■黒歴史となるか、今後の糧となるかは、プロデューサー次第なのでしょうか


■オススメ度

 

「ロード・オブ・ザ・リング」の世界観が好きな人(★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2025.1.3(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:The Lord of the Rings: The War of the Rohirrim(ロード・オブ・ザ・リング:ローハンの戦い)

情報:2024年、アメリカ、134分、G

ジャンル:中つ国のある辺境の国の王位争いを描いたヒューマンドラマ

 

監督:神山健治

脚本:ジェフリー・アディス&ウィル・マシューズ&フィービー・ギティンズ&アーティ・パパイョルイゥ

原作:J・R・R・トールキン『The Lord Of The Ring』

 

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キャスト:

ブライアン・コックス/Brian Cox(ヘルム/Helm:ローハン国の第9代国王)

 

ガイア・ワイズ/Gaia Wise(ヘラ/Héra:ヘルムの娘)

   (幼少期:Bea Dooley

 

ベンジャミン・ウィンライト/Benjamin Wainwright(ハレス/Haleth:ヘルム王の長男、ヘラの兄)

ヤズダン・カフォーリ/Yazdan Qafouri(ハマ/Hama:ヘルム王の次男、ヘラの兄)

 

ロレイン・アッシュボーン/Lorraine Ashbourne(オルウィン/Olwyn:ヘラの侍女)

ビラル・ハスナ/Bilal Hasna(リーフ/Lief:ヘルム王の従者)

ローレンス・ウボング・ウィリアムズ/Laurence Ubong Williams(フレアラフ/Fréalaf:ダンハローの領主、ヘルム王の甥、ヘラの良き理解者)

 

ルーク・パスクァリーノ/Luca Pasqualino(ウルフ/Wulf:ローハンの西境、領主フレカの息子)

   (幼少期:Elijah Tamati

ショーン・ドゥーリー/Shaun Dooley(フレカ/Freca:ローハン西境の領主、ウルフの父)

マイケル・ワイルドマン/Michael Wildman(ターグ将軍/General Targg:領主フレカの忠実な右腕)

 

ミランダ・オットー/Miranda Otto(エオウィン/Éowyn:ホーンブルグの盾の乙女)

ジャニーン・デュビツキ/Janine Duvitski(ペニクルック/Old Pennicruik:ホーンブルグの倉庫番の老女)

ジュード・アクウディケ/Jude Akuwudike(ソーン卿/Lord Thorne:ヘルム王の配下)

Alex Jordan(フライト卿/Lord Frygt:不定地を収める仮領主)

 

ビリー・ボイド/Billy Boyd(シャンク/Shank:ホーンブルグ周辺に潜むオーク)

ドミニク・モナハン/Dominic Monaghan(ロット/Wrot:ホーンブルグ周辺に潜むオーク)

Carlos Damasceno(オークのボス)

 

Will Godber(ローハンの難民の少女)

Christopher Lee(白のサルマン/Saruman:ヴァラールの使者の魔法使い)

Calum Gittins(ワイルドマン/Wildman:ダンランドの荒くれ者)

Matt Beachen(ダンハローの将軍)

 

ミランダ・オットー/Miranda Otto(ナレーション)

 

【その他の声】

Shane Bartle

Zac Bell

David Cox

Adam Rhys Dee

Daniel Denova

Alison Dowling

Daniel Flynn

Stephen Gledhill

Peter Hambleton

Nick Haverson

Oliver Hembrough

Ronny Jhutti

James Ladanyi

Simon Lawson

Anthony Lewis

Jonathan Magnanti

Gary Martin

Neil McCaul

Naomi McDonald

Carmel McGlone

Joshua Miles

Louie Nixon

Hilary Norris

Fergus O’Donnell

Nigel Pilkington

Lyndee-Jane Rutherford

Stephanie Thomas

Martin Tidy

Gemma Wardle

Rob Alderman

Jay Clare

Daniel Entwistle

Keith Robertson

Gavin Newton

Luke Blick

Lewis Collins

Callum Pearson

Adam Taylor

Dan Hyams

Kieran Milne

Matthew Kennedy

 

【日本語吹替版】

市村正親(ヘルム)

小芝風花(ヘラ)

津田健次郎(ウルフ)

山寺宏一(ターグ将軍)

本田貴子(オルウィン)

中村悠一(フレアラフ)

森川智之(ハレス)

入野自由(ハマ)

田谷隼(リーフ)

斧アツシ(フレカ)

大塚芳忠(ソーン卿)

沢田敏子(老ペニクルック)

村治学(ロット)

飯泉征貴(シャンク)

坂本真綾(エオウィン)

 


■映画の舞台

 

中つ国:ローハン


■簡単なあらすじ

 

ビルボ・バギンズが指輪を手に入れる200年前、中つ国のローハンでは、ヘルム王を中心とした王政が敷かれていた

ヘルム王には3人の子どもがいて、長男はレスは武勲を上げる武将として、次男ハマは竪琴を好む文才を発揮し、末娘のヘラは「奔放な娘」として活動的な行動を繰り返していた

ヘラは魔法使いと繋がっていると言われる大鷲とコンタクトを取ろうとして、丘を駆け巡っては餌付けなどをいていた

 

ある日のこと、西境を統治するフレカ卿が息子ウルフたちを連れてやってきた

彼らの目的は、ウルフとヘラの結婚を取り仕切ることだったが、ヘルム王はフレカの悪巧みだと断罪し拒否の姿勢を示す

そして、王の前での侮辱行為があったことにヘルム王はフレカを挑発し、宮殿外にて決闘を行うことになった

 

フレカは相手が老いぼれであると余裕を見せていたが、ヘルム王の一撃で命を落としてしまう

ウルフたちはローハンから追放され、ヘラは彼の行く末を心配していた

 

それから数年ほどしたある日のこと、今度は東境で異変が起こる

それは、ヘルム王の鬼畜の所業を受けての、神の怒りだと噂されるようになっていた

 

テーマ:王家の威信

裏テーマ:反旗を産む所業

 


■ひとこと感想

 

実写版『ロード・オブ・ザ・リング』3部作から随分経ちましたが、今更ながら「前日譚をオリジナルアニメで制作する」というのに驚きました

3部作はほぼ記憶にありませんでしたが、前日譚ならば知識は不要かなと思い、あえて予習はせずに鑑賞しました

結果として、「これって、ロード・オブ・ザ・リングなの?」という感じで、広い世界の辺境の過去譚は「ぽさ」というものをほとんど感じませんでした

 

オークや白のソロモンが出てきたあたりで世界観は通じているのかなぐらいに思える内容で、ロード・オブ・ザ・リングだと言われないとわからないほどに「普通の中世を舞台にしたアニメ」に思えました

ヘルム王はやたら強かったのですが、戦う前に指輪を外していて、封印を解いたのか、指輪の力を頼らなかったのかとか、その辺りもイマイチわかりませんでした

中盤ではオーク相手に肉弾戦で圧倒するし、あれだけの矢を受けても無事だったことのネタバレとかなかったように思います

 

映画は、アニメ好きな人がヘラのビジュアルであれこれ言うタイプの作品で、いとこのフレアラフとの微妙な距離感は二次創作向けのネタのように思えました

一応アメリカ映画ということで字幕版で見てきましたが、あまりキャラに合った声ではなかったように感じられました

吹替版の方が意外としっくりくるのかもしれません

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

「ロード・オブ・ザ・リング」関連ということで、いくらなんでも「指輪に関する何か」が出てくるかと思っていましたが、劇中では「ヘルム王が外す」「オークが集めている」以外に出番がなかったように思います

紆余曲折を経て、冒頭のナレーションにもあるビルボ・バギンズの手元に行くのだと思いますが、それがどの指輪なのかは察してね、ということなのでしょうか

指輪以外のホラ貝とか、竪琴などのアイテムの方が意味ありげに登場していたので、本当に「指輪物語感」というものを感じませんでした

 

この後に何作かを経て、3部作の最初に繋がるのだと思いますが、このペースだと「前日譚3部作」でも作ろうと考えているのかなと思ってしまいます

王位継承でも王冠は取り沙汰されますが、ヘルム王から王の指輪を引き継がれるとかもないので、そのあたりをはっきり見せてもよかったでしょう

 

映画は、3部作&原作を読み込んでいる人にはわかる設定とかがあるのだと思いますが、初見で行ったら意味がわからないところが多いでしょう

ローハン国とゴンドール国が領土争いをしているのですが、冒頭でサラッと地図が出ても、両国の位置関係とかを説明したりしないのですね

また、ナレーションが「ホーンブルグにいた盾の少女」なのですが、いわゆる「回想録」という構成になっていました

このあたりの「語り手の立ち位置と時代背景、その関係性」などもあまりうまく構成されているとは思えませんでした

 


ざっくりと「ロード・オブ・ザ・リング」

 

「ロード・オブ・ザ・リング」はJ・R・R・トールキンによるファンタジー小説の古典であり、中つ国(Middle-Earth)を舞台にしています

3部構成となっていて、これは小説も映画も同じで、「旅の仲間(The Fellowship of the Ring) 」「二つの塔(The Two Towers)」「王の帰還(The Return of the King)」と続いていきます

 

物語は、はるか昔に冥王サウロンは「ひとつの指輪」を作り出し、世界を支配しようとするものの、戦争の末に指輪を失うところから始まります

それがホビット族のビルボが拾うことになり、息子のフロドへと託されることになりました

フロドは指輪が世界を脅かす邪悪な力を秘めていることを知り、魔法使いのガンダルフの助言に従って、指輪を滅ぼすための旅を始めます

フロドは仲間と共に旅立ちますが、途中でバラバラになってしまい、親友のサムと旅を続けることになりました

 

その後、二人っはかつて指輪を所有していた怪人ゴクリをガイドにして旅を続け、ローハンで起きた大規模な戦争に巻き込まれてしまいます

ローハンのセオデン王が立ち上がり、ヘルム峡谷の戦いが勃発します

そして、指輪を守るための戦いと、セオデンとサウロンの衝突が激化していきます

 

やがて戦いも下火となり、ゴンドールの王位継承者としてアラルゴンが真の王として立ち上がります

フロドとサムはモンドールにある滅びの山へと向かい、指輪を捨てる使命を果たそうとします

でも、ゴラムの裏切りにより、フロドは指輪の力に取り込まれしまうのですね

最終的には、ゴラムが指輪と共に火口に落ち、戦争もサウロンの勢力が崩壊して、世界に平和が戻ることになりました

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの前日譚にあたる作品で、フロドに指輪が渡るまでの過去譚のひとつとなっています

この映画が終わった後に「ロード・オブ・ザ・リング」に続くとは到底思えず、原作内で起こるローハンの戦争のはるか昔にある遺恨を描いていました

通常、前日譚と言うからには、「指輪」がどのように生まれたのか、と言うところだと思うのですが、それはスルーして、ローハンで起きた過去の戦いだけを描いていました

フロドたちを筆頭としたホビットたちの話でもないし、親が指輪を拾った話でもないし、当初は何を見せられているんだろうと言う感じでした

 

それ以外にものめり込めない部分がたくさんあって、結局は国の話と言うよりは、ヘラを巡る男たちの情けない部分が露出するに過ぎなかったと言うところだと思います

ウルフはヘラに好意を持っていて、ウルフの父フレカ卿が二人の婚姻のために動くことになりました

でも、その縁談はうまく行かず、決闘の末に亡くなってしまい、それが原因で息子のウルフと敵対していきます

そこから、ヘラとウルフの最終決戦にもつれていくのですが、この痴話喧嘩に国民が巻き込まれていると言う情けない話になっていました

 

最終的にヘラは王女となることもなく冒険に出ることになるのですが、その後「ロード・オブ・ザ・リング」と関わりを持つこともなかったと思います

なので、主人公たちの末裔がのちの物語に出てくることもなく、完全なるスピンオフのようなポジションになっているのですね

キツい言い方をすれば、「ロード・オブ・ザ・リング」の世界観を利用した二次創作であり、しかも指輪と国名以外に共通点もありません

そう言った意味合いにおいて、シナリオを直す以前に制作する必要があったのかどうかも分からない作品となっていました

 

この映画だけを面白くするためには色々と方法はあると思いますが、考えられるのは「ウルフとヘラの恋愛を誰が阻むのか」と言うところだったでしょう

この恋愛を妨げるものが強ければ強いほどに共感力を生むと思うし、彼らが仲違いをしているのが罠だと言う方向だと、何とか元さやにならないかなと思えるでしょう

でも、その方面はガン無視で、ヘラがウルフを倒すことで全てが終わってしまいます

なので、ヘラは強い女性だったぐらいの感想しか湧いてこず、その後は国を放り出して自分の世界へと行ってしまうので、何を見せられたのだろうと言う気持ちしか残りませんでした

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

最近は映画界もネタバレ不足のようで、過去のビッグタイトルの名前を借りたビジネスというものが横行しています

映画も商業なので仕方ないと思いますが、それにしてもレベルが低い作品が多いのも事実のように思います

成功している続編もたくさんありますが、それは元となった作品に対するリスペクトはもちろんのこと、オリジナルとの相関関係も変わらないし、支持されてきた骨子をそのまま受け継いでいると思います

最近だと『トップガン』『ゴースト・バスターズ』などが続編が作られた成功例だと思いますが、『トップガン』で感じた良さはそのまま踏襲されているし、『ゴースト・バスターズ』も然りと言えるでしょう

 

『ロード・オブ・ザ・リング』が評価されているのは、「原作の世界観の再現度」「キャラクターのドラマと成長」「圧倒的なスケールと映像技術」などがあります

本作には原作がないので「再現度」というものはありませんが、シリーズが培ってきた再現度をアニメで行えるのかという命題はありました

同じようなことがアニメでできるとは思えませんが、どこにでもある中世を舞台にしたファンタジー映画の域を出ているとは言えますと思います

キャラクターのドラマに関しては、ヘラとウルフを中心にした愛憎がありますが、基本的に誰も成長していないでしょう

なので、ドラマ性は一過性の愛憎に留まり、この物語を通じて変化をした人物もいません

 

このあたりを踏まえた上で考えると、ヘラがどのように変化するのかというところがドラマ性になりますが、その結論が国を出て旅をするというのではまとまっていないように思います

戦争が起きた遠因になっているものの、彼女が国を離れることで平和になるわけでもなく、彼女の経験を踏まえた国づくりを行う方が理に適っているように感じます

本来ならば、ウルフを殺すことなく赦し、それを国民に見せることの方が意義があったでしょう

結局のところ、意図せずに混乱を招いただけになっているところが、国を担う一端としてどうだったのか、というのは問われる部分のように思いました

 

現代では、新しいアイデアを生み出すのは難しいと思われるかもしれません

でも、次々に良い作品は生まれるし、既存のアイデアの巧妙な組み合わせもあっったりします

エンタメ作品には型があり、それを踏まえつつどのようなアイデアで装飾するのかというところが新しい作品を生み出すことに繋がるでしょう

本作でそれが行われるとするならば、ヘラ(もしくはウルフ)が指輪の力によって闇落ちし、国に混乱をもたらすというもので、この時に採用する物語の骨子は「愛によって指輪の魔力に打ち勝つ」というものだと思います

 

「ロード・オブ・ザ・リング」において恋愛要素が必要かどうかはわかりませんが、「指輪がもたらす厄災」を細分化し、どのような作用が起きれば「国全体の危機」を引き起こすのか、という過程を綿密に見せることができます

その上で、指輪の魔力についての怖さを描き、人の脆さを描き、そこから立ち直る術を描いていくことができます

この流れに関しては、恋愛要素を抜きにした兄妹でも描けるし、幼馴染でも描けるし、何ならヘラが人間でウルフ的なポジションがホビットでも良いでしょう

そう言った人間関係の構築、キャラクターの配置の部分をも含めて、いかにして「ロード・オブ・ザ・リング」にあるものを活かしつつ、ないものを描くのかというのが大事だったと思います

本作において、それらがうまく機能していればもっと評価も高かったはずで、これらの部分が足りなかったから興収が振るわなかったのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/98958/review/04625004/

 

公式HP:

https://wwws.warnerbros.co.jp/lotr-movie/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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