■羊を数えるのは「SLEEP」と「SHEEP」が似ているからなので、日本語では意味がなかったりしますね


■オススメ度

 

夫婦に迫るスリラー映画に興味がある人(★★★)

ラストの解釈が分かれる映画に興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.7.4(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題:잠(眠る)、英題:Sleep

情報:2023年、韓国、94分、G

ジャンル:ある夜から夢遊病を発症する夫とその治療に尽力する身重の妻を描いたスリラー映画

 

監督&脚本:ユ・ジェソン

 

キャスト:

チョン・ユミ/정유미(チョン・スジン:新婚夫婦の妻)

イ・ソンギョン/이선균(オ・ヒョンス:夢遊病になるスジンの夫)

チェ・アリン/최아린(ハユン:スジンとヒョンスの娘)

イ・ギョンジン/이경진(スジンの母)

フチュ/후추(フチュ:スジンとヒョンスの愛犬、ポメラニアン)

 

キム・グヒヒ/김국희(ミンジョン:下の階に引っ越してくる女性)

キム・ジュン/김준(ジニュク:ミンジョンの息子)

イ・ドンチャン/이동찬(ミンジョンの祖父)

アンドリュー/앤드류(ミンジョンのポメラニアン)

 

キム・グムスン/김금순(ヨンウォル堂の巫女)

キム・ジハン/김지한(巫女の付き人)

パク・シファン/박시환(巫女の付き人)

 

パク・ヘスク/박혜숙(ドラマの社長役)

オ・ユンス/오윤수(ドラマの社長令嬢役)

ジェイソン・ユー/Jason Yu(ドラマの監督)

 

ユン・ギョンホ/윤경호(キム:睡眠クリニックの医師)

パク・ヒョンジュン/박현정(睡眠クリニックの看護師)

 

イ・ヘリョン/이혜령(病院の受付)

ホン・ハナイム/홍하나임(病院の受付)

 

キム・ナムウ/김남우(スジンの同僚)

ユ・ダムヒ/유담희(スジンの同僚)

ハ・ジンチョル/하진철(スジンの同僚)

チョ・ヘジン/조혜진(スジンの同僚)

イ・ゴウン/이고은(スジンの同僚)

 

チェ・ムンソク/최문석(ユ・チェンジャ:スジンの元カレ)

チェ・シウォン/최시원(チェンジャの娘)

 

イ・ヒョンソク/이형석(ヒョンスのボディダブル)

キム・ユジン/김유진(ラジオのアナウンサー)

 

ソ・イスク/서이숙(?)

 


■映画の舞台

 

韓国のどこか

 

ロケ地:

韓国のどこか

 


■簡単なあらすじ

 

新婚夫婦のヒョンスとスジンは、あるマンションの一室にて、仲睦まじく暮らしていた

二人には子どもが生まれる予定になっていて、スジンはまだ産休に入らずに仕事を続けている

ヒョンスは俳優として、色んな役にトライしているが、そこまでの売れっ子ではなかった

 

ある夜、夜中に突然目を覚ましたヒョンスは「誰かが入ってきた」と言って、再び眠りについてしまう

スジンはその行動の意味がわからなかったが、肌を掻きむしったり、生肉や生魚をそのまま食べるなどの奇行が目立ち始めた

 

スジンが母に相談すると、どこからともなく巫女の呪符を手に入れてきて、お祓いをしなさいと言い出す

スジンは馬鹿馬鹿しく思って、睡眠クリニックの医師に相談することを決めた

医師は、レミ睡眠時に覚醒している睡眠障害だと診断し、ヒョンスはその治療を始めることになったのである

 

テーマ:因果と信心

裏テーマ:思い込みの強さ

 


■ひとこと感想

 

かなり怖いスリラーということで、ある一言をきっかけにして、平和に思えた日常が壊れていく様子を描いていきます

夜中に突然目覚めて謎の寝言を言ったり、悪夢を見ているように苦しんだりする中で、その対処をどうするか、という内容になっていました

 

いわゆる科学と非科学の対比になっているのですが、前半と後半で怖さの種類が変わっているという感じになっていましたね

科学的な治療をするほどにスピリチュアルな解決策があっているように見えるし、スピリチュアルの方向に舵を切ると、それもまた行き過ぎているように思えていきました

 

本作は、ラストシーンが物議を呼んでいて、個人的にも「どっちにも思えるが、前フリが強いのはこっちかな」みたいな推論を立てていました

黒幕は意外なところにいましたが、もう一捻りあるのかな、と思ってしまいました

それでも、この終わり方はなかなか勇逸なものになっていたように思えました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画の前半は科学的な療法がメインで、後半がスピリチュアルに変貌し、夫がおかしいから妻がおかしいという感じに変化していきます

前半でバカにしていた巫女を受け入れるどころか、さらに強化されたように傾倒していくのですが、その転換が出産になっていました

子どもを守る母親はなんでもする、というわかりやすさもあり、夫も自分のおかしさに気づいていくので協力的になっていました

 

その後、自分で調べた薬を飲めるようになって改善するのですが、その頃には妻の方がおかしくなっていて、過激な方向へと突き進んでいきました

疑心暗鬼になって、医学的な対処を小馬鹿にしていき、そこには信頼関係というものが失われていました

 

これらの心理的な変化が絶妙で、それゆえに周囲からは異常者としてみなされるところにこの手の盲信の難しさというものが現れていきます

何に縋るのかという観点と、何を信じるのかの先にあるものが、自分の思い込みと対峙していくことになっていて、それが見事に表現されているように思いました

 


睡眠障害について

 

睡眠障害には、不眠症、過眠症、睡眠時随伴症というものがあります

これらをまとめて睡眠障害と呼びますが、最も多いのが「不眠症」であると言われています

この症状は、本人の健康を維持するために必要な睡眠時間が量的あるいは質的に低下して、社会生活に支障をきたすことがあります

 

過眠症とは、日中に過剰な眠気が起きる状態で、日常生活に支障が出る場合には病的であると考えられます

睡眠時随伴症は、睡眠中に起こる「寝ぼけた行動」のことを言います

ちなみに、映画で登場する夢遊病は「睡眠時遊行症」と呼ばれ、睡眠時随伴症のカテゴリーに入ります

この症状は、小児期後期と青年期に多く見られ、ノンレム睡眠の最も深い段階で起こるとされています

 

睡眠時随伴症には、夜尿、歯軋り、悪夢などの望ましくない現象も含んでいます

運動面として現れるものに睡眠時遊行症(夢遊病)、夜驚症、レム睡眠行動障害、寝言などがあります

自立神経面に問題がある場合は、睡眠時遺尿症(夜尿症)、乳児睡眠時無呼吸症などがあります

その他にも、悪夢、睡眠麻痺などがあるとされています

本作の睡眠障害は、睡眠時遊行症に当てはまるので、それに対する治療がなされていました

 


ラストについて

 

本作のラストは、巫女に傾倒して悪魔祓いをする妻を宥めるために、夫が演技をしているのか、本当に憑き物が落ちたのかわからないエンディングになっていました

どちらとも取れる内容になっていますが、演技を仄めかす伏線の方がきちんと描かれていたように思います

夫の職業が俳優で、モノマネが上手いというものがあり、随所に妻を笑わせるシーンがありました

また、夫が所望していた薬を主治医が出したことで、本当に効いたかどうかはわかりませんが、プラセボ効果も相まって、夫自身は治癒を信じるに至っています

 

逆に、儀式的なものが成功したと見做すには無理がある感じがしていて、それは妻と妻の母は信じているけど、夫はまったく信じていないという状況がありました

術が対象者に効能がある場合は、対象者が苦痛に感じたり、体調や体質の変化を感じる場合が多いと思います

もし、本当に悪霊がいて、それが夫に取り憑いたとしたら、あの部屋に入った段階で悪霊が苦しむなどの「抵抗」があるように思います

でも、夫は部屋に入ったことによる変化を感じておらず、効力を示すようなものはなかったように感じました

 

夫が睡眠障害になった理由はわかりませんが、彼自身はかなり自己肯定の低い男で、妻は過大評価をするという背景がありました

これが自己乖離を生み出す結果になっていて、深層心理の中で「妻の妄言を叶えられる俳優になろう」という念が強くなっていたと思います

でも、どんなに良い仕事をしても、夫自身が満足のゆくものになっていないので、それゆえにストレスが掛かっていたように描かれていました

夢の中でセリフを繰り返すとか、演技が続いているという状態になっていますが、それで生肉を食べたり、生魚を丸呑みしたりというのは行き過ぎているように思えます

 

妻は、夫の行動の変容を目の当たりにしていて、薬が効いていないこともわかっています

さらに、医師をボンクラだと考えていて、ややヒステリックになっている部分がありました

医療がダメならスピリチュアルという感じで、母が置いていった呪符に傾倒するようになり、さらに巫女の言葉に身に覚えがあるようにマインドをシフトしていくことになりました

意味づけが彼女の中で起こり、それはまるで僥倖のように思えてしまったように思えます

こう言った「自分の想像を補完するもの」が生まれたとき、それを否定することは固辞に繋がります

それゆえに、夫は妻の性格を見越して、彼女を肯定することで暴走を止めようと考えたのではないでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、身近にある睡眠をとりあげていました

程度の違いがあっても、何らかの睡眠障害を持っている人が多く、厚生労働省の有識者対象の調査では、日本人の睡眠時間の平均値は男性7.52時間、女性7.33時間と諸外国に比べて短めになっています

日本と大きな乖離があるのはフランスで、男性8.24時間、女性8.38時間となっています

 

厚生労働省による令和3年の調査では、8時間以上の睡眠は全体の16.6%、8時間未満〜6時間以上は58.6%にものぼります

6時間未満でも32%の数字になっていて、かなり睡眠時間が短い傾向になっていました

このような睡眠不足の背景があって、さらに過度なストレス状態に晒されると、睡眠障害というのも起こりやすくなると考えられています

むしろ、この睡眠時間の短さで有症率が少ないことの方が驚きのようにも思えます

 

最近のニュースでびっくりしたのは、「寝つきが良いのは実は気絶だった」というものでしたね

基本的に睡眠に至るまでは15分程度かかるとされていて、それよりも短く寝入っている場合は気絶であると考えられています

慢性的に睡眠が足りていなくて「寝落ちしている」という状態で、5分で寝てしまう人は過労状態である、とも言われています

 

個人的には昼夜逆転の生活なのですが、本来休んでいる時間帯に映画を見ていることもあって、極度の睡眠不足であることは自覚しています

なので、仕事に出かける前の10分だけ寝るとか、映画の予告編の間だけ寝るということをしていたのですが、あれは気絶だったのですね

そう言われればそうだよねえと思いつつ、いつでもどこでも瞬時に寝られる特技のように感じていました

不思議と予告編の10分だけ寝る(気絶する)ということができるのですが、どうやら失神のような脳血流の一時的な低下で起こる意識消失ではないのですね

意識的に気絶をしていて、それを時間単位でコントロールしているのですが、昔から降りる駅に着いたら目覚めるみたいなことができていました

その一環なのかなあと自己解釈していますが、本来は何かしらの病気が隠れているかもしれないし、何かの疾患を誘発しかねないので、ほどほどにしないとダメなんだろうなあと思い始めています

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101533/review/04002364/

 

公式HP:

https://klockworx.com/sleep

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投稿者 Hiroshi_Takata

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