■醸し出す色気は足りないけど、因果の決着としては類を見ないうまさを感じます
Contents
■オススメ度
前作を観た人(★★★)
時代劇が好きな人(★★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.4.7(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2023年、日本、134分、G
ジャンル:京の都にて、因縁と遭遇する梅安と彦次郎を描いた時代劇
監督:河毛俊作
脚本:大森寿美男
原作:池波正太郎『仕掛人・藤枝梅安(1972年、講談社)』
キャスト:
豊川悦司(藤枝梅安:腕の良い鍼医者、裏の顔は仕掛人)
(少年期:田中奏生)
片岡愛之助(彦次郎:楊枝作り職人、梅安の友人の仕掛人)
高畑淳子(おせき:梅安のお手伝い)
小林薫(津山悦堂:梅安の師匠)
高橋真悠(おひろ:彦次郎の妻)
小野了(与助:浅草橋場の料亭「井筒」の主人)
菅野美穂(おもん:梅安に惚れ込んでいる「井筒」の女中)
一ノ瀬颯(佐々木八蔵:浪人の仕掛人)
佐藤浩市(井上半十郎:浪人の仕掛人)
篠原ゆき子(おるい:半十郎の妻)
椎名桔平(峯山又十郎:大和国郡山藩士)
椎名桔平(井坂惣市:又十郎の双子の弟)
金井勇太(村木勝蔵:無頼浪人)
久保勝史(岡部耕介:無頼浪人)
吉田智則(木村平次:無頼浪人)
大塚航二朗(上島辰之助:無頼浪人)
浜田学(石山文吾:無頼浪人)
高橋來(攫われて来た少年)
石橋蓮司(白子屋菊右衛門:大坂道頓堀の元締め)
高橋ひとみ(お崎:祇園「菊屋」の女将)
小林綾子(お芳:茶屋の女主人)
■映画の舞台
京都の都
ロケ地:
京都府:京丹後市
五十河の里「民家苑」農楽堂
https://maps.app.goo.gl/zJHzZYJGq7muhnqy5?g_st=ic
質美八幡宮
https://maps.app.goo.gl/EtySAvJemWMeZd4t8?g_st=ic
京都市:右京区
梅宮大社
https://maps.app.goo.gl/eYGCHq93CmgiuDbc9?g_st=ic
京都小倉山・二尊院
https://maps.app.goo.gl/5WTwqZ41Q3uDyR5j8?g_st=ic
大覚寺
https://maps.app.goo.gl/r36uwEFKygAgSaXw9?g_st=ic
妙心寺
https://maps.app.goo.gl/Ysodb3L2Qf9xvxxt6?g_st=ic
民宿わらびの里
https://maps.app.goo.gl/arnrtavQB2fB3RAQA?g_st=ic
京都市:山科区
毘沙門堂
https://maps.app.goo.gl/MsnfAEf11YKL5KtS7?g_st=ic
京都府:園部町
普濟寺
https://maps.app.goo.gl/8Ctn8ByTEWiPzZ689?g_st=ic
■簡単なあらすじ
前作にて、京に行くことを決めた梅安と彦次郎は、その道中である侍と遭遇する
彦次郎は妻を苦しめた浪人だと断罪するものの、梅安にはそうは思えなかった
そして、彼を尾行していくと意外な事実が発覚する
男は大和国郡山藩主の藩士・峯山又十郎であり、彦次郎が思っている仇ではなかった
だが、彼には人に話せない弟がいることがわかり、それが彦次郎の仇ではないかと探りを始める
そこで梅安は、上方の蔓・白木屋に接触し、「起こりはないか」と探りを入れる
白木屋は安い起こりを受けていたが、それを実行する仕掛人はいなかった
そこで梅安は「安い起こり」を引き受けることに決める
その「仕掛」こそ、彦次郎の仇である浪人・井坂惚市を始末するというもので、「起こり」はあの峯山だったのである
峯山は身内の恥を晒すのを恐れ、弟の始末をつけようと考えていた
その仕掛けが梅安に巡ってきたのである
テーマ:逃れられぬ因果
裏テーマ:始末の行方は神の定め
■ひとこと感想
前作で久々に時代劇を堪能し、続編が京ということで、個人的に盛り上がっていました
今回は彦次郎の因縁の話かと思ったら、きちんと梅安の因縁まで登場していましたね
このあたりの重ねは見事で、物語に深みがあったと思います
物語としては、前作の兄妹の因縁のインパクトには及ばないと思いますが、明確な敵がいる分、仕掛け戦として楽しめました
仕掛けは基本的に地味ですが、敵が手練れだけに、どうやって倒すのかが楽しみでしたね
かなり醜悪に仇を描いているので、どこまでエグいのかなあと思っていましたが、意外とあっさり風味に仕上がっていました
エンドロール後にも「続き」を匂わせる映像がありましたので、興行収入が良ければ続くのかもしれません
それが時代劇専門チャンネルのコンテンツなのか、映画になるのかはわかりませんが、映画公開になれば足繁く通いたいと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は「極悪人」を始末する流れを汲みますが、今回のメインである井上との戦いは、善悪から逸れた生き残りを賭けたものなっていました
梅安を生かしたものの正体はわかりませんが、わずかに生に対する執着があって、それがおもんの存在だったのかなと思います
物語は因果を巡る旅で、女絡みの割には色気の少ない感じがしましたね
それだけ、前作の天海祐希さんの存在感が凄かったということで、今回もそれらしいシーンはあるものの、燃えるものはなかったように思います
エンドロール後の映像は次作を彷彿とさせますが、梅安シリーズに詳しくないので「誰?」状態でしたね
今度はどんな因果が描かれるのか楽しみですが、まずは本作の内容をさらっとまとめていきたいと思います
■因果の果てにある慟哭
本作は、彦次郎の因果を解消する中で、梅安の因果が登場するという流れになっていました
彦次郎の場合は、浪人に妻を襲われてしまい、その精神的ショックから立ち直れないままに、妻が子どもを殺めて自殺をしています
梅安の場合は、過去に関係を持った女性には夫がいて、その恋愛が極度に振れたために、関係を終わらせるしかありませんでした
女性が絡んだ因果とは言え、その質は全く異なっています
映画では、彦次郎の因果を起点として、そこに現れた敵が実は双子だったという設定になっていて、誤認された方が梅安と関係がある人物でした
この流れが絶妙で、「あの侍がそんなことをするか?」という疑念を抱かせながら、見間違えを起こす最も適切な理由に行き着いています
また、彦次郎の因果に梅安を絡めるところがうまくて、「彦次郎の暴走を止める効果」というものがありました
梅安と彦次郎は敵討に成功しますが、その過程で「敵討される側になる」ことで、当初のミッションにも緊張感が生まれます
敵がヘボいのであっさりとやられていますが、協力者を上手い具合に取り込み、少年の因果と感情を利用することで打開に向かいます
また、梅安が彦次郎の因果を仕掛けとして受けることにより、目的遂行のための冷静さが生まれていました
これは、梅安と井上との間にあるものと同じで、こちらの場合は彦次郎が冷静さを以って、事にあたることになりました
復讐による感情の揺らぎは仕掛けには不要のもの
その慟哭を抑え込むことで目的を完遂するクレバーな部分が2人にはあったと思います
■彼を生かしたのは神の仕業なのか
彦次郎の復讐を為した後、今度は井上の復讐の幕が切って落とされます
この因果が雌雄を決することでしか終わらないことを悟っている梅安は、自分の懐に呼び込むことを考えました
江戸に戻ってから、おせきに患者を呼び込んだのもその一環で、患者と接してあげたいという欲求を叶えながら、井上に居場所を教える方策を取ります
予想通り彼らは辿り着き、そしてその時を待ちます
梅安は、一通り常連を診た後、井上が来るのを待ちますが、井上が「一連の診察が落ち着いてから殺そうと考えていること」を見抜いていたのですね
彼は武士なので、民間人を巻き込むことを良しとせず、梅安帰省の騒動の沈静化を待っていました
梅安はそれを読んでいて、彦次郎を屋根裏に忍ばせて応戦する大勢を作ることに成功します
決戦は思った以上にあっけないものでしたが、実際の仕掛けもこのような淡白なものだと思います
プロ同士の戦いなので、余計な感情は捨て、虚構にありがちな敵味方の会話というものもありません
このあたりの無言の戦いが、却って緊張感を有し、瞬間的な決着へと繋がっていましたね
一連のシーンで過剰な演出がないことが、本作の強みであり、仕掛けというものの恐ろしさを表現することになりました
最終的に井上の刀は柱に阻まれて梅安が勝利します
まさしく紙一重の結果で、ホームで戦った故の結果のようにも思えます
もし、この世界に神様がいるとしたら、梅安を生かすことを選んだのでしょう
それは、決戦の場所が彼の医院であるという意味もあり、仕掛け以外に求められている才覚が彼を生かしたと言えるのかもしれません
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
エンドロール後には「お馴染みの映像」が続き、何かしらの匂いを残していきました
原作に詳しくないので、あの人物が誰なのかわかりませんでしたが、クレジットによると「長谷川平蔵(松本幸四郎)」という役柄のようですね
サラッとググったところ、鬼平犯科帳のキャラクターのようでした
鬼平犯科帳に梅安が登場するのかはわかりませんが、池波正太郎作品をこのメンバーで継続して制作するのだとしたら楽しみでなりません
『仕掛人・藤枝梅安』自体は全20篇の作品いくつかの作品を作れそうな気はしますが、まさかの「アベンジャーズ・パターン」を時代劇で作るのでしょうか
次作がもし『鬼平犯科帳』だとして、その後に『剣客商売』へと続いて、まさかの『池波アベンジャーズ』まで到達したら、これは凄いことになるのかなと思います
このような作品がこれまでにあるのかわかりませんが、池波正太郎作品でやろうと思えばできるような気がします
なので、そう言った大きな話を期待しながら、次回作を待つこととしましょう
本作は、前作ほどのインパクトはないのですが、それは「色気」の足りなさかなと思いました
やはり、前作の天海祐希さんの存在感は圧倒的で、梅安が終始受け身にならざるを得ない状況をうまく作り出していたように思います
本作にも色気を感じさせるシーンはあるのですが、おもんもおるいも梅安に受け身の存在なので、男女ともに醸し出す色気として、女性側の弱さというものがありました
おるいは若気の勢いだし、おもんは現在進行形の待つ女となっているので、ざっくり言えば「挑発力」が足りないと言ったところでしょうか
それを付随させるシナリオを作るのは難しいと思いますが、それが可能だとしたら、「おるいとの関係で焦らしを入れまくる」ということになるのかな、と思いました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/384158/review/1f991bc7-0cd0-4559-9841-98f71ca33e7a/
公式HP: