【映画感想】ヒンド・ラジャブの声【後半:ネタバレあり】

■ヒンド・ラジャブの声


■オススメ度

 

実際に起きた事件に興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2026.9.10(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題:صوت هند رجب(ヒンド・ラジャブの声)、英題:The Voice of Hind Rajab(ヒンド・ラジャブの声)

情報:2025年、チュニジア&フランス、89分、G

ジャンル:戦闘地区に取り残された少女とのやり取りを描いた伝記映画

 

監督&脚本:カウーテル・ベン・ハニア

 

キャスト:

サジャ・キラニ/Saja Kilani(ラナ・ハッサン・ファキフ/Rana Hassan Faqih:通報を受ける人道支援組織「パレスチナ赤新月社」のボランティア)

モタズ・マルヒース/Motaz Malhees(オマール・A・アルカム/Omar A. Alqam:ラナの部下、ヒンドのドイツ在住の親族のファーストコールを受けたボランティア)

アメル・レヘル/Amer Hlehel(マフディ・M・アルジャマル/Mahdi M. Aljamal:救急支援調整の責任者)

クララ・フーリ/Clara Khoury(ニスリーン・ジェリース・カワス/Nisreen Jeries Qawas:カウンセラー)

 

Nesbat Serhan(レイラ/Leila:情報発信担当者)

Ramy Brahem(マフディの助手)

Firas Khoury(ボランティア)

Ali Talel Yacoub(ボランティア)

Heba Bader(ボランティア)

Oday Ayoyda(ボランティア)

 

ヒンド・ラジャブ・ハマダ/Hind Rajab Hamada(本人役、アーカイブ&音声、ハヌードはヒンドの愛称)

 

【その他の出演者】

Mostfa Ben Abdallah

Ghassen Bel Haj

Hbiba El Baatout

Mariem El Draoui

Hedia Khayati

Jaweher Saad

Nour El Houda Rhimi

Jaweher Al Mahmoudi

Mariem Toumi

Safa Ouertani

Amal Laaribi

Obada Dwikat

Ahmed Yomok

Aysam Abotaleb

Mahmoud Abukmeil

Mohamed Balass

Nejem Majdi

Wasim Albittar

Youssef Emad

 


■映画の舞台

 

2024年1月29日、

パレスチナ:ガザ地区

 

ヨルダン川西側ラマーラ地区

 

ロケ地:

チュニジア

 


■簡単なあらすじ

 

2024年1月29日、パレスチナのラマーラ地区に拠点を置く人道支援組織「赤新月社」に一本の緊急通報が入った

受けたのはオマール(モタズ・マルヒース)というボランティアで、彼はドイツにいるパキスタン人の男性から、ガザ地区に親族がいて、戦車の銃撃を受けている、という内容だった

オマールは男が指定する電話に掛けると、幼い少女の声が聞こえた

場所を特定し、状況を確認しようとするものの、相手は6歳の子どもであり、さらに通信環境が最悪のため、なかなか情報を入手することはできなかった

 

この一報を受けて、救急車を現地向かわせるために調整役のマフディが奔走することになった

ルールとして、赤十字を通じての要請、保健大臣への打診、軍部への交渉などを通じて、「安全ルート」を作成する必要があった

GPSの位置から、わずか8分ほどの距離に唯一現場に残っている救急隊がいることがわかる

だが、安全を確保しないと向かわせることはできず、いたずらに時間だけが過ぎていった

 

オマールは直接救急隊員に電話を掛けて動くように言うものの、マフディはそれを制止し、彼らを犠牲にはできないと反発する

精神的にケアが必要となったオマールの代わりに、彼の上司のラナが少女に対応することになった

ようやく少女の名前がヒンド・ラジャブ(ハヌードはヒンドの愛称)とわかり、彼らの乗っている車のそばを戦車が通り、さらに銃撃戦の音なども響いている

そして、その車内には彼女の親族を含め、7人ほどの人がいたことがわかり、その遺体のそばでハヌードが電話に出ていることがわかった

 

マフディは様々な方法で調整を行なっていくものの時間だけが過ぎていき、オマールもラナも疲弊し、攻撃的になってくる

そんな中、ハヌードの母親から赤新月社に電話が入り、どうしてすぐに助けに行けないのかと言われてしまう

ファーストコールの親族からも動きがないことに対するクレームが舞い込み、彼らはさらに精神的に追い詰められていくのである

 

テーマ:声が届く場所

裏テーマ:紛争地帯における限界点

 


■ひとこと感想

 

実際に起きた事件を題材にしていて、関わったボランティアは実名で登場し、さらに「ハヌードの声は本人のものを使用する」と言う構成になっていました

実際に録音されたものを使っているので臨場感というものはこれ以上のものはないと思います

その音声に合わせてシナリオが作られていて、ボランティアたちが話していることも、ほぼそのまんまということになっていました

 

こんな映画を事件の1年後に制作するということも凄いのですが、中でも特徴的なのは「助けようとする側の葛藤にフォーカスを当てている」というところでしょう

演じている役者も「本当の音声」を相手に演技をしているのですが、それはもう渦中にいるのと同じで、それゆえに発生する感情というものも本物に近いのだと思います

そんな中で、できることとできないことが明確に定められていて、さらに予見できる危機というものが現実化する、という流れになっていました

 

パンフレットには詳細な時系列などがあり、モデルとなったボランティアたちの写真、犠牲になった家族の写真などが登場します

さらに映画の後半では「モザイクをかけないと映せない映像」というものが多数登場するので、「音声だけで誰かを助ける系のスリラー」だと思って鑑賞すると、精神的なダメージが凄いと思います

個人的には事件の顛末を知っていましたが、それでも「なんとかならなかったのか」と思ってしまうし、でも「これ以上のことができたとも思えない」とも感じています

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


■ネタバレ感想

 

本作のネタバレはWikiなどをググればいくらでもわかるのですが、顛末を知って観るのと知らないで観るのとではかなり印象が変わると思います

個人的には「知った上で鑑賞」だったので、何かしらの対応ができなかったのか、という視点が強かったのでしょう

また、どの時点でどのようにというところまでは知らなかったので、あまりにもあっけない最期に何が起こったのかを理解するのに時間がかかりました

おそらくリアルタイムでもその時にはどうなったのか分からず、事件の後にそこに立ち入ることができて、ようやく何が起こったのかがわかったのだと思います

 

起きたことに対する衝撃度を考えれば「知らずに鑑賞」だと思いますが、それで受けるものの大きさは計り知れないものがあるように思いました

パンフレットには色々と詳細が載っていますが、映画内でも「これ以上は映せないもの」というのがたくさんあったと思います

おそらくはネットなどに転がっているのかも知れませんが、それを探そうとも思わないし、それをアップロードしている人の神経も理解できません

 

映画は、一見「救出もののスリラー」に見えるのですが、起きたことを考えると、この路線の宣伝で良いとは思えません

救出がメインというよりは、現場の限界値を見せられる内容なので、ある種の問題提起作品のように感じます

救出に関するプロセスの複雑さなどは必要だと思うものの、それでも時間がかかりすぎるという問題もあるでしょう

自分たちでできることの限界というものが目に見えてわかるので、マフディの主張も理解できるし、オマールの感情も理解できると思います

 

俯瞰的に見ると何かが見つかるような気がしても、実際に思い描くことと現実にはかなりの乖離があります

そう言った意味において、その役割を担っているからと言って、限界値を超えてまでの要望というものは無理があると感じます

様々な感情が入り乱れる作品だと思いますが、根本がかなり根深い問題なので、今後もこのような悲劇は無くならないのかな、と感じました

 


■120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

この手の再現映画は数多くあるのですが、実際の音声と使用して、それに合わせて演技をするというのはなかなかないと思います

特に「相手が本人」であり、ある程度の編集があっても、リアルタイムで事が起こっていきます

演じている人たちも「実際に何が起こったのかを知っている」ので、その向こう側というのは観客以上にリアルに感じられると言えます

そして、この温度差というものも観客は感じてしまうのですね

 

事件の顛末、その後どうなったのかなどを知っていると演じている人に近い感覚になり、当事者でありながら、事態を俯瞰するという奇妙な感覚が同居すると思います

ここでこう言えば良いのではというものを挟み込む余地もなく、あくまでも起きたことを忠実に再現しなくてはなりません

そして、その先にあるものが取り返しのつかないものだとわかっているので、その時に向かって無力な自分が晒されるという感覚になってしまうと思います

普通の撮影以上に精神的に来ると思うし、演じた後などのケアなども大変だったと思います

それでも、この映画を作ることに大きな意義があり、ごく一部の人に握りつぶされそうになったものを世界的に発信する意味はとてつもなく大きいと言えます

 

外野にいると最善策が思いつきそうに思える一方で、何も知らないということを突きつけられると言えます

感情的になるなというのが無理な現場でも、それを保つのも大変で、調整役は特に精神的に一番キツい立場にあったと思います

映画の後半では、オマールとマフディがまるで現実逃避のようにゲームプレイを行うのですが、そこで彼らが逃避する先がFPS系のゲームだったりするのですね

目の前で実際に人が死んでいるのに、敵を倒すゲームをするのは不謹慎にも見えるのですが、彼らがあえてそれをプレイするのは「最も現実に遠い世界がスマホの中にある」からなのですね

なので、目の前で起きていることに目を背けているというよりは、目の前で起きていることがゲームの中にある架空の出来事であってほしいという願望のようにも思えます

それゆえに、あの逃避というものはかなりにリアルに感じられ、それこそがこの映画における最大の訴求内容だったようにも思えてなりませんでした

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/104398/review/06948254/

 

公式HP:

https://hindrajabjp.com/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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