■オールド・オーク
■オススメ度
難民と地元民の関係性に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2026.8.27(アップリンク京都)
■映画情報
原題:The Old Oak(パブの名前)
情報:2023年、イギリス&フランス&ベルギー、113分、G
ジャンル:貧困層の支援に関わったパブのオーナーを描いた社会派ヒューマンドラマ
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラバーティ
キャスト:
デイブ・ターナー/Dave Turner(T・J・バランタイン/TJ Ballantyne:パブ「The Old Oak」のオーナー)
Lola(マラ/Marra:TJの愛犬)
エブラ・マリ/Ebla Mari(ヤラ/Yara:シリア難民の女性)
Amna Al Ali(ファティマ/Fatima:ヤラの母)
Yazan Al Shteiwi(バシール/Bashir:ヤラの弟)
Diyaa Al Khalid(サリーム/Salim:ヤラの弟)
Rahaf H(ナディア/Nadia:ヤラの妹)
クレア・ロッジャーソン/Claire Rodgerson(ローラ/Laura:難民支援のボランティア)
トレバー・フォックス/Trevor Fox(チャ-リー/Charlie:TJの幼馴染、パブの常連)
Abigail Lawson(ミシェル/Michelle:チャーリーの娘)
演者不明(メアリー:チャーリーの妻)
クリス・マクグレイド/Chris McGlade(ヴィック/Vic:悪態をつくパブの常連)
Jordan Louis(ギャリー/Gary:パブの常連、オールバック)
Arthur Oxley(アーチー/Archie:パブの常連)
Chris Gotts(ジャファ・コーク/Jaffa Cake:パブの常連、元建設業の配管工)
Jen Patterson(マギー/Maggie:パブの店員)
Joe Armstrong(ジョー/Joe:パブの常連)
Col Tait(エディ/Eddy:パブの常連)
Jake Jarratt(トニー/Tony:電気工、エディの甥)
Andy Dawson(ミッキー/Micky:パブの常連)
Chrissie Robinson(エリカ/Erica:パブの常連)
Maxie Peters(トミー/Tommy:パブの常連)
Neil Leiper(ロッコ/Rocco:ヤラのカメラを壊す地元民)
Ruby Bratton(リンダ/Linda:体調不良になる少女)
Michelle Bell(モリー/Molly:リンダの母)
Alex White(マックス/Max:リンダの兄)
Rosa Crowley-Bennett(支援団体のボランティア)
Bobby Beldrum(支援団体のボランティア)
Micky McGregor(不動産屋)
Rhys Mcgowan(大型犬の飼い主)
Reuben Bainbridge(大型犬の飼い主)
Jack Staples(大型犬の飼い主)
Debbie Honeywood(タニア/Tania:美容師)
Mandy Foster(美容師)
Joanne Hague(美容師)
Debbie Cook(美容師)
Chris Braxton(セイディ/Sadie:美容室の客、娘の引きこもりに悩む母)
Ali Mohamed(ビデオ映像のシリアの少年)
Rob Kirtley(老いた隣人)
Laura Lee Daly(ロージー/Rosie:支援者)
Andrea Johnson(エイミー/Amy:?)
Lloyd Mullings(ギャリーの友人)
Sasha(マラを襲う大型犬)
【その他の出演者】
Diala
Iman Awad Hamdan
Hasna Hassoun
Rabiaa Hassoun
Sabah Hassoun
Rana Ihsan
Ahmad Ihsan
Imad Kanaan
Jamal Al Khalaf
Islam Al Khalid
Khuloud Mohammad Al Ali Lana
Anas Mahmoud
Moamar Mahmoud
Yousef Al Masri
Hadiya Al Salih
Jamila Al Salih
Abdelkafi Al Shteiwi
Hanidi Aba Zied
Cath Armstrong
Val Barron
Sarah Bryson
Paul Dent
Chris Fallows
Steve Fergus
Josh Hulley
Gary Kitching
Donald McBride
Kika Markham
Aidan Pearn
Stuart Ramsay
Heather Wood
■映画の舞台
2016年、
イングランド:ダラム州
ロケ地:
ムートン/Murton
https://maps.app.goo.gl/7HyeNC122oFfAThc7?g_st=ic
イージントン/Essington
https://maps.app.goo.gl/ebqe3TFRezpyxwB87?g_st=ic
ダラム/Durham
https://maps.app.goo.gl/uyyVa5BEkRoetdZP7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
2016年、イングランド北部の寂れた元炭鉱の町では、国の政策により、シリアからの移民を受け入れていた
支援団体が住居を用意して住まわせていくものの、その動きに地元民は困惑していた
そんな町の中でパブを営んでいるTJは、支援団体のローラの運転手として活動していたが、今ではパブは常連が来ないと成り立たないほどに困窮していた
ある日のこと、シリアからヤラ一家が町にやってきた
ヤラは町の風景をバスの車内から撮影していたが、地元民のロッコと揉め事を起こしてしまう
TJは仲裁に入るものの、ヤラのカメラは壊れてしまい、その修理のために尽力することになった
TJは今は稼働させていないパブの奥に彼女を連れて行き、そこで父が使っていたカメラを見せる
修理に必要な部品は手に入らなかったが、TJはこのカメラを売れば修理代くらいにはなるだろうと渡した
その後、ヤラはローラたちと一緒に難民支援の活動をすることになったのだが、パブの常連のチャーリーたちは彼らを追い出す運動を始めると言い出す
集会場所に奥のホールを使わせて欲しいと言うチャーリーだったが、TJはそれを断った
だが、ヤラとローラのアイデアのためにそこを使うことになり、さらにチャーリーたちの反発が強くなる
そんな折、TJの愛犬マラが近くの大型犬に襲われてしまうのである
テーマ:分断と連帯
裏テーマ:ヘイトが生まれる理由
■ひとこと感想
シリアからの難民が押し寄せる寂れた町が舞台となっていて、その現状に嘆く地元民たちが描かれていました
その中で、支援団体の協力者としてTJがいて、彼の店は難民の移入に反対の男たちばかりだったりします
その中でも、数人は支援側に回るなどの変化がありますが、意固地になっている四人組が最後に余計なことをする、と言う流れになっていました
シリア難民のヤラとの交流の中でTJにも変化が生まれるのですが、その決定機となったのはマラの死であると思います
その時に話を聞いてくれる人がいたと言うことがTJを動かす原動力となっていて、パブの裏を再び稼働させることになりました
そこでは難民に関わらず、生活困窮している子どもたちを支援する場所となっていて、いわゆる「子ども食堂」のようなものを運営していくことになりました
難民支援のボランティアも自国の貧困には無関心だったと言う側面もあり、生まれた国に住むことができないと言うことと「住む場所がある」との差異が意識を分断していたりもします
結局のところ、政府の誰かが受け入れを表明して方策を打ち立てたけど、富裕層がいるような町ではなく、寂れたところに送り込んでいるだけで、現地民だけが苦労すると言う構図になっていました
その状況をどう受け止めるかは地元民たちの選択であり、TJのように戦う相手を間違えずに連帯しようと考える人もいれば、戦う相手を自分よりも弱い者に設定するような人々もいたと描かれ方をされていました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
現地民の意見も理解できるし、その国にいたら死ぬと言う状況から逃げてくる側の立場も理解できると思います
単なる出稼ぎなどの「移民」とは違い、生死の末に国を捨てざるを得ない「難民」を同列で語るのは無理があります
難民は生きていくためには支援し合うコミュニティが必要となり、それはやがて宗教的な連帯を産むことになります
映画では描かれませんが、難民たちはムスリムとして、アッラーに祈りを捧げているだろうし、そう言った場所がいずれは必要になってくると思います
映画では、そういった宗教絡みっぽい衝突は描かれず、難民の側もそこまで無茶な権利を主張したりしません
このあたりも移民と難民の違いに依るもののように思いますが、実際には人によるとか、支援者によると言う感じなのだと思います
例えばモスクを立てたと言う出来事があったとして、その事象に対して、どのような思惑が動いたのかと言うのは表面的にはわからないものだと言えます
物語としては、支援に回る側のTJに不幸なことが連続で起きるのですが、全体的に「死が連帯を強化する」と言う感じに描かれています
マラの死に対して悲嘆にくれるTJを慰めたり、ヤラの父の死の確定によって地元民が集まったりもします
チャーリーを含む常連たちの嫌がらせによって支援活動は停止してしまうのですが、連帯と言うことを考えるならば、あの場所にこだわる必要もないのでしょう
とは言え、象徴的な場所でもあったので、その意味が変わることへの配慮というものは必要だったと言えるのかな、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
ケン・ローチによる「北部イングランド三部作」の最終章という位置付けになる本作ですが、そこで描かれていたのは「他文化と連帯」となっていました
「他文化共生」ではなく「連帯」というところが物語の基礎となっていて、ある目的のためにどのようなことが必要なのかを見つめ、それを補っていくという方法になります
映画では、まずは貧しい子どもたちに食事を提供しようというところから始まっていて、いきなりムスリムとの共生と模索しようなんて話にはなって行きません
移民と難民は決定的に違うものですが、コミュニティが形成され、その目的が動き出すのは移民の方が早いと思います
それは、その土地で所得を得ることができていて、生活の基盤が出来上がっているからなのですね
なので、そう言った人たちが集まり、行動を共にしていくことで、そのコミュニティの権利の拡大という方向に話が進むやすいと言えます
一方の難民たちは生きていくことに必死なので、そのような共生を考える余裕はありません
ほぼ100%施しを受ける側になっているので、その居場所を維持するために余計なことをしないと思います
目的を持って移り住んでくる人と、生きることが目的の人のスタートもゴールも違うので、これらの問題を混同させるとややこしくなっています
それでも、難民状態から生活基盤ができ、移民と変わらない生活を送り出す人が増えると、コミュニティ化することは避けられません
でも、元々地元民との連帯が基盤があって、そこに連帯のコミュニティが生まれると話は違ってくると思います
連帯なき共生というものは分断を生むのですが、それは相互理解がないまま、それぞれのコミュニティの規模が拡大するからだと思います
また、過剰な支援が分断を生むこともあり、連帯と言えども自立の支援で留まる方が良いと思います
それでも、世の中にはこのような状況をビジネスにする人が後を絶たないので、そう言った活動もやがては分断を生む下地になって来るのでしょう
難しい問題だと思いますが、コミュニティは価値観の集団であることも多いので、その根底になりがちな宗教というものは切っても切れないもののように思います
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/99304/review/06889347/
公式HP:
