■おもてなしで油断させて、いつの間にか侵食する系のホラーにした方が怖さが増したように思います


■オススメ度

 

Jホラーが好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.8.8(アップリンク京都)


■映画情報

 

情報:2023年、日本&香港、99分、PG12

ジャンル:東京の民泊に泊まった外国人がかつてない不気味な現象に囚われる様子を描いたホラー映画

 

監督&脚本:藤井秀剛

 

キャスト:

ジョシー・ホー/何超儀(サラ・クォン:香港の不動産屋のCEO)

   (10歳時:Honoka Ueda

ローレンス・チョウ/周俊偉(ショーン・タム:サラの弟、不動産屋)

 

高橋和也(小山田将:生活安全課の刑事)

黒川智花(小山田真由美:小山田の妹、鑑識医)

工藤トシキ(元川益信:将の同僚)

菅原大吉(杉崎孝之:小山田の上司)

 

白川和子(田中絹代:民泊の経営者)

   (35歳時:種村江津子

酒向芳(山口剛:民泊で診察をする医師)

 

美知枝(浜口千代:妊娠した遊女)

   (過去:森直子

   (128歳時:Shi Morinao

 

福田繁(白石章二:遊女を買う男?)

水上剣星(山縣有人:出版社の編集者?)

関口まなと(杉山樹志:出版社の編集者?)

 

アミーナ・ヤマグチ(グエン・アトラーダ:民泊の住人)

 

宮下純(金村利奈:失踪した女性)

メラニー・U(金村嘉子:利奈の姉)

渡辺美映子(利奈の母)

 

加藤純平(運転手)

ヴァチスト太田(占い師)

 

安井大貴(修行僧)

酒井貴子(空港の母親)

大平洋介(空港の少年)

 

浅井咲風(双子の少女)

浅井香風(双子の少女)

 


■映画の舞台

 

日本:

東京都:新宿

 

ロケ地:

上に同じ

 


■簡単なあらすじ

 

香港の不動産業界で働いているサラは、日本での物件の購入のために東京へと訪れていた

エスコート役を手配したところ、なぜか弟のショーンが付くことになり、サラは嫌々ながらも彼に案内してもらうことになった

 

物件を見回った後、ホテルに向かったものの、予約していたはずの部屋は取れていなかった

そこで、泊まる場所を探すものの、ショーンはラブホテルぐらいしかないと言う

怒ったサラは自力で部屋を探そうとするものの、言葉が通じずに路頭に迷ってしまう

 

そんな折、ショーンからメッセージが届き、サラはやむを得ず、「民泊」と呼ばれる個人の家にお邪魔することになった

そこの主人の絹代は不気味な老女で、部屋は汚く、トイレも浴室も最悪な環境だった

仕方なく眠りに着こうとするものの、今度は足音が聞こえてきて、目の前を誰かが通り過ぎる

そして、奇妙な夢を見てうなされてしまうのであった

 

テーマ:罪悪感

裏テーマ:民泊の怖さ

 


■ひとこと感想

 

日本の民泊を利用した外国人が奇妙なことに巻き込まれると言う内容で、言葉が通じない怖さはそこまで強調されないと言う不思議な映画になっていました

当初は通訳がわりの弟しか話せないのに、絹代が普通に喋っているのは微妙だったと思います

 

民泊の住人たちが日本語しか話せず、置いてけぼりになる怖さと言うものはあるのですが、弟がいないときに会話を成立させるのは意味がなかったですね

意思疎通ができないまま、おかしなことに巻き込まれまくると言う方が一貫性があって、怖さが倍増したように思えました

 

この民泊の床下に人骨が埋まっていたのですが、その正体も無茶な感じで、それだと鑑識要らないんじゃないの?とツッコんでしまいますね

人骨に指紋が付着してと言う部分は展開的に面白いのですが、このあたりのカラクリは公式HPで公開されている「前日譚」を観た方が早いと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

本作のネタバレ部分と言えば、後半に登場する謎の宗教団体のようなものだと思います

彼らが何をしたかったのかはよくわかりませんでしたが、子孫繁栄にまつわることのように見えました

 

現在軸の迷い人を媒体にして、あの時代の子どもを産ませるように見えたのですが、それであっているのかは自信がないですね

また、冒頭で高浜虚子の俳句が3つほど登場しましたが、さすがに覚えるのは無理でした

 

この句が物語の核になっているのかはわかりませんが、パンフレットでは完全スルー状態なので、雰囲気だけに使われたのかも知れません

襟巻の狐の顔は別に在り、と言うのがその一つだと思われますが、これって「体と頭は別々」と言う意味の俳句ですよね

それがラストの仮面と体は別のところに在るに繋がっているのかな、と感じました

 


民泊は怖い?

 

民泊とは、旅行者などが「一般の民家に宿泊すること」を言い、2013年の国家戦略特別区域法の旅館業法の特例として「特区民泊」は法制化されています

その後、2017年に全国を対象とする「住宅宿泊事業法」が成立し、2018年6月15日から施行されています

一般的には「住宅の全部又は一部を活用して宿泊サービスを提供すること」となっていて、住宅を活用して宿泊料を徴取し、反復継続して提供する場合において、旅館業法の適用を受けることになります

この他にも諸条件がありますが、誰にでもできるわけではなかったりします

 

欠陥条項というものがあるのですが、心身の故障により的確に遂行できないとか、破産手続きをして復権していない人とか、禁錮以上の刑に処せられているなどがあって、暴力団員とか未成年者とかでなければ可能とされています

民泊新法に基づいて、物件の選定、許可申請、料金設定や規約の作成、民泊サイトへの登録、Webサイトや公式SNSの整備などを行なっていくことになります

今では、これらをビジネスチャンスとして捉える業者が1から行って、手数料や管理をするというものもあって、空き家を所有しているけどどうしたら良いかわからない、などの時に売却以外の選択肢ができたという感じになっています

 

ちなみに、民泊でのトラブルというものも多く、利用者の場合だと詐欺案件であるとか、支払いに関するものもありますが、通常に運営する場合でもさまざまなものがあります

主なトラブルの事例として、旅行者がホテルと同じ感覚で夜中でも騒ぐ、地域のゴミ出しルールに従わない、備品の破損や盗難、時間を守らない、予約人数が違うなどが挙げられます

外国人旅行客が利用する場合もあり、規約は多言語で用意する必要があるし、補償に関しては保険に入る必要もあります

これらのことをきちんと行なってもどうしようもない場合はコールセンターに相談するということも必要となってきます

映画の民泊にそのようなものがあるとは思えませんが、舞台設定ということなので、深く考えてはいけないと思います

それでも、ホテルなどと違って、清潔度が下がるというのは避けて通れないと思うので、個人的には利用したいと思ったことはありません

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、外国から来た女性が民泊を利用するという導入があって、その家はいわくつきの家だったという内容になっていました

寝室の下には白骨死体があって、その民泊では何かしらの儀式のようなものが行われていたことが判明します

それは、時を超えたもので、過去の世界で産むはずだった子どもを現代の女性の体を借りて、さらに過去で産ませるという意味のわからないものになっていました

これで合っているのかはよくわからないのですが、概ねこんな感じのカラクリになっていたと感じています

 

本作のわかりやすい問題点は、この物件に泊まるまでの経緯で、弟のショーンが意図的にサラをあの場所に誘導していたことがわかります

彼もその家主たちとグルということになるのですが、その関係性の起こりについては深くふれられてはいなかったように思います

映画的な怖さや不気味さというものは、全てを説明する意味合いはないのですが、本作の場合だと説明不足の点が多くて、ショーンが絡んでいる理由と、彼が姉を標的にした理由というものは最低限必要になると考えられます

 

サラは堕胎をし、恋人と別れた直後なのですが、これによって「出産が絡むもの」に彼女が通常とは違う恐怖を感じるというのは理解できます

時を超えた出産をさせられる中で、虚実が入り混じるような感じになっていて、それでいて冷静な判断を失います

なので、そこで起こったことが実際に起こったことなのか、夢うつつのものかの判別がつかないのですね

事後にサラが目覚めたとしても、彼女の体自体は変わっていないように思えるというのが狙いのようにも思えます

 

この民家の住人たちの目的は、子どもを産ませて売ることで、それを売春婦にさせるのではなく、次元の違う母体を利用しようと考えていました

向こうにいる人とこちらにいる人を繋ぐのが民泊の主・千代でありますが、その場所まで誰かを誘導する役というものが必要になります

この時に選ばれる人の条件というものがかなり曖昧で、ショーンが血縁関係のサラを選ぶというところに違和感があると思います

なので、単純に日本でのビジネスパートナーとか、取引先などの「サラが断りづらい関係性」の方がしっくり来ると思います

 

家族にしたことと、その関係があまり良くないという設定がありますが、この関係性は本編ではあまり関係がありません

また、家族にするとしても、関係性が悪いよりも良い方が裏切られた時の落差があるので、このあたりの落差というものも意識した方が良かったように思います

これまでに信頼を得ていた人からの裏切り行為が疑心暗鬼を加速させ、それによって精神的に弱くなった方が彼らの術中にハマりやすいように思えました

 

ショーンが彼らの案内人になっている理由は色々と設定できますが、この儀式を行う上で「現代人の協力が不可欠」であることはわかります

それは後に裕福になる家系などを現代人が知っていて、それを過去に伝えることによって、子どもの売り先を決めて、その家系に入り込むことができます

この関係性がどのように生まれたかも色々と考えられますが、一番わかりやすいのは「ショーンも恋人と一緒にあの民家に泊まって、恋人が犠牲になった」というものがスマートだと思います

またはショーンの恋人と一緒にあの民家に行った女性が過去から繋がる末裔という設定もわかりやすいものでしょう

そうして、ショーンは「運命決定論的に導かれた」というカラクリにすることで、より一層関連性を強調できるのではないか、と感じました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、冒頭にて高濱虚子の俳句が引用されていましたが、あまりにも一瞬だったのでどの句だったのかを見過ごしてしまいました

おそらく3行だったので3句の引用だと思いますが、パンフレットにも言及がなかったので、そこまで意味深でもなかったのかなと思いました

高浜虚子と言えばホトトギス派で「客観写生」「花鳥諷詠」を提唱した人物でした

「客観写生」とは「限られた文字数で主観を描写するために客観的視点を用いる」というもので、「花鳥諷詠」は「季題を用いて調子を整える」という意味があります

正岡子規の没後に五七五調に囚われない新傾向俳句のブームがあり、その流れに待ったをかけた、という感じになっています

この概念が映画で活かされているかは何とも言えないのですが、単なる俳句の引用ではないと思うので、パンフレットでは解説をして欲しかったですね

近場での公開は終わっているので、配信が始まれば確認したいと思います

 

映画は、東京の民泊に泊まったらヤバいことに巻き込まれたというもので、その全てが出来レースという感じに結ばれています

民泊が怖いというよりは、その家に住む人たちが怖いという感じで、あの状態の民泊が許可されるのかはわかりません

むしろ、サラの事業の一環で購入を検討しようとしていた物件に泊まるというのでも問題なく、その空き家を利用して民泊事業を始めようとした、というものでも良いでしょう

外資がそれをできるのかは調べないとわかりませんが、現地法人を設立すれば可能なように思います

 

映画では、彼女があの民家に泊まる理由が希薄で、その後も泊まり続けるのは不思議で仕方なかったですね

白骨が見つかったらすぐに別の宿を手配するなどをすると思うし、そもそも警察の規制線が張られるので泊まることはできないと思います

このあたりをクリアするには、別の宿をジェシーが用意して、そこもトラップの物件だった(実はこちらが本懐)という流れになった方が良いと思います

恐怖と安堵の繰り返しの中で、実は巧みに誘導されているというのがホラーの真髄でもあるので、サラが安心し切ったところに本当の恐怖が訪れる、という方が観客的にも怖いと思います

 

見た目からして怖い家で怖いことが起こるのは普通で、見た目は物凄く掃除が行き届いているけれど実際には怖いという方が落差があります

邦画におけるいわくつきの物件関係は「入った瞬間にヤバい」という感じなのですが、そのパターンから逸脱しても良かったように思います

安心は気の緩みを生み出して、精神的な部分に入り込みやすさを生んでいきます

そうして中で起こることは抵抗を少なくするので、いつの間にか侵食されていた、という怖さを演出できると思います

映画は、この方向性ではなく、初めから危ない場所に足を踏み入れる系のホラーですが、それだけでは物足りないなあと思ってしまいました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101702/review/04114586/

 

公式HP:

https://onpaku-movie.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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