■本当の嘘つきが「企業だった」みたいな展開になれば爪痕を残せたかもしれません
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■オススメ度
就活関連の映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.11.22(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2024年、日本、113分、G
ジャンル:就活のディスカッションで起こるハプニングを描いたヒューマンスリラー
監督:佐藤祐市
脚本:矢島弘一
原作:浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生(KADOKAWA)』
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キャスト:
浜辺美波(嶌衣織:早稲田大学社会部の学生、洞察力)
赤楚衛二(波多野祥吾:立教大学経済学部の学生、生真面目)
佐野勇斗(九賀蒼太:慶應義塾大学政策学部の学生、リーダーシップ)
山下美月(矢代つばさ:明治大学国際文化の学生、語学堪能)
倉悠貴(森久保公彦:一橋大学社会学部社会学科の学生、公認会計士)
西垣匠(袴田亮:法政大学の野球部の主将、ムードメーカー)
中田青渚(波多野芳恵:祥吾の妹)
木村了(鴻上逹章:スピラリンクスの人事部)
渡辺大(石川宣親:スピラリンクスの社員)
加藤菜津(原田美羽:九賀の元カノ)
若林元太(袴田の野球部の後輩)
花瀬琴音(つばさのバイト先の同僚)
小日向春平(森久保のゼミ仲間)
菅原昌規(川島和哉:九賀の大学の先輩)
あかせあかり(スプラリンクスのOL)
福田エミ(WEBサイトのインタビュアー)
河野安郎(スプラリンクスの面接官)
藤野政貴(スプラリンクスの面接官)
田中海咲(就活生?)
Reo.W(?)
高村竜馬(スプラリンクスの案内係)
■映画の舞台
都内某所
ロケ地:
千葉県:千葉市
千葉大学
https://maps.app.goo.gl/4G1gpbZc4bYsn7H77?g_st=ic
千葉経済学園
https://maps.app.goo.gl/epng4ojXu7aBaYqw7?g_st=ic
居酒屋いなせや幸蔵
https://maps.app.goo.gl/NoyfoKcQpaapPAoD7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
スプラリンクスの企業面接を突破した大学生の嶌衣織、九賀蒼太、波多野祥吾、森久保公彦、袴田高、矢代つばさの6人は、最終面接としてディスカッションを行うことになった
1ヶ月後に控えたディスカッションでは、内容次第では6人全員が合格すると言われる
彼らは定期的に会う機会を作り、6人全員が合格するようにディスカッションの準備を進めた
だが、前日の夜にスプラリンクスよりメールが届き、「合格者は一人」と告げられてしまう
そこで彼らはルールを決めて、投票制によって、一番ふさわしい人を選ぶことになった
一回目の投票では九賀に集まるものの、衣織は部屋の異変を感じていた
衣織は、部屋の隅に置かれていた封筒を指摘する
そこには六人の名前が書かれた封筒が入っていて、その意図などは一切不明だった
そして、その一つを空けると、そこには参加者のある自分の過去の黒歴史が書かれていたのである
テーマ:人の表裏
裏テーマ:嘘は誰のために?
■ひとこと感想
予告編の印象だけで、あまり何も仕入れずに鑑賞
原作のある作品なので、ネットを漁るだけネタバレが見つかってしまうのは危険でしたね
なので極力スルーでいるように検索ワードを限定していたし、初日の1回目なら何とかなるだろうと考えていました
映画鑑賞前にはレビューが0だったので、試写会もなかったのかなと感じました
映画は、就活で仲良くなった6人が暴露話にさらされると言うもので、それによって人間関係がどうなっていくのかを見守る流れになっていました
ディスカッションが90分だったので、まさかそれだけで終わるのではと思ってしまいましたが、実質的にはリアルタイムに近いタイムテーブルになっていたと思います
ネタバレは避けた方が良いのでここには書きませんが、映画的な評価はイマイチと言うところでしょうか
悪いわけではないし、緊張感を持って映画と向き合えるのは良いと思いますが、舞台設設定に無理がありましたね
違和感と疑問だらけで、それがオチで払拭されるのかと思いましたが、そんなことはなかったですね
ともかくエピソードのためにキャラ作りをして動かしている感が強いので、物語性はあってないようなものだと思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
ネタバレ厳禁系の映画なので、まだ観ていない人はここでスクロールを止めてくださいまし
では、さらっとした感想を述べるとすると、あの場所から誰も逃げ出さないのは変というものでしたね
あのディスカッションを止めずに傍観している企業というだけでおかしなことになっていて、てっきり衣織は潜入していた面接官とかいうのかと思いました
そうでなければ辻褄が合わないところが多すぎるのですね
暴露話が始まる順番、そのきっかけなどを俯瞰して見ると、洞察力が鋭いという特色が隠れ蓑になっているように思えます
そんな中で、衣織が封筒を見つけ、そのあとは封筒を仕掛けたものを踊らせるという内容で、彼女が会社側の人間の方がしっくりくる部分が多かったように思います
映画は、就活生が暴露話の中でどのような動きをするのかを描いていきますが、それが企業面接である意味というものが必要になってきます
でも、そう言った部分は完全にスルーされていて、彼らがそこから逃げられない理由というものがありません
個人的なスネを削りあってまであの会社にいたいというものが感じされず、最後まで付き合う意味を感じないのですね
会社が傍観する理由が欠落したままと言うのが一番腑に落ちないし、それぞれは「冤罪的な暴露」になっているので、後半の実は良い人でしたと言うフォローが入るなら、誰かしらがその場で否定をしても良かったでしょう
そこで彼らが口を噤むのは、それ以上に何か探られてはならないものがあると言うことなので、あの暴露だけで終わってしまったのは片手落ちのように思えてしまいますね
■現実的な落とし込み方法
映画の内容だけだと、あまりにも非現実的で漫画的な面接だったと思います
ディスカッションをさせて、優秀な人材を当事者で選ばせつつ、外から見ている面接官は、本性が炙り出された当事者の中から企業風土に会う人間を選ぶ、という構図になっています
企業倫理云々は置いておいて、この形式を採用する企業はほぼいないと思います
あるとしたら、この映画のようなものをそのまま採用してしまうタイプの社長で、「お前ら、この映画と同じことやってみろ」みたいなことを言って実現させちゃう人でしょう
人の本性を露出させて、それによって合否を決めるというのはアリだと思いますが、そう言った選別方法であるということを参加者に知らせるかどうかで企業の姿勢が変わってくると思います
今回の場合は、ふさわしい人物を選べということで投票制を導入し、浮上した人物がいたら「下げる情報が出てくる」という構成になっていました
そこで、黒幕的な存在が勘違いするということがなく、最後までブレずに貫き通していましたね
これがこの企業が欲しかった人物であり、おそらくはこのシステムの後任の担当者候補なのだと思います
グループディスカッションを面接に採用する企業はあると思いますが、議論は同レベルの人間が集まらないと成り立ちません
それでも、優秀な人材を集めた企業でも、対クライアント、対顧客という観点でいれば、どんな相手とも相対する能力というものが求められます
なので、知的レベルが同レベルにしてはダメなのですね
むしろ、無理やりそうしないことで、社会におけるアクシデントに対応する能力を見ると言えるのかもしれません
本作で、この面接が本当にありそうだと思わせられないのは、やはり企業の姿勢が皆無だからでしょう
単に必死な若者の断末魔の叫びを聞きたいというのならアリだと思いますが、黒幕的な存在の人物は、それすらも利用しているように見えてきます
なので、企業としてのガバナンス云々は差し置いて、前段階の面接において、ある程度のディスカッション能力を企業側が測り、今後の展開を匂わせるということを行なっても良かったのかな、と感じました
■勝手にスクリプトドクター
本作は、結局のところ、犯人が何をしたかったのかよくわからない内容で、ずっと対象者を監視しつつ、マイルドな告発を続けていたことになります
緊張感を持って観られる反面、告発の内容の重さで犯人がバレるという感じになっていて、しかも同性には甘いと感じに見えてしまいます
さらに自分に向けられた好意を利用するという流れになるのですが、好意と就活を含んだ決断が混同するのかというところも気になってしまいました
とは言え、シナリオを進める上では、最後のネタバレ以外はうまく進んでいったように思います
先の企業が静観しているという事実を踏まえると、この6人の中に面接官がいるという線がもっとも理に適っているように思えます
ラスボスである衣織が実は面接官で、残り5人の本性を暴露するために色々仕掛けていて、それ自体が衣織が今後どのポジションで働けるかを試されるという仕掛けがあると良かったでしょう
5人の大学生は就職のため、衣織は企業内のポジションのためにこのディスカッションに参加し、その上で採用と昇進を行うという企業風土がある
この構造があれば、企業がかなりイカれた存在だけど、能力のある人間を採用するに至る過程であると説明はできます
最終的には、衣織自身が企業の風土に染まるかどうかというのが着地点となっていて、彼女自身にも「志願者を面接から降りさせない」というミッションがあれば良いと思います
こんなディスカッションはやっていられないと考える志願者に対して、彼らの罪と採用基準とは関係ないことを仄めかしていく
この流れは、自分がピンチに陥った時にどれだけ冷静になれるかを問うている実地試験のようなもので、「感情をいかに抑え込んで思考を停止しないかを試しているのでは?」という投げかけで鎮火するようなものだと思います
一つの罪が暴露されるごとに「俯瞰した冷静さ」というものが場を支配することになり、それが衣織が試される課題である、という結びになっていきます
候補者がどのような過程を踏んで冷静さを取り戻せるのかとか、感情に支配されたまま終わってしまうのかというのは、その後の会社員生活でも試される内容だと思います
会社に入れば過去はさほど問題にならないものの、会社内に入ってから起こることには敏感になっていきます
そんな中でどれだけ自分を保ち続けられるのかというのは企業の命題でもあるので、その鋼のメンタルをどのように育成するのかという課題につながります
採用の基準は最終的に冷静になって論理的になれるかというところで、それを踏まえると全員がアウトのように思えます
このディスカッションのある企業風土に馴染めるかどうかを試される試験でもあるので、その基準を満たしたものはいないのですね
そんな中で、志願者を利用しつつ「自社の会社員を育てる」という名目があり、それに葛藤するのが衣織というキャラクターの持つ物語内の命題だった方が良かったのかな、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、面接参加者の罪を暴露する系ということで、のちに公開された『遺書公開』と通じるところがありました
6人という少ない構成でキャラ被りはNGだし、ある程度のインパクトが必要となっていきます
冷静なお姉様キャラ、ヤンキーっぽさのあるキャラという女性陣の対比は物凄くわかりやすいのですが、男性陣がこぞって草食系というのはイマドキなのかもしれません
オドオド系、体育会系、真面目系みたいな感じでセッティングしつつも、ほとんど印象に残らないところを考えると、キャラ的な魅力というのはあまりなかったのかなと感じました
基本的はエリート企業に入る志願者ということで、そこまで破天荒なキャラを投入しづらいというものはあると思います
なので、よく似た感じになるのは仕方なくて、キャラづけをするには「罪」の部分で区分けするしかありません
でも、優等生が犯す罪にも限度があるので、そこまでバリエーションを作れないというのはあるのでしょう
印象に残る罪と言えば殺人とかになると思いますが、さすがに素人が追跡してわかるものがあるとは言えません
結局のところ、過去を完全に消したサイコパスが現れるとか、実は衣織のストーカーが紛れ込んでいるとか、この企業風土を壊そうとする輩が現れるとかはないのですね
なので、物凄くこじんまりとした内容になっていて、しかも衣織だけはよくわからないセーフティゾーンにいて採用されるという流れになっていました
原作準拠なのかはわかりませんが、そのあたりのインパクトが弱かったと思います
どんでん返し系をするにしても、実は大嘘をついていたのは企業だったみたいな展開にでもならないと、何か下の爪痕は残せないのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100901/review/04493738/
公式HP:
https://6uso-movie.toho.co.jp/