■感覚で物事を捉えていた時も、言語化できなかった理屈がそこにはあったのだと思います
Contents
■オススメ度
内なる感情と思春期を描いた作品に興味のある人(★★★)
前作のファンの人(★★★)
■公式予告編
https://youtu.be/Dd-IRK-ZCxc?si=YFCTFXZio6FB5uBS
鑑賞日:2024.8.7(TOHOシネマズ二条 IMAX)
■映画情報
原題:Inside Out 2
情報:2024年、アメリカ、96分、G
ジャンル:思春期を迎えた少女の脳内葛藤を描いたファンタジー&青春映画
監督:ケルシー・マン
脚本:メグ・レフォーブ&デイブ・ホルスタイン
前作『インサイド・ヘッド』
Amazon Link(字幕版)→ https://amzn.to/4deWo6A
キャスト:
ケンジントン・トールマン/Kensington Tallman(ライリー・アンダーセン:ホッケーに入れ込んでいる13歳の少女)
【ライリーの初期感情】
エイミー・ポーラー/Amy Poehler(ヨロコビ/Joy)
フィリス・スミス/Phyllis Smith(カナシミ/Sadness)
ルイス・ブラック/Lewis Black(イカリ/Anger)
ライザ・ラピラ/Liza Lapira(ムカムカ/Disgust)
トニー・ヘイル/Tony Hale(ビビリ/Fear)
【ライリーの新しい感情】
マヤ・ホーク/Maya Hawke(シンパイ/Anxiety)
アヨ・エデビリ/Ayo Edebiri(イイナー/Envy)
アデル・エグザルコプロス/Adèle Exarchopoulos(ダリィ/Ennui)
Paul Walter Hauser(ハズカシ/Embarrassment)
ジューン・スキップ/June Squibb(ナツカシ/Nostalgia)
【ライリーの家族】
ダイアン・レイン/Diane Lane(ジル・アンダーセン:ライリーのママ)
ポーラ・ペル/Paula Pell(ママのイカリ)
Lori Alan(ママのカナシミ)
Sherry Lynn(ママのヨロコビ)
Mona Marshall(ママのシンパイ)
カイル・マクラクラン/Kyle MacLachlan(ビル・アンダーソン:ライリーのパパ)
ピート・ドクター/Pete Docter(パパのイカリ)
Carlos Alazraqui(パパのビビリ)
Roger Craig Smith(パパのシンパイ)
【ライリーの秘密の保管庫】
ヨン・イェ/Yong Yea(ランス・スラッシュブレード/Lance Slashblade:ライリーが恋する日本のビデオゲームのキャラクター)
ロン・ファンチズ/Ron Funches(ブルーフィー/Bloofy:ライリーの子どもの頃テレビ番組のキャラクター)
ジェームズ・オースティン・ジョンソン/James Austin Johnson(ポーチー/Pouchy:ライリーの子どもの頃テレビ番組のキャラクター)
スティーブ・パーセル/Steve Purcell(クライヒミツ/Deep Dark Secret:ライリーの保管庫に暮らすライリーの秘密を知る巨人)
【先輩&友人たち】
リリマー/Lilimar(ヴァレンティーナ・オルティス/Valentina:ライリーが憧れる高校のホッケー選手)
Melanie Injeyan(ダニ/Dani:ヴァレンティーナのチームメイト)
グレース・ルー/Grace Lu(グレース・シェ/Grace:ライリーの親友)
Sumayyah Nuriddin-Green(ブリー・ヤング/Bree:ライリーの親友)
Krysta Gonzales(ブリーのムカムカ)
イベット・ニコール・ブラウン/Yvette Nicole Brown(ロバーツ:高校のホッケー部のコーチ)
【その他】
デイブ・ゴールズ/Dave Goelz(フランク:マインドコップ)
フランク・オズ/Frank Oz(デイヴ:マインドコップ)
フレア/Flea(Jake/ジェイク:マインドコップ)
ポーラ・パウンドストーン/Paula Poundstone(記憶消しのポーラ/Forgetter Paula)
ボビー・モナハン/Bobby Moynihan(記憶消しのボビー/Forgetter Bobby)
カーク・R・サッチャー/Kirk R. Thatcher(現場監督/Foreman:ライリーの記憶工場の長)
ジョン・ラッツェンバーガー/John Ratzenberger(フリッツ/Fritz:突貫工事の作業員)
サラユー・ブルー/Sarayu Blue(マーギー/Margie:工事作業員)
Raul Ceballos(作業員/Demo Day Workers)
ケンドール・コイン・スコフィール/Kendall Coyne Schofield(ホッケーのアナウンサー)
【吹き替え】
横溝菜帆(ライリー)
小清水亜美(ヨロコビ)
大竹しのぶ(カナシミ)
多部未華子(シンパイ)
小松由佳(ムカムカ)
落合弘治(ビビリ)
浦山迅(イカリ)
花澤香菜(イイナー)
坂本真綾(ダリィ)
村上(ハズカシ)
定岡小百合(ナツカシ&ママのイカリ)
清水理沙(ヴァレンティナ)
村中知(ロバーツ)
上原千果(グレイス)
淺岡和花(ブリー)
田中敦子(ママ)
花輪英司(パパ)
武内駿輔(ブルーフィー)
花江夏樹(ポーチー)
中村悠一(ランス・スラッシュブレード)
北村謙次(クライヒミツ)
辻親八(マインドポリス&フリッツ)
仲野椿(マインドポリス)
間宮康弘(作業員&パパのイカリ)
本間沙智子(マージー)
藤井雄太(ジェイク)
品田美穂(記憶消しのポーラ)
後藤光祐(記憶消しのボビー)
小林希唯(場内アナウンス)
■映画の舞台
アメリカ:カリフォルニア州
サンフランシスコ
ライリーの頭の中
■簡単なあらすじ
13歳になったライリーは高校入学を控えていた
親友のブリーとグレースと一緒にアイスホッケーのチームで活躍していたライリーは、ある日の試合にて、高校のホッケーチームのロバーツに声を掛けられた
ロバーツは3人のプレイに関心を持ち、3人をアイスホッケーのキャンプに招待することになった
チームには憧れの選手ヴァレンティーナがいて、彼女は気に入られようと良いところを見せようと考えていた
だが、彼女の頭の中では「思春期アラーム」が鳴り響き、これまでにはない感情が芽生えてしまう
ヨロコビたちも動揺し、遂には新しい感情たちに追い出されてしまった
そこからはシンパイが先走って計画を立て、ライリーらしからぬ行動を始めてしまう
ヨロコビたちはシンパイの野望を阻止しようとして、彼らが捨てた「元のライリーの樹」を戻そうと奮闘するのであう
テーマ:自己同一性矛盾
裏テーマ:全てがあって自分
■ひとこと感想
前作の『インサイド・ヘッド』の記憶がほとんど残っていないまま鑑賞
脳内で感情たちがせめぎ合っていて、喧嘩をしていたのなあというイメージだけ残っていました
本作は、思春期になったことで、新しい感情が生まれ、より複雑になっていく様子を描いていきます
13歳なので、身体的な変化もあって、それが精神に作用しているのですが、このあたりは完全スルーになっていましたね
それでも、共感できるのは女の子たちで、男の子にはイマイチピンと来ないところが多かったかも知れません
複雑化しているというよりは、正反対の感情が湧き出ていて、どちらかが正解かを選ばないといけないと思いがちなのですね
それがヨロコビというキャラクターで描かれていて、彼女自身が生粋の陽キャである所以になっていたように思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
色んな感情が入り乱れ、少し視界が広くなったことで起こる想像力があって、それが視野狭窄を生むという流れになっていました
高校に入ったら、一人ぼっちになってしまうと恐れてしまい、悪い想像を膨らましてはドツボにハマるという感じに描かれています
頭の中では、シンパイに支配され、他の感情は手出しできない感じになっていて、ヨロコビたちがそれを打開しようと奮闘していきます
思い出が球体になって、要らない記憶を遠くへと飛ばしていくのですが、そのゴミ捨て場が後半に活きてくるのは良かったと思います
ヨロコビが守ろうとしていた「私は良い子ツリー」は限界に近く、あのまま成長してもロクな人生にはなりません
でも、良い子を演じてきたからこその反動があって、ダリィが大活躍していましたね
あんな感じに「一言感想」になるのはあるあるだなあと思ってしまいました
■思春期に芽生える感情
本作は、ライリーの思春期を描いていて、環境が変わって起こる不安などから、短期的な将来設計を構築しようとする様子を描いていきます
これまでにも小学校に上がるなどの環境の変化があったはずですが、それを認知できる年になったとも言えますね
また、漠然とした将来像を考え始めるのですが、これは進路というものが現実的になったゆえに降りかかっている問題であると言えます
憧れの職業などがあったとして、それに対してリアルに考えられる時期になっていて、このままで良いのかを考えるようになります
これまでにも漠然とした心配事や憧憬、倦怠感、羞恥心などはありましたが、それらに言語化が追いつき始めていると言えるのでしょう
成長とともに感情が芽生えるのですが、これは言い換えると認知が始まるからだと考えられます
これまでに言語化できなかったものが言語化されるのですが、それは物事には「名前がある」ことを認知し、その語彙量が増えてくるからなのですね
なので、その増えてきたもの以外に遭遇すること、すなわち名前の無いもしくはわからないものに漠然とした不安を抱えるようになります
それは、親や教師が教えられるものと、教えられないものというものがあって、共通言語があっても、その中身は個別であるという事象が増えてくるからだと思います
同じ出来事が降りかかっても、それを楽しいと思える人もいれば、とても心配になる人もいる
この違いはそれぞれの性格に依るところが大きいのですが、それは幼少期の体験とそれに反応してきた自分というものが具体的になりつつある瞬間なのだと言えます
言い換えれば、思春期の揺らぎとは、ある単語における意味や解釈の幅ができることによって起こる、共通認識のズレ幅のようにも思えてきます
■成長によって、感情の対象が変化する
本作のライリーは、いわゆる第二性徴が終わり、思春期に入った瞬間を捉えていました
彼女には特別な異性がいるわけではなく、同性のヴァレンティーナに執着を持っていました
喜びや悲しみと言った感情は、当初は自分が対象になっていたものが、自分以外にも波及し始めています
ヴァレンティーナが悲しんでいれば自分も悲しくなると言った具合に、自分が執着を持っている対象の感情と連鎖するようになっていきます
そんな中、ライリーは対象との距離感に悩むようになり、同時にその距離感が生む空白地帯にも思い悩むようになります
ヴァレンティーナに嫌われたらどうしようとか、それによって友人との距離感が変わることを恐れていきます
彼女の中にいるシンパイは、それを誇張したような想像を巡らせて、最悪の展開を避けるためにどう行動すべきか、と言ったものを模索するようになっていました
これらの対人関係と感情の相関関係ができるのは、ライリーが社会生活を営み始めていることに繋がっているように思えます
思春期によって生まれた感情は、自分ごとだけではなく、他者との比較や接遇に対して起こるのものが多く、イイナーであるとか、ハズカシなどもその一環のように思えます
日本語でダリィと表現されている「Ennui」は「退屈」「倦怠感」などを指し示す言葉で、それが起こっているのも自分を一生懸命に見せないなどの対人的な所作であるように思えます
自分自身の内面の混乱などもそれらに拍車をかけますが、その内面が表層に出た場合に、自分がどう思われるかというものを判断基準においてしまいがちなのですね
ここで、シンパイなどに捉われない人は、自分の判断や行動に自信がある人で、ライリーはそこまで自分が確立していなかったと言えます
これは、ヨロコビが作り上げた「ライリーは良い人」という固定概念が影響していて、それは「良い人であること=ライリーとしてのアイデンティティ」として考えていたものだったことがわかります
そして、ライリーの中には相反する自己矛盾が生まれ、自分自身の固定概念をブラッシュアップするために抵抗が生まれます
そうした成長というものは、今後の人生でどう生きるかという部分に直結しているところがあるので、その予行演習を行なっている段階であると言えます
そう言った観点からも、成長によって起こる感情の変化は、内面だけの影響では生まれないと言えるのではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、ライリーが成長して、そこから大人になるまでの間の期間における混乱期を描いていました
映画では完全に無視されていますが、生理的な変化もあるし、幼少期に感じなかった性的な衝動というものも出現していると思います
このあたりを完全に排除している理由はわかりませんが、ノイズになると考えたのかな、と思います
外の世界にふれていく中で、何かしらの人生の目標がリアルになる年代で、そこには空想上の人物と恋をするとか、現実的にあり得ない夢想をするというものではなくなっています
あくまでも、ライリーの好きなホッケーを続ける上で、自分がどのような選手になりたいかとか、どんな仲間と過ごしたいのかなどを考えていくことになります
ライリーの中にあるシンパイは「彼女が孤立しないこと」を是として、そのために「これから希薄になるであろう中学時代の友人」を切り離し、新しい環境での自分の居場所を確立させようと考えます
でも、その行為はさらに自分の居場所を狭めるだけのもので、人間関係は単純な足し算や引き算では語れない部分があったと言えます
ヴァレンティーナたちがライリーをどのように見るかというのは、ライリーがグレースやブリーとどのように過ごしているかというところも見ていることになります
彼女の個人的なところだけではなく、彼女の社交的なサークルの濃度や大きさなどを見ていくことになり、それはチームとしてふさわしい人物であるかの試験のようにも思えます
ホッケーはチーム競技なので、仲良しではダメだけど、自分のことしか考えない人はさらにダメだと言えます
ゲームとプライベートは切り分けられるもののように思えますが、肝心な時に登場するのは普段の自分であり、それが如実にプレイとして現れるという残酷な面もあるように思います
実際のところ、ヴァレンティーナはそう言った分析的な人の見方をしておらず、最終的にはフィーリングが合うかどうかというところに重きを置くようになります
これは理屈では生まれない人間関係のようなもので、ライリーがグレイスやブリーと友だちになったのも、そう言ったものが合ったからだと思います
このなんとなくというものにしっかりとした理屈を欲しがる時期でもありますが、その答えというものが存在しないことに気づくのですね
それを越えたところにヴァレンティーナはいて、彼女から見たライリーは過去の自分のようでもあると思います
映画では、シンパイの暴走によって大変なことが起きているように描かれていますが、実際にはヨロコビが「良い人ライリー」に固執してきた過去が作り上げたものでした
この「良い人でありたい」ということと、「クライヒミツ」に隠されるような「悪い自分」というものがあって、それを見ずに生きていくのか、それも自分であると許容するのかによって、その後の人生というものが変わってきます
クライヒミツは自己同一性矛盾を溜め込んで肥大化する傾向があるので、その罠に陥らないためにも、ありのままの自分とは何かというものをフィーリングで掴んでいくことが大事なように思います
そうした先に、自分が心地よくいられる場所があって、その先になりたい自分というものが見つかるのでしょう
それが元から抱えたものと同じであるかとか、全く違うとかは問題ではなく、そう言った変化は巡るものだと考えられるようになると、シンパイというものは悪さをしないのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100829/review/04112215/
公式HP:
https://www.disney.co.jp/movie/insidehead2