■ブルーバック あの海を見ていた
Contents
■オススメ度
海洋映画が好きな人(★★★)
社会問題の映画に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.1.2(アップリンク京都)
■映画情報
原題:Blueback
情報:2022年、オーストラリア、102分、G
ジャンル:母の病気の為に帰省した娘が青春期の海との思い出を想起するヒューマンドラマ
監督:ロバート・コノリー
脚本:ロバート・コノリー&ティム・ウィントン
原作:ティム・ウィントン『Blueback(1997年)』
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キャスト:
ミア・ワシコウスカ/Mia Wasikowska(アビー・ジャクソン:世界を股にかける海洋生物学者)
(8歳時:アリエル・ドノヒュー/Ariel Donoghue)
(15歳時:イルサ・フォグ/Ilsa Fogg)
(幼児期:クロエ・ウォール/Chloe Wall)
ラダ・ミッチェル/Radha Mitchell(ドラ・ジャクソン:脳卒中で倒れるアビーの母、環境活動家)
(老齢期:エリザベス・アレクサンダー/Elizabeth Alexander)
Dean Kennedy(ジャック・ジャクソン:アビーの父)
クレランス・ライアン/Clarence Ryan(ブリッグス:アビーの幼馴染)
(青春期:ペドレア・ジャクソン/Pedrea Jackson)
Timothy Flowers(ブリッグスの父)
Albert Mwangi(ギトゥンドゥ:アビーの調査船の助手)
エリック・バナ/Eric Bana(マッド・マッカ:ドラの友人、漁師)
Nick Paranamos(マッカの息子)
エディ・バロー/Eddie Baroo(マーヴ:アビーの学校の送迎手)
Dalip Sondhi(カーライル:アビーの中学時代の先生)
エリック・トムソン/Erik Thomson(テッド・コステロ:湾岸開発業者)
Peter Johnson(コステロのダイバー)
Caleb McFadden(コステロのダイバー)
Charles Taylor(コステロのダイバー)
James Martin(コステロのダイバー)
Vikki Thorn(焚き火パーティのミュージシャン)
Dan Carroll(焚き火パーティのミュージシャン)
Luke Dux(焚き火パーティのミュージシャン)
Karla Hart(焚き火パーティのミュージシャン)
Howard Morrison(デモを鎮圧する警官)
Robert Patterson(デモを鎮圧する警官)
Michael Loney(市会議員)
Rob Lester(評議委員)
Jo Iffla(評議委員)
Gavin Mair(評議委員)
Bruce Manning(評議委員)
Dorthe Fleitmann(評議委員)
Roz Hammond(葬儀執行人)
■映画の舞台
オーストラリア:西オーストラリア州
ロングボード・ベイ
ロケ地:
オーストラリア:西オーストラリア州
ブレマン・ベイ/Bremer Bay
https://maps.app.goo.gl/MxwMAneaPRsvjffz6
エクスマウス/Exmouth
https://maps.app.goo.gl/2bvetKkiyd8amUC9A
■簡単なあらすじ
海洋学者として世界の海を駆け回るアビーは、ある日、母ドラが脳卒中で倒れたとの知らせを受ける
急いで故郷のロングボード・ベイに戻った彼女だったが、母は病気の影響で喋れなくなっていた
地元に帰ると、幼馴染のブリッグスがいて、アビーは彼との昔話を思い起こす
そして、8歳の誕生日に、母と一緒に露バースヘッドにて、ウエスタン・ブルーグローパーという魚に出会ったことを思い出した
当時の海は、リゾート開発の話が持ち上がり、母は身を挺して反対運動を行なっていた
地元の漁師のマッカと交流を持ち、ブリッグスとの青春を過ごすアビーは、ある時から魚の絵を描き始め、世界の危機に瀕している海を助けたいと思うようになる
だが、地元から離れることに反対の母と衝突する機会が増え、そして、コステロの雇ったダイバーは環境を顧みない乱獲を始めていく
テーマ:自然への畏怖
裏テーマ:自然は人を覚えている
■ひとこと感想
母親の病気に伴って帰省する娘が、その頃の思い出に浸るという内容で、元カレとのことを思い出すような甘い感じなのかなと思っていました
実際には、母との軋轢、自然との対話がメインで、交友関係は狭すぎるが故にそれなりの進展という感じになっています
映画は、回想録が織り混ざる流れになっていて、アビーの8歳時、15歳時、現在が入り乱れる感じになっています
そこまで混乱はしませんが、その切り替わりが唐突なので、集中して観ていないと、どの時間軸にいるのかを見失ってしまうかもしれません
映画は、ネイチャー系の映画で、壮大な海とそこに集う海洋生物を堪能できる内容になっています
グローパーとの接近に関してはどうやって撮ったのかと思うぐらいに大画面に展開していました
パンチは大丈夫なのか心配してしまいますが、そこはさすがにフェイクなのかなと思ってしまいます
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、母親との関係がメインで、言葉を発しない母親に二人の過去を思い出してもらうために、様々なものを母親に見せていきます
その行為はアビー自身の過去を思い出させることになり、海洋学者になろうとして原点に立ち返るという感じになっていました
赤ん坊の頃から海に慣れ親しんできて、8歳の時に素潜りを経験していましたね
その後、15歳時に環境問題にふれる中で、母親と方向性で衝突が起きるという感じになっていました
ブリッグスは幼馴染ですが、元カレというところまでは行っていない感じでしたね
なぜか母親の面倒を観ていたりするのですが、この関係性が結構謎だったりします
物語は、海洋環境問題を取り扱うものの、そこまで激しい運動のようなものは描かれていなくて、この自然との対話を観て「あなたならどうしますか?」を問う内容になっていると感じました
■オーストラリアの海洋問題
オーストラリアの海洋問題といえば「プラゴミ問題」が有名で、世界中で排出される年間800万トンにも及ぶプラゴミに対して、「Seabin Project」を発足させた国でもあります
「Seabin」は「Sea=海」「Bin=Seaのゴミ箱」という意味で、自分たちで海洋浮遊ゴミを自動で回収するアイデアのことを言います
クラウドファンディングにて支援を呼びかけ、約2ヶ月間で2880万円(36万豪ドル)が集まりました
「Seabin」は海面に浮かべるゴミ箱のことで、製造・販売が行われたのが2017年のことになります
試作の段階から注文が殺到し、現在では52カ国で導入されていて、日本でも東京5輪のセーリング競技会場の江ノ島ヨットハーバーなどに設置されました
大きさは直径50cmほどのポンプのついたポリバケツのような形状で、水中ポンプと連動して、フロートの上下運動から水流を生み出し、それによってゴミを引き寄せるという構造になっています
海水はそのままフィルターを通じて下部から海に流れる仕組みになっていて、そこには20kg程度のゴミを収納することができます
容器の中に入れる20kgのキャッチバック(ネット上の袋のようなもの)を交換する方式で、ポンプを動かす動力は1日80円程度の電気代で済みます
これを設置することによって、24時間ずっと自動で海洋ゴミを集め続けることができます
「Seabin」1台で1日あたり3.9キロのゴミを集めることができるそうで、年間では1.4トンを超えるとされています
製品に関する情報は、下記の公式HPで確認していただくと、より詳しい情報が載っていると思います
↓『Seabin』公式HP(英語です)
他にも「Seabin」でググれば、日本の代行業者などのHPもヒットします
このような対策も必要ですが、ゴミを投棄しない習慣をつけることのほうがもっと大切なことだと思います
■環境問題映画の難しさ
本作は、海洋環境問題を重点的に取り扱っていて、コステロによる湾岸開発事業、珊瑚礁の損傷、アワビの乱獲による生態変化などへの言及が行われています
主人公アビーは、幼少期に友達になったブルーバックを助けるために動き、中学生ぐらいの時に「世界の海を守ること」を決意しています
また、母ドラは環境活動家としてコステロと対立し、時には激しいデモを繰り広げ、体を張って環境破壊に立ち向かいます
これらの環境保護系のデモはたまにメディアで取り上げられますが、地元地域以外の場所への訴求効果は薄いように思えます
地元の人たちは地場産業が侵されている実感があるのですが、他地域に住む人には実感が湧きません
メディアを通じた海の美しさを堪能することはあっても、それを維持するための戦いには無関心だったりします
それは、やはり遠い地域で起こっていることと海洋環境破壊が自分たちにもたらす影響というものがリアルではないからだと思います
例えば、海の珊瑚礁が死んだら「自分の生活にどのような影響を与えるか」という結びつきにイメージが持てないというところに繋がっていきます
珊瑚礁は全海洋に存在し、わずか0.2%の占有率にしか過ぎません
でも、海洋生物の4分の1から3分の1が珊瑚礁に生息していますし、自然の防波堤としての役割もあります
この地域に住む魚が減ることによって、それを食べている魚にも影響を及ぼし、生態系のバランスが崩れてしまいます
また、観光の側面として、そこに流入するお金も減り、その場所を維持する人などの生活も維持できなくなります
現在の生態系のバランスが崩れることで様々な影響が出るのですが、獲れる魚が減っても他の食材を食べれば良いと考える人もいます
でも、珊瑚礁の存在で生計を立てている人たち(影響下にある漁師、観光業などを含める)が別の仕事を探し出すと、今度は人間界での人の流動というものが生まれてきます
漁業をする人が減ると漁獲量が減り、それによって魚の値段が高騰します
魚を食べる機会が減って、これまでの栄養バランスというものが崩れます
また、魚由来のサプリメント、薬なども作れなくなり、そういったものに関わっていた人の流出というものも生まれます
それでも1番の問題は、「環境破壊が進んでも適応すれば良い」という考えが波及する「他の環境破壊への無頓着さ」であると思います
環境保全が今の生活を保持していく上で必要であると考えることで、珊瑚礁のみならず、様々な環境問題を意識することにつながります
なので、環境問題の最大のネックは「人間の適応力の高さ」であると言えるのではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、海洋問題の一部を取り扱っていますが、環境破壊によって引き起こされる影響のリアルを突きつけるものにはなっていません
環境映画には2種類あって、「見たくもない現実を見せられる」というものと、「本来の自然の豊さを享受する」というものがあります
珊瑚礁の破壊をマザマザと映し出し、海洋汚染のリアルを訴求する映画の場合、人の感情の変化というのは「どこか遠距離になる」というイメージがあります
それは「多くの人が積極的に環境破壊に関わっている」という意識がないからだと思うます
海洋ゴミプラ問題でも、海水浴に行く多くの人のうち「わずかな客」の残したものが海を汚染していきます
この場合、自覚的に「海を汚す目的で投棄する」という人がどれだけいるか、ということになります
なので、環境破壊に加担しているという意識を持つ人の方が圧倒的に少なく、またそう言ったものに無関心の人は、このような映画を見ることはありません
あくまでも、無自覚な行動が波及する影響に無頓着で、自分がゴミを捨てて帰っているという自覚すらないと思います
この真逆のパターンの映画が本作のような「自然の美しさを見せる」というもので、それは観客に自然本来の美しさを体感させることに繋がります
いわゆる「憧憬」を生み出し、そこに行ってみたいと思わせるもので、それによって観光業への波及が生まれます
綺麗な状態が保持されていると、人はそれを保持しようとする傾向があり、これはブロークンウインドウ理論にも繋がっていきます
これらの細かな行動を促すには、例えば現地に効果的なゴミ箱を設置するなどで、そこに来る人々に無意識に投棄をさせない仕組みを作ることだと思います
効果的なゴミ箱とは、例えば「ペットボトルをゴミ箱に入れるとお魚さんのイラストがありがとうと言う」みたいなものをイメージしてくれたら良いと思います
ゴミ箱にゴミ箱以上の役割を持たせることで、そこに来た子供達が「ゴミ箱にゴミを入れることが楽しい」と感じさせるのですね
単に「環境のために分別を」と言っても感情には訴求効果がなく、ペットボトルを入れるとルーレットが回るみたいな演出を加えることで、目にみえる娯楽性を誘発することになります
このような取り組みがあれば、投棄されているペットボトルなどを拾ってゴミ箱に入れるなどの行動が生まれることになり、これを「海水浴場の入り口に効果的に設置する」ことによって、認知度が上がっていると思います
環境問題はつまるところ「人間の生活習慣と娯楽」に根付くものだと思うので、「最初に起こす行動」をうまく利用することで、様々な効果を生むことになります
いわゆる「ブロークンウインドウ理論」を逆手に取る方法で、環境問題を娯楽化することで、新しい風が吹いてくると言えるのではないでしょうか
そして、それでも取り締まれないものには厳罰化で対応し、映画で言えば乱獲、水中銃の使用などは「二度とその仕事ができなくなるぐらいの過料と罰金を課すこと」でしょう
リスクとリターンの関係を考えるのが商売人で、通告制度の充実などで防げるものもあります
乱獲者に直接注意というのは危険を伴うので、通告のしやすさというものも考えていった方が良いと思われます
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100132/review/03296069/
公式HP:
https://blueback.espace-sarou.com/
