■宝くじが連れてきたのは、希望か絶望か幸福か不幸か
Contents
■オススメ度
抱腹絶倒系のコメディが観たい人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.1.10(アップリンク京都)
■映画情報
原題:육사오(6/45)、英題:6/45
情報:2022年、韓国、113分、G
ジャンル:ロト6の当選くじを巡る南北境界線兵士の悲哀を描くコメディ映画
監督&脚本:パク・ギュテ
キャスト:
コ・ギョンピョ/고경표(パク・チョヌ:1等6億円の宝くじを手に入れる韓国兵、兵長)
【韓国軍】
ウム・ムンソク/음문석(カン・ウンピョ:チョヌの上役、少哨長)
クァク・ドンヨン/곽동연(キム・マンチョル:換金の使命を受ける韓国上等兵)
リュ・スンス/류승수(韓国の給水補給官)
イ・ジョンヒュク/이준혁(韓国の大隊指揮官)
シン・ウォンホ/신원호(韓国軍の新兵)
ソ・ジョンウ/서정우(ハ:韓国の一等軍曹)
【北朝鮮軍】
イ・イギョン/이이경(リ・ヨンホ:チョヌが失くした宝くじを拾う北朝鮮の上級兵)
パク・セワン/박세완(リ・ヨニ:ヨンホの妹、北朝鮮の軍宣伝隊の兵士)
イ・スンウォン/이순원(チェ・スンイル:北朝鮮の政治指導員)
キム・ミンホ/김민호(パン・チョルジン:ダンスが得意で情報アクセス権限を持つ北朝鮮の上級兵)
ユン・ビョンヒ/윤병희(キム・ガンチョル:北朝鮮の保衛指導員)
ナム・ドヨン/남도윤(チョ・ヨンチョル:農園で働く北朝鮮の少年兵)
キム・ガンシク/김광식(北朝鮮の司令官)
チョン・インギ/정인기(リ・ヨンホの父)
【その他】
パク・ヘジン/박희진(ポパイ:ソウルの女社長)
イ・ヒョンゴル/이현걸(チャ室長:ロトブローカー)
オ・ヒョンス/오현수(カルグクス(麺料理)の店主)
オ・ヘグム/오혜금(ロト6のイベントガール)
ピョン・ハンマ/편한마음(ロト6のイベントガール)
■映画の舞台
韓国:ソウル
南北境界線437番監視所
ロケ地:
韓国:ソウル
■簡単なあらすじ
ソウルの飲み屋にて無造作に扱われたロト6は、風に運ばれ、軍用車の引っかかるなどの紆余曲折を経て、南北軍事境界線の監視所にたどり着いた
韓国側の監視所にて働いている兵長のチョヌは、その宝くじを拾い、それが1等当選していたことで浮かれておかしくなっていた
小哨長のウンピョは彼を病院に送ろうと考えるほどに常軌を逸していたが、ある日監視台の上で宝くじを眺めていた時、それは風に飛ばされて、北朝鮮側へと飛んでいってしまった
チョヌは境界線の柵の下を掘って北朝鮮に侵入し、そこで宝くじを探し始める
そして、それは北朝鮮の上級兵ヨンホの手元にあることがわかった
チョヌはその宝くじを返すように告げるものの、ヨンホは「分け前」を主張し、二人の交渉は決裂してしまう
だが、そんな交渉を続けているうちに、二人のおかしさに気づいた両陣営は、彼らの共通の秘密に近づいてくる
チョヌはウンピョに隠し通せず、ヨンホも政治指導員スンイルにばれて仕舞う
そして、両陣営は交渉のテーブルにつくために潜入し、サインを送り合って「共同給水区域(JSA)」にて、再び交渉を再開することになったのである
テーマ:強欲の果て
裏テーマ:無欲と本能
■ひとこと感想
松尾スズキが字幕監修をしていると宣伝されている本作は、骨の髄までコメディ映画となっていて、行きつけのミニシアターでは、かつてないほどの笑いが巻き起こっていました
抱腹絶倒とはこのことで、十数人の観客のほぼ全員がどこかしらで笑っていたのではないかと思います
映画は、南北境界線にたどり着いた宝くじを巡るバトルなのですが、その緊張を忘れさせるほどにはっちゃけていたと思います
北朝鮮には怖い指導員がいるものの、実は「少ない情報で韓国アイドルにかぶれている」などのありそうなネタをぶっ込んできます
そんな中、人質を交換して保証し合うという展開になるものの、彼らの軍人としての有能性が思わぬ展開を迎えていくのは凄かったですね
このあたりの「なさそうでありそう」という絶妙なラインがうまくできていて、さらにあるあるネタをぶっ込んだり、ソウルに行ってからも一悶着あるところは上手いシナリオになっていました
ラストのオチもクスッとできる感じで、それぞれが拾得物としての権利にあやかったというのはほっこりとしてしまいましたね(ある人物を除く)
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
南北軍事境界線を舞台にコメディなんて成立するのかと思っていましたが、これが「コメディ9割」という配分になってしまうほど巧妙なシナリオになっていました
それぞれの陣営でのバレ方もうまくできていて、宝くじが当たっていることを知る段階でも笑いを誘っていました
物語性はありませんが、人質交換からのサプライズの数々は、一歩間違えばホラーになりかねないものだったので、それを笑いに転じさせるのはうまいなあと思ってしまいます
後半で、動くに動けない状況になってからも、二転三転していくので、本当に最後はどうなるのかわかりませんでした
ソウルに行ってからも「ブローカー」が虎視眈々と狙っていて、さらに怪しすぎる女社長まで登場していましたね
「#変態軍人」とそれを追う展開も絶妙で、最後にキッチリと嵌められているのに誰も気づかないところが笑えてきます
それぞれは身の丈に合った拾得物の扱いに対する報酬を受けることになっていますが、股間に隠している御仁は、あの後ばれなかったのかなあと心配になってしまいますね
ともあれ、正月映画はコレ!というぐらいに、頭二つぐらい抜きん出ていたように思いました
■韓国の宝くじ事情
韓国にも日本と同じように様々な宝くじがあります
代表的なものは本作に登場する「ロト6(6/45)」で、45個の数字から6つを選ぶもので、1枚あたり1000ウォン(日本円で110円、執筆時のレート)となっています
他には「年金宝くじ」「スピット500、1000、2000」「電子宝くじ」などがあります
「ロト6」は「6個一致が1等」で「賞金は、当選金のうち、4等と5等を除いた75%」となっています
2等(5個一致とボーナス数字)と3等(5個一致)は、上記の条件で12.5%となっていて、4等(4個一致)は5万ウォン、5等(3個一致)は5千ウォンとなっています
受け取れるのは「ソウルにある農協銀行本店だけ」で、2、3等は農協銀行の本店&支店、4、5等は売り場でOKという感じになっていますね
換金場所が決まっているので、そこに群がるブローカーが虎視眈々と狙っているという背景が描かれていました
「スピット」というのはスクラッチくじのことで、500ウォンから2000ウォンで買えるもので、スピット2000の1等は10億ウォン(約1.1億円)で、こちらは販売元の「株式会社ドンヘン宝くじ」にて受け取ることができます
「電子宝くじ」は、インターネットで購入できるもので、韓国在住者のみ、指定口座にチャージして参加するものです
「年金宝くじ」は、当たれば「20年間毎月700万ウォン(1等の場合)を受け取れる」というもので、一括ではなく継続して払われるという形式になります
毎月77万円ということになるので、それでファイヤーしちゃう人もいそうな感じになっています
■宝くじと税金
映画内でも言及された「宝くじの税金」ですが、韓国の場合は「所得税法」によって定められる「その他の所得」に該当します
日本でいう雑所得のようなもので、当選金は無条件に「源泉分離課税方式」で税金を納めなければならないと定められています
この「源泉分離課税方式」とは、他の所得と一緒にしないというもので、これを行うと毎年5月に行なう「総合所得税(日本でいう確定申告みたいなもの)」をする必要がありません
ちなみに、すべての当選金が課税対象ではなく、5万ウォン以下は非課税、5万ウォン〜3億ウォン、3億ウォン以上によって税率が違います
この税率は「所得税と地方所得税」の両方がかかる仕組みで、3億ウォンだと「所得税30%、地方所得税3%」ということになります
でも、10億ウォンが当たったとしても、全部が33%ではなく、「5億ウォンが22%、残りの5億ウォンが33%」という感じに計算されることになるそうです
これが一括で手に入った場合の税率で、「年金宝くじ」の場合だと、毎月700万に対して22%が徴収されることになります
700万*12ヶ月*20年間=16億8千万ウォンで、上記の税率だと3億ウォン*22%、13億8千万*33%になるので、税率面でも優遇されていることになるのですね
ざっくりとした計算だと、700万(税金154万)*12ヶ月*20年間だと「3億6960万ウォン」が税金になります
一括だと、3億*22%=6600万、13億8千万*33%4億5540万の合計「5億2140万ウォン」ということになるのですね
一気に入るよりも、何かあった時のために収入ゼロにはならないし、税率もお得だったりするので人気があったりします
色んな記事をググって計算してみましたが、もし間違っていたら教えてくださいまし
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、宝くじを拾ったという前提があり、それによって「所有権の主張」というものに「後めたさ」というものがありました
もし自分で買っていたら、相手を殺してでも手に入れようとしていたでしょうし、場合によっては「開戦」なんて事態に発展したかもしれません
拾得物としても、金額が人生を変えてしまうほどのものなので、それを捨てることができないというのはなんとも言えない部分がありました
また、北と南で使い方が違うところに、お国柄というものが現れていたように思います
宝くじで高額な当選金が当たると、人生が好転するように思える反面、それで人生を終わらせてしまう人もいます
それは、金銭感覚の麻痺と生活レベルの向上によるものがほとんどで、これまで30万円ぐらいの収入で暮らしていた人の目の前に「遺産相続よりも大きなまとまったお金」が入ってしまうと狂わない方が不思議だと思います
高級車を買ったり、グレードの高い住居に変えたりする中で、財布の紐が緩んでしまい、それによって普段買わないもの、これまでだったら買わないものまで購入してしまいます
尽きることのないように錯覚し、また金の巡りが良くなったことが浪費によってバレてしまうので、それにたかる人々というものも増えていきます
狂った金銭感覚を持たないようにするには、お金の勉強をすることも大事なのですが、その恩恵をいかに長い年月の享受に変えられるかということが重要なのだと思います
その点、年金宝くじという考え方は面白くて、若い頃に当ててしまうと20年が過ぎた頃にどうなるかという不安はありますが、中高年がセミリタイアするには良いと思うのですね
このシステムを自分で作って運用するというのは難しいのですが、それに近い流れを作るとしたら、株式配当目当てに投資をするか、利回りの良い賃貸物件を購入して他人に貸すということになるのだと思います
このあたりに手を出しても失敗する可能性は高く、やはり常日頃からお金の運用に関する勉強というのはしておいた方が良いと思います
日本だと新NISAが始まったところですが、その中身がどんなものであるとか、どのような要因で株価や為替が変わるのか、ぐらいの知識は必要だったりします
個人的には、お金の動きを逐次見るために、FXで数万程度、株式で数十万程度のお金を入れて、「経済動向」を気にするようにしています
FXも株式も無くなっても構わないぐらいの金額で「捨てたもの」という感じに捉えていて、それでも「値動き」を作る要因には敏感になれたりします
FXの動きの一つとして、アメリカの雇用統計とかFRBの金利など指標と呼ばれるものがあるのですが、それをいかに身近なものにするかということが必要なのですね
そして、知らない単語が出てきたらググって、経済アナリストのレポートには何が書いてあるのかを理解する
そこに書いていることを鵜呑みにして投資をするのではなく、知識を入れるための強制的な学費だと割り切ることになります
株やFXでの損益に囚われすぎると普通の生活に支障を来たすので、生活に影響の出ない範囲の損益しか生まない程度の金額に設定することも大事なのですね
FXは消し飛ぶ可能性(場合によっては追徴)もありますが、そのリスクとしての「追徴に耐えられるだけの金額」を知っておく必要もあります
株は余程のことがないと消し飛びませんが、こちらは追徴がないので「喪失を念頭に置いても大丈夫な額」に留めておくのが良いと思います
個人的には、FXに3万、株式は優待目的でイオン100株という最低ラインを保持していますが、これによってこれまでに見てこなかった様々なものを見るようになりました
お金を得る目的で投資をすると失敗する可能性が高いとは思いますが、FXは経済動向の勉強のため、株式は優待目的だったりするので、それだけで意識が変わるのならばやってもいいんじゃないかな、と思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100386/review/03335376/
公式HP:
https://takarakujimovie.com/
