■罪人を少年にしたことで再審請求の機運は高まるが、冤罪事件に至った経緯に無理が生じている気がします
Contents
■オススメ度
実話ベースの映画に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.6.20(アップリンク京都)
■映画情報
原題:소년들(少年たち)、英題:Boys
情報:2022年、韓国、124分、G
ジャンル:実際に起こった「ウリスーパー強盗殺人事件」を基にした犯罪映画
監督:チョン・ジヨン
脚本:チョン・サンヒョプ
原案:1999年全羅北道完州郡「サムレ・ナラスーパー強盗事件」
キャスト:
ソル・ギョング/설경(ファン・ジュンチョル:真犯人の情報を得る刑事、かつて狂犬と呼ばれた男)
ヨム・ヘラン/염혜란(キム・ギョンミ:ファンの妻、食堂経営)
チョン・イェジン/정예진(ファン・ヘミ:ジョンチョルの娘、新人警察官)
(幼少期:イ・イェウォン/이예원)
ユ・ジュンサン/유준상(チェ・ウソン:ファンと因縁を持つ警察官僚、県警の次長)
ハ・ドクォン/한수연(キム・ミンジェ:全州刑事課係長、ウソクの部下)
イ・ホチョル/이호철(チャン・ムンド:ウソクの部下)
チョ・ジンウン/조진웅(オ・ジェヒョン:事件に関わった検事)
ホ・ソンテ/허성태(パク・ジョンギュ:ファンの部下、連れ回される刑事)
【被害者関連】
チン・ギョン/진경(ユン・ミスク:被害者の娘、美容師)
ハン・ミジャ/한미자(殺されたユン・ミスクの母)
コ・ジョヨン/고주연(チョ・スンア:ミスクの娘)
(幼少期:キム・シハ/김시하)
ノ・ジンウォン/노진원(ミスクの叔父)
ハン・スヨン/한수연(シン・ウンヒ:少年事件の再審を担当する弁護士)
【冤罪少年関連】
キム・ドンヨン/김동영(クォン・チャンホ:冤罪に巻き込まれる少年、宝石を川に捨てたと供述)
(少年期:キム・シウン/김시운)
ユ・スピン/유수빈(チョン・スンウ:冤罪に巻き込まれる少年、字が書けないのに調書を書いた)
(少年期:チョ・ヒョンド/조현도)
キム・キョンホ/김경호(キム・ビョンウォン:冤罪に巻き込まれる少年、ドライバーでこじ開けた)
(少年期:キム・ドヨプ/김도엽)
キム・ジェロク/김재록(ビョンウォンの父)
ソ・イェファ/서예화(チョ・ソア:スンウの妹)
(中学時代:チョ・ユハ/조유하)
ハン・スンウ/한승우(チョン・スンウの父)
チュ・ブジン/주부진(チャンホのおばあちゃん)
パク・スンイル/박승일(倉庫のリーダー)
【真犯人関連】
ソ・イングク/서인국(イ・ジェソク:事件の鍵を握る証人)
ぺ・ヨラム/배유람(チョ・ヒョンス:事件を知る青年)
パク・ヒジン/박희진(ハ・ジョヒョク:ジェソクの友人、遠洋漁業)
イ・ジョンヒョル/이정현(イ・スイル:真犯人を知ると連絡する男)
ユン・スル/윤설(ヨニ:ジェソクの妻)
パク・ソイ/박소이(イ・ウンソル:ジェシクの娘)
イ・ガギョン/이가경(ソンミ:ヒョンスの妻)
カン・スク/강숙(ヒョンスを知るパブのオーナー)
【全州警察】
ユン・ビョンヒ/윤병희(リ刑事、全州警察時代のジョンチョルの上司)
イ・ヨソプ/이요섭(全州警察の若い刑事、監視役)
イ・ドゴン/이도군(チョン巡査:ジョンチョルの同僚、監視役)
リ・ウジン/리우진(全州の警察署長)
【完州警察】
チョン・ウォンジュン/정원중(完州警察署長)
パク・チョルミン/박철민(完州捜査課長)
【公僕その他】
ユン・ジニョン/윤진영(ユン検事:再審の担当検事?)
イ・ソファン/이서환(対質尋問の捜査官)
イ・スンフン/이승훈(イム・ヒョンシク:再審の検事?)
キム・ドンギュン/김동균(主任検事)
キム・ウォンモク/김원목(監察のリーダー)
ヨ・キョンサン/유경상(捜査記録係)
コ・ドクウォン/고덕원(刑務所の看守)
イ・ジンボ/이진보(刑務所の看守)
パク・ウォンサン/박원상(裁判長)
【その他の一般人】
チョ・ジョンファン/조정환(揉める父親)
ハ・ジョンミン/하정민(揉める母親)
ハ・ジュヨン/하주영(テコンドー教室の責任者)
イ・ウォング/이원구(テコンドーの若いインストラクター)
キム・スンピル/김승필(逃げるチンピラ)
キム・テヒ/김태희(工事現場の痴漢男)
ユ・ジヨン/유지연(痴漢されて泣いている学生)
パク・シヒョン/박시현(学生を宥める女性)
ホ・ジョンヒ/허정희(カフェのスタッフ)
■映画の舞台
1999年~2020年
韓国:全羅北道参礼邑
https://maps.app.goo.gl/eE5Fi4K85CrNkwyW8?g_st=ic
ロケ地:
韓国のどこか
■簡単なあらすじ
1999年、韓国の田舎町・参礼にて、強盗殺人事件が発生した
スーパーマーケットに押し入った事件で、警察はわずか数週間で犯人を特定し、逮捕、自供に至った
だが、その翌年、その街に「狂犬」と名高いファンという男が赴任してきた
ファンは班長として、ジョンギュたちと一緒に実績を重ねて行ったが、ある日、昨年のスーパー強盗事件の真犯人を知っているという人物から電話が入る
男は友人のヒョンスに自首を勧めているが応じず、精神的におかしくなっていると言う
ファンたちはその情報を元にヒョンスとジェソクを捕まえ、彼らから自供を引き出すことに成功する
だが、収監中の少年3人を含んだ対質尋問の場において、少年は自供し、ヒョンスたちは自らの罪を認めなかった
それから16年が過ぎ、ファンは定年を間近に迎えて、本土へと戻ってきた
後輩たちが歓迎する中、冤罪事件を起こしたウソンは警察官僚に上り詰めていた
そんな折、ある窃盗騒ぎが起き、ファンは冤罪少年3人と再会することになったのである
テーマ:罪なき過酷
裏テーマ:正義と向き合う心
■ひとこと感想
実際の事件をモチーフにした事件で、どこまでがリアルなのかはわかりませんが、感覚的には細部以外は実話ベースなのだと感じました
警察の不法な取り調べの被害に遭っている少年たちと、因果を結ぶことになった敏腕刑事との関係を描いていきます
映画は時系列がゴチャゴチャするタイプの作品で、1999年の強盗の後にいきなり現在軸の2016年になったり、少年たちと絡むきっかけとなった事件翌年の2000年へと回顧する流れになっています
その後も、2000年と2016年を行き来する内容になっていますが、見た目でわかる感じに加齢させている(少年はよく似た俳優起用)ので、そこまで混乱することはありません
物語は、さほど複雑ではありませんが、登場人物がやたらと多い映画でしたね
また場面が全州と完州と言うややこしさがあって、場所に馴染みがないと土地勘が冴えない映画になっていたように思います
パンフレットはそこそこ充実していますが、人物相関図を作って欲しかったなあというのが率直な感想でしたね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
警察の横暴をリアルに映し出す内容になっていて、エンドロールでも「処分された警察関係者はいない」とテロップまできちんと出てくる内容になっています
おそらくモデルがいると思われる内容ですが、冤罪少年の社会復帰を考えると、これ以上攻められないところがあったように思いました
物語は実話ベースなので、思った以上に湾曲する内容になっていました
少年たちの供述がコロコロ変わったりと、あっちこっちに飛んでしまうのですが、それが却ってリアルに感じられます
再審によって無罪となった3人が生き延びて、真犯人たちが悉く非業の死を遂げているのは皮肉に思えます
ラストでは自供によって3人を助けることになるジェイクですが、妻の中に落ちた感情が払拭されるのかはわかりません
むしろ、娘とこれから生まれていくる子どもたちに、どのタイミングで話すのかとか、墓場まで持っていくと決めたのかはわかりません
それでも、「他人から知る」と言うことの方が、家族にとっては一番辛いことなのだな、と再確認させられる映画だったと思いました
■実際の事件について
本作は、1999年2月6日に実際に起こった事件「全羅北道三礼邑のナラスーパー強盗致死事件」をモチーフにしています
3人の強盗が、パクさんとその妻チェさん、チェさんの母を脅してテープで縛った後、金品を盗んで逃げたという事件でした
当時77歳だったチェさんの母は窒息死し、事件から9日目に近隣に住んでいた19〜20歳の青年3人が逮捕されることになりました
3人が犯行を自白したために裁判になり、最高裁まで行って3〜6年の懲役刑を宣告されています
でも、彼らは「捜査課程による警察の暴行があり、嘘の自白をした」と10年以上主張を続けることになります
1999年11月に、釜山地検は犯人が別にいるという情報を受け、容疑者3人を検挙するに至ります
彼らは自白し、その後、全州地検に送られることになりましたが、2000年に全州地検が3人を不起訴にしました
その後、遺族であるチェさんに全州刑務所に収監されている犯人の声を聞かせたところ、それは違う声だったことが判明します
2016年には、真犯人を名乗る男が登場し、彼は1999年の不起訴処分の一人でした
彼は収監されている三人の無罪を立証するために協力することになりました
残りの2人のうち1人は2015年に自殺、もう一人は犯罪を否定している、とされています
再審を担当したのはパク・ジュニョン弁護士で、収監された3人のうちの1人は「当時も現在も言語や論理の駆使能力が低く、長い文章を書けない」という状況にありました
2016年のKBSスペシャルで報道された際には、この供述書の疑問が放送されています
2015年にパク・ジュニョン弁護士によって再審請求が行われ、それが受け入れられることになります
この際に、被害者の親族による警察の現場検証の映像が登場し、そこには警官が3人に対して暴行して、行為を強制する場面などが映っていて、これが決定的な証拠となっています
2016年10月28日、全州裁判所にて無罪判決を勝ち取ることになります
その後、検察は控訴をせず、17年ぶりに無罪確定を受けることになりました
■冤罪に巻き込まれたらどうするか
本作は、実際の事件よりも冤罪3人を若めに設定していて、文章が書けないというものを強調していたように思います
また、警察による暴力から怯える少年というところを考えると、そのイメージを誇張した格好になっています
弁護士が動いた事実はありますが、ファン班長のような人物はおそらくは創作なのだと考えられます
映画は、実際の事件を基にしたフィクションになっていますが、エンタメ度を高めるために、警察内部にも疑問を呈する人物を配置したことになります
とは言え、実際にこのような事件に巻き込まれたとしたら、彼らのように動いてくれる人物がいる可能性の方がゼロでしょう
なので、そこに至るまでにできること、すべきことを知っておく必要があると思います
犯罪者だと断定された時、相手(主に警察)はこの人が犯人であると確信している前提で動きます
でも、自分に身に覚えがないのであれば、徹底抗戦しないと有罪にされてしまいます
まず1番目に行うことは「弁護士」への相談を行うことで、国費で呼べる「当番弁護士」「国選弁護士」を頼ることになります
また、黙秘権というものがあり、「言いたくないことは言わなくて良い」ので、まずは「弁護士を呼んでください」で押し通し、それまではずっと黙秘を貫くことになります
その際にドラマで見たような、この映画のような無茶な取り調べがあるかもしれませんが、そのあたりも克明に覚えて、弁護士などに隈なく相談することになります
特に注意したいのが誘導尋問で、世間話から発展する場合もあり、論理の飛躍で供述に使えそうな言葉を引き出そうとします
なので、弁護士がつくまでは不用意な発言を控える意味でも、余計なことは話さないというスタンスを貫くことでしょう
自白や不利な供述調書を取らせないというのが最低条件で、サインや押印なども慎重に行う必要があります
話したことと違う内容を書かれている可能性もあるので、書類は隈なく読み込んで、わからない部分はわかるまで聞き込む必要があります
最悪の想定として、「犯人らしき人物さえ捕まればOKと考えている」とか、「真犯人が都合悪い人」というドラマのような展開を考えても良いと思います
最終的には証拠がなければ犯罪と断定できないもので、自供を迫るというのは「確たる証拠が不十分だから」という前提があったりします
それをその場で言って煽るのも良くないのですが、逆に自供を迫る状況は自分に有利な状況であると開き直って、接するぐらいの余裕を持った方が良いと思います
それらをその場でできるかどうかが一番大変なのですが、拘留期間は最大で23日間(犯罪の内容による)なので、不用意な自供で数年を無駄にすることを考えれば、その数週間は耐えるしかないというのが現実的な対応になってしまうのかなと感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、引退間近の刑事が過去の事件に再度巻き込まれる様子を描いていて、この経緯を踏まえると、ジュンチョルとしてはやることはやったと考えていると思います
真犯人の供述まで用意したのに、面接によって自供を翻す結果になっていて、この内容が本当だとしたら、お咎めなしというのは理解不能に思えます
遺族が撮った映像が再審請求の決め手となったのですが、これが最初の段階で出ないのは、遺族側からすれば犯人の実況見分の様子などには意味がないからでしょう
むしろ、あの映像が残っていたのは奇跡のようなもので、それを保管に至った経緯の方が気になってしまいます
少年たちが冤罪であることに対して、被害者側がどの時点で確信を持ったのかはわからないのですが、裁判での証言もしくは警察の取り調べの発言を訂正するに至るのは容易ではないと言えます
少年たちがあのような面談をさせられたように、被害者遺族のファーストコンタクトも「裁判での証言を覆すのは偽証罪にあたる」などのような脅しをかけられていたのかもしれません
そもそもこの映画で不思議に思うのは、襲われた3人組があの少年たちであると言われた瞬間に遺族としては違和感を感じるはずなのですね
それをスルーしている点であると思います
実際の事件では、冤罪になったのは20歳前後なので、真犯人との見分けには違和感がなかったかもしれません
でも、映画のような声を聞いてもわかりそうな年齢の違いというものは看過できないのですね(実際の事件でも犯人の声を聞かされて違うと感じたとのこと)
自分を襲い、3人を縛り上げた体力的な問題、体格などを考えると、犯人との面通しになった段階で、「え? こんな子どもだったっけ?」というものは起こったと思います
それが転じて、その中の1人を養子にしているみたいな状況を生んでいますが、遺族が犯人として服役した子どもを迎え入れるというのは現実的には無茶のように思えます
これらをクリアにするためには、被害者遺族も「犯人ありきの捜査に加担させられた」という状況を描写する必要があるのですね
でも、そこまで創作を推し進めてしまうと、全くの別の物語になってしまいます
なので、本編では「被害者遺族と警察のやりとり」というものはほぼ出てこず、手のあざの写真だけを見て、この子が犯人でしたという断定をしていることになります
元の事件のように成人手前であれば筋は通りますが、この設定への改変に説得力を持たせるのは無理だったのではないか、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101011/review/03944436/
公式HP:
https://klockworx-asia.com/boys/
