■アムレートを導いたのは、結局誰だったのだろうか?
Contents
■オススメ度
北欧神話が好きな人(★★★)
ファンタジー系歴史ロマンが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.1.24(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
原題:The Northman
情報:2022年、アメリカ、137分、PG12
ジャンル:父を殺された息子が復讐に燃え、目的を有する美女とイチャラブになっていくファンタジー映画
監督:ロバート・エガース
脚本:シオン&ロバート・エガース
原作:サマソ・グママティクス/Saxo Grammaticus『The Legend of Amleth(1200年頃)』
キャスト:
アレクサンダー・スカルスガルド/Alexander Skarsgård(アムレート/ Amleth、バイキングの戦士、復讐を誓う王子)
(若年期:オスカー・ノヴァク/Oscar Novak)
ニコール・キッドマン/Nicole Kidman(グールトン女王/Queen Gudrún、アムレートの母)
イーサン・ホーク/Ethan Hawke(オーヴァンディル王/Aurvandill、アムレートの父、フィヨルニルの兄)
クレス・バング/Claes Bang(フィヨルニル/Fjölnir:アムレートの叔父、オーヴァンディルの弟)
アニャ・タイラー=ジョイ/Anya Taylor-Joy(オルガ:白樺の森に住むスラブ族の魔女)
Gustav Lindh(ソリル:フィヨルニルとグルートンの長男)
Elliott Rose(グンナル:フィヨルニルとグルートンの次男)
ウィレム・デフォー/Willem Dafoe(道化ヘイミル:アムレートの成人の儀を執り行う宮廷の道化師)
ビョーク/Björk(シーレス/Seeress:スラブ族の預言者)
Eldar Skar(フィン:フィヨルニルの牧場を管理する職長)
Olwen Fouéré(アシルドゥル・ホフギスヤ/Ashildur Hofgythja、フィヨルニル邸の巫女)
Kate Dickie(ハルドラ:フィヨルニルの農場の奴隷)
Ingvar Eggert Sigurðsson(アムレートに魔法の剣のありかを教える魔女)
Ian Whyte(ドラウグル/Mound Dweller:アムレートを襲うアンデッド)
Hafþór Júlíus Björnsson(トルフィン:球技のチャンピオン)
Tadhg Murphy(エイリーク:アムレスの仲間のバイキング)
Ralph Ineson(ヴォロディミル船長:ルーシ海の船長)
Murray McArthur(ホーコン:鉄髭をつけた隣の農場の酋長)
Ineta Sliuzaite(ヴァルキリ/ワルキューレ/Valkyrja:戦場で生きる者と死ぬ者を分ける存在)
■映画の舞台
紀元前895年
スカンジナビア地域の島国フラフセイ島(架空)
ルーシ海(現ウクライナ周辺)
アイスランド:オークニー諸島
https://maps.app.goo.gl/JxMh6mWyC9mNyF6DA?g_st=ic
ロケ地:
北アイルランド
Country Antrim/アントリム
https://maps.app.goo.gl/nnrS2Vb3ocDgCcB47?g_st=ic
Larne/ラーン
https://maps.app.goo.gl/nU6MAE2Vy3MG5Zwm8?g_st=ic
ポートグレノーン/Portglenone、Clandeboye Estate
https://maps.app.goo.gl/R8murPFCUohLuoSZ9?g_st=ic
Shane’s Castle
https://maps.app.goo.gl/YH2fAChr29kNmiog9?g_st=ic
RiverBann/バン川
https://maps.app.goo.gl/Vt5gy9ZCm1dKKhca7?g_st=ic
Akureri/アークレイリ
https://maps.app.goo.gl/RiE2GPREB5Gj7hib8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
紀元前895年、出征から帰国したオーヴァンディル王は、息子アムレートの成人の儀式に参加する
だが、その儀式の最中にオーヴァンディル王の弟フィヨルニルは謀反を起こし、兄を殺して女王グルートンを拐ってしまった
アムレートは命からがら逃げ切り、海へと消えていく
復讐を誓ったアムレートは、それから数十年をヴァイキング族とともに過ごした
仲間を得たアムレートは、ある日村を襲った時にスラヴ族の預言者と出会う
彼女は「アムレートがフィヨルニルに復讐を果たすことは神オーディンの意思である」と告げ、「雌犬の尾を辿れ」とアドバイスを与えた
アムレートはその言葉を信じ、王国がどうなっているかを調査する
だが、フィヨルニルはノルウェーのハランド・フェアヘアに打ち負かされ、アイスランドに逃げていることがわかった
そこでアムレートは奴隷のふりをして、彼の牧場に新入することを考える
そこにはスラヴから連れて来られたオルガと言う女性もいて、二人はフィヨルニルの農場に潜伏し、機会を窺うことになったのである
テーマ:神に与えられし運命
裏テーマ:運命を捨てさせた愛
■ひとこと感想
北欧神話ガッツリと言うことで、その知識がないと意味のわからんファンタジーになってしまいそうでしたね
個人的にはあまり知らない類ではありましたが、ウィレム・デフォーさんの憑依芸を見て、「ああ、そっち系なのね」と『ライトハウス』を思い出してしまいました
舞台がウクライナあたりからいきなりアイスランドに飛んだりと、結構な距離を動いているのに「絵面が変わらなくて困惑」してしまいましたね
とにかく「寒そう」と言う感じですが、みなさん筋肉の露出が凄くて、心も体も燃えているんだなあと感じました
白樺の魔女オルガはとても美しかったですが、大人の営みシーンでは鉄壁の防御を披露されていましたね
肌キレイやなあと思いながら、そっちのPG12には行かない潔さが却ってエロかったように思えました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
とにかく北欧神話を少しぐらい知っていないと、ラストどうなったのか意味がわからんのではないでしょうか
いきなり神っぽい何かが出て来たり、魔法使わない魔女が出てきたり、預言者はビョークさんとは絶対わからないはずなのに何となく頷いてしまうなど、妙なリアリティがあったように思います
オーディン信仰派のアムレートとフレイ信仰派のフォヨルニルの戦いみたいな感じなのですが、交戦的とそうでないと言うイメージがあっても、兄貴殺してるやんとなってしまうので、「フィヨルニルがどうして穏やかになったのか」はよくわかりませんでした
地理的にもスカンジナビアの沖合(おそらく北側)にある架空の島とか、キーウ(字幕はキエフ)などが登場し、最後はアイルランドに渡っていましたね
かなりの移動距離のはずですが、瞬間移動ができるのかと思うぐらいにサクサク進んでいました
ビジュアルはガチなので、「オーディンとフレイ」「北欧神話とスカンジナビア半島の地図」ぐらいはググってから観た方が良いと思いました
■北欧神話あれこれ
北欧神話とは、キリスト教化される前のノルド人(ノース人=Northman)の信仰に基づく神話のことを言います
なので、原題の『Northman』は「ノルド人」という意味になりますね
いわゆる「スカンディナビア神話」とも呼ばれ、ゲルマン神話の体系に属するものを指します
ゲルマン神話には、「北欧神話」「アングロ・サクソン神話」「大陸ゲルマン神話」などがあります
その原典は9世紀から12世紀にかけて集成され、13世紀のアイルランドにて『古エッダ(Elder Edda)』『歌謡エッダ(Poetic Edda)』という歌謡集として残されてきました
タイトルに使われている文字を「ルーク文字」と言い、これらはスカンジナビア半島に現存するレーク石碑などに刻まれています
北欧ゲルマンの世界観として、「この世界は9つの世界から成る」とされています
一つ目は「アースガルズ」と言い、「アース神族がいる世界」のことで、オーディンがいるヴァルハラもこの場所にあるとされています
二つ目は「ヴァナへイム」と言い、「ヴァン神族がいる世界」のことで、フィヨルニルが信仰している「フレイ」や「ニョルズ」「フレイヤ」がいる世界になっています
三つ目は「ミズガルズ」と言い、「死を免れない人間の地」であり、主人公たちが生きている世界のことですね
残りの六つは、「ムスペルヘイム=燃え盛る炎の世界」、「エヴルヘイム=氷に覆われた世界」、「アールヴヘイム=エルフの世界」、「スヴァルトニアールヴァヘイム=黒アールヴの世界」、「ニザヴェッリル=ドワーフの世界」、「ヨトゥンヘイム=巨人の世界」などですね
こちらは本作には登場しませんが、『マイティー・ソー』などの北欧神話を取り扱った創作物でしばしば登場しています
本作のラストにて、アムレートはフィヨルニルと相打ちになりますが、その時に「ヘルの門」というものが登場しました
これが「ヘル=ニヴルヘルの世界」で、病気や寿命で死んだ人が送られる死者の世界のことを言います
アムレートはヴァルキリーによってヴァルハラ(=アースガルズ)に連れて行かれたので、死者の世界には行かずに「神的な存在になった」という解釈になるでしょう
ラストに出てきたヴァルキリーは死者をヴァルハラに連れていくか、ヘルに落とすかを決める存在であると言われています
■オーディンが導きし父性
映画の中でアムレートが信仰しているのが「オーディン」で、オーディンは北欧神話の主神にして、「戦争と死の神」とされています
いわゆる「戦いの神」で、フィヨルニルが信仰していたフレイは「豊穣の神」ということになります
なので、彼はノルウェーに負けた後に、アイルランドで羊飼いをしているという流れになっています
オーディンは全知全能の神様であり、世界の創造主であるというポジションなので、この世界の絶対的な存在であると言えます
オーディンの導きは神の導きであり、それは定められた「運命決定論」的なイメージになると言えます
アムレートはオーディンのお告げみたいなものをスラヴの預言者や道化ヘイミルから聞かされ、その道を進んでいくことになりました
預言者の言葉通りに「雌犬=オルガ」を追い、そこで宿敵フィヨルニルと対決することになります
運命決定論的に言えば、アムレートの運命は決定づけられていて、そこに導かれることは決まっていた、ということになります
そして、最終的な試練としてフィヨルニルとの対決があったのですが、当初のアムレートはオルガとお腹の子どものために戦うことを放棄していました
これまでは「父オーヴァンディルの仇」であり、「母グルートンを救うため」だったのですが、グルートンの思惑によって父はフフィヨルニルに殺されたことがわかり、戦う意味が無くなっていました
でも、オルガに子どもができたことがわかり、フォヨルニルが妻子の脅威になることが判明します
それゆえにアムレートは妻子を根本的に守るために諸悪の根源として残存したフィヨルニルと対峙することを決めます
これらを俯瞰的に見ると、父との別離、母との別離、父としての覚醒というものが一気に押し寄せてきているように思います
なので、アムレートが父として一族を支えていくためには避けられない戦いであったと言えるのでしょう
そして、この道を用意したのが他ならぬオーディンであり、言い換えればアムレートは「神として(決定論的には死は既定路線)妻子を守る力を得るための試練に直面した」と言えます
そして戦いに勝った(肉体的には相打ち)アムレートは、ヴァルキリーの導きのもと、スカンディナビアの神として天上から妻子を守る存在になれたのだと言えるのではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
「アムレート」というのは、スカンディナビア神話の伝説上の人物で、シェイクスピアの悲劇『ハムレット』の主人公ハムレットの原型とされている人物でした
なので、『ハムレット』を知っている人ほど、映画を楽しめたということになります
『ハムレット』を一言で説明すると「デンマークの王子が、父を殺して母を妃にした叔父に復讐する物語」なので、マルっと映画のまんまということになります
物語は、王様の死によって王座についた王様の弟クローディアスが、そのまま王妃と結婚するところから始まります
父の死、母の再婚に戸惑う王子ハムレットは、夜な夜な父の亡霊から「クローディアスに毒殺された」と言われてうなされてしまいます
それを真実だと信じ、復讐を誓ったハムレットは狂気を装い、それを宰相ポローニアスは自分の娘オフィーリアへの恋ゆえだと勘違いします
父の命令でハムレットに近づくオフォーリアは彼に無下に扱われて、しかもハムレットはクローディアスとポローニアスを間違って殺してしまうのですね
オフィーリアは悲しみのあまり溺死してしまい、オフィーリアの兄レアティーズはハムレットを殺そうと考えます
クローディアスは身の危険を感じてレアティーズと結託し、ハムレットとレアティーズを毒剣で試合をさせ、毒入りの酒で殺そうと考えます
でも、王妃がその酒を間違って飲んで死んでしまうのですね
そして、ハムレットとレアティーズは毒剣で剣術試合をさせられて、ともに傷を負ってしまいます
死の間際にレアティーズはハムレットにクローディアスが仕組んだことだと伝え、ハムレットは親友のホレイショーにそのことを告げてこの世を去る、という物語になっています
この『ハムレット』の悲劇と、「アムレートの伝説」「北欧神話」を掛け合わせたものが本作になると言えます
アムレートが伝説になる過程において、「父の死、母の裏切り、叔父の暗躍」などを盛り込んで、息子から父への成長譚を描いたと言えるのでしょう
これを俯瞰してみると、「父になるためには視点を大きく持つ必要がある(=神の視点)」というメッセージがあると思います
オーディンの導きは「アムレートの視点を変化させる」というもので、それによって「過去にこだわっていたアムレート」の視点を「妻子を含めた未来の視点」へと変えていきます
アムレートは死の間際に「オルガが二人の子どもを抱いている」という夢を見ますが、それはアムレートが事を成し得たために繋がった未来であったとも言えるのですね
アムレートが未来を見ることができ、その未来のために必要な事を成し遂げたということで、オーディンは彼を神の世界へと誘います
これまでに天上界からオーディンが見てきたのは「人間の愚かさ」であり、アムレートに対しても「人間の愚かさの中で生きて死んでいくのか?」と問うていると言えます
それに対して、アムレートは「愚かさの中で尽きるまで逃げる人生」を返上し、「妻子のために逃げなくても良い人生」を捧げることになりました
本作はある意味においては「父性論」とも言え、父として犠牲になるということの意味を問うているとも言えます
奇しくも、アムレートの父はフィヨルニルに襲われた際に「アムレートに対して『逃げろ(Run!)』とだけ言い残しました
自分の死を捧げて血族を守ることの意味を父は体現していて、アムレートはそれを見誤って復讐に駆られているのですね
もしかしたら、オーヴァンディルは妻の裏切りを感じていて、息子にはそれを知られたくなかったのかもしれません
このあたりは映画では描かれていないのでわかりませんが、夫婦間の微妙なズレというのは言葉にしなくても伝わってしまっているものなので、そういうこともあるのかもしれませんね
このあたりは個人的な解釈になると思いますが、色々と妄想を馳せるのは悪くないと思います
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/384837/review/e4559e20-3bb2-478c-bdc8-19d848ba6f93/
公式HP:
https://northman-movie.jp/
