■目覚めた時に、あと24時間何かができると思えれば、過去に囚われている暇がなくなると思いませんか?
Contents
■オススメ度
震災関連ならとりあえず観ておく人(★★)
桜庭ななみさんが歌うところを観たい人(★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.4.6(アップリンク京都)
■映画情報
情報:2023年、日本、132分、G
ジャンル:震災から10年を経た町で一生懸命生きる人々を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本:山本透
原作:斎藤幸男『生かされて生きる–震災を語り継ぐ–(河北選書)』
キャスト:
桜庭ななみ(佐々木愛実:結婚を控えた保育園の保育士)
碧山さえ(里見結莉:父との関係に悩む女子高生)
(幼少期:佐藤咲里)
手塚理美(里見文子:結莉の祖母)
山下ケイジ(里見清:結莉の祖父)
北村有起哉(里見健昭:結莉の父、工場勤務、元漁師)
鈴木タカラ(里見彩子:結莉の母)
吉政優吾(里見望:結莉の兄)
鶴丸愛莉(野上咲良:結莉の親友)
松浦慎一郎(吉田光一:健昭の同僚、ボクサー)
萩原聖人(柴田:光一のトレーナー)
金澤美穂(吉田若菜:光一の妻)
宮澤佑(吉田悠二:光一の弟、高校教師、愛実の婚約者)
淵上泰史(市村隆司:悠二の学校の主任)
中里広海(保健の先生)
高橋努(須藤昇:地元のヤクザ)
舞木ひと美(大島蒼衣:愛実の友人、舞台俳優)
高品雄基(遠藤翔:蒼衣の所属する劇団の主宰)
ヒロシエリ(水沢博美:舞台俳優)
横須賀一巧(斎藤芳樹:舞台俳優)
永田直人(鈴木英人:舞台俳優)
竹田有美香(西村陽菜:舞台俳優)
松代大介(安田和樹:愛実の元カレ、事故死した元バンドメンバー)
原日出子(安田朋絵:和樹の母)
谷口翔太(丸岡哲:愛実の元バンドメンバー、ドラム、現在は寺の住職)
岩田華怜(宮本祥子:愛実の元バンドメンバー、ベース)
仙道敦子(佐々木有美子:愛実の母)
杉本哲太(本堂真治:有美子の元夫、料理人)
入江甚儀(若い医師:有美子の主治医)
麻生久美子(瞳:愛実の行きつけのバーの店主)
藤白詩(スナックのチーママ)
美玖空(ホステス)
西村由花(ホステス)
山下翼(光一の対戦相手)
永田拓郎(セコンド)
賀谷亮裕(セコンド)
平良太宣(レフリー)
アサヌマ理紗(保育士)
成瀬美希(保育士)
伸哉(保育士)
佐伯孝彦(保育士)
佐藤音音(心美:幼稚園児)
本郷遼(心美の母)
千田望未(夢香:病院の患者)
井筒しま(夢香の母)
三嶋悠莉(看護師)
林真里奈(看護師)
藤原光博(和樹の親戚の叔父さん)
有希九美(和樹の親戚の叔母さん)
■映画の舞台
震災から10年を経た東北のどこか(ロケ地は仙台、石巻、東松島)
ロケ地:
宮城県:仙台市
中野栄あしぐろ保育所
https://maps.app.goo.gl/pDbNNCgn9r2KSK3BA?g_st=ic
榴岡公園(コンサート)
https://maps.app.goo.gl/C8wmRJz4JJV1Wf1p6?g_st=ic
Bar Gimme Shelter
https://maps.app.goo.gl/E28PMFdGnHHZMXc37?g_st=ic
宮城県:石巻市
日活パール劇場(閉場)
https://maps.app.goo.gl/F82fF7NH12gxtRSj6?g_st=ic
炉ばた 海彦山彦 立町店
https://maps.app.goo.gl/mTmMfKshbTnKFWbf6?g_st=ic
宮城県:東松島市
大曲地区
https://maps.app.goo.gl/Bs5cmMY9FLobY5y5A?g_st=ic
宮城県:塩竈市
塩釜市立第一中学校
https://maps.app.goo.gl/DGaenypZifr9fQyA7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
震災から10年経った東北の町
恋人の死を乗り越えた保育士の愛実は、新しい恋人・悠二と結婚目前に控えていた
彼女は結婚式で元メンバーで元カレの和樹が遺した曲を演奏したいと考えていた
悠二は中学校の教師で、震災以降様子がおかしい父を持つ結莉を担当していて、彼女はとても不安定だった
彼女を支える親友の咲良、結莉の祖母・文子も彼女に気を使いながらも支えていた
同じ頃、愛実の友人の蒼衣は演技に悩んでいて、上演予定の演目のリハーサルでも主宰の翔から何度もダメ出しをされている
それぞれは震災から10年経った今も心の中に何かを抱えていて、それゆえに浮かない顔をしていた
そんな折、学校の三者面談にて、祖母と学校に来た結莉は、教員の方にハマった言葉に心をかき乱されて不登校になってしまう
父もさらに酒が進み、事態は良化の兆しが見えぬほどに暗雲に支配されていたのである
テーマ:生きることの意味
裏テーマ:それでも人は生きていく
■ひとこと感想
震災関連ということはチラシなどでわかったのですが、描いている内容は震災が必要だったかと言われれば微妙な感じになっています
群像劇のようになっていて、幾つものエピソードが所狭しとやってくる感じになっていて、最後のライブでは3つの物語が同時に重なるという演出がなされていました
愛実のライヴと和太鼓のリズムが重なり、愛実の歌と演劇が重なる演出
意図は分かりますが、逆に何言ってるかわからない感じになっていましたね
震災に関しては、知り合いに犠牲者がいなかったために、当時そこでどんなことが起こっていたか、は伝聞以外に知りようがありません
それゆえに、映画の中で正論をいう教師の目線になりがちですが、かと言って「何も語らないよりはマシなのかな」と思ってしまいます
いつまで経っても被害者と呼ばないでほしいと思う人がいる一方で、あの時の傷は理解できないと跳ねつける人もいる
あの時、そこにしかいなかった人にしかわからない想いというものはありますが、それは3.11だけに限らないというものがこの映画にはあるのだと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
主人公はおそらくは愛実で、彼女が元カレの歌を歌うところが物語のピークになっています
このシーンに重なるのが、不登校の結莉の和太鼓部の演奏と、愛実の友人・蒼衣の演劇になっていました
結莉のリズムがバンドと重なるところとか、演劇の内容と愛実の歌が重なっていくのですが、リズムに関してはハマっているものの、歌詞とセリフに関しては親和性が最悪だったように思います
歌詞がぶつ切りになり、演劇のセリフもインターバルが強要される中で、それぞれが伝えたいメッセージというものが薄まっていました(というか何を言ってるかわからん感じになっていました)
映画は震災映画なのですが、10年経っても影響を受けている人もいれば、同じように10年経って新しい恋人と結婚しようとする人がいる
これらは対比として、「同じ死に対する向き合い方」のように思えますが、実際には「死んだこと」ではなく、「あの時に何かできたのではないか」という後悔というものが募っているのですね
なので、不慮とは言え、事故死と震災を同列に語るのは無理があると思いました
■震災から10年で何を描くべきか
本作は、震災から10年後を取り扱っていて、震災で妻と息子を亡くしてからおかしくなった里見と、ちょうど10年前に事故で夫を失った愛実がメインで描かれています
その脇となる、愛実の夫・悠二の兄のボクシング、里見の娘・結莉の顛末も描かれていて、主要な物語だけでも4つの本筋があることになります
小さな町に住む人たちなので、それぞれの関係性に因果があるのですが、それぞれが抱えている葛藤は震災ありきでもないように思えます
震災と同時に起こった事故を同列に扱っていて、これは挑戦しがいのあるテーマだと思いました
これまでの震災は単独で特別なものとして扱われ、この10年間で起きた災害のほとんどは「3.11よりもマシか否か」みたいな論調で語られています
個人的にも、地震速報があるたびに想起され、無意味だとわかっていても、3.11の規模と比べてしまうのですね
無論、3.11関係なくその年には125万人の人が亡くなっているのですが、同時に2万2318人が亡くなった(実際には3.11以降に亡くなった人もカウントされています)というものは類を見ません
本作の問題は、震災と事故死を同列に語る際の描き方に難があるのですね
どちらの死に対しても、残された家族には「何かできなかっただろうか」という後悔はあるし、その先の未来には影響があります
でも、愛実の方は立ち直れて、すでに婚約者もいるし、子どもも身籠っているし、何よりも「結婚式と葬式が同時になりました」と言ってしまう
この命に対する軽さというものが「キャラ設定」とは言え、ナイーヴな問題と並列に扱う中で浮き足立っているように思えました
普通の感覚だと、葬式と結婚式は同日にはせず、動かせる結婚式のスケジュールを変えると思います
ちょっと遠い親戚とかならまだしも、実母の葬式とブッキングさせる感覚というのが微妙なのですね
母の死に対するショックもワンシーンで終わりだし、演奏の際に影響を及ぼすこともありません
この内容だと、震災も事故死も並列に描くという趣旨が真逆の意味を持ってしまうことになり、それがノイズになっているように思えます(実は震災死は特別だと強調したかったのかな?)
同列に語るならば、母の死に対する精神的なものを描いていく必要がありますし、そもそもフィクションなので「結婚式を終えてから亡くなる」という物語でもOKだったように思えました
■勝手にスクリプトドクター
映画の骨子は理解できますが、本作のような「配分」だと、どうしても「震災の特別感」は強調されてしまいます
震災で妻子を亡くす→生活が荒れて、娘は放置し精神的におかしくなる→ストレスから自殺騒動→父が改心するも娘はトラウマで再度衝動自殺未遂という流れになっています
不幸の連鎖が続きますが、この流れは「震災だから起こる」訳ではありません
一方の交通事故死は、いつの間にか再婚に至る→元彼の曲を結婚式で披露するも夫は快諾→母親は寿命で亡くなるが葬式と結婚式は同時にできるメンタルがある、という感じになっていて、こちらも「事故死だから」ではありません
それぞれが命と向き合った結果、その人のキャパシティによって連鎖が起こった訳であり、里見の精神構造だと「妻が事故死しても同じことが起こっている」ように思えます
ただし、愛美の元彼が震災で亡くなっていたら、という「IF」には答えがないのですね
あのキャラでもダメなのか、あのキャラなら乗り越えて新しい生活をしていたのか、までは読み解くことは難しいでしょう
映画として、全ての死は特別であるというテーマで描くなら、里見の家族の不幸の連鎖と同じものが愛美の方でも起こらないとおかしくなってしまいます
あるいは、どちらにも救いを描くという方法もあります
死と向き合う中で起こる精神的な変化は、その死をどう捉えているのか、というところに行き着きます
不幸の連鎖の末に、里見と愛美が出会い傷を舐め合うのか、乗り越える愛美を結莉が見て感化されて父との関係性を変えるのか、など、考えればキリがないほどに改変の余地はあります
映画として、震災と事故死で残された家族が、「どのように死と向き合い、どのように克服していくのか」というものを並行で描き、その二つの物語が絡み合っていく中で、「同じ思いを体験してきた者同士の共鳴と反発」を描くことが、最低限の条件であるように思えました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
この映画に描かれるような「突然の別れ」というものを経験したことがないのですが、愛する人の喪失感というものを感じたことはあります
また、その死に対する「後悔」というものを感じたこともありますし、「何かできたんじゃないか」と思うこともあります
でも、私のメンタルが他人より図太いためか、喪失から乗り越えるのが意外と早かったりします
どうやって乗り越えるのかというのは一概に言えませんが、私個人の場合は「妻の死の意味を自分が納得できる理由に置き換える」ということをしました
はっきり言って、正解のない世界なので、自分がどう思うかだけなのですね
これができたのは「死が少しずつ迫ってきたから」であり、「死期というものが見えていたから」だと言えます
なので、映画のような突然死、他者の過失など本人に非がないと思える死というものに同じように適応できるかは分かりません
個人的には死生観というものがある程度できている年齢というものもありますが、どこか生命を突き放している、という感覚もあるのですね
この根拠のない達観があるからこそ、私は人よりも死による何かに囚われないのかもしれません
このような達観キャラが映画で登場しても、おそらくは共感性が低すぎるでしょう
でも、映画の中の誰もが「共感性の塊」だと、それは単なる慰みを重ねるだけの現状維持になってしまうのですね
なので、本作の場合だと、愛美の元彼も震災で亡くなった設定にして、同じ境遇なのに未来が違う2人の物語を交錯させた方が良いと感じました
あるいは、より誇張するのであれば、里見と愛美の愛する人の死の設定を真逆にすることでしょう
震災を乗り越えた人には未来があります
でも、それをクローズアップする物語は少なくて、1億総悲観のために役割を押し付けられているように思えます
そんな中でも強く生きて、新しい人生を送ろうとしていることは、同じ境遇で立ち止まっている人の勇気にもなるし、その時に初めて「脱震災」というものが生まれるように思えます
「脱震災」というのは、震災を忘れるという意味ではありません
過去が教訓になるのは、それを乗り越えた時にしか訪れません
そこで、彼らはどうして乗り越えることができたのかに注目することで、特別から普通へと置き換わっていくように感じています
震災の前にも後にも、多くの人が死んでいきます
その死のひとつひとつに同じような物語と感情があります
それらは特別であり、特別ではない
結局のところ、起こったことに対して何を思うかというところに行き着くのですが、私なりの場合だと「明日の朝、目覚めたら、また24時間生きることができる」という感覚があるのですね
なので、延長された24時間で起こることに全力で取り組んでいく上で、無駄に思える時間を削ぎ落としていけば、立ち止まっている時間の惜しさというものに気づけるのではないでしょうか
そろそろ、このようなキャラが死を語る物語で登場してほしいと思うのは、私だけなのでしょうか?
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385743/review/fa42de68-90ab-4307-b0b1-c6e4160abeec/
公式HP:
https://arifuretamirai.wixsite.com/home
