■会話がなくても通じ合うのは、そこに愛着があるからだと思います
Contents
■オススメ度
犬映画が大好きな人(★★★)
ロードムービーが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.7.4(MOVIX京都)
■映画情報
原題:777 Charlie(愛犬チャーリーの登録番号)
情報:2022年、インド、164分、G
ジャンル:悪徳ブリーダーから逃げた野良犬と旅をする偏屈な男を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本:キランラージ・K
キャスト:
ラクシット・シエッティ/Rakshit Shetty(ダルマ/ダルマラジダッタナ:孤独な工場労働者)
(若年期:Skanda)
Charlie(チャーリー/キートン:ダルマの愛犬、ラブラドールの野良犬)
サンギータ・シュリンゲーリ/Sangeetha Sringeri(デーヴィカ・アラディア:動物愛護団体の職員)
ダニシュ・サイト/Danish Sait(カーシャン・ロイ:雑誌の記者、デーヴィカの友人)
Nidhi Hegde(プラガティ:デーヴィカの部下)
Hani Yadav(ヴィシャル・アローラ:デーヴィカの部下)
ラージ・B・シェッティ/Raj B. Shetty(アシュウィン・クマール:獣医)
Varsha Kodgi(ペット病院の女性獣医)
Basavaraj Katti(パターニ:ペット病院の助手?)
ボビー・シンハー/Bobby Simha(ヴァムシナダン:ダルマが旅先で世話になるタミル人の青年)
Sharvari(アドリカ/アディ:団地に住む少女)
Lavya Kc(アドリカの母)
Aniruddh Roy(ゴータム:ドッグショーの司会)
Monita Bala(ドッグショーの司会)
Gopalkrishna Deshpande(プラバカラン・シン:ドッグショーの審査委員長)
Geetha(ジャナキ:ドッグショーの審査員)
Vishwa Vijetha(ラジュ:ドッグショーの審査員)
Harini Shreekanth(シャラダ:ダルマの母)
Siddharth Bhat(ダルマの父)
Praanya P. Rao(ダラニ:ダルマの妹)
Anirudh Mahesh(ウタム:ダルマの後輩社員)
Mime Ramdas(ムラリ:ダルマの上司)
演者不明(クルパアル:ダルマを妬む同僚)
Abhijit Mahesh(悪質なブリーダー)
Bengaluru Nagesh(ダルマの隣人、町長)
Salman Ahmed(マンジュー:ダルマの隣人)
Dhanraj Shivkumar(ヴィッキー:バイクでチャーリーを轢く近隣住民)
Suma Rao(ヴィッキーの母)
Mohan(ヴィッキーの友人)
Kiran Nayak(ジャヤラム:近隣住人)
Sheela Rao(カマランマ:近隣住人)
Srivatsa(近隣住人)
H.G. Somashekar Rao(イドゥリー屋の店主)
Bhargavi Narayan(イドゥリー屋の店主の妻)
Kiranraj K(北インドのホテルのオーナー)
Arnav(アーリア:犬を飼いたいと思っている少女)
Naveen Ellangala(アーリアの父)
Preetha Shetty(アーリヤの母)
Vijay Vikram Singh(スハシュタ・チャウラ:自然災害に出動している軍の幹部)
Dev Raj Ghosh(マダフ・バクシ:ダルマを制止する軍人)
Dinesh Mangaluru(ランジャン・シテッティ:ダルマを捕まえる警察官)
Paddu Bhushan(犬の登録所の職員)
Vian Fernandes(路上シンガー)
Rakshit Shetty(路上シンガー)
Triveni(ラマ:?)
■映画の舞台
インド:
ヒマーチャル・プラデーシュ州
マイソール
https://maps.app.goo.gl/Sdbk8wDRAjDDN6d56?g_st=ic
ロケ地:
インド:
マハシュトラ州
カルナータカ州
ゴア州
グジャート州
パンジャブ州
ヒマーチャル・プラデーシュ州
カシミール州
■簡単なあらすじ
悪質なブリーダーに飼われていた一匹のラブラドール・レトリバーはそこから脱走し、色んな土地を旅して、チンマヤ団地に辿り着いた
そこはペット禁止の区間で、野良犬はゴミを漁るしか生きる術はなかった
その団地には、堅物で臨んで孤立しているダルマという青年がいて、野良犬は彼が捨てるイドゥリーを食べて飢えを凌いでいた
ある日、バイクに撥ねられた野良犬を目撃したダルマは、その犬を獣医アシュウィンの元へ届けた
怪我の治療をしたものの、飼い主だと勘違いされてしまう
ダルマはそれを否定し、アシュウィンは次の飼い主が見つかるまで預かるように言った
やむを得ずに家に連れ帰ることになったものの、野良犬は躾がされておらず、家の中をめちゃくちゃにしてしまう
さらに団地の住人にバレてしまうものの、ダルマは強硬な姿勢に出て、住民を恫喝することになった
ようやく飼手が見つかり引き渡しができるようになったが、未登録だったために検査場に出向くハメになる
動物愛護団体の職員でもあるデーヴィカはダルマを怪しむものの、とりあえず登録が済み、野良犬は777番として登録され、チャーリーと名付けられた
テーマ:恩義と忠義
裏テーマ:絆が芽生える理由
■ひとこと感想
インドの犬映画ということで、どんな話なのかと思っていましたが、王道をゆくハートフルロードムービーに仕上がっていました
土地勘がないとわかりづらいところはありますが、ざっくりと南からヒマラヤに向けて向かっているぐらいで良いと思います
悪質なブリーダーから自力で逃げてきましたが、町に来ても食べるものはなく、偶然捨てられていたものを貰うことになっていました
2つしか注文していないのに3つ入っていたために、それがチャーリーの餌になっていたのはびっくりしましたね
映画は、とにかく長いので、結構な疲労感がありました
ドッグショーのくだりが必要なのかはわかりませんが、参加券をちゃんと読めば、参加者であることはわかるはずなのですが、おそらくタミル語で書かれていて、ざっくりしかわからなかったのかな、と思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作は、エンドロールに「天空の城ラピュタ」のテーマソングが流れてびっくりしました
そこは「フランダースの犬」じゃないの?と思いましたが、インド映画なので突っ込んでも意味はないように思います
動物愛護団体のデーヴィカが追いかけてくるのですが、ちょっと心が傾きかけたところに「友人という建前の彼氏」っぽい人が出てくるのは笑ってしまいます
虐待されているという通報を受けて追いかけていたのだと思いますが、そこはダルマが気になるという路線でも良かったのかな、と感じました
とにかく犬の演技がすごいので、それだけでも一見の価値はあると思います
とは言え、やはり約3時間は長すぎるように思いました
■インドの動物愛護について
インドは野良犬の数が多いと言われていて、その数は6200万頭とも言われています
1962年に設立された「Animal Welfare Board of Indis(AWBI=インド動物福祉委員会)」は、野良犬の保護活動を行うとともに、法律の制定などにも取り込んでいました
AWBIの本拠地はハリヤナ州のバラブガルで、インド政府に対して「水産・畜産・酪農」に対する助言を行う機関とされています
1960年にできた動物虐待防止法第4条に基づいて設置され、初期の委員会は28名、当時はチェンナイにありました
インド政府の食糧農業省の管轄下にあり、1990年に動物虐待防止に関するものは「環境・森林・気候変動省」に移管され、現在は「漁業・畜産・酪農省」が管理しています
動物実験に対する虐待の懸念、エンターテイメントにおける動物の使用などに問題があり、1964年には動物の公演に関する規則のベースを作ることになります(2001年に可決、2005年に改正)
AWBIのホームページを訪れてみると、多くの活動の記録などがありますが、ページの下の方にはマハトマ・ガンジーの「国家の偉大さと道徳的進歩は、その動物の扱い方によって判断できる」という言葉が引用されています
また、マハーヴィーラの引用として、「すべての生き物は、自分自身を愛し、快楽を好み、苦痛を味わい、破滅を避け、生命を望み、長生きすることを望む。すべての生き物にとって、生命は大切なものである。したがって、その生命は守られるべきである」という言葉もあります
マハーヴィーラは、ジャイナ教の開祖であり、古代インドの自由思想家の一人でもあります
マハーヴィーラは六師外道の一人で、相対主義、苦行主義、要素実在説を唱えた人物で、霊魂は永遠不滅の実体であり、乞食・苦行生活で業の汚れを落として涅槃を目指すという思想を持った人物でした
ジャイナ教のアヒンサーは倫理・教理の礎石となる原理で、非暴力(どんな形の生命をも傷つける欲求がない)ということを主張しています
ジャイナ教における菜食主義、その他の非暴力的な営為・儀式は、このアヒンサーの原理に基づいています
ちなみに、ジャイナ教では「暴力とは自分を傷つける行為である」と考えていて、魂が解脱へ至る能力を妨げる行為である、と定義しています
ジャイナ教では、アヒンサーを人間のみならず、動物や植物、微生物に至る命あるものすべての存在や生命力に対して行うとされています
■近親交配の怖さ
映画では、ブリーダーによる近親交配が問題視され、それによって遺伝的な疾患によって寿命が短くなるというケースが取り上げられていました
近交退化という言葉があって、これは「近親交配により個体の近交度(近交係数)が高まり、生物としての適応性の低下、繁殖性、強健性、発育性などの能力が低下する現象」のことを言います
有性生殖をする生物の多くは、常染色体上の遺伝子因子ひとつにつき、ふたつの遺伝子を持っています
父親から受け継いだもの、母親から受け継いだもののふたつで、どちらかだけから受け継いで形質に現れるものを優性遺伝子、両方から同一の遺伝子をもらった場合に形質が現れるものを劣性遺伝子と呼びます(優劣という意味ではありません)
人間の血液型がわかりやすいのですが、AとBが優性、Oが劣性とされていて、O型の子どもは両親それぞれからO型の遺伝子を受け継がないと発現することはありません
これらの近親交配は、個体数が十分な場合は起きにくいのですが、これは多くの生物が近親交配を避けるメカニズムを有しているからだと言われています
植物に関しては、品種改良を行う際に、望ましい形質が低頻度の劣性遺伝子に基づいている場合に有効とされています
野生種に比べて、近親交配の弊害としての脆弱性というものがあり、趣味性の高い競走馬、愛玩動物などには特定の遺伝病が顕著に多発するという例もあるとされています
ペットに関する近親交配は野放しに近い状態になっていましたが、今では「先天性異常を持つ個体の増加につながる」との観点から、近親交配には血統書を発行しない、などの措置が取られている地域もあるとされています
競走馬に関しても、近親交配が避けられる傾向がありますね
インブリードとアウトブリードという血統構成があるのですが、いわゆるサンデーサイレンスの3*4(父方3代前がサンデーサイレンスで、母方4代前がサンデーサイレンス)ぐらいまでは主流になっていた時期がありました
今では、サンデーサイレンス系が増えすぎたことで、何を交配させても同じような血統構成になって、虚弱な馬が生まれる可能性が増えてきたので、アウトブリード(5代前までの近親交配なし)みたいな配合が好まれていたりします
競走馬は特殊で、遡れば3頭の馬に行き着くなんて言いますので、近親交配を避けることはほぼ不可能なのですね
でも、近い世代での近親交配を避けることで、血統の維持を行なっているという側面があったりします
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、動物愛護の観点もなくはないですが、動物愛護団体がドックショーの審査員を務めるなど、それは大丈夫なのかという描写があって驚きました
ドッグショー自体は躾や能力を競うものですが、そういったものも行き過ぎると虐待になりかねません
映画では、調教などしてこなかったチャーリーが大技を見せるというファンタジックな側面もあり、躾よりも愛情や絆が評価されるものになっていました
ドッグショーも当初はそう言った飼い主との信頼関係を見せる場だったと思いますが、動物に特定の動きを教え込ませるというのが動物愛護の観点でOKなのかはなんとも言えない部分があるように思いました
物語は、予期せぬ出会いから縁が生まれ、そこから愛着と執着が生まれる過程を描いていきます
ペットを飼うというのは思った以上に大変なもので、単に可愛いからではどうにもならない部分があります
子犬時代に愛情を持って接しても、成犬になったら放置をするということもしばしば起こるので、「可愛い」という理由だけでペットを飼うというのはナンセンスなように思います
死が分つまで責任を持って世話をできるかという約束はペットに対してではなく、自分に課するものでしょう
本作の場合は、看取りまでをきちんと描き、チャーリーとの出会いによってダルマが変化する様子を描いていきます
人付き合いを敢えて避けているダルマが、チャーリーと関わることによって人と接する機会が増えてくるのですね
昨今では、配偶者を亡くした高齢者がペットを飼うという傾向もありますが、これはペットとの対話(自問自答)の意味合いよりも、ペットを飼うことで外に出て、他の人々とふれあう機会を増やす意味もあると思います
なので、室内ペットを飼って、配送で餌を購入するよりは、外に出る機会を増やし、簡単な運動をする目的で向かう方が良いのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101675/review/04002363/
公式HP:
https://777charlie-movie.com/#modal