■収穫を祝う祭りなので、悪人を刈り取る祝祭と考えるならば、犯人の選定は失敗しているように思えますね
Contents
■オススメ度
猟奇的殺人映画に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.12.29(MOVIX京都)
■映画情報
原題:Thanksgiving(感謝祭)
情報:2023年、アメリカ、106分、R18+
ジャンル:感謝祭のセールで起きた惨事を起点とした大量猟奇的殺人を描いたスプラッタホラー映画
監督:イーライ・ロス
脚本:ジェフ・レンデル
キャスト:
パトリック・デンプシー/Patrick Dempsey(エリック・ニューロン:マサチューセッツ州プリマスの保安官)
ネル・ベルラーク/Nell Verlaque(ジェス/ジェシカ・ライト:「ライトマート」社長トーマスの娘)
カレン・クリシェ/Karen Cliche(キャスリーン:ジェシカの母)
リック・ホフマン/Rick Hoffman(トーマス・ライト:「ライトマート」の社長、キャスリーンの再婚相手)
リン・グリフィン/Lynne Griffin(ジェシカの祖母)
タイ・オルソン/Ty Olsson(ミッチ・コリンズ:「ライトマート」の店長)
ジーナ・ガーション/Gina Gershon(アマンダ・コリンズ:ミッチの妻)
Derek McGrath(カンティン市長、トーマスの友人)
Katherine Trowell(市長の妻)
ジェイレン・トーマス・ブルックス/Jalen Thomas Brooks(ボビー:ジェシカの彼氏、有力な野球選手)
Mika Amonsen(ロニー:アメフト選手、エヴァンの敵チームの選手)
Shailyn Griffin(エイミー:ロニーの彼女)
Tomaso Sanelli(エヴァン・フレッチャー:ジェシカの友人、動画を撮るアメフト選手)
Addison Rae(ギャビー:エヴァンの彼女、チアリーダー)
Gabriel Davenport(スキューバ:ジェシカの友人、エヴァンのチームメイト)
Jenna Warren(ユリア:スキューバの彼女)
Frank J. Zupancic(ユリアの父)
マイロ・マンハイム/Milo Manheim(ライアン:ジェシカを想う同級生)
James Goldman(スコット:ライアンの友人)
Jordan Poole(ジェイコブ:パーティーのチラシを配る青年)
Dorian Giordano(チャド:マッカッティの連れ)
Joe Delfin(マッカーティ:パーティーの主催者)
Joseph Claude Dubois(マッカッティの父)
Amanda Barker(リジー:ダイナーの店員、買い物客)
Tim Dillon(マニー:「ライトマート」の逃げた警備員)
Chris Sandiford(ダグ:ライアンと関係を持つ「ライトマート」の警備員)
Russell Yuen(ピーター・チュウ:刑事)
Jeff Teravainen(ブレット・ラベル:刑事)
Sylvain Plasse(刑事)
Pat Smith(警官)
Xavier Sabeta(ボビーのファン)
Nicholas Reynoldson(サングラスをかけた青年)
Yusuf Zine(ハンク・モートン:テレビ中継のレポーター)
Hailey Kittle(クラスの生徒)
Erika Nonato(クラスの生徒)
Andriah Bryan(バイヤーズ:ブログの内容をコピペされる先生)
Geoff Rutherford(インガルス:アメフトチームのコーチ)
Tom Keat(パーティーで嘔吐する若者)
Alexander Elliot(パーティーの少年)
Andy Boorman(ユリアの家の護衛警官)
Shiloh O’Reilly(叫ぶ少年)
Carlisle J. Williams(消防士)
Aaron J. La Fleur(「ライトマート」の警備員)
Joe Bostick(買い物客)
Shawn Gordon Fraser(買い物客)
Nicholas DeCoulos(買い物客)
Jake Gosden(買い物客)
Piret Jõgeda(買い物客)
Julie Leeds(買い物客)
James Magwood(買い物客)
Daniel Ryan-Astley(買い物客)
Derek Herd(「Warehouse」の従業員)
Neil Robles(ライオネル/マスコット:パレードのマスコット役の青年)
Hannah Storey(メイフラワートラックの子ども)
Charlie Storey(メイフラワートラックの子ども)
Christopher Creamer(パレード巡礼者)
J. Timothy Hunt(パレードの管理人)
Nick Peters(パレードの旗手)
Adam MacDonald(ジョン・カーヴァーの声)
■映画の舞台
アメリカ:マサチューセッツ州
プリマス/Plymouth
https://maps.app.goo.gl/TQkhSLahBb8TFpi58?g_st=ic
ロケ地:
カナダ:オンタリオ州
ポートペリー/Port Perry
https://maps.app.goo.gl/zysrqMZGhVaqLMSbA?g_st=ic
トロント/Toronto
https://maps.app.goo.gl/77V4Z8aXXr5BN5Fo7?g_st=ic
Waterdown District High School
https://maps.app.goo.gl/nMWgKvCJ8gHszm8n9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
アメリカのマサチューセッツ州のプリマスにある「ライト・マート」では、感謝祭のイベントとして、ワッフルメイカーの無料配布を告知していた
店にはそれを求める人々が殺到していたが、従業員入り口から入った人々を見つけた客が殺到し、ドアガラスを突き破って店内に傾れ込んでしまう
数名の犠牲者が出る惨事となったものの、1年後の感謝祭に店を開けるとの報道が流れ、世間ではバッシングの嵐が巻き起こっていた
元店長のミッチは妻アマンダを亡くしていて、それを切に訴えて中止を求める報道が入るものの、オーナーのトーマスは感謝祭にオープンすることを明言していた
ある日、近くのダイナーの店員リジーが殺され、その死体の半分がライトマートの看板に突き刺さるという事件が勃発する
地元の保安官エリック、チュウ刑事とラベル刑事が捜査にあたり、リジーが1年前の感謝祭の惨劇の客として店に来店していたことが判明する
オーナーの娘ジェシカも事情聴取を受け、警察はあの惨劇が関係しているのではないかと捜査を始める
そして、第二の犠牲者として、惨事に逃げ出していた警備員マニーの死体が発見される
そして、防犯カメラの映像から、犯人はジョン・カーヴァーの仮面を被った人物であるとわかり、感謝祭のパレードを決行するかどうかの論議も行われていくのであった
テーマ:真実の宴
裏テーマ:報復と狂騒
■ひとこと感想
ポスタービジュアルの雰囲気から、90年代ホラーのリブートか何かかなあと思っていました
2007年の映画『グラウンドハウス』の中で上映された映画の予告編を長編映画化したもので、2000年頃を時代設定にしていたように思えます
とは言え、スマホがバンバン登場していたので、『グラウンドハウス』内の予告編としては「めっちゃ未来」の映画ということになるのですが、そこら辺はスルーすべき案件なのでしょう
映画は、『ファイナル・ディスティネーション』シリーズを少しだけ思い出してしまうタイプのスプラッタホラーで、犯人に目をつけられた人は悉く悲惨な死に方をしていきます
犯人探しも相まって、ミステリー要素もあったりしますが、複数犯じゃないと無理じゃないのというところもあって、緻密なミステリーという感じにはなっていません
感謝祭で起こった騒動に対する復讐の意味もありますが、感謝祭をモチーフにして、死体をなぶるあたりは生理的に無理という人は多いと思います
なので、ガチでスプラッターが大丈夫な人以外はスルーした方が良いと思います
また、無駄に登場人物が多いので、把握するまでは大変だと思います
特に冒頭で一気に登場するので、誰と誰がカップルで、という人間関係を瞬時に把握しないと、犯人の思考と狙いがわかっても、ポカーンとしてしまうのではないでしょうか
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
感謝祭であるとか、犯人のマスクに使用されるジョン・カーヴァーなどのことを知らなくても、劇中できちんと説明されているのでOKだと思います
感謝祭では七面鳥を使って祝祭を開くのですが、これをモチーフにして「材料」を揃えていくのが犯人の手口になっていました
犯人は意外に思えるものの、配役によって半分バレている感じになっていますね
それでも、普通に見ていたら、かなり多くの人物を犯人に見せようと努力していうのはわかります
その為か登場人物がやたら多くて、マートの関係者とその親族だけで10人程度、ジェシカの交友関係で10人ほどいて、さらに客だの警察関連などが入り乱れている感じになっていました
物語は、意外な犯行動機がラスト付近で登場しますが、そのヒントとなるものは皆無になっています
なので、そりゃ後出しジャンケンだろうという感じになっていて、誰でも犯人に設定できる緩い設定になっていたように思います
90年代ホラーっぽいチープさもありますが、感謝祭が一般的でないと、犯行のエグ味は分かりにくいように思えてしまいます
■感謝祭とは何か
「感謝祭(Thanksgiving)」とは、アメリカ、カナダ、セントルシア、リベリアにて、10月と11月に行われる国民の祝日のことを言います
非公式だと、ブラジルやドイツ、フィリピンなどでも行われたりします
主に「収穫、前年の恵みに対する感謝」を表明するもので、アメリカだと11月の第4木曜日という風に決まっています
宗教的な儀式として始まったのがルーツで、収穫後に行われるのが一般的とされています
北米での感謝祭はイギリスの伝統を受け継いでいて、11月の下旬に行われています
1863年、エイブラハム・リンカーンによる大統領布告があり、これによって連邦政府として正式化され、それまでは州法として施行されてきました
そして、1941年、米国議会によって、11月の第4州に定められることになっています
基本的には家族と食事をすることで祝われますが、2010年頃から代替イベントとして友人と食事をしながら感謝祭を祝う新しい伝統として「Friendsgiving」というものが始まることになりました
アメリカの感謝祭では、夕食に七面鳥、ジャガイモ、カボチャ、トウモロコシ、インゲン、クランベリーソース、パンプキンパイなどが用意されます
宗教的な礼拝では、慈善団体が貧しい人々にディナーを提供することもあり、パレードを行ったり、NFLのフットボールを鑑賞したりすることもあるそうです
ちなみに、七面鳥が使われるようになったのは、リンカーンによる国営化やサラ・ジョセファ・ヘイル(Sarah Josepha Hale)が記した『ニューイングランド物語(Northwood; a Tale of New England)』が元ネタとなっているようです
その後も多くの料理本などに七面鳥料理が掲載され、一般化されるようになりました
■ジョン・カーヴァーとは何者か
映画で登場するジョン・カーヴァー(John Carver)はプリマス植民地の初代総督で、1620年11月から任務に就き、1621年4月に亡くなるまで遂行していた人物でした
1620年、カーヴァーは妻のキャサリンや5人の使用人たちと共にメイフラワー号に乗船しました(他にも多数の乗客がいます)
11月にケープコッド沖に停泊し、11月11日に船上でメイフラワー協定が結ばれ、これがプリマス植民地の最初の統治文書とされています
カーヴァーはこの協定の作成者とされていて、同時に署名者でもあったと言われています
プリマス植民地に入ったのが冬だったため、入植者たちは困難な生活を強いられます
メイフラワー号の乗客の半分は数ヶ月で死亡しています(乗船したのは90名、他の船に30名、合計120名、102名と言う説もある)
映画でも、入植者であることに嫌味を言うキャラもいましたが、誰にでも親しまれている人物ではないようですね
1621年11月、プリマスにて「第1回感謝祭」が行われます
生き残った53人と現地民や部下などを含めた90人ぐらいが参加することになりました
感謝祭では、水鳥、野生の七面鳥、鹿などが食卓に並んだとされています
その後、先住民との交流が始まり、最初の数年間は毛皮貿易、農業などが主たる産業となりました
カーヴァーはメイフラワー号がイギリスに帰った直後に亡くなっていて、その後はウィリアム・ブラッドフォードと言う人物が後任に選出されています
入植した頃の人口は99人でしたが、その後着実に増えていき、1691年頃で7000人ほどになっています
現在のプリマスの人口は51000人、白人が94%、黒人が1.9%、先住民は0.25%と言う人口比率になっています(2000年のデータ)
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、感謝祭のイベントにて大惨事が起き、その被害者の関係者の報復と言うホラー映画になっていました
亡くなったのが店長ミッツの妻アマンダで、彼女と不倫関係にあったエリック保安官が犯人でした
後半になって、アマンダの妊娠が発覚し、ミッツとは別れる寸前だったように告白されています
とは言え、ミッツはそのことは全く知らず、その事実はさらなる地獄へと彼を突き落とすことになると思います
映画では、犯人が誰かわからないように伏線を散りばめていて、事件1年後の再開に抗議するミッツはその後登場しないことで犯人っぽい感じになっているし、エヴァンを目の敵にするロニーであるとか、ボビーを敵視するライアンなどが浮上してきます
最初に殺されるのが「一番目立っていたリジー」ですが、彼女はアマンダの死に直接加担していて、暴動の際に彼女の髪の毛を巻き込んだカートを手にしていた人物でした
その後、警備が2人しかいなかったことが発覚し、これによってマニーが逃げていたことがわかります
こうして、犯人は「事件に関わった人物の特定」を同時に行いながら、殺害を繰り返していきました
犯人を隠しているのか隠していないのかわからない感じになっていて、予告編などでは「犯人の足元」が映っていて、どんな靴を履いているのかが丸わかりになっています
あの種類の靴を履く人物が劇中で限られているのですが、ジェシカが犯人に気づくシーンでも、思いっきり強調されていました
いわゆる「頭の切れるガキは嫌いだ」的な発覚になっていて、空気感が変わるところは面白かったと思います
映画は、殺される人たちは容赦がないのですが、殺されるべくして殺されているように演出されていましたね
リジーはダイナーでも態度が悪い店員だったし、逃げたマニーは論外でしょう
動画を撮って拡散したエヴァンは暴動を止めるよりは煽っているのですが、彼女のギャビーとか、七面鳥ライオネル、スキューバとユリア、彼女の父あたりは、ちょっと拡大解釈しすぎではないかと思ってしまいます
ディナーに並べられたのは事件の中核にいた人物ではありましたが、キャスリーンが丸焼きになるのは筋違いのように感じました(本懐はリジーかジェシカだと思うのですが)
映画は、バカな行動をする人々が次々に抹殺されていくのですが、犯人の動機につながるものが「全部後出し」と言う、推理のしようがない流れになっていました
それ故に「犯人はエリックです!」がかなりチープなことになっていて、あの流れだと「アマンダと関係を持ちそうな男性全員が候補」になってしまいます
冒頭で、エリックとアマンダを匂わせていますが、若い子が好きなのとかでロニーとかエヴァンと言う路線もあるし、実は警備員のダグでもいいし、何なら実はドラッグでと言う流れでマッカッティでもよかったりします
エリックが一番しっくりするとは思いますが、彼も友人の妻と不倫をしている最低な野郎なので、彼の復讐心の起点も無茶だと思うのですね
なので、捻ることもなく、ミッチがブチ切れて、トーマスやキャスリーン、マニーやリジーを殺していく方がスッキリしたのではないかなと思いました