■コメディ映画としての面白さはあるけれど、ホラー映画としての怖さは皆無でしたね


■オススメ度

 

ジャパンホラーはとりあえず観る人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.9.9(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報2023年、日本、100分、PG12

ジャンル:事故死した妻を復活させようとする息子を描いたホラー映画

 

監督中田秀夫

脚本杉原憲明

原作清水カルマ『禁じられた遊び(2019年、ディアスカヴァー・トゥエンティーワン)

 

キャスト:

橋本環奈(倉沢比呂子:フリーのWEB動画ディレクター、直人の元同僚)

重岡大毅(伊原直人:妻を亡くした夫、会社員)

正垣湊都(伊原春翔:母を甦らそうとする息子)

ファーストサマーウイカ(伊原美雪:事故死した直人の妻)

 (幼少期:金恒那

 

堀田真由(平丘麻耶:比呂子の元同僚、直人の同僚)

新納慎也(川崎:比呂子の元上司)

 

倉悠貴(柏原亮次:比呂子の仕事仲間、霊能番組「霊能ファイル」のディレクター)

玉城泰拙(「霊能ファイル」のホスト)

宮原享奈緒(「霊能ファイル」のホスト)

 

長谷川忍(大門謙信:亮次の番組に出演する霊媒師)

猪塚健太(黒崎邦明:謙信の弟子)

 

MEGUMI(野田修子:修道院「ひかりの家」の院長)

服部ニコ(果歩:修道院の生徒)

 

清水ミチコ(村田サチ:失踪した夫を探す女性)

諏訪太朗(失踪したサチの夫)

 

宮田早苗(直人の母?)

 


■映画の舞台

 

日本のどこかの地方都市

 

ロケ地:

群馬県:東吾妻町&桐生市

 

A Gattan

https://maps.app.goo.gl/Y6BmUNudLHS74NuB8?g_st=ic

 

千葉県:旭市

国保旭中央病院

https://maps.app.goo.gl/kRsw6WGK49ReSAcH9?g_st=ic

 

神奈川県:横浜市

メモワール藤が丘

https://maps.app.goo.gl/ih6vpGkKiymawz6N8?g_st=ic

 

神奈川県:相模原市

LADY-X

https://maps.app.goo.gl/BbaqcTAweKrRCoZh6?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

会社員の夫・直人との間に息子・春翔を授かった美雪は、ガーデニングを趣味に持つ理想的な母だったが、執念深く不思議な力を持っていた

新築に住み始めて、幸福の絶頂にいたものの、直人は美雪の囁き「私を裏切らなないで」という言葉に背筋を凍らせた

 

いつものように出社した直人だったが、急遽警察より連絡が入る

それは、美雪と春翔が事故に遭ったというもので、美雪は無惨な姿で死に、春翔は心肺停止の状態に陥ってしまう

医師から臨終を告げられた直人だったが、その直後病院に雷が落ち、それによって停電が起き、春翔の心臓は動き始めた

 

一方その頃、直人の元同僚で今はWEB動画デイレクターの比呂子は、霊能力番組の手伝いをさせられていた

霊媒師の大門のロケのカメラマンとして同行した比呂子だったが、彼女は大門を胡散臭いと思っていた

だが、番組ディレクターの柏原は能力は本物だと言い、大門は「厄介な霊がついている」と比呂子に忠告を入れる

比呂子は霊の存在を否定するものの、周囲でおかしなことが起こり始めるのである

 

テーマ:執着の連鎖

裏テーマ:執着の対象

 


■ひとこと感想

 

橋下環奈とジャニーズが主演で、ホラー映画の巨匠がメガホンを取るという映画ですが、たぶんアカンのではないかなと思ってハードルを下げて鑑賞することになりました

幽霊&怨念系かと思っていましたが、まさかの実物が登場するという流れになっていました

 

胡散臭い霊能力者が登場し、ギャグのような展開を迎えていくのですが、怖さというのは微塵も感じません

一番怖かったのが、映画が始まった後の制作や配給の紹介のところで「一瞬だけ美雪の映像が見えたこと」でしたね

どれぐらいの人が気付いたのかわかりませんが、1コマぐらいの瞬間芸だったように思います

 

物語は、後半に怒涛の展開を迎えますが、不要なエピソードもたくさんある感じでしたね

美雪は直人を失いたくないのですが、恋人への執着が生まれるに至った経緯が不明でしたね

色んなエピソードはあるのに、そこを描かないのは意味がわからず、単に近づいてくるものを排除するだけの野生の獣みたいになっていました

 

一応、ホラー映画のカテゴリーだと思うのですが、個人的には「橋下環奈の変顔を堪能するコメディ映画だった」と感じました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

美雪のルーツに能力ありという流れになっていますが、親から子どもに遺伝する能力をいうのはそこまでのサプライズではありません

霊媒師のセリフが伏線になっていましたが、冒頭の春翔復活のシーンからして無茶な流れになっていて、もう少しどうにかならなかったのかと思ってしまいます

 

個人的にはファーストサマーウイカを観に行ったので概ね満足ですが、目が笑っていない系の良妻賢母って本当に怖いものだなと思います

指を埋めたらという流れに前に、棺桶を開けて遺体の指を切り落としている息子が異常すぎて、その時点で犯人?がわかってしまいます

事故死した美雪の魂が雷によって春翔の体に漂着したということになると思いますが、そのあたりの設定に対する考察はスルーされたままだったのは微妙でしたね

 

息子が黒幕!という感じにサプライズ感を持たせたかったと思うのですが、判明した時も「そりゃそうでしょ感」がすごかったですね

ビジュアルはほとんどCGみたいだし、元々ホラー顔(失礼!)のファーストサマーウイカを起用しているので、配役によって何とかホラーの形になっているという感じになっていました

 


エロイムエッサイムとは何か

 

劇中で霊媒師が唱える「エロイムエッサイム(Eloim Essaim)」はヘブライ語の「אֱלֹהִים」とラテン語由来の「exāmen」が合わさったもので、「神様、どうかお願いします」という意味になります

「エロイム」は「神」を表し、「エッサイム」は「群れ」という意味があり、あわせて「神様」という意味になるとされています

日本では『悪魔くん』というアニメで有名になった呪文で、この際には「悪魔を呼び出す呪文」として登場しています

また、山田風太郎の『魔界転生』という小説でも登場しています

 

これらの悪魔召喚の呪文として使われるようになったのは、グリモワールGrimoire)と呼ばれるフランス語で書かれた魔術の書物が由来となっています

グリモワールは、魔法の教科として有名で、さまざまな魔法に関する呪文やアイテム何ついての説明があり、その実践方法についても書かれています

この中にある呪文として、「Eloim, Essaim, et appellvai」というものがあり、日本語訳だと「神様お願い、私は求め訴えます」みたいな意味になります

これは「グリモワール」の中の「Black Pullet(La Poule Noire)」という章に記載されているものでした

 

直人が思いつきで教えたデタラメな呪文という感じになっていますが、実際には意味が通じる言葉になっていて、それによって本当の魔術が召喚されたみたいな事になっていますね

このあたりは魔法系のアニメとか作品が好きな人ならば、一度は調べたことがあるのではないでしょうか

映画がそこまで考えられて作っているのかはわかりませんが、偶然にも春翔の願いを実現できる呪文になっていたのは驚きを隠せません

 


勝手にスクリプトドクター

 

映画では、落雷によって死んだ春翔が生き返り、その際に母・美雪の怨念のようなものが棲みついたようになっていて、それがきっかけで春翔に遺伝した能力が覚醒するという事になっていました

春翔のその後の行動を考えると、美雪が操っているか乗り移っていないと整合性がないのですが、物語としては、遺伝によって能力が覚醒したようにしか描かれていません

春翔は母の意思と執着を引き継いでいて、父に近づくものを排除しようと目論見ます

映画内では「美雪が主体となって目標を攻撃している」というように見せているので、実は春翔の仕業でしたというネタバレはほとんど効果がないように思えます

 

春翔の欲求は母を蘇らせたいというもので、それによって「母の指を切断して土に埋める」という異常行動を起こしています

遺体の損傷が激しいという事になっていましたが、その時点の描写では「指は繋がっていた」ので、春翔が棺桶を開けて、自らが指を切断した、という事になります

この時点で春翔の異常行動はピークになっていて、この気持ち悪さをスルーしている父の方が気持ち悪いという構造になっています

動物の死骸を埋めて祈るまでは許容できても、それはお墓を作るという行為に似ているからですね

でも、事故死した母の指を切断して埋めるという行為は、通常では考えられず、それを容認する大人がいるとは思えません

せめて、遺骨を埋めるとかならまだ理解の範疇なのですが、それだと生き返れないのだと考えられます

 

この時点で春翔も直人もおかしいのですが、それが美雪が死亡したショックで片付けられないのが難点でしょう

でも、異常さを春翔だけに置き換える必要があるので、指を埋めるという行為は「春翔以外は知らない」というのが理想的です

葬式を終えて、納骨になった段階で指がないことを気づかせるという演出が必要で、それに直人が違和感を持っているぐらいでちょうど良い感じになります

 

黒幕が春翔自身か美雪の怨念かは微妙なところになりますが、「一度死んだ人間が怖い」というテーマがあるので、春翔自身が黒幕で良いと思います

となると、春翔自身が比呂子を攻撃する必要性が出てくるのですが、それは「葬式の現場に比呂子がきた」という起因と、その時に「直人から感じた違和感」を春翔が察知したというもので良いでしょう

その違和感は「かつて想いが通じていた過去が想起されたもの」で、その想いを春翔は裏切りだと感じるのですね

でも、彼の目的は元の生活に戻すことなので、直人を攻撃することはしません

その抑圧が比呂子に集中するという流れになるので、ものすごく理不尽な攻撃に晒され続けている、ということになります

 

春翔の中で、比呂子の存在が「元の家族に戻るための障壁になる」という前提が必要で、それを誤解する流れを見せていく必要があります

不謹慎ながらも、葬式後にプライベートで会うシーンが増えるとか、こまめに連絡を取り合うということを春翔が目撃する流れになっていて、それを裏切りであると勘違いする

そして、その行為を止めさせるために、比呂子を消すという短絡さが生まれてくるのですね

これを美雪の怨念だと勘違いするのが比呂子側で、それと同じ流れを観客にも見せつつ、そのロジックに無理はないかという違和感を同時に与えていく事になります

 

映画では、「一度死んで生き返る」というのを美雪の蘇生に集中させ、実はもう一人いるやんという流れになるのですが、それ自体はうまい流れだったと思います

なので、美雪の代わりに比呂子がなってしまうのでは、という懸念を春翔が持っているという描写を挿入することで、後半のどんでん返しがさらに強烈なものになると考えられます

比呂子は美雪の代わりなろうとは考えていなかったけど、直人の方には少しだけそれが芽生えつつある

そうして、春翔を止めるために直人が手を下し、親子ともども死んでしまうという流れが理想的だったのかな、と感じました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画はJホラーの系譜にあるもので、今回は残留思念が具現化するというテイストで描かれていました

美雪VS霊媒師のラストバトルにはならないのですが、それは美雪自身がカラクリ人形でしかなかったからなのですね

カラクリ人形には相手を殲滅する魔力などはなく、いわば美雪の体や五感を春翔が共有して、遠隔的に誰かを操っていたという事になっています

 

実質的な主人公は春翔で、その敵対者が比呂子という構造になっていて、春翔のメンターおよび贈与者が美雪になっていました

でも映画はダブル主演の構造になっているので、比呂子と直人が主人公という扱いになります

あまりにも直人の存在理由が軽すぎて、せめて最後ぐらいは見せ場があってもよかったのにと思ってしまいます

比呂子には美雪と春翔の真実を暴くという役割がありますが、直人はただ騒動に巻き込まれるだけで、彼の嘘が起点となっているのに罰を受けたという感じにはなっていません

一応は春翔を失って廃人のようになっているのですが、直人自身が悪魔の家系を根絶するために戦っても良かったのではないかと思います

 

比呂子と倉沢の関係もありそうでなさそうだし、美雪の誤解を解くために「実は倉沢を想っている」みたいな展開があるかと思いましたがそんなことはなかったですね

倉沢の方も特段、比呂子に対して特別な感情があるようには描写されていなかったのですが、あったほうが美雪の執着の異常性が描けたように思います

今は別のパートナーがいるのに襲われる方が理不尽で、むしろ妻が死んだ喪失感を比呂子で埋めようとした直人みたいなドロドロした展開の方がキツかったかもしれません

 

春翔は美雪から能力を引き継いだので、直人がいようがいまいが関係ありません

今後は春翔自身が自分の血を引き継ぐものを作るために相手を探していくことになると思うので、春翔が直人を殺して怒りを鎮め、孤児院かどこかで相手探しを始めるというのもありでしょう

その孤児院が母と同じ孤児院というのがベタですが効果的ですよね

修道院長の引き攣った顔で物語を締めるというのも悪くなかったかもしれません

 


■関連リンク

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公式HP:

https://kinjirareta-asobi.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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