■大統領のケーキ


■オススメ度

 

イラクのかつての体制に興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

 

鑑賞日:2026.7.16(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:مملكة القصب(葦の王国)、英題:The President‘s Cake(大統領のケーキ)

情報:2025年、イラク&アメリカ&カタール、105分、PG12

ジャンル:大統領のケーキ作りを任された9歳の少女を描いた社会派ヒューマンドラマ

 

監督&脚本:ハサン・ハーディー

 

キャスト:

バニーン・アハマド・ナーイフ/Baneen Ahmad Nayyef(ラミア・アルマド・ナーイフ/Lamia:大統領のケーキの材料を探す少女、9歳の孤児)

ワヒーダ・サーベト/Waheed Thabet Khreibat(ビビ/Bibi:ラミアの祖母)

 

サッジャード・モハンマド・カーセム/Sajad Mohamad Qasem(サイード・ムハンマド・カシム/Saeed:ラミアの友人)

Rahim AlHaj(ジャシム/Jasim:郵便配達人)

 

【その他の出演者(ほぼ登場順)】

Muthanna Malaghi(ムタンナ/Muthanna:小学校の先生)

Ahmad Qasem Saywan(ムサ/Musa:食料品の店主)

Maytham Mreidi(ムハンマド・カミル:サイードの父)

Thaer Salem(マジディ/Majdi:失明した新郎)

Ali Khalaf(衣料品販売人)

Fatima Abouharoon(ラフマ/Rahma:ビビの知り合い、里親候補)

Mahmoud Mazen Lazen(バスの運転手の助手)

Aqeel Wadi(アリ:警察署長の助手)

Mohammed Rheimeh(イザット/Izzat:小売店主)

Rokia Alwadi(ヒヤム/Hiyam:妊婦)

Ali Saddam Najem(似顔絵捜査官/Drawing Officer)

Abdelkarim Jasim(マリク/Malik:警察署長)

Mohammad Qasem(トラックの運転手)

Raed Harbi Abdeljalil(男性看護師)

Elaf Mohamed(歌手)

Ahmed Al-Hayali(ウード奏者/Oud Musician)

Mohammed Zaid(ウォルナット奏者/Walnut Musician)

Al-Hassan Adnan(ネイ奏者/Nay Musician)

Mohammed Ammar(パーカッショニスト/Percussionist)

Ahmad Hameed Ahmad(時計売り)

Haidar Jamal Jaber(ユセフ:ケーキ屋の店主)

Aqeel Al Shamri(製粉作業員)

Tayseer Ibrahim Radi(映画館に連れて行こうとする肉屋)

Nadia Rashak(サイードの母)

 

サダム・フセイン/Saddam Hussein(本人役、アーカイブ)

 


■映画の舞台

 

1990年代のある年の4月26日(誕生日2日前)

イラク:バグダッド郊外

 

ロケ地:

イラク:バグダッド

 


■簡単なあらすじ

 

イラクのバグダッド郊外に住んでいる9歳の少女ラミアは、両親を亡くして以来、祖母と一緒に過ごしていた

隣人のサイードは足の悪い父と母と暮らしていたが、経済状況は共によくなかった

彼らは川縁に葦を組み込んだ家を建てて住んでいて、小学校へはボートを漕いで通っていた

 

ある日のこと、フセイン大統領の誕生日のケーキを任される抽選会が行われた

サイードは果物係となり、ラミアはケーキを準備する役目を司ることになった

ビビはラミアを知り合いのラフマのところに連れて行き、2日間をそこで過ごすように命じる

だが、自分がケーキを作らなかったことで先生に迷惑が掛かると考えるラミアは、その材料を探すために街へと繰り出してしまった

 

店を回って材料を揃えようとするものの、元手がなく買うこともできない

そんな折、窃盗を働いていたサイードを見つけ、二人は逃亡することになった

そして、二人で知恵を出し合いながら、ケーキの材料探しを始めるのである

 

テーマ:奉仕精神の行き先

裏テーマ:消え去る日常

 


■ひとこと感想

 

イラクがフセイン政権だった時代において、大統領の誕生日を祝うために奮闘する小学生が描かれていました

ケーキの材料を買うお金すらないので、家にあるものを売ってお金にするとか、少しの労働で対価を得るとか、それでも埒が開かないので「借りる」という方法を取っていきます

大人たちも子どもだからといって優しくするようなこともなく、普通に金銭の交渉をするかと思えば、少ない偽札を渡すという人物までいました

弱肉強食の世界において、容赦なく、取れる奴から取るというのが徹底していたように思います

 

映画は、一国の大統領を全国民が祝うのが義務という世界なので、教育に関してもかなり強烈なシーンがありました

この体制が崩れて今どうなっているのかはわかりませんが、そう簡単に変わるものでもないように思えてしまいます

両親を亡くしたラミアと、怪我しているけど父は健在で優しい母もいるサイードは対称的な家庭のように描かれています

ラミアは祖母が育てているけど、健康上の理由でもう世話をするのは無理と感じていました

 

そんな中で、里親に出そうとするのですが、ラミアは教育の犠牲に見えるほどに大統領のケーキに固執します

それが制裁を受けた家族のようになりたくないというよりは、先生が困るからという理由になっていたのは衝撃的でしたね

国に仕えるものに対する敬意というものは教育によって培われているのだと思いますが、小学生が大統領に宣言を捧げたりすることに疑いを持たないというのは怖いことだなあと思いました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

本作のネタバレと言えば、材料を揃えられるのかどうかというところだと思いますが、およそ日本では考えられない展開を迎えていきます

ラストのアレは衝撃的でしたが、それ以外にも子どもに対して容赦ない展開が多すぎて引いてしまいます

生徒のリンゴを盗む教師に始まり、まるで虫を追い払うかのように応対する店主、偽札を掴ませる男もいれば、アダルト系映画館に少女を連れ込もうとする輩までいます

劇中で誰も亡くなっていないのが不思議な作品で、サイードがどこかで誰かを殺めてしまうのではないかとヒヤヒヤしてしまいました

 

郵便局員のジャシムは公務員的な立場なので、警察なども無碍にはしないのですが、それ以外の民間人はなかなか強烈な感じに描かれています

そこに誇張があるように思えないところがあって、リアルでもこんな感じなんだろうなあ、と思わされます

ラミアをはじめとして、多くのキャストは演技未経験者ということもあって、「いつも通りやってください」的な演出だったのでしょう

まるでドキュメンタリーで街の様子を追っているような印象があって、どこまでが作られたものなのかわからないように思いました

 

ラミアはサイードと一緒に「まばたきゲーム」で遊んでいて、ラストも怖さを克服するためにそのゲームを行なっていました

二人が今後どのように生きていくのかはわかりませんが、サイードは意外と頼りになる大人になりそうに思えますね

サイードが友だちの壁を乗り越えることができるのかはわかりませんが、ラストの表情を見ると案外うまく行きそうにも思えてしまいますね

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、教育によって子どもを洗脳している様子が描かれ、それを誰も疑問視しない世界線となっていました

大人もみんなそのように暮らしてきたということもあって、生活が苦しくても、国家権力に対して何かを言うと言うこともほとんどありません

サイードが大統領の話をしようとするとラミアが止めていたので、かなりの監視社会なんだな、と思わされました

政権に非協力的だと「通報」されるようで、それを行うのは国家公務員の仕事のように描かれています

 

映画の背景がほとんどアラビア語なので全く何が書いてあるかわからないのですが、キャスト欄を調べるのも大変でしたね

登場順に表記されていたので助かりましたが、キャストに入っていないセリフありの人とかもたくさんいたので、どういう契約になっているんだろうと思ってしまいます

冒頭のリンゴをくれた男とかクレジットになかったと思いますし、隣の席に座っていたイスマイル(親が自転車を治したとか言ってた子)、大統領に対する祝辞のようなものを述べていた小学生代表の子どももクレジットがなかったように思います

 

IMDBなどで英語名でググってもほとんど情報が出てこないので、無理を承知でアラビア語のサイトを見つけて、キャスト名を探し出したりしましたが、アラビア語が右から左に書く文字なので、語句の範囲を指定するのに苦労しましたね

ある程度、文字の並びから「ここからここまでが俳優の名前」まではわかるのですが、そこから先も険しい道のりでしたね

数人ほど「おそらくそうだろうな」と言う感じで当てていますので、めっちゃ詳しい人などが読むと間違いが発見されるかもしれません

 

映画は、ラストの空爆をどう捉えるかですが、あれだけ苦労して手に入れたものが一瞬で無意味になるのはやるせないですね

大統領のために作ったケーキを軍人が味見しているのはどうかと思いますが、このケーキエピソードすらも洗脳教育の一環なのでしょう

大統領が食べるとか思いませんが、周囲の側近がおいしくいただいていることを願うばかりですね

ラストは空爆でしたが、それ以上に悲惨なことと言えば、集められたケーキが無惨に廃られる、みたいな展開でしょうか

実際には廃棄されているのだと思いますが、その絵をあえて作らなかったのは良心の現れだったのかな、と思いました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/104925/review/06740835/

 

公式HP:

https://movies.shochiku.co.jp/presidentscake/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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