■「解ける」と書いて「ほつれる」と読むように、手順さえ間違えなければ、いずれは解消されいくもの


■オススメ度

 

緊迫した会話劇が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日2023.9.13(MOVIX京都)


■映画情報

 

情報2023年、日本、84分、G

ジャンル:破綻した夫婦の終局を描いたヒューマンドラマ

 

監督&脚本加藤拓也

 

キャスト:

門脇麦(綿子:裕福な生活を送る不倫妻)

田村健太郎(文則:綿子の夫)

 

黒木華(英梨:綿子の友人)

 

染谷将太(木村:綿子の不倫相手)

古舘寛治(哲也:木村の父)

安藤聖(依子:木村の妻)

 

佐藤ケイ(中田:道の駅の店員)

金子岳憲(原田:旅館の受付)

秋元龍太朗(笹井:靴屋の店員)

安川まり(救急センターの声)

 


■映画の舞台

 

東京某所

 

山梨某所

 

ロケ地:

千葉県:柏市

道の駅 しょうなん

https://maps.app.goo.gl/SCd6qYPsAkYNvbwK8?g_st=ic

 

東京都:銀座区

42ND ROYAL HIGH LAND(靴屋)

https://maps.app.goo.gl/r2CJgKbfQhSdJeqw6?g_st=ic

 

山梨県:山梨市

川浦温泉 山県館

https://maps.app.goo.gl/DXzhoWtN9T17qQbYA?g_st=ic

 

東京都:あきるの市

西多摩霊園

https://maps.app.goo.gl/ejiZn96EHRp1E4t78?g_st=ic

 

東京都:大田区

HICITy(空港)

https://maps.app.goo.gl/mkvQ1uY13feRM4ZR6?g_st=ic

 

東京都:港区

SHAKE SHACK 外苑いちょう並木店

https://maps.app.goo.gl/pvgThUdp3twKT7qR7?g_st=ic

 

千葉県:いすみ市

ISUMI Glamping Resort&Sports

https://maps.app.goo.gl/2PcceNTajRedAhTc9?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

裕福な家庭で専業主婦をしている綿子は、夫・文則には内緒で木村と不倫関係にあった

夫婦仲は冷え切り、文則にも不倫疑惑があり、元妻との間の子どもに会いにいくふりをしながら関係を続けていると感じている

 

ある日、木村とグランピングに出かけた綿子は、そこで彼からペアリングを渡される

「お返しは期待しないで」と言う綿子は、帰宅途上でそれを財布にしまい込んだ

 

夫からの電話が入り、適当に相槌を打っていると、背後で大きな物音がした

それは木村が事故に巻き込まれたことを知らせる音で、綿子は慌てて救急コールをするものの、一緒にいたことがバレるのを恐れて電話を途中で切ってしまった

 

文則からの話も上の空で眠り込む綿子

そして翌日、友人の英梨から木村が死んだことを知らされる

夫の手前上、葬式にも顔を出さなかった綿子だったが、何を思ったのか、英梨に頼み込んで墓入り前の墓地を訪れてしまう

そして、そこで綿子たちは、木村の父に遭遇することになったのである

 

テーマ:綻びとほつれ

裏テーマ:静かなる責苦

 


■ひとこと感想

 

門脇麦が出演していること以外は何も知らない状態で鑑賞

不機嫌で、不幸そうなポスタービジュアルだったので、明るい話ではないのだろうと思っていました

 

冒頭から、いきなり夫婦の楽しい系と思っていたら、実は不倫関係で、相手が事故死をすると言う展開になっていて、これどうなるの感というものがすごかったですね

不倫は強制終了したけれど、永遠に隠さなければならないものとして残り続ける

また、夫・文則のヒット&アウェイの攻撃が絶妙で、相手がボロを出すのをじっと待っている執拗さというものがありました

 

映画は、夫婦の破綻の流れを追ったドキュメンタリーのようになっていて、綿子の何も考えていない行動が状況を悪化させていく様子を切り取っていきました

その過程が綿密で、誘導尋問に乗らずに話題を逸らしていくところが狡猾で、それを見透かせて文則の追尾ミサイルが飛んでいく様はホラーにしか思えませんでした

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

ほとんど出オチのような不倫相手の死から始まる物語で、不在がもたらす焦燥、自分を守らなければ助けられたのではないかという後悔が渦巻く苦悩が描かれていました

夫婦関係は家庭内別居状態で、こういう状況になっているのは良くないよね、なんとかしたいよね、と詰め寄る夫は異常に見えて、とても怖い感じに仕上がっていました

これはもう、助演男優賞ものの素晴らしい気持ち悪さだったと思います

 

映画は、ほぼ無音に近い自然音中心の演出で、エンドロールもほぼ無音となっていましたね

タイトルは「ほつれる」ですが、この気持ち悪い状態を修復できるのか、なかったことにするかのように引きちぎるのか、という流れになっていました

後半はどっちが引きちぎるんだろうというパワーゲームになっていて、ここまで来ると告白した方が負けみたいな戦いになっていました

 

口火を切ったのは綿子ですが、マウントを取ろうとした文則をあっさりと交わして、逆マウントを取ることになったのはうまい返しでしたね

まんまと罠にハマった感じになっていて、文則には勝ち目がないなあと思ってしまいました

 


破綻のパワーゲーム

 

本作は、W不倫状態にある冷め切った夫婦の破綻を描いていて、どっちが先に「綻びを見せるか」というパワーゲームになっていました

物語は綿子の不倫から描かれますが、家庭内別居状態を作っていたのは、夫・文則であることが後半に暴露されます

文則は、前妻との間にできた子どもに会いにゆくという理由で帰省しますが、そこでも関係が続いていてことが仄めかされていました

さらに、文則と依子の間に割って入ったのが綿子であることがわかりますが、綿子と文則のどっちから関係を結んだかまでは描かれていません

 

いわゆる仮面夫婦的な関係を続けていて、少しのシーンだけでも、文則の亭主関白っぽさが滲み出ていましたね

その関係がエスカレートして暴力に及んでいるようで、彼が自分中心の人物であることはわかります

綿子をと問い詰めるシーンでも、殴られてもおかしくないような回りくどさで、相手の感情を逆撫でするように迫っていました

その行為が綿子の告白を引き出していましたが、返す刀で切られていたのはコメディのようになっていました

 

文則としては、ようやく掴んだ尻尾という感じになっていて、これで反撃できると思っていましたが、それは綿子が今の生活を維持したいと勝手に思い込んでいるからなのですね

綿子が友人の英梨とランチに行った際には「旦那のお金だから」と吐き捨てていて、束縛と引き換えにした金銭的自由に満足している様子はありませんでした

文則と綿子がどのように出会い、文則と依子がどのように別れたのかまでは描かれませんが、関係性から想像するならば、「依子との生活に嫌気がさした(自分の自由にできなくなった)こと」が起因で、綿子との関係に踏み切ったのだと思います

別れが決まっても縋っていたのは文則の方で、依子との関係が続いていたとしても、彼自身のアイデンティティを保てるのは綿子だけだったのかなと感じました

 

文則は綿子のウィークポイントを利用して服従関係を強いることを考えていましたが、木村が死んでしまったためにそれは永遠に叶わないものになってしまいます

木村が存命であれば不倫関係を立証し、綿子を問い詰めることができるのですが、相手が死んでいては何もできません

過去にそのような関係があったことを示せるものが何もなく、その導火線を踏んだことで綿子の気持ちがはっきりしてしまいました

それ故に、文則はほつれた糸を無理やり引いて、引きちぎってしまったようにも思えてきます

 


ほつれた糸はどうすべきか

 

男女関係を糸になぞらえて、そのほつれを描いているのですが、このような「ほつれ」というものは、どのような関係にも起こってくることだと思います

要は、その「ほつれ」にどの段階で気づけるかということになっていて、初期段階ほどリカバーが効くように思えます

徐々に絡んでいく糸は、よく見ればそれを解消できるものではあるものの、大体の人は「ほつれ」ができたことに動揺し、さらに悪化させていく傾向に向かいます

 

「ほつれ」に対処する最善策としては、「どのようになったらほつれるか」を事前に察知しておくことだと思います

大体のほつれは、2本の糸が絡み合い、その絡み方が縦横無尽に変化していくからなのですね

仕事でも(針金ではありますが)絡んだものを解きほぐすという作業があって、それを放置しておくと、機械に絡まって大変なことになってしまいます

 

基本的に番線(太い針金みたいなやつ)の巻き方は一方向で、本来ならほつれることはないのですが、重なって引っ張られたり、つなぎ方をミスった場合に起こってしまいます

この際は「どこにほつれの原因があるのか」を見極めながら、ほぼ理路整然とたどる感じになっていて、ほとんどの場合はすぐにそれがわかります

でも、全くわからずに、やむを得ず切ってつなぎ直すことがあります

これが人生だと「人間関係のリセット」になってしまうのかも知れません

 

人間関係のほつれは厄介に思えますが、その原因に対して理性的にアプローチできれば問題ないと思います

でも、人間なので、その理不尽に思えるほつれに対して感情で接してしまう

それによって、さらにほつれさせてしまうように思えます

本作でも、文則が綿子に対するマウンティングを取ろうとする行為は、ほつれを治すことよりも優先していました

それによって、綿子に「切る」という選択肢を与えてしまったのだと考えられます

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は、冷め切った夫婦が切れるまでを描いていて、二人がどこまでそれを先延ばしにするかを描いていました

夫婦という、社会的な側面を維持しつつ、それぞれが好き勝手をするという状態になっていて、それを割り切れるだけの覚悟はありません

経済的にマウントを取っている文則が、心理的なマウントも欲しがって、束縛することによってアイデンティティを保持しようとしています

前妻と別れても関係が続いているのは、夫婦ではないからで、綿子との関係が切れた今となっては、前妻との関係も切れる方向に向かうと思います

 

それらの原因の多くは文則側にあるように見え、同性としても擁護できないほどの気持ち悪さというものを感じてしまいます

殴りかかってこない相手をいたぶっているような感覚になっていて、それに対して無自覚であるところがかなり「痛い」感じになっていました

あと、かなり抑えていると思うのですが、文則にはDV的な素養を感じますね

それも、周囲には悟られないように行動に起こすタイプで、とても厄介なタイプに思えました

 

綿子が不倫に走ることを擁護はしませんが、ある意味において、関係性をリセットさせるために、あえて行動に踏み切っているようにも見えます

全てを有耶無耶にして隠すこともできたと思うのですが、文則に踏み込む余地やヒントを与えているようにも思うのですね

「ほれ、殴ってみ?」と言って頬を出しているようにも思えて、別れるためのマウントを取ろうと考えているのかなと感じてしまいました

実際にどうかとか、女心としての最適解というのはわかりませんが、決定機につながるようなヒントを与え続けているように思えます

 

その罠にきっちりとハマったのが文則のようで、彼が関係性を繋ぎたいのなら、転がっていたリングをそのまま床の目立つところに置いておけばよかったと思います

でも、彼はそれを回収し、まるで最後の切り札のように、それを出す場面を待っていました

結果として、切り札が諸刃の剣だったというオチになっていますが、文則目線では「ほつれ」ではないという認識があったのでしょう

彼は状況を見誤った結果、意にそぐわないという顛末を迎えていますが、これはある意味「必然」だったと思うし、木村が存命だったとしても、迎えた帰結だったのではないでしょうか

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

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公式HP:

https://bitters.co.jp/hotsureru/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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