■現代的に無頼が起こるとしたら、SNSを軸にしたスタイルムーブメントの確立なのかもしれません
Contents
■オススメ度
室町時代の時代劇に興味のある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2025.1.17(イオンシネマ久御山)
■映画情報
情報:2025年、日本、135分、PG12
ジャンル:暴利な金貸しに反抗する一揆を描いたアクション時代劇
監督&脚本:入江悠
原作:垣根涼介『室町無頼(新潮文庫)』
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キャスト:
大泉洋(蓮田兵衛:牢人、剣の達人)
長尾謙杜(才蔵:没落武士の息子)
松本若菜(芳王子:高級遊女、兵衛の恋人)
遠藤雄弥(赤間誠四郎:牢人、居合の達人)
前野朋哉(七尾ノ源三:牢人、槍使い)
阿見201(馬切衛門太郎:牢人、棍棒使い)
柄本明(唐崎の老人:才蔵を鍛える棒術の達人)
般若(小吉:刀鍛冶屋の主)
武田梨奈(超煕:弓の名手、朝鮮職人の息子)
水澤紳吾(伝助:馬借、吉坂郷の住人)
川床明日香(小萩:伝助の娘、簪をもらう女性)
芹澤興人(蔵人:馬借、吉坂郷の住人)
堤真一(骨皮道賢:武装集団の頭目、洛中警備担当の悪党)
岩永丞威(斬ノ助:小頭六人衆)
ドンペイ(孫八:小頭六人衆)
稲荷卓央(彦次郎:小頭六人衆)
梅原勇輝(小頭六人衆)
吉本実憂(お千:隠密)
中村蒼(足利義政:室町幕府、八代将軍)
矢島健一(伊勢貞親:政所執事、室町幕府)
北村一輝(名和好臣:室町幕府の大名)
柴田善行(名和の家来)
三宅弘城(法妙坊暁信:才蔵を追う比叡山の僧兵、金貸の守銭奴)
窪田孝(ナレーション)
町田政則(郷の住人)
浜愛菜(郷の住人)
松浪瞳(郷の住人)
中村由梨絵(お春:郷の住人)
大橋明代(郷の老女)
稲継智己(馬借)
松岡冬馬(牢人)
諏訪太朗(?)
入江毅(?)
西園寺章雄(?)
石田龍昇(?)
高島和男(?)
八田浩司(?)
渡部龍平(?)
木村康志(?)
浜田隆広(?)
や乃えいじ(?)
川畑和雄(?)
西村匡生(?)
奥深山新(?)
浅田祐二(?)
田中克幸(?)
太田雅之(?)
吉井基師(?)
佐渡山順久(?)
■映画の舞台
1461年、
京都
ロケ地:
京都府:亀岡市
丹波国分寺跡
https://maps.app.goo.gl/ovxvuhS4Qu9vEtv56?g_st=ic
京都市:左京区
平安神宮
https://maps.app.goo.gl/CJgpQpWmbaSp3nNQ9?g_st=ic
下鴨神社
https://maps.app.goo.gl/1GvovDfL43UVi1Co7?g_st=ic
京都市:右京区
仁和寺
https://maps.app.goo.gl/gfeVSH7xYwFeLeXE9?g_st=ic
高雄山 神護寺
https://maps.app.goo.gl/Jx7q9ATTLRBjzrjB8?g_st=ic
兵庫県:加東市
播州清水寺
https://maps.app.goo.gl/b1R2NHbhLisp14ns6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
1461年(寛正元年)、疫病と飢饉に見舞われた京の町では、方々から食料を求めて洛中へと押し寄せていた
関所では重税が課せられ、借金を背負うものもいて、多くの村では野晒しになった死体が堆く積み上げられていた
そんな町を悲しそうに見守る牢人の蓮田兵衛は、郷の者に食べ物や金銭を与え、洛中警備の骨皮道賢に筒抜けになっている一揆を事前に収める役目を担っていた
ある日のこと、比叡山の僧兵が家屋を襲い、そこの主人を殺すように命令された若者がいたが、命令通りに殺すことができなかった
僧兵たちが酒盛りをする頃、何者かが押し入って金品を強奪し、僧兵を皆殺しにしてしまう
若者も連れ去られ、その仕業が道賢一味のことだと判明する
そんな彼の元に蓮田は呼ばれ、彼はその若者を買うことになった
若者の名は才蔵と言い、落武者の倅だったが、蓮田は「カエル」と名付け、同行させることになった
ひと仕事終えた蓮田はカエルを解放しようとするものの、彼の強さに惚れ込んだ若者は弟子入りを志願する
蓮田は知人の唐崎の老人に彼を預け、1年間の修行をさせることになった
老人の厳しい稽古に耐え抜いた才蔵は、武者修行を終え、僧兵との戦いに挑む
そして、彼らを打ち滅ぼした才蔵は、晴れて蓮田の弟子として、行動を共にすることになった
蓮田は問う「銭よりも早く動くものは何か?」と
彼は「それこそが我々の生きる道だ」と諭すのであった
テーマ:無頼として生きる道
裏テーマ:けじめのつけ方
■ひとこと感想
映画館でバンバン予告編が流れている大作で、室町時代の土一揆を題材にしていました
歴史書で一行だけ表記があるとされる蓮田兵衛が弟子を取って、土一揆を実行する様子が描かれ、アクションは才蔵が担っているという作品になっていました
蓮田VS道賢の戦いも胸熱で、派手さこそはありませんが、時代劇好きならOKかなと思います
問題は、大泉洋のキャラが濃いので、浪人をやれるのかどうかというところですが、個人的には蓮田というキャラには合っていたように思います
それでも剣の達人には見えないのですが、人を惹きつけていく人間力の部分は違和感がなかったと思います
劇中では松本若菜演じる高級遊女・芳王子が登場しますが、彼女を巡る関係性も面白かったですね
顔を下から見たら10年後というのは含蓄のある言葉で、実際に見ることができたら、その美しさは底知れぬものなのかな、と感じました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
原作は未読で、映画の予告編の情報だけで鑑賞しましたが、セリフ付きのキャラが死ぬほどいて、ほとんどがメイクをしているので誰が誰だかわかりませんでした
パンフレットには人物相関図があるので、おおよその主要キャラはわかるので問題ないと思います
物語は、土一揆に向かう流れを描き、洛中でのバトルがクライマックスになっていました
特に悪大名を簪で刺し殺すシーンには熱いものがありましたね
わかりやすい勧善懲悪であり、因果応報ではありますが、この時代ならではの解決方法だったのかなと感じました
映画は、無敵の人と化した人々が蓮田の声に続く流れになっていて、無念にも死んでいく者がたくさんいました
一揆を企てているだけで郷の女子供を皆殺しにするなど、権力と暴力が支配する時代ならば、このような解決策しかないのは当たり前のことのように思います
思えば、日本ってこう言う国だったよなあと思いながら、我慢の限界が来た時の弾けっぷりは現代でも燻っているのかな、と思いました
■蓮田兵衛とは何者か
映画の主人公である蓮田兵衛は、室町時代中期に実在した人物であり、1462年(寛正3年)に京都で起きた「寛生の土一揆(徳政一揆)」の首謀者として知られている人物です
彼の名は『新選長禄寛正記』に「牢人の地下人(低身分の浪人)」と記されています
1462年に「徳政令(借金の帳消し)」を幕府に迫る一揆を起こしています
一揆勢は東寺を制圧し、糺の森や相国寺の東門まで進出し、幕府の拠点となる「花の御所」へと迫っていきました
一揆自体は、侍所所司代・多賀高忠、在京大名の赤松政則らを投入して鎮圧
最終的には一揆を鎮圧し、蓮田兵衛は捕まったのちに処刑され、同行した8人も京都・四塚にて首級が晒されたとされています
「新選長禄寛正記」は応仁の乱以前の政変・合戦を記録した軍記物語の一つで、成立は室町時代後期とされています
この土一揆の他にも、1457年の長禄の変(畠山義就が足利義政に対して起こした政変)、1441年の嘉吉の乱(赤松満祐が義政を暗殺した後の話)、寛正の飢饉(1460年代)に関するものなどが記されています
応仁の乱を描くための予兆的な軍記としての史料となっていて、元々は「長禄寛正記」というものがあって、それが改定されたと言われています
現在は京都大学、および国会図書館などに写本が残されています
映画は、そこに記されていた蓮田兵衛という人物を掘り下げた垣根涼介の原作を取り扱っていて、人間関係などはフィクションに近い部分があるのだと思います
■徳政一揆について
物語で描かれる「徳政一揆」とは、室町時代から戦国時代にかけて頻発した土民や農民による一揆で、「借金の帳消し」を強く要求したものでした
室町時代には、荘園性などにより土地所有は大きく変動していました
また貨幣経済の影響に農民や地侍が組み込まれていくことになります
銭の流通が拡大し、これまでの物物交換から貨幣でのやり取りへと変わっていきました
それによって、農民は年貢や生活費のために質屋や寺院から銭を借りることが増え、借金が雪だるま式に増えていったといいます
そして、飢饉や戦乱が重なることで返済が不能となり、「借金を免除せよ(徳政)」という欲求が高まってくることになりました
これらの借金免除を「徳政」というのは、政府や守護大名が「徳のある政治」として、借金の帳消しを命じる法令のことを言い、質流れした土地や家財を持ち主に戻したりすることを言います
これによって、融資していた商人や寺院は打撃を受けることになります
室町政府は農民の暴動を抑えるために徳政令を出すこともありましたが、信用経済が破壊される側面もあり、それが商工業の発展を妨げる面もあったとされています
映画の土一揆の前にも、1428年に正長の土一揆(室町幕府6代将軍・義政の即位直前に行われ、享徳の大飢饉などの理由で起きた畿内一帯の農民蜂起のこと)、1441年に嘉吉の徳政一揆がありました
さらに、1485年には、山城国一揆(畿内の守護大名の対立に嫌気をさした農民・国人が立ち上がって自治的に国を運営した)というものもありました
単なる暴動ではなく、経済的弱者が生活防衛のために立ち上がった運動となっていて、幕府や大名は一揆の力を無視できずに政策に反映せざるを得なかったとされています
現在でも庶民の生活は困窮していますが、一揆が起こるような気配はありません
それは管理側に圧倒的な武力があるからなのですが、その武力が政府を守り続けるのかはわからないという側面があります
これらは時に多くの地域での軍事政権誕生の下地になっていて、その政治システムの腐敗によって定期的に起こっていると言えます
これまでの日本の歴史だと軍事政権が政権を転覆させたみたいな例はありませんが、今の政治腐敗を見ていると怖い側面はあると思います
それでも、今日のSNSを主体とした情勢を考えると、武力的なことよりももっと安価で効率的なものが起こる可能性の方が高いのですね
それでも、日本国民の根底には「怒りが頂点に達すると武力衝突も辞さない」というマインドがあるので、その本質を忘れているとものすごいことが起きても不思議がないように思えます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、史実に名前があるけどほとんど知られていない男を取り扱っていて、それゆえに創作の幅が広がっている作品となっています
脇役たちも自由に作って動かせるので、兵衛の行動が史実を伴って入ればOKだと思います
映画には、かつての同胞が敵として登場し、さらに兵衛の強さに惚れ込む武人たちが一揆へと加勢していきます
この戦いが幕府の転覆ではないというところに派手さはないのですが、わずかな人数でも作戦によっては幕府の深い所へといくことができるというのはすごいことのように思います
いわゆる喉元に刃を突きつけるというようなもので、これは多くの人々へのメッセージにもなっています
兵衛が御所の門に紙を貼り付けるのですが、これを成し遂げたということが幕府への警告になっていました
借金をするのは農民が悪いという側面はありますが、借金をしないと生活ができないシステムになっている社会構造というものも問題となっています
特に貨幣経済になってからは「お金がお金を産む」というビジネスが生まれてしまい、それによって「楽をして稼いでいる」という印象が強くなります
それを幕府側が守っているというところに一揆が起こる要素があり、そうでなければ本来の暴動は庄屋などの叩き壊しとか、寺院への突入ということにつながっていたと思います
彼らがそう言ったところではなく幕府へと向かったのは、このような経済にした責任が幕府にあるということであり、さらに貸し手側に好き勝手させている部分があるからなのでしょう
現在でも金を貸す側への規制がありますが、かつてはグレーゾーン金利で暴利を貪り、今ではリボルリング方式などで法の網を潜っている貸し方というのがあったりします
近い将来、このリボ方式による規制が行われると思いますが、そのためには多くの反旗というものが生まれるのだと思います
かつてのグレーゾーン金利に関しても、それが違法であるということを法的に認知させる裁判があり、それに倣って多くの過払い申請というものが起こりました
今では過払いできるかもという呼び込みから新規の顧客に対して債務整理を施す弁護士が増え、今後も一大のムーブメントになると思います
このような債務整理が一般化すると、次々と連鎖的に起こっていき、しまいには「貸せる相手」というものがなくなっていきます
そうすると、消費者金融系は安い金利で長く借りてもらう方が安全という認識になって、利息制限法上限ギリギリでは貸さないという流れになる可能性もあるかもしれません
それでも現在の流れ「貸せる相手にとことん上限金利で」という方針の方が多いので、いずれはその方針転換をせざるを得なくなるでしょう
給料が右肩上がりの経済だとできた商売も、30年の停滞から脱却が不可能に近い縮小経済になってくると成立はしないのですね
現代社会では一揆というものは起こらないけど、ライフスタイルの変化は静かに起こっていく
なので、その動きは感知されないまま、気づいた時にはビジネスモデルそのものが消えてなくなる、という時代が来るのではないか、と感じています
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101243/review/04675627/
公式HP:
https://muromachi-outsiders.jp/
