■2898年に何が訪れるのかはわからないけど、そこに到達するまでにもっと時代が悪くなるとしたら、その責任の一端は現代人にあるのかもしれません
Contents
■オススメ度
インド神話に興味のある人(★★★)
続編ありきを耐えられる人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2025.1.9(MOVIX京都)
■映画情報
原題:Kalki 2898 AD
情報:2024年、インド、168分、G
ジャンル:神様の戦争の余波を受けた近未来を描いたアクション映画
監督&脚本:ナーグ・アシュウィン
キャスト:
【神話の時代】
プラバース/Prabhas(カルナ:カラウヴァ族を助ける戦士)
アミターズ・バッチャン/Amitabh Bachchan(アシュヴァッターマン/Ashwatthaman:胎児を殺して呪いをかけられたカウラヴァ軍の武将)
Krishnakumar Balasubramanian(クリシュナ/Krishna:アシュヴァッターマンに呪いをかける神、声:Arjun Das)
Vijay Deverakonda(アルジュナ/Arjuna:カルナのライバルの射手)
Malvika Nair(ウッタラー/Uttara:ヴィシュヌ神の化身、マティサの王女)
Padmaja(ウッタラーの友人)
【カーシーの住民】
プラバース/Prabhas(バイラヴァ/Bhairava:一匹狼の賞金稼ぎ)
(1歳時:Arjun Varma)
(3歳時:Oziel Jivani)
(12歳時:Aakash Srinivas )
(若年期:Hearty Singh)
Keerthy Suresh(ブッジ/Bujji:BU-JZ-1:バイラヴァの相棒AI、ドロイド・ビークルの声)
ディシャ・パタニ/Disha Patani(ロキシー/Roxie:バイラヴァの恋人)
Brahmanandam(ラージャン/Rajan:バイラヴァの家主)
ケーヤ・ナーヤル/Keya Nair(ライア/Raia:男装する少女)
Advait Chauhan(アイザック/Issac:ライアの父)
ラーム・ゴーバール・ヴァルマ/Ram Gopal Varma(チントゥ/Chintu:屋台の料理人)
Chandni Bihari(チントゥのアシスタント)
Venkata Ramana(ロニー/Ronnie:下取り屋)
Shifu Ash(ロニーの手下)
Srinivas Avasarala(金貸し)
フムフ/Humhu(クレーン/Krane:賞金稼ぎ)
Andrei(クレーンの手下)
Ashok(クレーンの運転手)
Asif(クレーンの手下)
Bhaskar(クレーンの手下)
Johar(クレーンの手下)
Sai Krishna(クレーンの奴隷の老人)
S.S. Rajamouli(賞金稼ぎの先輩)
Baby Sanvitha(サーヌ:連れ去られる妊婦)
Prashant Yeramilli(サーヌの父)
Shripad Kale(カーシーの占い師)
Usha(ボンダおばさん/Na Bonda Aunty:バイラヴァを疎ましく思う住人)
ドゥルカン・サルマーン/Dulquer Salmaan(戦闘機のパイロット、バイラヴァの育ての親、回想)
【コンプレックス】
カマル・ハーサン/Kamal Haasan(シュプリーム・ヤスキン/Supreme Yaskin:200歳の支配者)
アニル・ジョージ/Anil George(バーニ顧問/Counsellor Bani:ヤスキンの部下)
シャッショト・チャタルジー/Saswata Chatterjee(マナス司令官/Commander Manas:プロジェクトKの責任者)
ハーミッシュ・ボイド/Hamish Boyd(ユリ/Yuri:ラボの科学者)
ディーピカー・パードゥコーン/Deepika Padukone(スマティ/サム80/Sum 80:身籠ったまま逃亡する奴隷、実験室被験者)
アヌーシュカ・マスキー/Anoushka Maskey(GS-Q43:被験者の監視役)
Faria Abdullah(ピーコック/Peacock:コンプレックスの踊り子)
Anudeep K.V.(コンプレックスのパーティー参加者)
【シャンバラ】
ラジェーンドラ・プラサード/Rajendra Prasad(ルーミー/Rumi:シャンバラの反逆者の戦闘班のリーダー)
ムルナル・タークル/Mrunal Thakur(ディヴィア/Divya:シャンバラが保護している妊婦)
ショーバナ/Shobana(マリアム/Mariam:シャンバラの指導者)
カヴィヤ・ラマチャンドラン/Kavya Ramachandran(リリー/LYL-33:コンプレックスに潜入する反乱軍のメンバー)
パスパシー/Pasupathy(ヴィーラン/Veeran:サマティを救出する戦士、運転手)
アンナ・ベン/Anna Ben(カイラ/Kyra:サマティを救出する戦士、アッジュの婚約者、スマティの名付け親)
アヤーズ・パーシャー/Ayaz Pasha(アッジュ/Ajju:サマティを救出する戦士)
ハーシス・レディ/Harshith Reddy(ルーク/Luke:カーシーに潜む反逆者のメンバー)
ヴィナイ・クマール/Vinay Kumar(シリウス司令官/Commander Sirius:シャンバラの司令官)
Jayanthi Reddy(樹木の医者)
Manasi Kaushik(マリアムの部下)
Llhamo(マリアムの部下)
【その他】
Reshad Dilawar(ラメス/Ramesh:?)
Chandra Mohan(ゴクー/Goku:?)
Harish Shetty(スレッシュ/Suresh:?)
Sanghwa Shin(レオン/Leon:?)
Mani Varshith(ナイコ/Naiko:?)
Aishwarya(アフリカの部族民の男)
Sofia Ashraf(反乱軍の兵士)
Nawang Chenba(キリスト教の修道女)
Kamatchi Kaleeswaran(カーシーの奇抜な住人)
Armaan Khera(侵入者のリーダー)
Rahul Odak(侵入者)
Rahul Odak(侵入者)
Sathvik Pingali(侵入者)
Marc(侵入者)
Dhruv Sincro(侵入者)
Soumitri(侵入者)
Nandita Chowdhary(少女の母)
Sia(ブジボットで少年を助ける女)
■映画の舞台
西暦2898年、
都市カーシー
ロケ地:
インド:テランガーナ
■簡単なあらすじ
古代インドにて、パーンダヴァ軍とカウラヴァ軍の戦争が勃発し、ほとんどの戦士が命を落とした
そんな中、アシュヴァッカーマンはパーンダヴァの王女ウッタラーに矢を放ち、それによって胎児が死んでしまった
クリシュナ神はアシュヴァッカーマンに死ねない呪いをかけ、それから6000年の時が経とうとしていた
西暦2898年、世界は荒廃し、要塞都市コンプレックスに富と権力が集中し、唯一の文明都市はカーシーだけとなっていた
そこを目指して多くの人々が殺到するものの、そこは思い描いていたようなユートピアではなかった
カーシーでは妊娠可能な女性はコンプレックスに狙われていて、そこでは詳細不明の実験が行われていた
カーシーに着いた少女ライアは男の格好をして逃げ、近くの遺跡へと身を忍ばせた
一方その頃、カーシーでは賞金稼ぎが暗躍し、ユニットを集めてコンプレックスに入りたいと考えていた
その中の一人バイラヴァは負けなしの男だったが、家賃もロクに払わず、住民からは煙たがられていた
バイラヴァにはAIアシスタントのブッジがいて、一発逆転の案件が出ることを心待ちにしていた
テーマ:世界を復活させる者
裏テーマ:転生が示す道標
■ひとこと感想
インド神話をベースにしたSF映画で、近未来っぽさが描かれていました
妊婦の胎児からエキスを吸い取って母体ごと捨てるという凶悪なシーンがあって、それが黒幕の延命と復活に使われていました
その技術で200歳生きているカマルと、クリシュナの呪いで6000年生きているアシュヴァッカーマンが対決するところまで行かないのですが、最近のインド映画って、こんな感じで続編ありきで展開している作品が多いように思います
主人公はバイラヴァなのですが、本作では脇役に近いような感じになっていましたね
次作には、覚醒したバイラヴァがカルナとなって活躍するのだと思いますが、このペースだと、覚醒して3作目に突入しちゃいそうな勢いのように思えました
映画は、とにかく脱線しまくる感じで、キャラが多すぎて追いきれません
バイラヴァは孤児という設定ですが、それを拾い上げたパイロットが育ての親になって、そこからコンプレックス絡みで生き別れになるという感じになっていました
その後、賞金稼ぎとして活躍することになるのですが、コンプレックスに売る売らないあたりの流れもよくわからない感じになっていましたね
メンター的な存在のように思えますが、あまりにもサラッとしすぎて、伝説になっている所以もほとんど明かされていないように思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作のネタバレはどこまでなのかわかりませんが、完結していないので本作のネタバレはネタバレにもなっていないように思います
一応、バイラヴァが神話の時代の伝説の神様カルナということになっていますが、カルナがどんな神様なのかの説明はほとんどありません
なので、「マハーバーラタ」を読んでから観てくださいねレベルで端折られていると思います
パンフレットには見開きで解説がされていて、さらに「マハーバーラタ」の人物相関図などがありました
アルジュナとカルナのライバル的な立ち位置とか、アシュヴァッカーマンとカルナの関係性なども何となくわかると思います
映画のタイトルは『カルキ』で、これは劇中のスマティが身籠っている子どもの名前なのですね
また、カルキはヴィシュヌ神10番目の化身なので、カルナとは別キャラだと思われます
映画はこの辺りをミックスして新しい展開を考えているのかもしれませんが、このあたりの関係性がわからないと意味不明な流れになっていると思います
バイラヴァがカルナの転生後だとすれば、アシュヴァッカーマンからすればかなり複雑な人物になるのですが、アシュヴァッカーマンがカルナの正体について知らないという感じで話が進んでいるようにも思えるので、解説によっては次作の決定的なネタバレになってしまうのかな、と思ってしまいました
■マハーバーラタについて
映画はインド神話「マハーバーラタ」をベースとしていて、それを知っている前提で話が進んでいきます
「マハーバーラタ」とは、紀元前4世紀頃に成立したとされる神話で、原典はサンスクリット語で書かれています
全体で約10万詩節あるとされていて、いわゆる叙事詩というジャンルになります
主な物語は、パーンドゥ族とカウラヴァ族の戦いを描いています
パーンドゥ族はパーンダヴァの五兄弟がメインで、こちらが主人公側となります
五兄弟は、ユディシュティラ(長男)、ビーマ(次男)、アルジュナ(三男)、ナクラ(四男の双子)、サハーデーヴァ(四男の双子)という構成
母親はクンティとマードリーで神々から授かったとされています
一方の敵側のカラウヴァは100人兄弟の中でドゥリヨーダナが中心として登場し、他の兄弟は彼の配下として登場しています
クルクシェートラの戦争が物語のクライマックスで、18日間の壮絶な戦争が描かれていきます
この他に登場するのがクリシュナ(ヴィシュヌ神の化身)、ドウラパディー(パーンダヴァ5兄弟と結婚し、恥辱を受けたとして戦争の引き金となった)、カルナ(太陽神の息子でありながら敵側に属する悲劇の英雄)、アシュワッターマン(不死の呪いを受けた男)となっています
カルナ(カルキの後の姿とされる)とアシュワッターマンが本作で登場しますが、他の神様も今後登場するでしょうし、肝心の5兄弟とか敵にふれるようになるのかもしれません
ちなみに映画のタイトルになっているカルキは、ヴィシュヌ神の最後の化身と知られる神様で、バーガヴァタ・プラーナ、ヴィシュヌ・プラーナ、アグニ・プラーナ、ブラフマンダ・プラーナなどに登場しています
カルキ自身は新しい世界の始まりを告げる存在となっています
このシリーズでどのような扱いになるかは分かりませんが、バイラヴァたちのいる世界を変える役割を担うのではないでしょうか
■転生が起こる理由
フィクションの世界でありがちな「転生(Reincarnation)」にはいくつかのパターンがあります
それは「事故死・突然死」からの転生、「神もしくは精霊による導き」が起こす転生、「胎児転生」と呼ばれる前世の記憶を持ったまま生まれ変わる、仏教や東洋思想に基づく輪廻転生、呪いや魔法的なものの介入によって起こる転生、自分の魂だけが過去に戻るタイプリープ系転生などがあります
それぞれには「第二の人生のやり直し」「異世界への招聘」「使命的なもの」「過去の罪などによる試練」「転生そのものが目的化しているもの」と言うふうに区別されます
本作では、神話の時代と映画内現在の時代が描かれていて、その関連性というものが描かれていきます
神話の時代の続きを人間で行うというもので、さらにそれが2898年頃にまで続いていることが示唆されていました
映画はかなり導入の部分で終わっていましたが、ラストでは主人公が何者かに助けられ、生まれ変わったように見える演出がなされていました
いわゆる「戦いはこれからだ」という感じで、転生に至るまでの過程と理由づけを描いていたと言えるのではないでしょうか
前述のカテゴリーとしては色々と重複するものがありますが、目的としては神話の時代の出来事を正すという意味合いが強いのかな、と思いました
いずれにしても、続編ありきの作品なので、神話の時代と2898の時代が繋がっているよ、という前置きにしかなっていない部分はあると思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画の舞台は西暦2898年で、一見するとなぜこんな中途半端な時代を選んだのかと思われがちです
これにはどうやら意味があるようで、それはヒンドゥー教の時間観というものが大きく影響しています
ヒンドゥー教の時間観では、世界は「サティヤ・ユガ」「トレータ・ユガ」「ドドヴァーバラ・ユガ」「カリ・ユガ(現在の時代)」というふうに分けられています
現在は「カリ・ユガ」に分類され、これは紀元前3102年前に始まったとされています
この時代は43万2000年続くとされていて、一部の文献では「カリ・ユガ開始から約5000年後に」カルキ神が現れるとされていて、それがおよそ西暦2898年頃となる、と考えられています
それゆえに「2898年」を舞台にしていると考えられ、劇中でも示される「カルキ降臨の預言」に沿った設定となっていて、その世界に蔓延る悪を倒す救世主の出現を描くことができます
ヒンドゥー教における「ユガ(Yuga)」は先ほどの4つの時代(ユガ)を繰り返して循環していると考えられています
「サティヤの時代」は「真理の時代」と呼ばれ、正義と徳が満ちた黄金期とされています
「トレータの時代」は「三分の時代」と呼ばれ、正義が4分の3に減少してしまいます
さらに「ドヴァーバラの時代」は「二分の時代」とされ、正義が半分になってしまいます
そして、現代の「カリの時代」は「闇の時代」と考えられていて、「不正と無知が蔓延っている」と考えられています
カリの時代はクリシュナの死とともに始まり、それが紀元前3102年とされています
この時代は「ダルマ(正義)」が最も衰退し、人々が利己的で暴力的、物質主義になる時代となっています
預言では、社会は腐敗し、宗教も形骸化し、最終的には悪が頂点に達すると考えられています
そんな世界を変えるのがカルキであるとされていて、カルキという名前には「破壊者」「汚れを浄化する者」という意味のサンスクリット語に由来しています
ヒンドゥー教の維持神であるヴィシュヌは、世界のバランスが崩れるたびに人間界に降臨し、その化身(アヴァターラ)と呼ばれるものはすでに10体あるといいます
それらは「マツヤ(魚)」「クールマ(亀)」「ヴァラーハ(猪)」「ナラシンハ(人獅子)」「ヴァーマナ(小人)」「パラシュラーマ(戦士)」「ラーマ(ラーマヤナの主人公)」「クリシュナ(バガヴァッド・ギーターの語り手)」「ブッダ(宗派によってはゴータマ・ブッダ)」であり、10番目に現れるのが「カルキ」とされています
カルキは白馬に乗って登場し、腕には剣を持っています
その剣で現代の堕落した王や悪人を倒し、正義を回復させていきます
そして、新たなサティヤの時代が始めると言われています
映画は、カルキが現れる過程を描いていて、それは同時に悪に満ちた世界というものはどこまでの世界なのかを描いていることになります
そうした時代の終焉がカルキによってもたらされるという流れになっていて、次作以降は「どのように正義を回復するのか」とか、カルキにとって、人類にとっての真の悪とは何か、を描いていくことになります
この映画が作られているのはカルキの誕生する850年も前の時代ですが、その850年の間に「今よりもヤバい世界が来る」と示唆しているのでしょう
このまま人類が朽ちていくことで救世主を待つことになるのか、もしかしたらすでにカルキの転生先は生まれていて、その時を待っているのかは分かりません
叙事詩としての希望を描いているのなら、時代の転換に起こるのは「悪の浄化」いうことになり、映画内の最も悪に近い男の改心というものが示されると考えられます
そういった意味において、現代社会にて「来るべき悪とは何か」を描こうとしているのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/102017/review/04648833/
公式HP:
https://kalki-movie.com/
