■本心は移りゆくもののように思えて、芽生えた瞬間に最後まで消えないもののように思えますね


■オススメ度

 

人の心の正体について考えたい人(★★★)

AI系SFに興味のある人(★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.11.8(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

英題:The Real You

情報:2024年、日本、122分、 G

ジャンル:AIによって亡き母を蘇らせようと考えた男を描いたSF映画

 

監督&脚本:石井裕也

原作:平野啓一郎『本心(文春文庫)』

Amazon Link(文庫本)→ https://amzn.to/40K69WW

 

キャスト:

池松壮亮(石川朔也:母をVF<ヴァーチャル・フィギュア>で蘇らせようとする息子、リアルアバター)

   (高校時代:伊勢崎寛太?

田中裕子(石川秋子:自由死を選んだ朔也の母)

 

三吉彩花(三好彩花:秋子の親友とされる女性)

 

水上恒司(岸谷:朔也の幼馴染)

 

仲野太賀(イフィー:著名なアバターデザイナー)

 

田中泯(若松:朔也のリアルアバターのクライアント)

 

妻夫木聡(野崎将人:VFの開発者)

太田凛音(あずさ:野崎の娘)

 

綾野剛(中尾:野崎のお手伝い、VF)

 

二階堂智(ベテラン刑事)

笠原秀幸(若い刑事)

 

前田勝(リアルアバターの先輩)

佐野弘樹(リアルアバターの先輩)

杉田雷麟(襲うリアルアバター?)

近藤拓馬(喧嘩の仲裁に入るリアルアバター)

 

中村中(コインランドリーの清掃員)

大津尋葵(コインランドリーでキレる男)

 

結城貴史(朔也の高校時代の担任)

宮下咲(村田由紀:朔也の高校時代の想い人)

 

坂ノ上茜(果物店の店員)

 

佐藤貢三(レストランの支配人)

福田航也(レストランのウェイター)

後藤亜蘭(レストランのピアニスト)

 

窪田正孝(リアルアバターのAIアシスタントの声)

大鷹明良(リアルアバターのクライアントの声、偉そうな紳士)

若林時英(リアルアバターのクライアントの声、若者)

今村裕次郎(リアルアバターのクライアントの声、若者)

川碕珠莉(リアルアバターのクライアントの声、若者)

 

山野海(朔也のクライアント)

 

中村無何有(若松の息子)

巻島みのり(若松の息子の妻?)

高根沢光(若松の主治医?)

 

谷田麻緒(?)

久保田洋子(?)

 

古川一博(イフィー専属のウェイター?)

森下唯(イフィーの楽団、ピアノ)

栄田嘉彦(イフィーの楽団、ヴァイオリン)

甲斐涼太郎(イフィーの楽団、ヴァイオリン)

小神野りえ(イフィーの楽団、ヴィオラ)

佐倉圭亮(イフィーの楽団、チェロ)

 


■映画の舞台

 

2025年、

日本:都内のどこか

 

ロケ地:

東京都:新宿区

ハピマルフルーツ神楽坂

https://maps.app.goo.gl/uqDx3oMPMKiTkzgd9?g_st=ic

 

東京都:多摩市

パルテノン多摩

https://maps.app.goo.gl/r99Lo6BXam2JfGW46?g_st=ic

 

東京都:台東区

Theater SPROUT

https://maps.app.goo.gl/tg7ziC5T38vEencw5?g_st=ic

 

東京都:世田谷区

アンティーク&カフェ マジョレル

https://maps.app.goo.gl/SNuQRrFKgQtrAnNV6?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

母・秋子と二人で暮らしてきた朔也は、幼馴染の岸谷と同じ工場でアルバイトしていた

ある日、母から「大切な話がある」と電話を受けた朔也だったが、幼馴染との宴席を優先してしまう

そして、その帰りに、増水した川岸にて母を見つけた

危ないと思って駆け寄ったものの、母の姿はなく、自身も事故に遭ってしまった

 

それから1年後、病床で目覚めた朔也は、母親が「自由死」したことを告げられる

母はそんなことをする人じゃないと思うものの、彼女は事前に登録を済ませていて、日記にもその記述を発見してしまった

 

さらに1年後、岸谷からリアルアバターの仕事を紹介された朔也は、さまざまなクライアントのリアルアバターとして働き始める

そして、彼の伝手にて、VF(ヴァーチャル・フィギュア)開発者の野崎と会うことになった

彼は、AIに情報を読み込ませることで、本物以上の母親を作り出すことができると言うのである

 

テーマ:本心とは何か

裏テーマ:本心と人生の相関関係

 


■ひとこと感想

 

AI技術によって自由死を選んだ母を蘇らせようとする若者を描いていて、自分だけの情報では足りないために、母を知る人の情報に頼ることになりました

その女性が朔也の過去と関係があると言う感じで進んでいきますが、後半はその女性との関係がどうなるのかという恋愛的な物語に変わっていきました

 

写真を加工する技術というのは進歩していて、残っている写真も本当の姿を写しているのかはわかりません

笑顔だと思った母親は、実際には真顔で笑っていないと言われますが、その裏を取る術はありません

これと同じで、本心というものも、感じたい人が感じたいように思っている部分があるように思えました

 

映画は、近未来が作り出した技術によって、人の心とはどんなものかを描いていきます

最後まで観るとタイトルの意味がわかりますが、それをどう捉えるかは人それぞれなのかなと感じました

考えさせる部分があるように思えますが、実際にはそこまで深いものではないように思えました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

AIとかVFが出てくるのは最初だけで、後半はテイストが変わってしまったように思います

AIに情報を入れれば入れるほどに正確になりますが、同時に自分が知らない部分の情報も入ってくるようになります

とは言え、AIで蘇った母親は、息子に対して見せる面は一緒でしょうし、朔也が母親の別の一面を知るのも、母親が彩花だと思って話しかけたからという感じになっていました

 

母の友人である彩花が登場し、朔也の過去の出来事の謎解きが始まる感じになっていて、想い人と別人の人物を重ねるかどうかという選択へと話が変わっていきました

そこで彩花は朔也の本心を聞き出そうとしますが、最後まで朔也は彩花に心を開かずに終わっていました

これを踏まえると、人の本心というものはどんな人であれ墓場まで持っていってしまうのかな、と感じました

 

原作未読なので比較はできませんが、おそらくはSFミステリーというよりは恋愛小説がベースなのかなと思いました

母親の本心を知る中で自分の過去と向き合い、そして自分の本心を探られてしまう

その駆け引きの中で、朔也はどうするのかという物語だったのではないでしょうか

 


AIで人の心を作れるか

 

本作では、AIに情報を与えて、それによって人の心を再現しようと考えていました

実際にそれっぽいものを作り出し、情報の精度が高ければ高いほど、本物に近づくとされていました

でも、情報が増え、学習するほどに「朔也の知らない母親」になって行きます

それは、母親が朔也に見せている部分が一部分なので、どんどん知らない母親になっていくのは当たり前のことだと思います

 

AIが人の心を作れるかについては、個人的には不可能だろうと考えています

それは、人の心は反応の歴史によって形成されるのですが、その反応を得る行為というものは限定的であると思います

人生100年だとしても、その年月で経験できることは限られていて、それゆえに反応の症例も少なく、「わからない反応の部分が多くなる」のですね

それゆえに、たとえ全ての反応を組み込めても、未経験ゾーンは組み込めないので、限定的なものになってしまいます

 

人類全ての反応を組み込んだとしても、人には限りなく近づくけれど反応がサンプルの数だけ違うので纏まり切らないのですね

なので、そこから症例の多いものを抽出したときに、人類の多くはこのような心を持っているという統計的なものができても、それに相対した人が人間の心と認識できるかは微妙だと思います

物凄く模範的な心になるか、悪い部分を凝縮したような心になるかはわかりませんが、こんな奴いるか?みたいな感じになると思うのですね

そう考えると、人類の反応の統計を作れても、無限にある組み合わせの一つである個体には辿り着かないのではないか、と考えています

 


本心の行き先

 

人の心は不思議なもので、本人からも隠れようとするし、本人もあまり見たがらないもののように思います

潜在意識下で思っていたことも本心には含まれるのですが、それを否定したくなる倫理観のようなものが働いてしまいます

それゆえに、私はそんな人間じゃないと思ってしまいますし、理想で描いている自分との乖離を、本心にふれることによって感じてしまうと思います

個人的には、それら全てを含めたものが自分であり、驚くべきようなことでもないと考えていますが、ある意味性悪説側に立っているからのように思えます

 

人が邪悪なものかどうかを考えた時、おそらくは邪悪であると考える方が自然なのでしょう

この邪悪をどの対象から見るかによって変わりますが、対人においては「相手の望むような自分」でなければ、心地よいものには見えないでしょう

人に好かれようとして、芯の部分を隠すのが人間であり、本能的に「全てを曝け出すこと」が対人コミュニケーションに関しては不利益であることはわかっています

ある一線を越えても出せない自分がいるように、それは相手との関係性が壊れるからというよりは、そこまで露出することに意味を見出せないからのように思います

 

結局のところ、本心というものは隠れたまま一生を終え、自分自身が認知しないまま終わることもあると思います

自分のことがわからないというのはこの考え方に属し、自分が見たい部分を見ている以上、本心を無視する形で生涯を終えることになるからなのですね

そして、死の淵に立って初めて、自分はロクでもない人間だったなあと思い返すことの方が多いと思います

中には、邪悪であることを見てほしいという願望を持つ人もいますが、どこかで突出したいと思いながらも、隠れていたいというのが人間の本質のように思えてなりません

 

本心のある部分を誰かに話せたとして、その全てを話せる人というのはほとんどいないでしょう

それは、その人に関しないことは話せても、その人に対して抱えているものだけは隠そうとするからなのですね

映画では、母は彩花に本心を話しているように見えても、彩花に対する思いというものは露出していないし、息子に見せている部分も息子には見せたくないものを隠している状態となっています

間接的に彩花が知り得た本心を知ることになるのですが、その範囲が多ければ多いほど違う人間のように見えてしまいます

 

彩花から見ても、朔也にだけ見せている部分が多くなればなるほどに違う人間のように見えるのですが、この乖離に関してダメージを受けるのは朔也側だけだったりします

それは、彩花と母との関係が母親にとっての安息になっていて、本心が露出しやすいからだと思います

なので、常に緊張の中にある朔也との関係よりは、より多くの本心が出やすくなって、それが朔也の違和感を生み出していると言えるのでしょう

それでも、朔也も彩花にも話せない心というものがあって、それは彼女が墓場まで持って行ったものとして、誰にも知られないものとなっていくのではないでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は、母の友人である彩花との出逢いによって揺らぐ朔也が描かれていましたが、彼は彩花をイフィーに捧げてしまいます

わかりやすく逃げたのだと思いますが、それでもラストでは「彩花の手が朔也に差し伸べられる」というエンドを迎えていました

これまでに何度も彩花が腕にヘアバンドをかけているシーンが描かれていて、その答え合わせのようなものがラストにあると言えます

朔也は彩花を拒絶したけれど、彩花は朔也の本心を理解して、自分の本心に従ったのだと言えるのでしょう

 

朔也は母の本心を知りたい一心で生きていて、結局は母は自由死を選んでいないし(おそらく増水した川で猫を助けようとして亡くなった)、ずっと聞きたかった本心は「愛している」という朔也が思っているようなものではありませんでした

結局のところ、朔也がどのようにして生まれたのかという情報はどこまで信用性があるものかはわからないのですが、それはこのVFというものが「当人と相対した人物による情報提供」というものがベースになっているからなのですね

なので、その人が嘘を言えば真になるし、歪んだ解釈をしていたかもしれないし、悪意を持ってシステムを揶揄う場合もあったりします

それら全てが人間の本心の表れであり、詰まるところ、本心というものは誰にもわからないし、些細な出来事で変わってしまうような脆いものと言えるのかもしれません

 

映画は、朔也を絶望から救うのが彩花という立ち位置になっていて、彼女が朔也の元に戻れたのも、イフィーに本心を伝えたからだと思います

本心が語られる時、そこには聞き手のバイアスが掛かっていて、イフィーの中にも「彩花は朔也のことを愛しているに違いない」という思いがあったと思います

それを隠して自分の元に来るというのは、朔也に対する完全勝利のようなものなのですが、それはイフィーだけが思い込んでいる価値観であると思います

本心とは、そんな邪推なもので汚されるようなものではなく、本能的な感情を有するものなのでしょう

なので、彩花が朔也の元に戻ったのは、彼女の機敏であると同時に、彼女自身の中に芽生えた真理がそうさせているのだと思いました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101972/review/04449986/

 

公式HP:

https://happinet-phantom.com/honshin/

アバター

投稿者 Hiroshi_Takata

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