■市民の捜査が無いことが一番だけど、いざと言うときはできる限りのことをしたいと思います
Contents
■オススメ度
実話ベースの映画に興味がある人(★★★)
特殊詐欺の実態に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.12.18(アップリンク京都)
■映画情報
原題:시민덕희(類まれなる市民)、英題:Citizen of a Kind(稀有な存在の市民)
情報:2024年、韓国、114分、G
ジャンル:特殊詐欺にて大金を失った一般市民が元締め逮捕のために動く様子を描いた犯罪映画
監督&脚本:パク・ヨンジュ
キャスト:
ラ・ミラン/라미란(キム・ドッキ/덕희:詐欺の被害者、モデルはキム・ソンジャ/김성자)
コンミョン/공명(ソン代理/クォン・ジェミン/재민:フィッシング詐欺の手下、情報提供者)
チャン・ユンジュ/장윤주(スクジャ/숙자:アイドルの追っかけのドッキの同僚)
ヨム・ヘラン/염혜란(ボンリム/봉림:語学堪能なドッキの同僚)
アン・ウンジン/안은진(エリム/애림:中国人のタクシードライバー、ボンリムの妹)
イン・ハビ/임하비(ミンジ/민지:ドッキの娘)
クォン・ウンソン/권은성(フン/훈이:ドッキの息子)
パク・ビョンウン/박병은(パク・ヒョンシク刑事/박형사:華城警察の刑事、通報を受ける刑事)
ヨン・ウジン/연우진(シン刑事/신형사:パクの同僚)
キム・ユルホ/김율호(パクの同僚刑事)
パク・ソングン/박성근(刑事課のチーム長)
シム・ワンジュン/심완준(情報チーム長)
イ・ムセン/이무생(オ・ミョンファン/오명환:フィッシング詐欺組織のボス)
ヤン・ファン/杨帆(チン/첸:ボスの秘書)
ソンヒョク/성혁(デウ/대우:フィッシング詐欺の幹部)
イ・ヘウン/이해운(ギボム/기범:掛け子の管理者)
ムン・ヒョンドン/문형돈(黒縁メガネの男)
イ・ギュホ/이규호(組織の大男)
ファン・ボジョン/황보정일(組織の大男)
ペ・ミョンジン/배명진(組織の大男)
キム・ギム/김기무(恐喝する組織のチーム長)
イ・ジュスン/이주승(キョンチョル/경철:フィッシング詐欺の掛け子、ヤク中)
ムン・ドンヒョク/문동혁(テソン/태성:キョンチョルの友人)
キム・ソンイル/김송일(外交官)
キム・サンドン/김상동(被害者、老人)
キム・ジャヨン/김자영(被害者、主婦)
カン・ジグ/강지구(被害者、若者)
アン・ソヨ/안소요(ウンミ/은미:被害者、銀行員)
シン・ミヨン/신미영(託児所の職員)
チェ・ヒジン/최희진(福祉局のスタッフ)
ジュン・ヨン/전영(ランドリー工場スタッフ)
チョ・ジヒョン/조지현(ランドリー工場スタッフ)
ソン・ファリョン/손화령(ランドリー工場スタッフ)
キム・ユンジョン/김윤정(ランドリー工場スタッフ)
キム・ミンス/김민수(巡査)
ハン・ソンス/한성수(巡査)
チョン・ユンハ/정윤하(華城銀行スタッフ)
パク・ミングァン/박민관(華城銀行スタッフ)
キム・ススク/김소숙(華城銀行のお客様)
キム・ヨンギョ/김연교( ソン・ジョヨン/손진영:本物のソン代理、銀行の副代表)
イ・ヤンヒ/이양희(示談を申し入れる弁護士)
ピョ・チャンウォン/표창원(犯罪スペシャリスト、テレビ解説者)
チャン・ジョンイン/장정인(緊急コール112番の声)
デビッド・リー/David Lee(中国警察のチーム長)
イ・ムンビン/이문빈(中国の刑事)
キム・ユヨプ/김유엽(中国の刑事)
キム・ソンガン/김성강(空港のトイレの客)
■映画の舞台
2016年6月30日~8月21日
韓国
中国:
山東省、青島
https://maps.app.goo.gl/VGGwNwEfS7xtPizs5
ロケ地:
韓国&中国
■簡単なあらすじ
クリーニング店を経営していたドッキは、ある時の不慮の火事によって、多額の借金を抱えていた
ランドリー工場で働きながら返済をし、幼い息子フンと娘ミンジを育てていたが、託児所に払うお金も尽きていた
そんな彼女の元に、華城銀行のソン代理という男から電話が掛かってきた
ソン代理はどこからも金を借りれないドッキを巧みに操り、気がつけば合計3200万ウォンの払込みをさせていた
気がついた時には手遅れで、ソン代理は本物の銀行員を偽った詐欺であることがわかった
ドッキは警察に被害届を出すものの、振込先が架空口座ですでに閉鎖されていて、警察の捜査もあっさりと終了してしまう
さらに世間を騒がせる巨額詐欺事件も発覚し、警察はそれどころでは無くなってしまった
そんな折、再びソン代理から電話が掛かってきた
それは詐欺グループから脱出したいというもので、情報を提供するから警察に通報してほしいというものだった
ソン代理は実はクォン・ジェミンという名前で、居場所の向かいにレストランがあること、コールセンターには山積みのミシンがあることなどの情報を送る
ドッキはその情報をもとにパク刑事に駆けつけるものの、パク刑事はそれだけでは捜査できないと言って跳ね除けてしまった
そこでドッキは、中国語が話せる同僚のボンリムに通訳をお願いした現地に向かおうと考える
同僚のスクジャも一緒についてきて、現地では土地勘のあるボンリムの妹エリムも参加することになったのである
テーマ:行動力と補償
裏テーマ:自分の身は自分で守る
■ひとこと感想
韓国ではボイスフィッシングというようで、日本でいう特殊詐欺が取り上げられていました
実家兼職場のクリーニング店の火災に伴って、工場勤務をしながら借金を返すドッキが主人公で、実際の事件を取り扱っていました
とは言え、モデルの人が現地に行って捕まえたというのではなく、警察に情報提供をしたというもので、それによって元締めを逮捕するに至ったというものでした
映画はパンフレットが制作されておらず、最近(2016年)の事件なのであまりウィキにも詳しくは載っていません
映画では、情報提供者への謝礼の話が出てきますが、映画公開の時点では支払われていないようですね
最近のニュースでは半額が支払われたというものがありましたが、現在進行形で追っていく事件のように思います
映画はかなり脚色が入っていて、仲良し3人組+現地民がかなり危険なゾーンにまで踏み込んでいきます
決して真似をしてはいけない案件で、どこまで情報提供ができるかというのが鍵になってきます
映画のように警察が動いてくれる可能性は低いのですが、あそこまでの情報があれば動けると思います
そこから先も茨の道で、結局のところ「組織内にいた内通者」まではわからないのですね
どこまでが実話ベースなのかはわかりませんが、思った以上に内部の情報が濃いものなので、リアルさが伴っていましたね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作は、実際の事件を扱っていて、モデルとなる人物がいます
一般市民なのでそこまで情報がありませんが、映画は「情報提供」以外はフィクションになっていました
昨今の特殊詐欺を紐づけていて、その実態を暴露するという意味合いもあったと思います
特殊詐欺の被害者というのは「騙される方が悪い」という風潮があって、ドッキもそのうちの一人なので、警察からもバカにされていましたね
後ろめたさから「授業料」と割り切る人もいれば、ドッキのように借金までしたために後に引けない人もいると思います
実際に存在する銀行員の名前を騙ったりするのですが、それぐらい組織には情報が漏れているということなのでしょう
青島に監禁されている人などは、今で言う「闇バイト」に属するもので、親族の名前などもバレているために動くに動けなくなっています
組織犯罪を起こしている人は法律の抜け道も知っているし、熟練された方法論があります
なので、できる限り距離を置くしかないのですが、自分のところに及んだ場合は、然るべきところに相談するしかないでしょう
映画は、リアルとフィクションが良い感じに融合されていたので、啓発の役割は果たせるのかな、と感じました
■実際の事件について
本作の元ネタとなった事件は、2016年に京畿道華城市で起きた実際の事件で、被害者はキム・ソンジャという女性でした
彼女は、映画のようにボイスフィッシング内部告発者の情報に基づいてこれを華城東警察署に知らせたが、警察はこれに対して反応せず、彼女を無視したと言われています
その後、映画で描かれるように、キム・ソンジャが黒幕の本名や彼が韓国に入国する日まで突き止めました
彼女は自身が直接捕まえなければならないという覚悟で恐れを克服し、ボスの写真、隠れ家情報、中国に所在する事務所住所、ボイスフィッシング被害者名簿などの手がかりを集めて警察に提出しました
結局のところ、警察はこれらの手がかりを土台に検挙することに成功したが、彼女には検挙したという通知すらなく、さらに秘密諜報だったとし、被害金額を返さなかったとされています
韓国では、金融詐欺犯人検挙功労が認められれば、申告補償金を最大1億ウォン支給を受けれるのですが、警察はこれすらも無視することになります
その後、MBCの取材が始まると、警察側は言い訳をして、キム・ソンジャに補償金100万ウォンを与えようとしたが、彼女はこれを拒絶します
そして、華城東警察署の業務怠慢と申告無視などに対して大韓民国警察庁に陳情書を提出することになりました
しかし、この事件が当時もよく知られていなかったため、陳情書を提出しても、きちんと処罰された人員はいなかったとされています
これは「補償金をすぐに支給しなかったことに対する怠慢業務」と受け止められ、2016年6月にキム・ソンジャが大統領府国民請願掲示板にも請願を上げても大きな注目を浴びることはありませんでした
それでも、この映画が公開したことをきっかけに該当事件が本格的に注目されて多くの人々に知られ、キム・ソンジャもJTBCニュースに出演して当時の事件についてインタビューを受けることになります
その後彼女は、腐敗・公益申告褒賞金対象者に選定され、被害額全額に該当する金額を褒賞金として受け取るべきだという声が多く上がるようになります
映画では主人公キム・ドッキが仲間たちを連れて青島に直接行って発見して捕まえようとし、空港でボスに会って中国公安に渡す様子が描かれていました
でも実際には、キム・ソンジャは青島に行ったことがなく、写真を警察に送った後、現場チームが仁川空港で逮捕したとされています
また、中国公安は介入しませんでした
さらに、拉致された被害者だったという映画の設定と逆に、実際の内部告発者は大韓民国で犯罪を犯して中国に逃げた指名手配者だったと言います
実際のボイスフィッシング事件で韓国人拉致被害者はおらず、指名手配者美化論議が上がり、拉致被害者を侮辱するのではないかという指摘が出るようになりました
これは、中国の昌治ボイスフィッシング組織員監禁事件を混ぜて脚色したと考えられています
2024年8月27日、ようやくキム・ソンジャがついに褒賞金5000万ウォンを受け取ったというニュースが報じられました
詐欺被害金額の約2倍で、彼女は「不可能に見えることもあきらめなければ成し遂げられる」という感想を残しています
しかし、犯人から犯罪収益金を没収したにもかかわらず、彼女にお金が返ってくることはないと言います
それは、腐敗財産の没収及び回復に関する特例法第6条は、「犯罪被害者がその財産に関して犯人に対する財産返還請求権又は損害賠償請求権等を行使することができないなど、被害回復がひどく困難であると認められる場合には没収・追徴することができる」と規定されているからだと言います
その後彼女は、2024年末に犯罪被害財産還付を水原地検に申請しました
しかし、申請を検討した水原地検は、2025年3月13日「申請人は腐敗財産没収法第6条第3項・1項により還付を申請したものとみられるが、2016年事件の没収宣告は刑法第48条第1項に基づくものであり、腐敗財産没収法で定めた「没収宣告」当時適用した法条項が違って、還付対象ではない」という結論を出します
また、「腐敗財産没収法によって没収が宣告されなければ還付対象であるが、被害者が対象ではない事件に申請したもの」と言い、当時の裁判所が「刑法により押収物を国庫に没収する」と宣告した事件なので還付の対象にはならないと判断しているとされています(うーむ意味がわからない)
2016年度判決文に「腐敗財産没収法に基づいて没収する」と明示されてこそ、還付が可能だという説明」であり、それに対してキム・ソンジャは「その時、警察がその事件から私を排除した。私が情報提供したという根拠がない。被害者としても特定ができない。それがどういう意味なのか分からない」と吐露し、検察の還付申請却下決定に不服する行政訴訟を起こした、とされています
■特殊詐欺への対応策
昨今は社会問題化している特殊詐欺ですが、その内容は「お金にまつわること」と単純化した方が良いと思います
どのような手口でも「お金を出させる方向に話が進む」ので、この段階に来るまでに「話に乗らない」というのが最も効果的だと考えられます
高齢者が引っ掛かるのは電話が圧倒的に多いので、「電話に出ない」というのが最も効果的な方法だと言えます
留守番電話を聞いてから折り返すなど、相手のペースで話が進まないようにするのが良いのですね
もし、留守番電話に「オレオレ詐欺に代表されるような警察からの電話」があったとしても、管轄署、部署を名乗らないということはないので、それが無い電話は無視してもOKです
基本的には「音声データを残さない」ので、留守番電話にメッセージを吹き込まれることはありません
なので、どんな電話であれ、留守番電話のメッセージを確認してから折り返すのが良いと思います
あとは、家族の電話に関しては事前登録を行うことで防げるので、登録以外の電話には一切出ないということを家族に周知することが良いと言えます
家族との決め事はとても大事で、「お金の話は直接する」とか、「登録以外の電話は出ない」などが有効的だと思います
直接訪問などの場合は、基本的には「応対しない」というのが根っこであり、何かの提案があれば「家族と相談するので資料を置いて帰ってください」で統一すればOKでしょう
キーワードとして出てくるのは「お金」「ATM「キャッシュカード」「暗証番号」などで、あとは不安がらせるために「弁護士」「警察」などの言葉が登場します
複数人で捲し立てることもあるので、会話に関しては録音するということを習慣づけた方が良いと思います
今では、スマホなどにくっつけて録音できるものもあるので、そう言った道具を頼ることも良いと思います
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■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は実際の事件をベースに作られていて、警察が動かないから自分が動いたという内容になっていました
ほとんどの人なら「勉強代」で諦めてしまいがちですが、それでは良くないのだと思います
中国に拠点を持つ犯罪グループに素人集団で乗り込むことは無茶ですが、ある程度の情報を集めて公的権力を動かすというのは無理とは言えないのでしょう
それでも、映画の警察同様にきちんと動かないのが警察というもので、犯罪の規模によって、動ける組織というものが決まっています
日本の場合、特殊詐欺を扱うのは「生活安全部(生活安全課・生活安全特別捜査隊)」というところで、各都道府県の警察本部に置かれています
また、特殊詐欺グループの背後に暴力団や反社がいる場合には「刑事部(組織犯罪対策課)」というところが動きます
さらに「警察庁 組織犯罪対策部 特殊詐欺対策室」という部門もあり、これらの部署は情報を集約し、都道府県の県警を統括し支援する部署となっています
これらの部署に直接相談をするのは難しいと思いますが、通報窓口としては「#9110」となっていて、最寄りの警察本部の相談窓口に繋がります
「#9110」に通報したのちには、相談員(警察署員、担当者)から「状況の詳細」を聞かれます
「詐欺の手口(電話、メール、訪問など」「犯人の特徴(声、話し方、名乗り方)」「要求された金額や振込先」「すでに振り込んだか、カードを渡したか」「時間、場所、連絡手段」などを聞かれるので、あらかじめ情報を整理しておくと良いと思います
その後は「緊急性の確認」というものが行われ、今すぐに対応すべき案件だと担当の警察署、交番、刑事などに引き継ぎが行われ、パトカーや捜査員が派遣されることがあります
さらに、必要な措置と捜査の開始が行われ、受け渡し予定の現場で逮捕のための準備が行われたり、電話番号、口座情報の追跡がなされます
被害が確定した段階で、「これ以上の被害に遭わないためのアドバイスやサポート」「地域の防犯活動への協力要請」「金融機関との連携による被害回復の手続きとそのアドバイス」なども行われます
警察が動けるかどうかは、「具体的で詳細な情報」になるので、会話の録音ができない場合でも「何度も聞き返すふりをしながらメモる」などの習慣をつけた方が良いでしょう
ちなみに「#9110」は「緊急では無いけれど警察に相談したい窓口」なのですが、緊急性が高いと「110」への切り替えや担当部署への引き継ぎ・捜査開始というものが行われます
なので、何もわからないけどどうしたら良いかという時は、家族への相談はもちろんのこと、「#9110」を活用したら良いと思います
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/102541/review/04574435/
公式HP:
https://klockworx.com/movies/duk-hee/