■米寿まで添い遂げたい関係は、初恋の幻想よりも現実的なもののように思えてきますね

 


■オススメ度

 

ミュージカル映画が好きな人(★★★)

人生を見つめ直す系の映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

https://youtu.be/cLIkk0LFFFQ?si=X0sz3vydzKq7W-Yg

鑑賞日:2023.11.8(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:인생은 아름다워(人生は美しい)、英題:Life Is Beautiful(人生は美しい)

情報:2022年、韓国、122分、G

ジャンル:余計宣告を受けた妻が初恋の人探しに夫を巻き込むミュージカル映画

 

監督:チェ・グクヒ

脚本:ペ・セヨン

 

キャスト:

リュ・スンリョン/류승룡(カン・ジンポン:妻の初恋の男性を探す旅に付き合わされる夫)

ヨン・ジョンア/염정아(オ・セヨン:初恋の男性を探そうと夫ジオンポンに相談する妻)

 (高校時代:パク・セワン/박세완

 

オン・ソンウ/옹성우(パク・ジョンウ:セヨンの初恋の相手、高校時代)

キム・ガンホ/김곤호(セヨンの父)

キム・ジア/김진아(セヨンの母)

キム・ソニョン/김선영(ジョンア:ジョンウの妹)

 

シム・ギ/심달기(ヒョンジョン:セヨンの高校時代の友人)

   (成人期:ヨム・ヘラン/염혜란

 

ハ・ヒョンサン/하현상(カン・ソジン:セヨンとジンポンの息子、高校3年生)

   (3~4歳時:チョン・シユル/정시율)

   (7~8歳時:キム・ミンスン/김민승

キム・ダイン/김다인(カン・イェジン:セヨンとジンポンの娘、反抗期)

   (6歳時:キム・ハソル/김하솔

 

チョン・ムソン/전무송(チェ:セヨンの父)

キム・ヘオク/김혜옥(セヨンの母)

パク・ヨンギュ/박영규(ジンボンの父)

キム・ヘオク/김혜옥(ジンボンの母)

 

シン・シネ/신신애(ドンタン食堂の客)

ヤン・ヒギョン/양희경(ドンタン食堂の女将)

キム・ジョンス/김종수(木浦高校の宿直教師)

コ・チャンソク/고창석(旅客係)

リュ・ヒョンギョン/류현경(イェジンの担任)

 

カン・スンワン/강승완(?)

 

ピョン・ジンス/변진수(区役所の職員)

ムン・ジョンデ/문정대(造船所の作業員)

ソ・ヨンサム/서영삼(造船所の作業員)

ユ・スンウン/유순웅(写真店の店主)

ピョン・ジンス/변진수(レストランの従業員)

チュ・ブジン/주부진(甫吉島のおばあちゃん)

 

チェ・ウォンビン/최원빈(ウォンビン:イェジンが追っかけているミュージシャン)

サビーノ・シャレン・スザンヌ(ソフィア:ウォンビンのファン)

 


■映画の舞台

 

韓国:ソウル

 

モッポ/木浦

https://maps.app.goo.gl/mapD6AaPv8wdR79F9?g_st=ic

 

プサン/釜山

https://maps.app.goo.gl/TN4b1nyZrarEMhr16?g_st=ic

 

チョンジュ/清州

https://maps.app.goo.gl/jVNwS91gcj6LT2KfA?g_st=ic

 

ポルギド/甫吉島

https://maps.app.goo.gl/rWBJSNSz255UNWCM8?g_st=ic

 

ロケ地:

不明(おそらく上記と同じ)

 


■簡単なあらすじ

 

結婚して30年を迎えるジンボンとセヨンは、セヨンの検査結果を聞くために病院を訪れていた

バスを乗り間違えて遅れるセヨンにブチ切れるジンボンは、ひとり診察室に入って、妻の病状を突きつけられた

 

診断は肺がん末期で、余命は2ヶ月

忠告したのに病院に行かなかったセヨンをなじるジンボンだったが、胸中は複雑な思いを抱えていた

長男ソジンは進学期でナーバス、好きな音楽活動を止められて苛立っている

反抗期の娘イェジンはお気に入りの歌手に惚れ込んで、セヨンとはまともに口を聞こうとしなかった

 

ある日、初恋の人と撮った写真を見つけたセヨンは、ジンボンを巻き込んで、彼を探す旅に出ようと言い出す

「協力しないなら離婚して」と迫り、財産の半分を使って死ぬと言い出してしまう

 

そこでジンボンは運転手となって、セヨンの指定する場所に行くのだが、それは二人の夫婦の過去に舞い戻る旅に近いものだったのである

 

テーマ:愛とは何か

裏テーマ:愛されていると言う証明

 


■ひとこと感想

 

韓国のミュージカルと言うのはあまり見た記憶がなく、どんな仕上がりになるのかなと思っていました

回想録にミュージカルを使用しているので、唐突に歌うと言う感覚が薄れていましたね

その音楽が物語を前に進める役割を果たしていて、無駄に思えるものはありませんでした

 

映画は、どうやって夫が同行することになったのかと言うところで、まさかの力技に驚いてしまいました

初恋の人探しに付き合う夫と言う設定自体が結構無茶なものですからね

彼がそこに行かざるを得ない状況と言うのは、なかなか難しいものだと思います

 

物語は、初恋の人を探す旅というものが、そのまま夫婦の過去へと向かう流れになっていましたね

初めて出会った日、一緒に行った店などを辿っていく中で、二人が初心を取り戻していくことになっています

その先にサプライズがあるのですが、この「中落ち」というのが結構強烈なものになっていたと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画のネタバレとしては、セヨンのバケットリストがキーポイントになっていて、その下書きをジンボンが見ていたことがわかります

「死ぬ前にしたいことリスト」を「生きている間にしたいことリスト」に変えるのですが、サプライズで長生きするとか、別の要因で亡くなるということはないとありませんでした

 

いくつかのリストの項目を知っているジンボンは、それを行う方向にサラッと誘導していましたね

あんなにボロクソに言われても、惚れた弱みという感じで突き進んでいました

病気がわかってから優しくなる家族でしたが、案外こんなものなのかなと思います

 

息子は勉強しているフリをしてバンド活動をしているし、娘は色気付いてバンドマンの追っかけをしている

両親が不在の時に抗がん剤の誤飲を起こしてしまうのですが、この伏線もまた、うまく機能していたように思いました

 


夫婦愛が冷める理由

 

本作の主人公であるジンボンとセヨンの夫婦関係はほぼ破綻していて、妻の誕生日すら忘れてごまかすまでに至っています

倦怠期を超えて、夫婦関係が維持できているのは子どもがいるからという感じになっていて、このような関係になる夫婦は少なくないと思います

夫婦も元は恋人ですが、社会的な役割を担うと同時に現実的な関係になります

それが関係を変化させ、役割の方が愛情よりも優ってしまうのだと考えられます

 

夫婦という関係は社会的な存在感を高めると同時に、社会的責任というものを有するように思います

同じ男女の関係で、子どもの有無も関係ない状態でも夫婦生活というものは破綻する傾向にあるのですが、その原因は社会的責任に対してどう向き合うかであるように思えます

夫婦関係が作るもの、すなわち二人のルーツをも巻き込んだ状態で家系が継続するという意味は大きいのですね

逆に言えば、子孫というものへのこだわりがなければ、夫婦になる必要はほとんど無いようにも思えてきます

 

男女がお互いに愛情を感じていて、その時間の共有という観点で言えば、結婚せずに同棲生活を続けることも可能です

でも、この関係性を歪だと考える風潮もあり、男女の共同生活は結婚でなければならないという強い偏見というものもあります

結婚という関係に憧れを持つ世代も、結婚がもたらす影響をあまり考えていない時代に培われた価値観によって強く印象づけられています

なので、この固定観念からの脱却は、結婚という儀式を終えた後に破綻した関係を乗り越えた人ほど、結婚という儀式が関係に与える影響力を感じていると言えます

 

人は孤独にならない状況を作る方が良いのですが、その状況を作るのが男女だった場合、その関係性を健全なものにしようという風潮はあります

でも、目的と手段は別問題なので、無理に社会の枠組みに囚われる必要もありません

それでも、子どもができた時は社会的責任について考えなければならないでしょう

現代社会では、婚外子(もしくは非摘出子)に対する権利は著しく損なわれている状態なので、その影響を知った上で判断する必要があると思います

 

最終的には親となる人物の責任論になると思いますが、自分だけの問題ではないと考えられます

なので、もし自分が婚外子あるいは非摘出子として生まれていたら、という子ども目線の想像力だけは失わない方が良いと思います

その目線を有した後の決断であれば良いと思いますが、権利関係などのことは念頭に入れておいた方が良いと思います

そう言った後々の影響も考慮して出された結論というものは損なわれるべきものではないと考えています

 


初恋の人は刺激剤?

 

本作では、拗れた夫婦関係の末に妻の逆襲があって、それが「初恋の人探しに巻き込む」というものでした

夫婦なので財産は共有、その状況を逆手にとって、2ヶ月後に死ぬ妻としては、その行先のことを考える必要がありません

嫌なら離婚届を書いてと迫り、協力しなければ「共有財産の半分を使い尽くして死ぬ」というのですから、相当な鬱憤が溜まっていたのだと思います

 

ジンボンは不本意なまま初恋の人探しに巻き込まれるのですが、過去の男の登場というものは、夫の心をそば立たせます

それは、夫婦関係にあっても、ずっとその男のことを心に置いてきたのかという、男性目線的には裏切りにも見える行為なのですね

彼は渋々同行しますが、初恋の熟れの果を見たいという欲求もあったように思います

 

ジンボンは公務員として働き、夫婦の家も持ち、子どもも二人いる家庭を築いています

初恋の人の今がどのような経済状態なのかというのは、ジンボンのプライドに関わってくるもので、初恋というイメージ先行のものを打ち破るには、現実で比較するということが重要になってきます

これで、相手が大富豪とかになっていたら身も蓋もないのですが、この時点でジンボンが拒否する選択肢はなかったのですね

なので、彼は祈るような気持ちで、自分よりも格下でありますようにということを願っていたのでしょう

実際には、自分よりも早逝していたので何とも言えない決着になっていますが、それよりも「初恋の人ではなかった」という事実がジンボンにとっては勝ち誇る要因になっていました

とは言え、現実のジンボンよりも優先された初恋という事実はあるので、それを上書きできるだけの魅力が彼にはなかったということは変わらないところが切なくもありますね

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、一見すると「難病系お涙頂戴もの」のカテゴリーになるのですが、これまでの余命宣告ものとは少し違う趣がありました

それは「死ぬまでにしたいことリスト」を「生きている間にしたいことリスト」に言い換えていた点であると思います

この言い換えによって、「死ぬまで」には書けないことが書けるようになっていました

それが「一緒に米寿を迎える」というもので、余命2ヶ月ではなし得ないリストとなっています

 

米寿というのは88歳を祝うもので、韓国では「卒寿(졸수)」という言い方をします

この年齢まで夫婦でいたいと願っているのがセヨンで、破綻しているはずの夫婦関係の中でも、彼女の中にはほのかな愛情が残っていたことがわかります

この書き換えは運命や診断に抗うものであり、その信条の方向性こそがセヨンの強さであるように思います

そして、そのリストの最後に書かれていたのが、「愛されることを知る」というものでした

 

ジンボンはセヨンが書いて破り捨てた「死ぬまでリスト」を見つけ、そこに書かれていたことを実践しようと考えます

彼女がそれを破り捨てて、「生きている間リスト」に変えたのですが、それ自体はジンボンは知らないのですね

セヨンはこんなにも生きたがっていたのですが、その想いというものは彼女の死後に見つかった「生きている間リスト」への改変によって知ることになります

ラストのサプライズは、「死ぬまでリスト」を実現したものになるのですが、その項目は「生きている間リスト」に書かれていたものと同じものになっていました

 

人はいつ死ぬかわからない存在で、それは年齢を問うことはありません

確かに加齢とともにリスクは増えるのですが、不慮の事故、テロ、災害などは年齢を選びません

それらから身を守ってくれるのは、年齢ではなく経験であることの方が多く、相対的に考えると、病気や事故のリスクは上がるけど、災害や事故などの回避行動は高めることができると言えます

 

そう言った時代に住んでいる私たちは、死を予感するまではどちらのバケットリストも作成しないのですね

でも、本来ならば、生きている間にやりたいことリストの最重要項目から実行していくことこそが、人生を充実させるに至る最良のステップであることは否めません

先行きが不透明な今だからこそ、やりたいことから順にやっていって後悔を減らしていく

思えば、セヨンの人生もそれに倣った形になっていて、ジンボンとの結婚もそれに準じたものだったように思えます

なので、彼女のリストの一番最初には「米寿まで一緒に過ごす」ということが書かれていたのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

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公式HP:

https://lifeisbeautiful-movie.com/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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