■体にふれることでわかる「ぬくもり」というものもあるのですね
Contents
■オススメ度
男女入れ替わり系映画に興味のある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.8.1(アップリンク京都)
■映画情報
情報:2024年、日本、91分、R15+
ジャンル:ある出来事で体が入れ替わった小説家と美容師を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本:いまおかしんじ
キャスト:
小出恵介(辺見たかし:外見が女性になってしまう小説家)
風吹ケイ(横澤サトミ:外見が男性になってしまう美容師)
新藤まなみ(辺見由莉奈:たかしの妻、看護師)
冨家ノリマサ(辺見英二:たかしの父、元大学教授)
荒木双葉(三好真紀:サトミのルームメイト、ダンサー)
川瀬陽太(神里哲也:サトミの勤務先の美容室の店長)
田中幸太朗(熊野次郎:たかしとサトミの行きつけのバーの店長)
中嶌駿介(たかしの担当編集者)
伊藤和哉(サトミの劇団の演出家)
一ノ瀬紗那(サトミの同僚美容師)
華岡稟(サトミの娘)
佐藤宏(居酒屋の店長)
飯田光咲(?)
山上礼乃(?)
■映画の舞台
東京都心のどこか
ロケ地:
東京都:新宿区
歌舞伎町
カラオケバーRoots
https://maps.app.goo.gl/zRaipWcjV5ZBZUzy5?g_st=ic
東京都:品川区
五反田美容室 nico
https://maps.app.goo.gl/fRovnoPPp1zfxPum7?g_st=ic
東京都:渋谷区
Atlya参宮橋
https://maps.app.goo.gl/oEqYBkyYawhSofv87?g_st=ic
参宮橋 えん2号店
https://maps.app.goo.gl/qWEEttJpQdesbjg37?g_st=ic
千葉県:木更津市
太田山公園
https://maps.app.goo.gl/RtKdjoTFfGzKKNRJA?g_st=ic
■簡単なあらすじ
小説家としてしがない生活を送っているたかしは、妻・由莉奈との関係も良好だったが、彼女の影に何故か男の影を感じていた
ある日の朝、不意に彼女に訊いたたかしだったが、彼女は即座に否定し、それ以上のことが聞けなかった
その後、彼女の勤務先を張り込んだたかしは、彼女がある男の車に乗り込むところを目撃してしまう
そして、その相手は自分の父であり、たかしは何が起こっているのか理解できなかった
事態を打開しようと上の空で高台の階段に差し掛かったたかしは、そこでサトミという女性とぶつかってしまい、そのまま階段下まで転落してしまった
大した怪我もなく、お互いが家に帰ろうとしたものの、たかしは自分の体が女になっていることに気づく
さらに、サトミは男の姿と気付かずに家に帰ってしまい、そこでルームメイトの真紀から変質者扱いをされてしまう
ようやく自分の姿がおかしいことに気づいたサトミは、男とぶつかった階段下へと戻った
二人は行きつけのバーで対策を練ろうとするものの、効果的な案は一切出てこなかったのである
テーマ:人生の交換
裏テーマ:日常への刺激
■ひとこと感想
今更ながらの男女の体が入れ替わるというネタで、その取っ掛かりも体がぶつかるというベタなものになっていました
その後の展開は誰もが考えることで、お互いの興味のある体を観察するというパートになっていました
映画は、たかしの妻が不倫しているんじゃないかという問題と、サトミのルームメイトにも誰かがいる、という感じの導入になっていました
どちらもが同じ悩みを抱えていて、その問題が表面化したときに事件が起こるという流れになっています
その後は、それぞれの人生に干渉していくことになるのですが、対象者が入れ替わりを理解していないというところにおかしさがありましたね
また、体が入れ替わっているということで本音の代弁者になっていたところも面白かったと思います
とは言え、思いっきりアダルトなシーンが多すぎて、お子様には刺激が強すぎると思います
脱ぎ要員は意外な人でしたが、肝心なところをギリギリ映さないカメラマンのテクニックはすごいなあと思ってしまいました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
男女入れ替わりネタといえば『君の名は』が割と最近の類に入りますが、青春期ゆえの暴走というものが随所にありましたね
本作は成熟した大人なので、外見的なものへの関心というものはさほどありませんが、体が入れ替わったことで「これまでのセックスとは真逆の快楽になる」ということがリアルに描かれていたと思います
また、セックスの最中にて、中身が入れ替わっていることを理解する妻がいて、それが第三者的にもわかるように描かれているのは凄いことだと思います
謎のクネクネダンスの意味は分かりませんが、お互いのセックススタイルが日常からも滲んでいて、それが相手に伝わるというのは面白いなあと思ってしまいました
ラストも安直ではなく、それぞれの人生を代わりに生きたということになっていて、元に戻らないというのも斬新なものになっていました
人間関係も複雑で、サトミはたかしの子どもを出産していますが、たかしは由莉奈との結婚生活を続けているのですね
このあたりの奇妙な組み合わせも、これまでには無いもののように思えました
■体で感じる相手の本質
本作は、いわゆる男女の体が入れ替わるというもので、そこに体の関係というものが赤裸々に描かれていました
思春期の入れ替わりの物語はたくさんあって、そこに「性的なタブー」にふれていく幼さというのがメインになりますが、本作の場合はガッツリと大人なので、見た目にへの興味というのはそこまでありません
むしろ、その先を行っている感じになっていて、それぞれのパートナーとのセックスなども描かれていく内容になっていました
たかしの妻・由莉奈と寝ることになるサトミですが、そのセックスの最中に中身が夫ではないことに気づきます
それは普段のセックスと違うからで、サトミ自身がレズビアンということもあって、女性の体への熟知度が違っていました
それゆえに、普段はたかしがしないようなセックスをすることになっていて、それが伝わるという内容になっています
また、たかしがサトミのパートナー・真紀と寝るシーンがあるのですが、この時の中身はサトミになっていて、これまでに真紀に与えられなかった快楽というものを与えることになっていました
大人ゆえにセックスを通じて相手の微妙な違いというものを察することができているのですが、そこに言及する入れ替わりものは珍しかったと思います
そこの表現を避けずして本作は語れない部分があり、その描写にはこだわりがあったように思います
また、入れ替わりの二人を最初に受容するのがバーのマスターというところも面白かったですね
彼自身のアブノーマルな部分が性にこだわる二人の感情を和らげる一因にもなっていたように思えました
■入れ替わりの先にあるリアル
このタイプの映画というのは、基本的には元に戻ることが多く、いわゆる「異世界転生系」に近い構成になっています
そこにあった問題を解決するために体の交換があって、それが解消されることで元に戻ることが多いのですね
本作は、そのあたりのセオリーをぶち壊して、体の入れ替わりを受け入れて、それぞれの生活を維持する、という方向へと向かっていきます
たかしはサトミの姿になったまま作家活動を続け、それは具体的な描写(特に女性に関する感覚)を得ることによって成功しているように思えます
さらに、たかしとのセックスによって子どもを授かり、母としての一面も受け継ぐことになります
そこで夫役になっっているのがバーのマスターというところが凄いのですが、由莉奈との関係も継続しているところも面白いなあと思いました
由莉奈のそばにはたかしの姿をしたサトミがいるのですが、中身は女同士の友情の関係になりますが、表層的には夫婦なので、そのような営みもあると考えられます
サトミとしても相手が女性なので問題がなく、由莉奈としても外側は男性なので、これまで同様に女性の悦びを失うことなく夫婦生活を送れています
さすがに普通の感覚では無理だと思うのですが、彼らのキャラがぶっ飛んでいるところもあるし、なぜかWin-Winっぽくなっているところもあって、それを周囲(双方の職場)が受け入れたことによって可能になっていました
サトミはたかしの体のまま美容室の店長になっているし、たかしはサトミの体で作家生活を続けている
編集者が手を出そうとして失敗していまし、サトミの元店長も大変だったと思います
でも、それらが時を経るともにどうしようもないものとして受け入れられているようで、このあたりは若干ファンタジックなのかな、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
体が入れ替わったことはないのですが、体が入れ替わるとどんな感じになるのかは興味がありますね
おそらく即物的なことはするだろうし、周囲の反応が180度以上変わってくるので、生活が激変することは間違いないと思います
その場合でも、元の体の人がどのような人物かによって、降りかかるものも変わってくると思います
幸いにも、二人の元の人間は交友関係が狭い(映画上では)という人物で、あまり対人的な変化を受けない人という感じに描かれていました
これが普通にサラリーマンやOLをしている存在だと、これまでに見てきたものの真逆の世界が見えることになるでしょう
男社会の中でしかわからない男社会の辛さであるとか、その逆も然りという感じて、自分が異性からどのように見られてきたかというものを体感してしまうかもしれません
おそらくは入れ替わった後の同性(元からすれば異性)の存在が怖くなってしまうのではないかと思います
これまではオブラートに包まれてきた異性からの言葉などはなく、直接的な罵詈雑言を聞くことになるだろうし、嫌な人間関係を目にする可能性の方が多いと思います
このような経験は自分自身のパラダイムシフトを生むと同時に、メンタルの弱い人だと引きこもりになってしまうと思います
それだけ人間には裏表があって、特に異性間では装飾されたものの多さを知ることになるのですね
どちらも優秀な異性を得るための装飾をしていて、それは時には同性間の競争をも生んでしまいます
そういった熾烈な争いを知らずに生きているのが人間であり、見えないからこそギャップというものが生まれてしまいます
これらのギャップは良い方向に向かうものもあれば、今回のようなケースだと悪い方向に向かいがちのように思います
それぞれの日常の近辺にいる異性に魅力がないからこそ、空想やアイドルなどの世界にいる異性に傾倒する人もいるので、そう言った人がこのような事態に晒されたら、もう部屋を出ることもままならないと思うのですね
今回は普通に生活をしている社会人のケースになっていましたが、オタクとか引きこもりがちの人、異性に何かしらの幻想を抱いている人が主人公になったら、どんな感じになるのかな、とか考えてしまいました
もう、語り尽くされたと思う体の入れ替わりものですが、まだまだ発掘できていない領域もあると思うので、掛け合わせ次第では迷作が生まれてしまうのかもしれません
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101554/review/04093123/
公式HP:
https://www.legendpictures.co.jp/movie/shapeofmyheart/