトだったのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/105617/review/06783951/

 

公式HP:

https://mimosafilms.com/thegreatarch/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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