■直感的説教系だが、視点が面白いので楽しめる内容でした
Contents
■オススメ度
TVシリーズのファンの人(★★★)
ミステリー映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.9.15(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2023年、日本、128分、G
ジャンル:遺産相続騒動に巻き込まれる天パの大学生を描いたミステリー映画
監督:松山博昭
脚本:相沢友子
原作:田村由美『ミステリと言う勿れ(2021年、小学館)』
キャスト:
菅田将暉(久能整:めんどくさい天パの大学生)
原菜乃華(狩集汐路:久能を巻き込む高校生、幸長の次男・弥の娘)
(幼少期:川田秋妃)
鈴木保奈美(狩集ななえ:汐路の母)
滝藤賢一(狩集弥:汐路の父、8年前の事故の運転手)
柴咲コウ(赤峰ゆら:専業主婦、幸長の長女)
野間口徹(赤峰一平:ゆらの夫)
秋山加奈(赤峰幸:ゆらの娘)
大鷹明良(ゆらの父)
?岩橋道子(ゆらの母、8年前に事故死)
町田啓太(狩集理紀之助:医学検査系の研究員、幸長の次男の息子)
蒲田哲(理紀之助の父、8年前に事故死)
?吉澤智美(理紀之助の母)
萩原利久(波々壁新音:口の悪いサラリーマン、幸長の次女の息子)
広瀬永幸(新智の父)
?福田美樹子(新智の母、8年前に事故死)
松坂慶子(鯉沼毬子:狩集家のお手伝い、いとこ)
ダンディ板野(宝田完次:毬子の弟、劇団の脚本家)
春風亭昇太(貴船裕二:劇団の主宰)
木場勝己(茶碗職人)
松嶋菜々子(君原奈津子:ストーンアクセサリーショップの店長)
でんでん(志波一巳:広島県警の刑事)
伊藤沙莉(風呂光聖子:大隣署の巡査)
尾上松也(池本優人:大隣署の巡査)
筒井道隆(青砥成昭::大隣署の警部)
松本若菜(鬼の集ダイジェスト映像の語り部)
永山瑛太(犬堂我路:久能を汐路に紹介する男)
角野卓造(真壁軍司:狩集家の顧問税理士)
段田安則(車坂義家:狩集家の顧問弁護士)
松下洸平(車坂朝晴:汐路の初恋の人、弁護士一家の倅、義家の孫)
佐々木望(アナウンサーの声)
■映画の舞台
広島県:広島市
ロケ地:
岡山県:倉敷市
旧野崎家住宅
https://maps.app.goo.gl/nucBto1BUvdQDhWM8?g_st=ic
EURO STAGE
https://maps.app.goo.gl/RFKYz5FgFbGNTx819?g_st=ic
広島県:広島市
広島県立美術館
https://maps.app.goo.gl/EEZf88rC91vyuDUM7?g_st=ic
広島県:廿日市
嚴島神社
https://maps.app.goo.gl/uobih98Kpbg95Epa7?g_st=ic
群馬県:歓楽郡
名勝 楽山園
https://maps.app.goo.gl/NGFYwPTbaJ71qtSq6?g_st=ic
神奈川県:横浜市
名勝 三渓園
https://maps.app.goo.gl/UwaPLJq3zmXve7rs8?g_st=ic
東京都:足立区
喫茶シルビア
https://maps.app.goo.gl/xyZvnMekKQExF5nZ6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
広島に旅行にきていた天パの大学生・久能整は、ある日突然、地元の高校生・狩集汐路に助けを求められてしまう
彼を知る犬堂我路から紹介されたという汐路は、実家の遺産相続で起きる不可思議な殺人事件の抑止のために、彼を参加させることになった
その日、狩集家では先代・幸長の遺言が発表される日になっていて、その遺言は狩集家と深い交流のある弁護士一族の車坂と、同じく縁の深い税理士一族の真壁によって発表される
その内容は、屋敷内にある4つの蔵が相続者にあてがわれ、謎を解いて、あるべきものをあるべきところに戻せという問いかけが書かれていた
そこで整は汐路が指名された蔵に出向き、そこで9体の人形を見つける
汐路は蔵の名前に使われている漢字に違和感を覚えていて、この人形も揃っていないと看過する
一方その頃、相続人である汐路の兄弟たちの蔵にも不可思議なものが見つかり、一同は深まる謎に囚われることになったのである
テーマ:持ち主と縁
裏テーマ:業の連鎖
■ひとこと感想
原作もドラマも全く観たことなかったので、本来ならばスルー案件なのですが、Tik Tokのショート動画にやたらと名セリフのシーンが流れまくっていた(違法アップロードだと思いますが)ので何となく内容はわかっていました
現在のドラマではかなり高視聴率のようで、パンフレット売り切れ案件と察したために、さっさと公開日に行くことになりました
物語は、広島を訪れていた整が事件に巻き込まれるというもので、その起点となる我路が何者かわからずに困惑してしまいました
あとは、エンドロールに伊藤沙莉の名前があって、どこに出てたっけ?と真剣に考えてしまいましたね
エンドロールの後にも次のドラマクールの予告みたいなものがあり、そこにTVシリーズの面々らしき人々が登場していましたね
映画としては、予告編の作りがうまいなあと感心させられる内容で、うまい具合に物語の核心を隠しながらミスリードをしていたと思います
本編はネタバレしない方が楽しめると思いますが、さすがにドラマ未視聴だとキツいと思うので、見返してから参戦した方が良いと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作のネタバレラインがどこかは難しいのですが、犬神家の一族のように遺産相続で殺し合うというのがミスリードでした、というところがラインなのかなと思います
意味深な蔵の名前とか、月を表す人形の存在などがうまく作り込まれていて、丁寧に推理を重ねている感じがしました
その速度が速すぎるでもなく、遅すぎるでもないというちょうど良いバランスになっています
物語としては、結構エグい内容になっていて、鬼の末裔にあたる誰かが発狂するんじゃないかとドキドキしてしまいました
犯人に関しては、冷静に観ていればわかる感じになっていて、親しいはずの人物を差し置いて、整がボディガードになっている時点で察することができると思います
一応、彼はあっち側の人間なので、謎解きには参加できないはずなのですが、要所要所で登場していたので、なんでジャッジ側の人間がずっと推理のそばにいるのかは不思議でしたね
初恋の人設定のようですが、そのあたりの関係性も不明瞭だったので、描ききれていない部分があるのかなと感じてしまいます
■論語の「九思」について
映画の中でさらっとふれられる『論語』の「九思」ですが、これは『論語』の中で登場する言葉が由来になっています
その内容は、「視思明、聴思聰、色思温、貌思恭、言思忠、事思敬、疑思問、忿思難、見得思義」という9つの思想のことを言います
「視思明=視るは明を思い」ということで「見るときはしっかりと見る」
「聴思聰=聴くは聰を思い」ということで「聞くことは漏らさずに聞く」
「色思温=色は温を思い」ということで「顔つきはいつも温和であろう」
「貌思恭」は「貌は恭を思い」ということで「容貌は上品で恭しくあろう」
「言思忠=言は忠を思い」ということで「言葉は忠実で行動に一致したものであろう」
「事思敬=事は敬を思い」ということで「仕事は慎重に手違いのないようにしよう」
「疑思問=疑いには問う思い」ということで「疑いが起きたら誰かに聞こう」
「忿思難=忿りには難を思い」ということで「腹が立ってそのまま行動に移したらどうなるかを考えよう」
「見得思義=得るを見ては義を思う」ということで「利得がありそうならば、道義に適うかを考えよう」
このような感じの意味になっています
映画では、この中で「義」だけが使われていなくて、「道義には適っていない」と先祖も考えていた、という意味に使われていました
『論語』における「九思」は、より良い人間になろうという意味で考えられた指針であり、これらはバラバラでは意味をなしません
「義」が足りないというのは上記の意味になりますが、先祖の思想として、4つの蔵にバラバラに配置されているものを「一緒にせよ」という意味がありました
それは、孫4人が力を合わせて九思の思想に辿り着き、そして「足りていない義」を重んじることで、より良い人間に生まれ変わりなさいというメッセージが込められていたのだと思います
■整の思考の先にあるもの
本作は、推理ものというよりは「各所で起きる疑問に対して久能が物申す」という物語になっています
その思想の多くは作者の意向であり、本作の中で特徴的なのは「女とはかくあるべし」というゆらと彼女の父との間に割って入ったシーンだったと思います
ゆらは久能の言葉を聞いて、母親であることの意味を追求し、そして娘も天パであることに気づきます
それは自分が犠牲者になることよりももっと根深いもので、歴史は例外がないことを物語っていました
原作は未読で、テレビドラマも見たことがないのですが、TikTokなどを眺めていると、久能の論破?シーンみたいなものがたくさん切り取られていたのですね
説教系のドラマだと感じていて、世の中のおかしなことに対して、真っ直ぐに物申す系なのかなと感じていました
映画は、一応謎解きの要素があったのですが、事件解決よりももっと大事なことを主眼に置いていたように思えます
彼の思考の根源に関しては原作未読なのでわかりませんが、彼自身は引っ掛かりのあることに対して直感的に反射しているようにも思えます
熟考しているふうに思えるのですが、熟考は時に屁理屈を生み出し、純粋な議論から逸れてしまうことがあります
なので、直感的におかしいと思うことの理由探しはほどほどにして、第一段階で言葉になるものを重要視しているのかなと感じました
彼の語りは基本的に「結論が先で理由が後」という印象があって、引っ掛かりのある言葉が先に出てフックになっている印象があります
久能がそう考えて発言する理由は自分側にはないことが多いように思います
その発言で自分が変わるのではなく、相手が共感したり、発見をしたりする
でも、その変化を期待していっているわけではなくて、彼自身が他人から言われたいからなのかなと感じました
今は彼が話す番ではありますが、きっと話す以上に聞くことの方が好きだったりするのかもしれません
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
基本的にテレビの延長線は観ない主義なのですが、稀にルールを逸脱して鑑賞対象にすることがあります
その場合は「連続的でない」というものがって、そのルールすら破ったのは『鬼滅の刃』ぐらいだったと思います
テレビドラマどころかTV自体をほとんど観ないのですが、テレビ自体は時計がわりにつけていたりします
最近の情報系の番組は「音声消しても内容がわかる」ので、垂れ流しつつ、フックがある情報だけ眺めるという感じになっています
テレビドラマをあまり観ないのは特に理由がないのですが、総視聴時間が長くなるからというのが最大要因だと思います
1クール12話として、60分枠でも実際には40分もありません
それでも480分(8時間)取られてしまうので、集中して観るのには現時点ではハードルが高いのですね
最後まで通して観た記憶があるのは『SP』と『ゲゲゲの女房』ぐらいで、録画してまで観たのは『外事警察』ぐらいでした
映画から入ってドラマを見るということもほとんどなくて、『コンフィデンスマンJP』は映画は全部観ているけど、ドラマはひとつも観ていなかったりします
ドラマなどの映画化は「ある程度の観客収入が見込める」というものがあるので、個人的には全く否定していません
テレビしか観ない習慣の人を映画館に呼ぶという意味合いでは映画業界の発展に繋がっていると思うので効果的であると思います
それでもテレビドラマの映画化というのは、突き詰めるとかなりお金がかかってしまうので、費用対効果が高いのかはなんとも言えない感じになっています
1本のドラマを作るのにどれだけの費用が掛かるのかは分かりませんが、本作の場合だと13話分の費用が映画に乗っかっていることになるのでしょう
テレビドラマと映画の収益構造が違うので一概には言えませんが、ドラマ制作費を込めてペイできるラインってどのくらいなんでしょうねえ
ドラマ12話(本編のみ)で8時間だと、映画4本分相当になると思うのですが、さらっとググった感じだと、1話あたり4000万円くらいかかるそうですね
となると、スペシャルも入れた13話で5億円強ですか
それはそれで凄い世界ではありますが、どんなドラマもタダではない(企業広告費として観ない人も払っている)ので、ビジネスモデルとしては回っているのだと思います(知らんけど)
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP: