■そういえば、「ブルーピリオド」ってどういう意味だったのかなあ


■オススメ度

 

やりたいことに向かう青春を応援したい人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.8.9(イオンシネマ久御山)


■映画情報

 

情報:2024年、日本、115分、G

ジャンル:ある絵をきっかけに美大を目指そうとする高校生を描いた青春映画

 

監督:萩原健太郎

脚本:吉田玲子

原作:山口つばさ『ブルーピリオド(講談社)』

Amazon Link(原作コミック)→ https://amzn.to/3SDPLTm

 

キャスト:

眞栄田郷敦(矢口八虎:そつなく生きてきた高校生)

 

【高校美術部関連】

高橋文哉(ユカちゃん/鮎川龍二:女性的な容姿の同級生、日本画)

桜田ひより(森まる:八虎の先輩、祈りをテーマにした絵画を作成)

 

菊池日菜子(城田優奈:美術部の生徒)

きばほのか(海野美玖:美術部の生徒、丸顔)

白石優愛(山本葵:美術部の生徒、先輩)

瀧七海(白石育美:美術部の生徒)

 

薬師丸ひろ子(佐伯昌子:高校の美術教師)

 

【美術予備校関連】

板垣李光人(高橋世田介:天才少年、八虎のライバル)

中島セナ(桑名マキ:美術予備校の実力者、姉が主席卒業)

秋谷郁甫(橋田悠:世田介の同級生、絵描きフェチ、お下げ男子)

芋生悠(桜庭華子:美術専門学校の生徒、赤髪ロング)

草野大成(石井啄郎:美術専門学校の生徒、坊主頭)

片田陽依(岡田さえ:美術専門学校の生徒、おかっぱ)

 

江口のりこ(大葉真由:予備校の講師)

 

【高校友人関連】

兵頭功海(恋々窪晋:八虎の親友、夢はパティシエ)

若林時英(純田勝矢:八虎の友人、女好き)

阿佐辰美(歌島立花:八虎の友人、お調子者)

 

【その他】

三浦誠己(後藤:物理の先生)

 

やす(矢口行信:八虎の父、清掃員)

石田ひかり(矢口真理恵:八虎の母)

 

菊池宇晃(ラーメン店の店主)

 

志村魁(坂本くん:ユカちゃんの友人)

濱尾ノリタカ(佐々木くん:ユカちゃんを拒んだ男)

 

箭内夢菜(三木きねみ:鏡を割ってしまう受験生)

 

吉田凜音(遠野:劇中絵画のモデル)

小倉史也(一次試験官:油画)

堀田胡桃(一次試験官:日本画)

川田龍(二次試験官)

海老澤功(予備校の教師)

会田誠(東京藝術大学の教授)

カナキティ(二次試験のヌードモデル)

 


■映画の舞台

 

日本:東京都心

 

ロケ地:

神奈川県:横浜市

神奈川県立瀬谷西高校

https://maps.app.goo.gl/4PbG3hPSNpmx6ToZ8?g_st=ic

 

神奈川県:相模原市

光と森の美術館

https://maps.app.goo.gl/yvTvTX4kgEZQnGD77?g_st=ic

 

神奈川県:足柄下郡

真鶴/岩港の宿 磯風荘

https://maps.app.goo.gl/LgQAHw16zxcFTmz46?g_st=ic

 

東京都:渋谷区

SHIBUYA MARKCITY

https://maps.app.goo.gl/1obBtWywkaE8E7Jx9?g_st=ic

 

俺流塩ラーメン 渋谷センター街店

https://maps.app.goo.gl/6qGGvG9pt7icF5xy8?g_st=ic

 

東京都:新宿区

世界堂

https://maps.app.goo.gl/Md3PPEuS3BYVTtFg6?g_st=ic

 

東京都:豊島区

サンシャイン水族館

https://maps.app.goo.gl/bNFAZVZozpz6nb7N9?g_st=ic

 

東京都:港区

ガストロミー OLLA!

https://maps.app.goo.gl/YTD25tfkYbJudJN77?g_st=ic

 

東京都:武蔵野市

武蔵野美術大学

https://maps.app.goo.gl/t44us3TcP9V7U1j19?g_st=ic

 

東京都:杉並区

女子美術大学

https://maps.app.goo.gl/kfhAzciFncvrgy116?g_st=ic

 

女子美術大学付属高等学校・中学校

https://maps.app.goo.gl/7CCpMBSbNL4m8AKY9?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

勉強もそつなくこなし、親友たちとスポーツバーでサッカーの試合で盛り上がっていた八虎は、夜明け前の渋谷の空を好んで眺めていた

彼には清掃員として働く父と、少ない給料でやりくりする母がいて、2人のためにも、大学は国公立に行くと決めていた

 

ある日、美術の課題に取り組むことになった八虎は、美術室に飾られていた大きな一枚の絵に魅了される

それは美術部の三年生・森まるが描きかけていたもので、縁があって、一緒に絵を描くことになった

 

そこで新宿の朝空を描いた八虎は、自分の中で何かが動き出したのを感じてしまう

そして、美術部に入って絵を描く日々が始まり、そして難関と言われる東京芸大にチャレンジすることを心に決めた

だが、堅実な道を歩んでほしいと願う母を説得できず、また自分の絵とは何かと思い悩んでしまう八虎は、閉塞感の中に閉じ込められてしまった

 

テーマ:才能と努力

裏テーマ:絵に投影される自分

 


■ひとこと感想

 

原作もアニメも見ていない状態で鑑賞

予告編から絵画に没頭する高校生を描いていることはわかりましたが、映画的にはそこに行くまでに随分と時間がかかっているように思えました

 

美術部での活動はちょろっとで、メインは美術専門学校での話になっていて、いきなり絵心もない若者が東京芸大を目指すと言う無謀な展開を迎えます

おそらく合格するんだろうなあと思って観ていましたが、説得力のある絵を描けたのかどうかだけに興味が移っていましたね

 

アートをどう評価するかは個人の感想になりますが、天才くんの合格の絵は出てこないし、八虎の絵もそこまで突出したものかは微妙な感じになっています

天才ではない彼は「戦略と努力」で東京芸大合格を目指しますが、そこにはロジックらしきものはなかったですね

てっきり『ドラゴン桜』のような攻略系なのかなと思いましたが、そこまで専門的なものではなかったように思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画は、随分と駆け足な感じになっていて、主要エピソードを抜き出して、そこに登場するキャラの辻褄が合うようにサブエピソードを登場させていたように思いました

漫画的なセリフもそのままのようで、実写になると浮いてしまうセリフがたくさんありましたね

このあたりは許容範囲だとは思いますが、映画の質を高めるまでには至っていないと思います

 

物語は、空虚な高校生が自分の好きなものを見つけると言うもので、そこに至るまでのエピソードは結構な尺を取っていました

八虎に感化される親友なども登場しますが、ハードルが前に現れるたびに誰かが助けてくれる展開が多く、このあたりの構成は実にフィクションっぽいなあと思いました

まるで、シナリオ講座のマニュアル本に当てはめたような感じになっています

 

彼がクリアすべき難題がいくつかあって、それを乗り越えさせるためのエピソードがあって、それを手助けするキャラが配置されている

この流れを自然に行えないと嘘っぽくなってしまうのですが、本作はその悪い見本のようになっていました

キャラを作り込んでどう動くかを観察するのではなく、ゴール地点を設定してキャラを歩かせている感じですね

それが一直線すぎるのが違和感になっていて、没入とまではいかない作品になっていたと思います

 


表現者としての才能

 

映画では、絵画に没頭する八虎を描き、その初期衝動から努力、戦略などをきめ細やかに描いていきました

彼は自分には才能が無いと感じていますが、それは美大を目指す受験生の中では「少ない方」という感じになっていて、一般レベルでは絵は上手い方だと思います

彼が最初に描いた新宿の明け方の絵は、同級生たちの心を掴むことができたし、母親を説得した時に描いた絵にも、彼らしい一面が描かれていたと思います

 

画家に限らず、全ての創作者というものは「自分の中にある何か」を表現するための方法として、目の前にある表現方法を用いているように思います

このブログもその一環のようなもので、私に絵の才能があれば絵で表現していたかもしれないし、音楽の才能があればインスパイアソングを歌っていたかもしれません

そして、そこで生まれる作品というものは対象者と自分の間にある何かを引き寄せ、埋め合わせをするようなもので、その表現というものは自分を知ることで明確なものになっていくと考えられます

対象のことがわかっても、自分との差異とか距離感がイメージできなければ、その対象について何かをいうことができないのと同じことのように思います

 

表現者としての資質は誰にでもあるものですが、その表現が誰かに伝わるかどうかは別問題のように思います

それは、表現する人に自分がないと、それを見る人が自分との差異や距離感を感じられないからなのですね

伝わるということは、その相手が自分(表現者)との差異や距離感を感じて、それを具体的な感情に落とし込めるからだと思います

それは、嫉妬や憧れ、同化など、さまざまなものに変換され、それが相手の感情を動かしていくことに繋がります

なので、表現者としての才能で欠かせないのは、自分を知っているかどうか、ということではないかと感じています

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、原作付きの作品で、その取捨選択を行なった上で、初期衝動から大学合格までを描いていることになります

その中でも、彼のハードルというものが主体となって、それをクリアするためのヒントというものが散りばめられている作品になっていたと思います

言い換えれば、大学入学までに必要な八虎の課題を一つずつピックアップしていく過程を描いているのですが、都合よく答えが近くにありすぎるようにも思えました

 

クリアすべき課題の中としては、技術的なものもあれば、精神的なものもあります

試験をクリアするための技術は美術専門学校で講師が教えるのですが、そこでもテーマの解釈などの精神的な部分の成長が必要であると描かれていました

それぞれの課題に向き合う中で八虎の未熟な部分が露呈し、その答え探しは「周囲を見る」というもので一環していました

これはこれで良いと思うのですが、テーマが裸でその前段階でユカちゃんとお互いに裸を描きあうというのはベタすぎるのですね

そのエピソードは試験の前日に起こったことなのですが、この関連性を紐づけるとしては安直なように思えました

 

周囲からヒントを得るというのは別に問題ではなく、そのテーマに内包された別の課題というものがリンクする方が良いと思います

例えば、ユカちゃんとお互いを描き合うとして、ユカちゃんから見た自分はどのような人物だったのかとか、そのエピソードを元にして、他の人物は自分のことをどう見ているのかを気にするとかでしょうか

その場限りのことが直接リンクするのではなく、そこからさらに奥深い記憶の旅に出るとか、他の受験者たちが何を持ってその絵に辿り着こうとしているのかに気づくというエピソードが必要になっていきます

同じ美術専門学校から3人が試験に挑んでいますが、このエピソードの横の繋がりが全くないまま物語が進んでしまっているのもネックだと思います

 

ライバル視する高橋との絡みはそこそこありますが、彼とのエピソードは物語を進めるためのものでしかありません

彼はどうしてあそこまで八虎を敵視するのかとか、彼の中に隠されたものは何なのかを、彼自身が描いている絵から感じ取る

また、森先輩が「祈り」をテーマに絵を描く理由は何なのかなども掘り下げることなく、画家の絵には共通のテーマがあるという認識で終わっています

ここまで掘り下げが軽すぎると、物語としての掘り下げも薄く感じてしまうので、そのような部分が作品の印象を薄味にしているように思えました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、映画内ではタイトルの回収はされておらず、おそらくは原作の続編もしくはラスト付近で回収されるものだと思います

原作未読なので予想になりますが、ブルーは初心、ピリオドは終着点という意味だと思うので、八虎が何かしらの試験もしくはイベントなどで描く最後の絵が「青色」にちなみ、かつ初心を思わせるようなものになるのかな、と感じました

原作の進行度合いはわかりませんが、大学には行っていると思うので、大学の最後の試験(発表)などに、紆余曲折を経て、自分の絵(おそらくは風景画)に辿り着くんじゃないかなと考えています

 

映画は、天才ではないので描きまくるという努力型の一面と、勝つために戦略を練るという軍師型の一面がありました

努力に関しては見ていればわかるほどですが、戦略面に関してはそこまで特筆すべきものはありません

テーマを題材にして描く絵も解釈が直接的で、そこに戦略のようなものがあるように思えませんし、試験全体を通じても、戦略が活きる場面はほとんどなかったように思います

 

題材的には美術大学に合格する受験生を描いているので、美大受験に関するテクニックのようなものが登場するのかと思いましたが、映画からはそれを感じません

原作にはもしかしたらあるかもしれないのですが、そもそも美大受験自体が一般的ではないので、そのアプローチを見て響く層は限られているように思います

それゆえに省略したのか、あまりにもマイナーすぎるからなのかはわからないのですが、そう言ったものがないことも映画の印象を薄くしている要因のように思います

 

映画で印象に残るシーンは八虎とユカちゃんのお泊まりシーンですが、この流れが腐っぽさを想像させるような流れになっていて、映画全体からは浮いている感じがします

二人の関係性がどうなのかはわかりませんが、八虎はどちらかといえば森先輩に恋をしてそうな印象があるので、そちらの展開は一切無視して進むというのもよくわからない感じになっていました

総合的に見て、原作の必要なエピソードを抽出し、それが破綻しないようにキャラを登場させ、さらに必要な前段階のシーンを用意しているように見えるので、どことなくパッチワーク的な印象を持ってしまいます

八虎の挫折は悩む間もなく解決されるあっさり風味なのも、あまり葛藤を感じささせないようになっていました

 

映画を見て、美大を目指すとか、絵を始めてみようとか、それ以外の創作に向き合ってみようという衝動が起きないのは残念ですが、本気でそう言ったものを追いかけている人からすれば、そこまで波風を立ててくれる作品ではなかったのかもしれません

何かしらの衝動に対して訴求する力のある作品はたくさんありますが、本作がそこに肩を並べられないのは、ひとえに原作の上辺を掬っただけのように見える体と思います

キャッチコピーは「情熱は武器だ」と謳いますが、八虎の絵画に対する情熱であるとか、彼が描こうとする絵に対する技法の選択、躓いた時に彼を奮い立たせるものなどがもっと色濃く描かれていれば変わったかもしれません

原作準拠の作品でその取捨選択の困難さはわかりますが、もう少し八虎とは何者なのかというところを突き詰めるシナリオになっていたら良かったのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101531/review/04117281/

 

公式HP:

https://wwws.warnerbros.co.jp/blueperiod-moviejp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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