■結局のところ、ミステリアスなイケメンが最強っていうのがFAのようですね
Contents
■オススメ度
エロい映画に興味のある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2025.1.10(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:Emmanuelle
情報:2024年、フランス、105分、R15+
ジャンル:ホテルの調査員が謎の男に振り回される様子を描いたエロティックサスペンス
監督:オドレイ・ディワン
脚本:オドレイ・ディワン&レベッカ・ズロトブスキ
原作:エマニエル・アルサン『エマニュエル夫人』
Amazon Link(原作:日本語訳)→ https://amzn.to/4jeaGbh
キャスト:
ノエミ・メルラン/Noémie Merlant(エマニュエル・アルノー/Emmanuelle:ホテル査察の調査員、ホテルの品質管理担当者)
ウィル・シャープ/Will Sharpe(ケイ・シノハラ/Kei Shinohara:ホテルで寝ない利用客)
ジェイミー・キャンベル・バウアー/Jamie Campbell Bower(サー・ジョン/Sir John:ホテルの利用客、プロデューサー)
チャチャ・ホアン/Chacha Huang(ゼルダ/Zelda:ホテルで男を漁る利用客、自称英文生)
King Lok Cheng(ゼルダのセフレ)
アンソニー・ウォン/Anthony Chau-Sang Wong(アイ/The Eye:ホテルの監視人)
ナオミ・ワッツ/Naomi Watts(マーゴット・パーソン/Margot Parson:ホテルの支配人)
Adam Pak(バオ氏/Mr. Bao:パーソナルマネージャー)
Geoff Wong(顧客満足度調査員)
Fefe Tse(F&Bマネージャー)
Olivier Ho Hio Hen(テクニカルマネージャー)
Alexander Terentyev(エマニュエルの上司の声)
Carole Franck(エマニュエルの母の声)
Hu Kai(ホテルで式を上げる若い新郎)
Andrea Dolente(エマニュエルと絡むバーの男性客)
Naama Preis(エマニュエルと絡むバーの女性客)
Harrison Arevalo(飛行機の男性客)
Marguerite Dabrin(客室乗務員)
Simon Yin(ヘッドコンシェルジェ)
Isabella Wei(ジュニアコンシェルジェ)
Tim Lo(ナイトコンシェルジェ)
Zariyah Tang(プールのウェイトレス)
Sean Li(エレベーターの従業員)
Marc Ngan(ホテルのボーイ)
Donovan Chan(ホテルの覗き見ボーイ)
Emanuele Carfora(ウェイター)
Hugh Tran(レストランのウェイター)
Adrienne Lau(レストランのオーナー)
Sofie Royer(バーのシンガー)
Txomin Vergez(ゼルダと一緒に踊るバーの男)
Che-Kwong Wong(タクシーの運転手)
Soko Izumi(重慶の商店街の男)
Wai-Chuen So(重慶の商店街の男)
Juliana Wong(重慶の商店街の女)
Jara Ezo(「Fenwick」を知る路上の男)
Freddy Djanabia(「Fenwick」を知る路上の男)
Angus Chan(「Fenwick」のマネージャー)
Jabulani Gambu(「African Bar」のマネージャー)
Kochun Tse(エマニュエルを気にいる男)
■映画の舞台
中国:香港
ローズ・フィールドパレス香港
ロケ地:
フランス:パリ
中国:香港
■簡単なあらすじ
ホテルの品質調査員のエマニュエルは、本部からの指令にて、香港に視察に訪れていた
そこはマーゴが支配人を務めていたが、本部は彼女を評価しておらず、何かしらの理由を求めていた
エマニュエルはホテルの客のふりをしながらくまなく調査するものの、これと言ったポイントは見つからなかった
ある日のこと、エマニュエルはホテルの利用客の中に、飛行機での行きずりを目撃していた男を見つける
彼はホテルの有名な利用客で、2701号室を借りるものの、そこで寝泊まりすることはなかった
興味を持ったエマニュエルは彼に近づくものの、全くと言って良いほどに情報は得られなかった
そんな折、エマニュエルはホテルの利用客の中で売春行為をしている女の存在に気づく
支配人もその女を黙認しているようで、エマニュエルは興味本位で彼女に近づいていく
そして、英文生のふりをしながら男を漁る彼女といるうちに、次第に特殊な欲望が顔を覗かせていくのである
テーマ:欲望を肯定するもの
裏テーマ:絶頂を誘引するもの
■ひとこと感想
1974年の『エマニエル夫人』の現代版リブートになるのだと思いますが、若妻設定がなくなっている感じに見えるので、別物のような印象がありました
怪しい世界に足を踏み入れて、自分の欲望を探すというプロットは同じだと思いますが、夫人ではないので背徳感が薄れてしまっているように思います
実際には夫がいる身なのかはわからないのですが、当初は指輪をつけておらず、重慶の怪しい街に入ってから、目印の指輪を嵌められていたように思います
映画は、冒頭から機内セックスが始まり、その後はボーイが覗いているところでヘアーの処理をしたりと、支配人がいる「客の好みを考慮する」という意味深な言葉もありました
そんな中、機内セックスの一部始終を見ていた謎の男に惹かれるようになり、それがホテルの客であるところからエスカレートしていきます
物語としての面白さはありませんが、とにかくエロ要素満載で、ちょっと気まずくなるくらいには爆発しているように思います
それでも展開がかなりダルいので、映画として面白いかと言われれば何とも言えない部分がありましたねえ
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
『燃ゆる女の肖像』のナオミ・メルランがエマニュエルを演じるという時点で、とことんやるんだろうなあと思ってはいました
朝の回なのであまり人はいませんでしたが、年配の女性も結構いたので、オリジナルを知っている人が比較しに来たのかなと思ってしまいました
映画は、ある女性の底知れぬ欲望がどこまで昇華するのかを眺める作品になっていて、最終的には「道具(男)」を介してセックスをするというところまで行き着きます
頭の中ではケイとセックスをしていて、その精神構造が絶頂を導くという流れになっていました
直接ふれることを禁忌としている縛りプレイのようなもので、セックスの相手を別人に置き換えているというとても失礼な行為になっていると言えます
でも、とにかく展開がダルく、登場人物の関係性を把握するのに困る作品でしたね
謎の店「フェンウィック」を知るバスタブの男は何のために出てきたのかわからないし、商店街の人たちはあからさまに店の話題を避けていきます
そんな中で二人組が声を掛けて店に連れていくのですが、バスタブの男が言ってるイメージとは全く違うところで笑ってしまいました
オリジナルと比較する意味はほとんどないと思いますが、リスクの先にしか絶頂がないというのは、ある意味で哀れなのかな、と感じてしまいました
■オリジナルについて
本作は、1974年に公開された「Emmaunuelle(邦題:エマニュエル夫人)」のリメイク作品で、ジャスト・ジャカンが監督を務め、主演はシルヴィア・クリステルでした
この映画の原作にあたるのがエマニュエル・アルサンの同名小説ですが、実際には彼女の夫が書いたとされています
1974年に公開され、世界的に大ヒットとなった本作は、ポルノ規制が緩和されつつあった時期に「芸術的映像と官能描写を融合させた先駆的作品」という評価がされていました
あらすじは、タイのバンコクで、若いフランス人女性のエマニュエルは外交官の夫ジャンを訪ねて、その地を訪れるところから始まります
夫婦は自由恋愛を公認し合う関係だったため、エマニュエルは現地で様々な男女と交流し、性的冒険を通して、自身の欲求とアイデンティティを追求していきます
年上女性のマリーン、魅力的な男性マリオたちとの出会いと性愛の多様さの中で、快楽と精神的な結合というものを模索していきました
最終的にエマニュエルは「性的丐幇は自己の内面の解放でもある」という結論に達するという内容になっています
2004年版では「夫人」ではないのですが、リメイク元も夫人とは言え夫婦ともに自由恋愛OKという立場だったのですね
なので「背徳」という部分はほとんどなく、単にセックスを通じて自分を知るという部分の強調のために夫人設定を無くしているように思えます
さらに2004年版のエマニュエルは仕事ができる女性として描かれ、その中でセックスを通じて自己解放というものを目指していきます
ある意味、仕事が自己解放を妨げているという仮定があるようにも思います
■欲望の果てにあるもの
本作は、性欲を解放するエマニュエルを描いていて、そこに自己解放があるように描かれています
一般的に、欲望を追求した先には「自己理解と解放」「満足と虚無」「価値観の変容」などがあるとされています
エマニュエルの場合は「自分が本当に何を求めていたのか知る」という効能があり、それが自己解放であると考えていました
それ故に「単に性欲を満たした後にくる満足とか虚無感(賢者タイム)」みたいなものはなかったように思います
本作のエマニュエルは「ホテルの査察人」として、支配人のマーゴットのアラを探すという仕事を請け負っていて、それが自分の評価になるという設定がありました
いわゆる「企業にとっての価値のために個人を貶める」という任務を背負うのですが、その仕事に自己実現とか研鑽があるとは思えません
それ以上に魅力的な人々が客として登場し、特にエンジニアのケイとの関係を深めていくことになります
マーゴットとの対面では「仕事人としての自分」というものが見えてきますが、ケイを通じて見る自分というのは「自分が知らなかった自分」であるとも言えます
マーゴットに見える自分には価値を見出せないけど、ケイに見える自分は果てしない
そう考えた時にエマニュエルは深淵を覗くという決断をしていました
ゆきずりの男などを含めて様々なキャラが登場しますが、その中でエマニュエルに刺激を与えることができたのはケイだけだったのですね
それは初見のダムの上での佇まいのシーンに始まって、「エマニュエルの方が興味を持ったから」というマインドに他なりません
言うなれば、自己を解放するに至るのはエマニュエルに対する興味の視点ではないのですね
それは、視線そのものが「今のエマニュエルに対して興味を持っている」という固定的な視点になっているからであると考えられます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、性的な探究の果てに快楽を見出すエマニュエルが描かれていますが、結局のところ即物的なものが脳内刺激より勝るという感じに結ばれていました
脳内でどんなに満たしても、物理的刺激に反応する体というものは正直で、その物理的刺激に精神的刺激を加味することが至上のように思えてしまいます
これはわざわざ映画にするほどのものなのかは何とも言えない部分があり、世の中で起こる自慰的行為のほとんどがこれに該当すると思います
上級者は物理的刺激を必要としないと言いますが、それはもう達人レベルのもので、チャレンジしようとした猛者もいるのではないでしょうか
とは言え、その方法は「ドライ・オーガズム」「マインド・オーガズム」と呼ばれるもので、精神的もしくは感覚的なプロセスのみで性的快感や絶頂を得るものとされています
その中でも「イメージ・オーガズム」は「脳内にストーリーテリングを用いる」という手法となっていて、想像上の刺激にリアルをどこまで加味できるかというところが要所となっています
熟練すると、筋肉の緊張、呼吸法などを併せて達成できるとされています
他にも呼吸法や瞑想を使う方法では、呼吸とイメージを組み合わせることによって、エネルギーの体内循環感覚を促したりします
また、エロティック・ヒプノシスでは催眠的な療法となっていて、自己暗示から音声ガイドなどを使用する方法となっています
これらは「脳の快楽中枢(側坐核、視床下部)は想像でも活性化する」というメカニズムがあり、視覚・聴覚・触覚のイメージを重ねることで交感神経と副交感神経のバランスを変化させ、それによって性的反応が得られると言われています
映画では、アフリカンバーに行ったエマニュエルがそこにいた男を使ってケイとセックスをするという展開になりますが、この男は「物理的刺激」であり、それがないとエマニュエルはオーガズムには達することができていません
とは言え、その行為に至ったというところが本作のメインテーマとなっていて、それは「相手の興味と自分の興味が交わることで快楽が増す」ということなのだと思います
アフリカンバーの男も機内の男もエマニュエルに好意を持っていたり興味を抱いたりしますが、彼女の方は道具以上だとは思っていないのでしょう
でも、ケイを想像するに至った時、そこにはエマニュエル自身の想像力の解放というものが生まれ、さらなる深淵へと向かっていきます
そして、そのためにはケイへの興味というものが必要となってきます
これらの展開を考えると、エマニュエル自身の性的な刺激を高めるのは、自身が興味を持ち、且つその想像力を超える魅力を持つ相手がいないとダメということになると思います
即物的に欲求が見える相手はダメで、それがありつつも全ては見せていない存在
それこそが自分自身を更なるステージに上げて行くのでしょう
この内容を映画で描く価値があるのかは分かりませんが、かなり高度なプレイの実践を見ているようなので、一般ウケはしないのは無理もないなあと思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/102495/review/04650736/
公式HP:
https://gaga.ne.jp/emmanuelle/
 
                                    






