■立場の優位性を持ってしても、そこに愛がなければ成立はしないもの
Contents
■オススメ度
実在の事件をベースにした物語に興味のある人(★★★)
小児性愛の物語に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.8.6(アップリンク京都)
■映画情報
原題:Le consentement(同意)、英題:Consent(同意)
情報:2023年、フランス&ベルギー、118分、R15+
ジャンル:未成年時代に年配作家と性交を結んだ少女を描いた実録系ヒューマンドラマ
監督:バネッサ・フィロ
脚本:バネッサ・フィロ&ヴァネッサ・スプリンゴラ&フランソワ・フィロ
原作:ヴァネッサ・スプリンゴラ/Vanessa Springora『Consent』
Amazon Link(原作:英語版)→ https://amzn.to/46I3Uo7
キャスト:
キム・イジュラン/Kim Higelin(ヴァネッサ・スプリンゴラ/Vanessa Springora:憧れの年配作家と関係を持つ14歳、1985年時)
(2013年時:エロディ・ブシェーズ/Élodie Bouchez)
ジャン=ポール・ルーブ/Jean-Paul Rouve(ガブリエル・マツネフ/Gabriel Matzneff:小児性愛を持つ著名な作家)
レティシア・カスタ/Laetitia Casta(ヴァネッサの母)
Lolita Chammah(ヴァネッサの母の親友)
Félicien Juttner(ヴァネッサの母の恋人)
Sébastien Pouderoux(ヴァネッサの父)
Jean Chevalier(ユーリ/Youri:ヴァネッサと関係を持つ成人)
Raphael Nouguey(ユーリの息子)
【ヴァネッサの学業交友関係】
Anne Loiret(ラテン語の先生、中学校)
Lilas-Rose Gilberti(カミーユ/Camille:ヴァネッサのクラスメイト、友人)
Tanguy Mercier(ジュリアン/Julien:ヴァネッサのクラスメイト)
Selma Tamiatto(クロティルド/Clothilde:ヴァネッサのクラスメイト)
Lou-Ann Trabaud(アグネス/Agnès:ヴァネッサのクラスメイト)
Héloïse Bresc(オードリー/Audrey:ヴァネッサのクラスメイト)
Eloi Léger(ニコ/Nico:ヴァネッサのクラスメイト)
Ferdinand Redouloux(コランタン/Corentin:ヴァネッサのクラスメイト)
Manon Le Bail(エヴァ/Eva:ヴァネッサのクラスメイト)
Donovan Fouassier(オリヴィエ/Olivier:ヴァネッサのクラスメイト)
Raphael Romand(ロニー/Ronnie:ヴァネッサのクラスメイト)
Victor Fruhinsholz(サミュエル/Samuel:ヴァネッサのクラスメイト)
Anne Benoît(フランス語の教師、高校)
Juliette Gasquet(セシル/Cécile:クラスメイト、友人)
Lorys Thévenet(ジャスティン/Justin:クラスメイト)
Frédéric Andrau(高校教師)
Valérie Crouzet(英語教師)
Catherine Vinatier(校長)
【ガブリエルの交友関係】
David Clavel(ミシェル/Michel:ガブリエルの友人)
Noam Morgensztern(ジャン=ディエ・ウィルフロム/Jean-Didier Wolfromm:フランスの小説家)
Miglen Mirtchev(エミール・シオラン/Emil Cioran:ルーマニアの作家)
Françoise Gazio(シモーヌ・ブエ/Simone Boué:エミールの妻)
【その他:ほぼ登場順】
Agathe Dronne(クリスティアーヌ/Christiane:1985年のディナーの参加者)
Christophe Grégoire(ベルナール/Bernard:1985年のディナーの参加者)
Doby Broda(ムリエル/Muriel:1985年のディナーの参加者)
Benjamin Gomez(本屋の店主)
Irène Ismaïloff(コンシェルジュ)
Annie Mercier(医師)
Julien Bensenior(誕生日のピアニスト)
Marie-Christine Letort(イザベル/Isabelle:ブラッスリーのディナー参加者)
Christophe Kourotchkine(エリック/Éric:ブラッスリーのディナー参加者)
Alain Fromager(アラン/Alain:ブラッスリーのディナー参加者)
Manuel Durand(ヴァネッサの婦人科医)
Malvina Héraud(未成年者の捜査官)
Félix Kysyl(未成年者の捜査官)
David Sighicelli(ガブリエルの主治医)
Gérald Maillet(トーク番組「d’antenne」のディレクター)
Philippe Briouse(番組司会者)
Lilea Le Borgne(ガブリエルの若い追っかけのファン)
Sandy Afiuni(ジュリー/Julie:カフェで隣に座る女の子)
Mado Jouannet(ジュリーの友人)
Noé Guery(ジュリーの友人)
Johan Cardot Da Costa(ヴァレンティン/Valentin:ジュリーの友人)
Éric Denize(路上の変態男)
Eléna Béâtre(妄想に登場する少女)
Tanguy Rothschild(妄想に登場する少年)
Blandine Laignel(妄想に登場する病院の看護師)
Josiane Pinson(マリー/Marie :2013年のディナーの参加者)
Francis Lombrail(オリヴィエ/Olivier :2013年のディナーの参加者)
Marie Rémond(アン/Anne:2013年のディナーの参加者)
Nicolas Bridet(アレクサンドル/Alexandre:2013年のディナーの参加者)
Annie Mercier(病院の医師)
Laurent André(編集者)
■映画の舞台
フランス:パリ
ロケ地:
フランス:パリ
Le Coupe Papier
https://maps.app.goo.gl/z7jUSLDSZyiY43yp9?g_st=ic
サンミッシェル広場/Place Saint-Michel
https://maps.app.goo.gl/esA77z7yTXvqPSpy7?g_st=ic
リュクサンブルク公園/Jardin du Luxembourg
https://maps.app.goo.gl/G7fZ9YT85y75fyM16?g_st=ic
ジャン・バティスト・セイ高等学校/Lycée Jean-Baptiste Say
https://maps.app.goo.gl/u9szueJaJ5oNMSzG8?g_st=ic
ジャック・ドゥクール高等学校/Lycée Jacques Decour
https://maps.app.goo.gl/uK2NszAtsqj29xDD7?g_st=ic
アメリカン・カテドラル/The American Cathedral
https://maps.app.goo.gl/LikQFoKREdWoBE5a8?g_st=ic
フランソワ・ミッテラン通り/Quai François Mitterrand
https://maps.app.goo.gl/iTFxnGEuPtAhfujX8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
13歳のヴァネッサは、あるディナー・パーティーにて、憧れの作家のガブリエル・マツネフと出会った
ガブリエルを中心としたディナーは大人の世界で、ヴァネッサは席を外して、彼の著作を読んでいた
彼は自分の書籍を読んでいることに気付き、ヴァネッサを自分の家へと招待した
ヴァネッサは戸惑いながらも、大人の世界への誘惑を拒めない
だが、ガブリエルは直情的には動かず、ヴァネッサの心理を巧みに掴んでいく
ヴァネッサの母は当初反対するものの、ヴァネッサの熱意にほだされて、止む無く認めざるを得ない
だが、ガブリエルの正体を知ったヴァネッサは驚愕し、自分の行いによって自己嫌悪に陥ってしまうのである
テーマ:小児性愛と狡猾な誘導
裏テーマ:隠せない本性
■ひとこと感想
実在の事件&人物を取り扱っている作品ですが、俯瞰して観ていると、文学に傾倒した少女の想像力を悪用したサイコスリラーのように思えました
ヴァネッサの熱情を利用し、普通の大人なら拒むようなことも、率先して誘導していく流れになっていました
映画は、かなり巧妙なガブリエルが描かれていますが、母親も大概だなあと思ってしまいます
娘の交流を知っていながら放置するのもどうかと思いますし、ヴァネッサをもっと諭す必要があったように思います
14歳になったことで当時のグレーゾーンに入っているのですが、この未成年者との性交の基準の歴史を知らないと、「え?」という感じになってしまうように思います
とは言え、母親もガブリエルの性癖までは知らなかったと思うので、無理もないのかも知れません
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
当時のフランスの未成年者との関係についてはグレーゾーンが存在していて、ヴァネッサの年齢は「本人の同意があればOK」というものでした
どうやら13歳だとアウトだったので、ガブリエルは1年待ったという感じになるのかも知れません
そこから純愛だった!ということならまだしも、実は小説のネタのために攻略した!みたいな感じになっているので、そりゃあグレても仕方ないかな、と思ってしまいました
後半はやぐされヴァネッサの独壇場という感じになっていますが、わかりやすいグレかたは何とも言えない悲壮感が漂っていました
映画のラストでは、告発に至った書籍の執筆というところで終わりますが、なぜ30年後なのかなどはわからなかったですね
いきなり2013年のディナーのシーンになって、誰これ?と疑問符が湧いたまま、パソコン画面になったので、瞬時には把握できなかったですねえ
■性交許容年齢について
映画のタイトルは「同意」という意味があり、人が成功位を同意する法的能力がある年齢のことを性的同意年齢(Age of Consent)と言います
この同意年齢に関する法律は地域によって異なっていて、ほとんどの地域では14歳〜18歳の範囲に設定されています
また、13歳を同意年齢とする、アルゼンチン、ニジェール、西サハラや、12歳〜18歳に指定しているイスラム教国などもあります
これは未成年同士の性行為については許容される場合もあります
映画の舞台であるフランスは、最低同意年齢は15歳で、これは刑法第227-25条に規定されています
15歳未満の未成年者への性的暴行は7年の懲役および15万ユーロの罰金となっています
性的暴行の定義は、暴力、強制、脅迫、または不意打ちで行われるあらゆる性的暴行とされています
この不意打ちの概念は、成人が未成年者に対する「事実上の権威」から生ずる可能性を指摘していて、年齢差によるものも含まれています
第227-22条では、未成年者の堕落を助長し、または助長しようとすることについて言及があり、未成年者が出席または参加していることを知りながら、猥褻な露出または性的関係を伴う会合を組織することを禁ずる、と規定されています
これら以外にも「優勢または被害者に対して法的または事実上の権限を持つその他の人物によって行われた場合」「職務によって与えられた権限を乱用した人物によって行われた場合」についての規制もあります
ちなみに、フランスでは2021年に法律が改正され、15歳未満の人との性行為は「ロミオとジュリエット条項(Romeo and Juliet Laws=二人の未成年者による性行為に関する法律)」に従っていて、それ以外の場合は自動的に強姦または性的暴行と分類されるようになりました
■立場を利用した籠絡
映画では、「優勢(ascendant )または被害者に対して法的または事実上の権限を持つその他の人物によって行われた場合」に該当する関係性になっていて、ヴァネッサとガブリエルの関係は「優勢」に該当すると考えられます
優勢とは、支配的であるとか、優位性があるという意味になり、今回の場合は「自分のファンである未成年者」という優位な立場を利用している、ということになります
これが出会いの段階である13歳ではアウトで、当時は14歳がグレーゾーンになっていました
それ故に、初回の時点ではガブリエルは手を出さず、彼女が14歳になってから性行為に及んでいることになります
これは舞台が1985年だったからグレーなだけで、今では問答無用でアウトの案件になっています
立場の優位性によって行われる性行為は、相手が同意年齢に達していない場合にはアウトですが、達している場合は相応の意図が介在する場合があります
今回の逆のパターンとして、ファンであることを公言して近づいて関係を迫ろうとする場合もあるのですね
でも、相手が合意年齢に達していない場合は、自重するというのが通常の感覚であると言えます
これは、教師と生徒の関係でも同様のことが起き、卒業するまではダメみたいな「立場の優位性が消え、かつ同意年齢に達する」という瞬間まではそのような行為をしない、という配慮がなされる場合がほとんどだと考えられます
今回の場合は、このようなものよりももっと悪質なもので、ガブリエル自身が児童性愛者だったという側面がありました
彼は、自身の作品のネタのために児童性愛を繰り返していて、それは許されざるものではなかったでしょう
立場の優位性とか、そういった概念を越えてヴァネッサの心を愚弄する行為になっていて、それが原因で彼女の人生が激変するに至っています
もし、純粋なものが残っていたらこうはならなかったと考えられ、それだけ彼女の心に残した爪痕は大きなものだったと言えるのではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、このような法的なことを知らずに、単に憧れの人との大切な時間を共有したいというヴァネッサが裏切られるという展開を迎えます
母親は当初は反対するものの、グレーゾーンに達したことと、ヴァネッサの意思を尊重することになって、その行為を許容することになりました
そもそもガブリエルがどのような作品を書いている人物かは知っていたはずであり、彼の性癖に関しても想像が及ばなかったというのは無茶なことのように思います
それゆえに、母親が犯した行為というものも糾弾されて然るべきかな、と感じました
映画の前半にて、本屋にてガブリエルの作品に手を伸ばすヴァネッサが描かれ、書店員がそれを止める場面がありました
それは年齢的に読むべき本ではないという意味なのですが、この時にガブリエルの本性に気づいていれば、その後の展開はなかったかもしれません
でも、あの状況のヴァネッサだと、喜んで作品の中に自分を生かして欲しいと考えたかも知れず、どっちに転んでいたかは分かりません
彼の作品の中で永遠に生きることを選択する可能性もあり、特別な存在になりたいと考えても不思議ではないように思います
多くの恋愛作品には著者自身の経験が刻まれるものですが、その記念碑的な存在になりたがる人もいると思います
でも、目的と手段が逆転した場合、それは大きな諍いを生むことになります
著作のために籠絡することを特別扱いされているとは思わないもので、濃密な時間が作品へのインスピレーションになって、それが表現されることとは別次元のように思います
今回は、自分以外の誰かもその対象になっていて、それをヴァネッサが知ったことで関係が破綻するのですが、それは遅かれ早かれわかったことでしょう
そうなることを止めることができなかったのは母親の判断でもあると思うので、やはり一番罪深い人間なのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101216/review/04109905/
公式HP:
https://klockworx.com/movies/consent/