■日が明ける前には、まずは深く沈んでみることが必要なのかもしれません
Contents
■オススメ度
震災とコロナを取り込んだ映画に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2025.1.17(イオンシネマ久御山)
■映画情報
情報:2025年、日本、139分、G
ジャンル:リモートワークのために三陸に移住した若者を巡る騒動を描いたヒューマンドラマ
監督:岸義幸
脚本:工藤官九郎
原作:楡周平『サンセット・サンライズ(講談社)』
Amazon Link(原作)→ https://amzn.to/4h9oXVj
キャスト:
菅田将暉(西尾晋作:三陸町に移住する東京の大企業「シンバル」の社員)
井上真央(関野百香:晋平の家主、役場の職員)
竹原ピストル(ケン/倉部健介:地元の居酒屋「海幸」の店主)
山本浩司(山城進一郎:ケンの友人)
好井まさお(平畑耕作:ケンの友人、役場の職員)
三宅健(タケ/高森武:ケンの友人、パチンカー)
藤間爽子(澤村千佳:晋平の同僚)
茅島みずき(玉本桜子:晋平の同僚、帰国子女)
少路勇介(平野武則:晋平の同僚)
宮崎吐夢(小松:晋平の上司、課長)
小日向文世(大津誠一郎:「シンバル」の社長)
あべまみ(姫川玲香:大津の秘書)
白川和子(村山和子:晋平の三陸の隣人、パチンカー)
松尾貴史(村山信夫:和子の長男)
本間剛(茂子の息子)
村上大樹(茂子の息子)
ビートきよし(黒川重蔵:噂好きの干物爺さん)
半海一晃(狩野和彦:役場の課長、百香の上司)
池脇千鶴(持田仁美:百香の同僚)
中村雅俊(関野章男:百香の父、漁師)
千北怜衣(関野良太:百香の息子)
千北奈々(関野瑞希:百香の娘)
大迫一平(百香の夫)
長野里美(晋平の母)
みのすけ(晋平の父)
河合諒(西尾晋二:晋平の弟)
松浦祐也(船上の金髪の男)
円井わん(船上のギャル)
小野寺ずる(民家を借りた人?)
高山璃子(民家を借りた人?)
今村莉都(?)
塚村友陽(?)
藤田真奈美(ニュースキャスター)
多々羅りか(アナウンサー)
林宙紀(アナウンサー)
■映画の舞台
南三陸:宇田濱町(架空)
ロケ地:
宮城県:気仙沼市
只越漁港
https://maps.app.goo.gl/r6rBcBPZNH2SpRvRA?g_st=ic
岩手県:胆沢郡
もりの学び舎
https://maps.app.goo.gl/ivpXNMYRA8YmFf9X7?g_st=ic
岩手県:大船渡市
招福亭ジャイアンツ
https://maps.app.goo.gl/TQEK13Ruet2aSi99A?g_st=ic
居酒屋 泰州(海幸)
https://maps.app.goo.gl/xUqFwLrvkrRiaxrGA?g_st=ic
東京都:渋谷区
金王八幡宮
https://maps.app.goo.gl/B3NKamcsnknfCuxa7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
東京の大企業に勤めている西尾は、コロナ禍のフルリモートの影響を受けて、東北の賃貸を探していた
偶然ネットで見つけた家具付き一戸建ての戸建てに興味を示した西尾は、管理人の都合など考えず、その戸建てに突撃してしまった
その物件は、地元の役所の職員・関野百香が貸し出したもので、彼女は空き家物件の担当者になっていた
百香は自分の持ち家が空き家になっているのでは話にならないと思って登録したのだが、その家は訳ありの物件だった
百香は漁師の父・章男と暮らしていて、彼女のことを見守る男たちもいた
「モモちゃんの幸せを祈る会」は居酒屋の店長・ケンをはじめとして、同僚の平畑や、タケ、山城なども参加していた
彼らは百香にアプローチをしたが断られてきた男たちで、その会は9年前に発足したものだった
いきなり内覧に来た西尾に戸惑う百香だったが、田舎ではコロナを極端に恐れていて、誰もが第一号になりたくないと思っていた
極端なディスタンスを取ることになっていて、百香は仕方なく2週間の自主隔離をその家でさせることになった
だが、釣り好きの西尾はじっとしておられず、その家に誰か住んでいることが村中の噂話になってしまうのである
テーマ:自分らしく生きること
裏テーマ:忘れることと受け入れること
■ひとこと感想
原作は未読で、予告編だけの情報で突入
なので、震災とコロナを扱っていることは知らずに鑑賞していました
東北が舞台だと避けられない話題で、そこにコロナ禍を舞台にしていて、タブーに思えるものを主題にしていましたね
ともかく海の幸がふんだんに登場する作品で、終わった後には海鮮丼か寿司を食べたくなる内容になっていました
パンフレットは架空の村マップもあるし、出てくる料理の解説もしっかりと載っていました
方言に関する解説も丁寧なので、気に入った人は購入してもOKだと思います
映画は、震災の余波を受けている町のその後が描かれていて、竹原ピストルの配役がピッタリとハマっていましたね
方言と標準語を上手く使い分けていて、言葉もなんとなくニュアンスが通じる具合になっていたと思います
物語は、一応はラブコメがベースになっていますが、外の人と中の人の温度差にふれていましたね
ケンが想いをぶつける河原のシーンは、これまで避けられてきたものがきちんと描かれていたように思います
腫れ物にさわる過去というものはたくさんありますが、それを避け続けることで失うものの方が多いのかな、と感じました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
村のマドンナを取られたら困るという地元民は、震災当事者の想いを抱えながらも、東京への想いというものが相反するように描かれていました
それぞれがたくさんの想いを抱えているのですが、芋煮会にて全てが爆発する瞬間は、これまでに抱えてきたものがはっきりと明言されていたように思います
地方と都会の格差とその温度差というものは確かにありますが、ある意味関東圏と東北圏の関係性が描かれているように思いました
関西在住だと、この関係性と言うのはしっくりきませんが、なんとなく察することができる感じでしたね
映画では、コロナ禍における異常な反応というものが描かれていて、さらに震災の余波によって止まっているものというのが描かれていました
どこまで行っても拭えないものだと思いますが、それを抱えるのも受け入れるのもその人次第で、それを強要するような時代は終わったのかなと思います
自意識がどのように変わっていくかは分かりませんが、このような映画が描かれることで、過去として風化していくことも必要なのかな、と感じました
物語は、壮絶な過去を抱える未亡人の再生を描き、西尾の情熱がそれを変えることができるのかを描いていきます
ラストで彼らが取った選択と言うのは興味深く、それでもいずれは許容されて、溶け込んでいくのかなと思います
西尾が好きな百香は過去を含めた今の彼女であり、それを許せる日はそこまで遠くはないのでしょう
それくらい、人の温もりというものは、色んなものを溶かしていく力があるのだと思いました
■距離が示す温度差
本作では、東京と東北という距離が作り出す「震災に対する受け止め方」というものが描かれていました
舞台は「震災から10年後」というもので、被災地ではいまだにその余波が残っていますが、遠方にいる晋平は「震災はすでに過去のことであり、自分の理想に近い神物件だと思っていた」という距離感がありました
現地に着いても、すでに震災の名残というのはほとんど撤去されている故に、よほど注意深く見ていないと気づかないと思います
さらに、神物件を手に入れたことによる「浮かれ気分」というものが、より拍車をかけていたように思います
後半になって描かれる芋煮会では、被災地の人の想いというものがぶちまけられるのですが、ここでも被災地と外部の温度差というものが描かれていました
それは「いつまで被災者でいたら良いのか」というもので、晋平のように何も考えていない人もいるかと思えば、常に被災地というフィルターをかけてくる人もいます
それは被災者側も同じで、いつまでも被災者としていた方が都合が良いという人もいれば、その意識を持ち続けてしまったために習慣化してしまった人もいるのだと言えます
これらの視点は被災地の距離と比例するかのように強弱があるのですが、逆に近いゆえに「そうありたくない」と思う人が同調圧力の中で孤立してしまう、という問題も起こっています
心理的な距離もあれば、実際に被災状況をリアルで見ていないという絶望的な経験値における乖離というものもあります
それを前提として、被災地に行った時にどう振る舞うかというのは難しい問題だと思うのですね
それを上書きするような天災によって解放されるというものもあって、それで良いのかは悩むところでしょう
東日本大震災が起こったことで、阪神・淡路大震災が風化していったように、きっかけとして不幸がないとダメというのは、とても悲しい風潮のように思えてしまいます
■現在は過去の積み重ねに未来志向を加味したもの
映画では、震災10年後という「現在」が舞台となっていて、10年前と「過去」があり、さらにこれからどうしたいかという「未来」が描かれていきます
これらの3つの時系列の中で、被災者の過去・現在・未来における捉え方の違いがあり、そこに傍観者の視点が混じることで、被災者同士では言えなかった本音というものが暴露されていきます
これは、同じ被害を被ったコミュニティの中から抜け出すことの難しさというものがあり、それが同調意識として育っているからだと思います
そんな中、外的な要因の力を使うことによって、「未来に歩み出したい本音」というものが描かれ、その役割を晋作が担うことになりました
誰しも悲惨な過去があったとしても、いち早く未来のことを考えたい人もいるし、ずっとその悲しみに浸っていたいという人もいます
抜け出すことに罪悪感を感じる人もいて、この場合は「物理的に距離を取ること」で、そのサークルから抜け出そうとする人もいます
これらの行為が「様々な事情でできない人」からすらば「裏切り」にも見え、その感覚は抜け出そうとする人が最も理解している感情であると思います
そして、この抜け出すタイミングを見誤ることで、そこに居ざるを得ない状況というものを作ってしまいます
顕著なのが百香を見守る会のメンバーで、彼らは自分ごとよりも百香を大切にしたいという感情を優先させています
また、彼らもそれぞれの立場の違いがあり、現地で店を営業しているケン、役所の職員である平畑、幼馴染のタケと山城といった具合に、被災地から出ることに「百香を見捨てる」という判断が付随している結果となっています
当の百香としては、地場産業を担っている義父もいるし、彼女自身が役所の人間なので、そこから出るという意識はありません
それゆえに、百香を起点とした運命共同体のようなものが暗黙知のような鎖になっていたりします
これに対して、百香が動かないからという理由づけをするのは良くありません
そこには、それぞれの選択というものがあって、それに納得している自分がいるのですね
なので、彼らは自己責任としてそれを選択しているのですが、この状況をよく思っていない人物がいました
それが、百香の親友の仁美だった、ということになります
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、被災地の10年後に生きる人々を描いていて、その中心にいるのが「最も深い悲しみを背負った百香」と、「最も軽いノリで現地を楽しむ晋作」となっていました
晋作は百香の過去を知らないまま、単に美人であるとか、自分の好みであるといった理由で彼女に近づき、それは同時に百香自身を苦しめていくことになります
彼女自身が空き家の再建プロジェクトを任されていることもあって、立場的にも新作を拒否できないという下地がありました
そんな中、晋作は自分の思いがままに動き、百香の過去を知った上で、現地に残ることを選択します
彼は東京の大手の企業に勤めていて、その思惑に挟まれることになります
そして、現地での一定の成果を上げたことから戻ってくることを余儀なくされ、そこに昇進問題というものが絡んできます
傍から見ればそのオファーは真っ当なもので、被災地とのWIn-Winにも見えました
でも、そこには「被災地に対する大企業の上から目線」とか、「拝金主義的な考え」というのが見え隠れしていて、被災者の想いを知った晋作には抵抗が生まれてしまいます
そして、それ以上に彼の心をざわつかせたのが百香への想いであり、結局のところ、人を突き動かす原点は愛であることがわかります
晋作は彼女の亡くなった家族の代わりにはなれないし、その手助けをすることもできないでしょう
でも、彼女と一緒に歩き、自分が与えるもので彼女が笑顔になれるなら、という衝動は持っています
この心情は見守る会の人々と同じで、その想いに応えるかは百香次第ということになります
メンバーは「悲しいかな男性としての魅力に欠けていた(当時の夫よりは)」という状況になっていて、それをアップデートすることはできませんでした
それは、恋愛関係からすでに友人関係になっているからであり、そこに立ち戻ることはできません
これは男女関係の根本的な問題なのでどうすることもできないのですが、晋作はそこまでは関係性を進めていないので、まだワンチャンあるという状況なのだと思います
これから先どうなっていくかは、ぶっちゃけるとタイミングと欲求だと思うので、そればかりは時間が解決するものかな、と考えています
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/102321/review/04675628/
公式HP:
https://wwws.warnerbros.co.jp/sunsetsunrise/
