■とりあえず日記をつけ始めたら、離婚って減るのかもしれません
Contents
■オススメ度
とりあえずミュージカルなら観ちゃう人(★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.12.28(アップリンク京都)
■映画情報
原題:Tomorrow Morning
情報:2022年、イギリス、110分、G
ジャンル:結婚10年目の夫婦の危機を描いたミュージカル映画
監督:ニック・ウィンストン
脚本:ローレンス・マーク・ワイス
原作:ローレンス・マーク・ワイスの舞台脚本(2006年、ロンドン初演)
キャスト:
サマンサ・バークス/Samantha Barks(キャサリン:離婚調停を終えた妻、現代アートのアーティスト)
ラミン・カリムルー/Ramin Karimolo(ビル/ウィル:キャサリンの元夫、コピーライター)
オリヴァー・クレイトン/Oliver Clayton(ザック:キャサリンとビルの一人息子)
ジョーン・コリンズ/Joan Collins(アンナ:キャサリンの祖母)
HarrietThorpe(ジョーイ:キャサリンの母)
Alex Micheal Stoll(デヴィッド:イタリア人彫刻家、キャサリンの元カレ)
Luke Walsh/ルーク・ウォッシュ(ガイ:キャサリンの大学時代の恋人)
ジョージ・マグワイア/GeorgeMaguire(ニック:ビルの親友)
ハリエット・ニール・ハースト/Harriet Neil Hurst(ロビン:ビルの友人)
Oliver Savile(マイク:ビルの友人)
オミッド・ジャリリ/Omid Djalili(ダリウシュ:ビルの父)
ヘンリー・グッドマン/HenryGoodman(ジョナサン:離婚弁護士)
Anita Dobson(カレン:ウィルの上司)
Adwoa Akoto(レイチェル:ウィルが気になる同僚)
フラー・イースト/Fleur East(インディア:キャサリンの友人)
Lauren Chia(キャシー:結婚式のドレッサー)
PaulFrench(ポール:バーテンダー)
Stephen Ashfield(ギャラリーのオーナー)
Karen Hauer(サルサのリードダンサー)
Tommy Franzen(ダンサー)
■映画の舞台
イギリス:ロンドン
ロケ地:
イギリス:ロンドン
Wapping/ワッピング
https://maps.app.goo.gl/PDQz5sAkY2SmsysKA?g_st=ic
■簡単なあらすじ
ロンドン在住のウィル(ビル)とキャサリンは結婚10年目を迎えて、離婚の危機に瀕していた
ウィルは小説家の夢をあきらめて広告代理店のコピーライターで成功し、キャサリンは現代アートのアーティストとして時の人になっていた
2人にはもうすぐ10歳に成息子ザックがいて、彼は2人の痴話喧嘩に嫌気を差していた
2人は協議離婚として弁護士を立て、財産分与にて双方の主張をぶつけ合う
争点は2人が住んでいるペントハウスで、その主張はどちらも譲らなかった
だが、調停に踏み切ったのには理由があって、ウィルは時間をかけて関係を修復しようと考えていたのである
テーマ:約束の言葉
裏テーマ:意地の張り合いの無意味さ
■ひとこと感想
ミュージカル映画なのに退屈という新しい感覚をもたらす映画で、その理由の一つとして「テーマ性の浅さ」と「同じ歌に聞こえるほどのバリエーションの少なさ」であるといえます
ミュージカル映画ということぐらいしか事前に情報は入れていませんでしたが、意味深なキャストが多い割には(カメラ目線になることが多いから?)内容がほとんどありません
結婚の時に言った言葉覚えてる系で、かなりの難題なのかなと思いましたが、その言葉を忘れるのはあり得ないだろうというツッコミがどうしても入ってしまいます
むしろ、その言葉を何で息子が知っているのかもよくわからない感じで、記憶が飛んだ時に見落としていたのかもしれません
ほとんどの歌が「あの時は良かった」とか、「あんなに美しかった日々が」とか、未練の塊のような歌詞の連続で、サルサのダンスシーンぐらいしか見どころがありません
そのダンスシーンも「ダンサーが目立ちまくる」という内容で、「君ら物語に関係してたっけ?」という感じで困惑してしまいました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
結婚前の甘い言葉が広告のコピーになって成功
なのになぜか思い出せない設定で、現在と回想が入り混じりまくる「ものすごい観づらい構成」になっていました
途中から、現在と回想かどっちかわからないというシーンに誰もが遭遇したかもしれません
歌唱とダンスを楽しむには良いのですが、ストーリー性がほぼ皆無で、結局素直になって復縁というしょうもない「ノロケ話を延々と聞かされた感」というものが残ってしまいます
結局のところ、夫婦間の成功格差と子どもは天使という、前時代の投影のような作品なのですが、そりゃ原作が20年前なのでそうなるよね、という感じになっています
眺めている分には美男美女のきれいなシーンが多いのですが、現在と回想の違いの見極め方が「キャサリンの老け顔とウィルの髭」というところになっているのはどうなのかなと思ってしまいます
基本的には2人の物語なので、2人しか歌わないのですが、そのせいか単調さに拍車がかかっていたように思えます
90分ぐらいでサラッと見る分にはいいですが、120分の割には内容が無さすぎて、それでいて疲労感は高いと言う不思議な作品になっていました
■離婚理由の時代性
キャサリンとウィルが離婚に至った理由は「キャサリンの方が成功したから」で、ウィルのメンツが潰れたからというふうに描かれていました
ウィル自身も自分の夢をあきらめていて、夢を叶えたキャサリンに嫉妬していると告白していました
これらの離婚理由は今でこそ廃れつつあって、少しばかり前時代的な印象を持ちます
いわゆる、夫は家長として家族を養わなければならないという価値観がベースにあって、妻の成功が夫の恥を誘引するという考え方に繋がっています
人間には誰しも夢を見ている時期があって、その夢を叶えられる人というのは限りなく少ないという現実があります
ウィルは生活を考えて小説家を諦めてコピーライターをしていますが、彼がその世界で成功していることを考えると、「言葉を使う才能はあったが、その表現方法として小説よりもコピーの方が実力を発揮できた」という側面があります
なので、夢を諦めたと考えるか、「言葉を生業にして成功した」と考えるかで印象はかなり違います
それに対してキャサリンは、当初の夢をそのまま叶えた人で、アーティストとしての名誉を全て手に入れているというような描かれ方をしています
彼女は現代アートのアーティストですが、アートの世界の成功というのは時代性にかなり左右されるので、計算された成功とは言えません
プロモーターのうまさ、人脈、タイミングなどがうまくハマり、ある程度の支持者を得るに至ったということが重要で、そのサークルにはウィルはいません
ウィルが嫉妬を感じるのは、キャサリンの成功とは無縁で、当事者意識というものを持てなかったから、と言えるのかもしれません
夫婦のそれぞれが働き、それぞれに成功と失敗があるのですが、その体験の共有が行われることは稀だと思います
違う職種であればあるほどにその体験は想像の範囲にとどまって、光が当たっている場所しか感じられません
それゆえに一方的な見方になって、成功者の苦悩というものを汲み取れないと言えます
成功者には多くの犠牲と挫折と苦悩があるもので、表面的なものだけを見て嫉妬をぶつけられても反発するのは当然ではないでしょうか
この前提のもとで、男女間の露骨なカーストマウントが起こると破綻に向かうのは目に見えています
そして、その解消は「夫婦体験の共有」という原点に立ち返るというのが、本作のメインテーマであると言えます
■記念日問題について
男女間でしばしば口論になる「記念日問題」ですが、「告白した日」とか「結婚記念日」などを忘れるのはマジやばいと思いますが、最初に観た映画とか、最初に食べた料理とか、しかもその日時にまで言及されるとさすがにキツいと思います
私個人でも「告白した場所=地主神社」ということは覚えていますが、「何年の何月何日の何時」までは覚えていません
状況として、初詣に八坂神社に行った際に地主神社に立ち寄って、そこで行なったという記憶と、雪が降っていたというロケーションだけは覚えています
映画では「この日を覚えておこう」とキャサリンが言うように、それは「ウィルが告白した日(結婚を決めた日)」でした
そして、この時にウィルがキャサリンに何を言ったのか(告白の内容)と言うものがクローズアップされていました
結婚10年程度で、結婚を決めた時の言葉を覚えていないウィルは「マジやばめ」だと思いますし、映画のネタバレから「その言葉を忘れるのは「かなりヤバめ」としか言えません
宝石か何かのキャッチコピーに採用された「たった4単語」なので、これを覚えていないと言うのは普通の感覚ではあり得ないことだと思います
これに限らず、女性は事細かに記念日を覚えている人が多くて、それが愛の確認行為になっている風潮はあります
とは言え、これらは個人差があって、まったく気にしない女性がいるのも事実で、要は「愛の確認を何でするか」という個人差があるからだと思います
そんな中でネタになりやすいのが「記憶」の問題で、「覚えている、いない」で痴話喧嘩になると言うラブコメが量産されたのがイメージとして浸透しているのだと思います
「記憶」の定着には「体験」が必要で、体験を思い出すと記憶が蘇ると言うことはしばしばあります
映画では、ウィルとキャサリンの「あのときの場所」を親子三人で訪れるのですが、「あのときの2人の場所」が「3人の場所」に上書きされることで、「恋人から夫婦、そして家族」へと絆を深めていくと言う結末になっていました
元さやに収まるのがサプライズと言うくらいに断絶していましたが、結局のところ「愛が消えるほどには至っていない」ので、なんとなく「質の悪い痴話喧嘩を見せられただけ」という感想が残るのは否めないかなあと思ってしまいました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画はことの他「不評」で、ロンドンでは絶賛されたそうですが、個人的にはまったく面白味を感じませんでした
その要因が「歌唱シーンが多いけどアテレコに見える」と言うことと、「そもそもの夫婦のドラマが薄い」ということだと言えます
楽曲に関しては「なんとなく全部同じ曲に聞こえてくる」と言う感じで、歌詞がかなり抽象的な印象を持ちました
サルサのシーンだけ変化が強くて、それ以外はロングトーンとハイトーン任せの伸びやかな曲ばかりで、夫婦が揃って歌うシーンもほとんどありません
違う場所でそれぞれが歌っているのが重なっていると言う構成は良いのですが、ほとんどのシーンがそうなっているのは、ストーリー上の都合としか言えないでしょう
元々のミュージカルは「中年の夫婦と若いの夫婦がその時の心情を歌い合う」と言うもので、その夫婦が同一人物だったと言う構成がありました
映画では「若年期も現在も同じ俳優」なので、そのからくりは完全に無視されていました
また、協議離婚が終了し、明日になれば「離婚が成立する」というところから、「このままでいいの」的な回想録が延々と続いていきます
その内容もケンカのシーンがほとんどなのに、どこか2人とも愛は消えていないと言う未練の多い描写になっていました
まるで、「勢いで離婚協議したけどこれで良いのかしら」とこの後に及んで悩んでいると言うイライラする展開だったと言えます
これらの解消として息子のザックの存在であるとか、10年前のあの日を思い出し「今日が全て」みたいな暴論に行き着くのですが、観ていて「お、おう」と言う感じになってしまいましたね
別れた方が良いと言う流れではありませんが、元さやに至る過程が結構雑で、「協議に至るまでの会話のなさが問題やったんじゃないですか?」とツッコみたくなってしまいます
また、2人の周囲にいる人間の多くが「2人の離婚を望む」という悪趣味な感じだったのも微妙かなと思います
ウィルの父も友人も「結婚なんて」みたいなスタンスで、キャサリンの母と祖母は「離婚回数を誇りに思っている」みたいな感じで「離婚ウェルカム」と言う環境はどうなのと思ってしまいました
映画は周囲を落胆させる結果になりますが、そもそも離婚に至るほどの確執とは思えないので、勢いで結婚した夫婦は勢いで離婚するものと言うのを描いているのかなと思ってしまいました
そういうカップルも多いので否定はしませんが、一本の映画として観たときに得るような教訓とか、深いテーマと言うものはほとんど感じられません
とにかく美男美女がめっちゃ歌がうまくて、いつの間には元さやに収まっていた、と言う感じの映画でした
構成とカット割に無駄に尽力を注いでいますが、それが逆効果になっている映画でもありましたね
回想と現在の見た目がほとんど変わらない(ウィルはヒゲ、キャサリンはメイク)ので、「今どっち」と考える間を作ったのは惜しかったでしょう
作り手はわかっているから混同しないと思いますが、流石に目まぐるしく入れ替わり過ぎているので混乱を呼ぶだけの編集になっていたと言わざるを得ません
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/384337/review/655f1399-1e4a-4664-ac44-eccd1850ba59/
公式HP:
