■血の匂いがするオアシスには、どんな自分が埋まっているのだろうか
Contents
■オススメ度
幼馴染の団結映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.11.20(アップリンク京都)
■映画情報
情報:2024年、日本、93分、R15+
ジャンル:幼馴染3人が命か友情かを迫られるバイオレンス映画
監督&脚本:岩屋拓郎
キャスト:
清水尋也(富井ヒロト:地元のヤクザの構成員)
(幼少期:深澤幸也)
高杉真宙(金森マサト:半グレのメンバー、富井の幼馴染)
(幼少期:永原諒人)
伊藤万理華(紅花:富井の幼馴染、記憶障害)
(幼少期:美音)
松浦慎一郎(木村:半グレ組織のボス)
杏花(アンナ:木村の娘)
林裕太(三井:木村の手下)
小木茂光(菅原組の組長)
青柳翔(菅原タケル:組長の息子)
津田寛治(犬咲:菅原組の幹部)
窪塚俊介(若杉:菅原組の構成員、ヒロトの兄貴分)
新井郁(紅花の母)
香川幸允(町の売人、半グレメンバー)
遠藤健慎(町の売人、半グレメンバー)
田中爽一郎(半グレメンバー)
佐野寛大(半グレメンバー)
村田凪(半グレメンバー)
永田祐己(菅原組の構成員)
光永聖(菅原組の構成員)
平山貴大(菅原組の構成員?)
山口雅也(菅原組の構成員)
重岡サトル(菅原組の構成員?)
阿曽将成(菅原組の構成員)
新帆ゆき(カフェのウェイトレス?)
魚住宗範(レストランの店長?)
柿森まなみ(ホステス?)
工藤雛香(ホステス?)
■映画の舞台
日本:
愛知県:名古屋市周辺
ロケ地:
愛知県:一宮市
料亭菊水
https://maps.app.goo.gl/8bmqCyXCUMj3agm66?g_st=ic
愛知県:名古屋市
CLUB JB‘s
https://maps.app.goo.gl/qiA6mp8CUvLixFrA9?g_st=ic
Dear‘s GENTLY
https://maps.app.goo.gl/btZyAheUjhcPiSe49?g_st=ic
ジガーバル クラシック
https://maps.app.goo.gl/kuLHeGC8om4m7nPn8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
名古屋近郊を根城にしている菅原組の構成員のヒロトは、縄張りでドラッグを捌いている半グレグループの摘発をしていた
そのグループには幼馴染の金森がいたが、ヒロトは容赦なく締め上げていた
半グレグループは木村という男がまとめ上げていて、金森を筆頭に木村の娘アンナ、血の気の盛んな三井などがいた
特に三井は、菅原組に苛立ちを見せ続け、その機会をずっと窺っていた
ヒロトと金森には記憶を失くした幼馴染の紅花がいて、彼女はある事件をきっかけに街を離れていたが、最近になって戻ってきていた
近くのレストランで働いていて、普通の暮らしをしていた
ある日のこと、菅原組長の息子タケルを見つけた三井は、無鉄砲にも襲いかかって刺してしまう
中途半端に傷をつけただけで捕まった三井のもとに、金森が詫びを入れに来たが、タケルは許す代わりに手下となって働けという
金森がそれを断ると、タケルは三井を見せしめに殺してしまった
テーマ:友情と掟
裏テーマ:居心地を欲する心
■ひとこと感想
幼馴染がアウトローの世界で再会するというもので、高校ぐらいの時の事件をきっかけに離れ離れになっていたように思いました
その後、ヒロトは菅原組に忠誠を誓うようになり、金森は半グレの連中とつるむようになります
紅花は街を離れていましたが、なぜか戻ってきてしまって、それによって因縁が復活するという内容になっていました
生きる道を違えた彼らでしたが、なぜか引き寄せられることになり、それによって再び事件が起きてしまいます
おそらくは避けては今後の人生がうまくいかないというものがあったと思いますが、その起点となる紅花には記憶がないのですね
なので、本能的にこの街で何かをしなければならないと感じていたように思います
映画は、いわゆる青春映画で、仲の良かったあの日を取り戻そうとするものですが、取り戻そうと思って動いている人は誰もいないのですね
衝動的にこうしなければならないというものを感じていて、それが突発的な事故を生みだしていきました
記憶がなくても本能的に「敵」を感じ取っていて、それゆえに因果は巡るのですが、それにしても「敵」が弱すぎてびっくりしてしまいました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
紅花とヒロトの関係は仄めかされていますが、これは記憶がないことを逆手に取った告白のようなものだと思います
これまでにも気持ちはあったけど伝えることができなかった
そんな青春時代があったのだと思います
過去の事故は、タケルが紅花の母親を殺したというもので、タケルに刃向かったのがヒロトで、金森は逃げてしまっていました
菅原組長の温情で組に入ることを許されていて、その忠誠を試されるという内容になっています
ドラッグ売人狩りができても、木村や金森には手を出せないのは、かつて何らかの恩があったからのように思えてしまいます
映画は、紅花がタケルに襲われたことで刺し殺してしまうところから動くのですが、タケル弱すぎね?と思ってしまいました
ラストバトルでも、組長はなぜかヒロトとタイマンを張るし、この辺りの心情はよくわからない部分がありました
おそらくは違う道を行くなら殺してから行けというもので、それができるかを試しているのでしょう
リアルさは失われてしまいますが、わかりやすい仁義的なストーリーになっていて、好きな人は好きなのかな、と感じました
■紅花の記憶について
主人公の3人は幼馴染という関係になっていて、恋愛というものは傍に置かれていたように思えました
どちらも紅花に好意を持っていたと思いますが、彼女の記憶がないので、それを蒸し返すことはできません
それでも、金森は記憶喪失を利用して、かつての想いを伝えていたりします
彼女の記憶喪失の原因については、映画内の情報だと母親を殺されたことだと思われますが、その要因であるタケルと再会しても戻ることはありませんでした
母親が殺された現場にて、幼馴染3人のその後が決まったという感じで、純粋な外傷を負ったのか、精神的なものがピークを迎えたのかはよくわかりません
あまり感情を表に出さないキャラとなっていて、その記憶障害の規模というものは限定的にも見えるし、ほぼ欠損のようにも見えてきます
そもそも人間を信用していないキャラとなっているので、その背景を汲み取るのは非常に難しいように思えました
彼女の記憶がないことは、イコールとして「ヒロトとマサトの関係性の変化」を紐解く舞台装置に近いものだったのでしょう
何も知らない紅花を二人の間に立たせることによって、彼らが仲違いをした経緯を紐解いていくという流れになっていて、それが判明した後に「どうするのか」という選択を強いるポジションへと変化していきました
ある意味、予定調和的なところはありましたが、それでも組としては体裁を保つ必要がありました
とは言え、組長自らがタイマンを張って負けるというのは、組員にとっては最悪なことでしょう
その後どうなるかはわかりませんが、彼らが極道の道には進まないので、混沌とした中で、チャンスだと感じて「3人を無視できる者」が覇権を取るのかな、と感じました
■彼らにとってのオアシスとは何か
映画のタイトルは「オアシス」で、単純に考えれば「紅花の存在」のように思えます
それでも、オアシスを求めるという衝動を考えれば、紅花というよりは、彼ら自身のそれぞれの安住の地のようなものを渇望していたようにも思えます
組の中にいても空虚で、半グレのグループにいても満たされない
ある程度お金があって、自分を慕う子分や尊敬すべき上役がいても、そういったもので自分を満たせるタイプの人間ではなかったということになります
これに関しては、組長もその息子も、半グレのトップも同じようなもので、彼らの欲するオアシスには、水ではなく血が溜まっているように感じられます
オアシスというと安息の地を思い浮かべますが、安息の地で精神が安定するとは限りません
なので、そう言った場所を目指していたというよりは、自分に癒しや与えたり、渇きを満たしたりする場所というものを欲していたことになります
それが「血」であり、興奮状態がもたらす「薬に頼らないハイテンション」のように思いました
人の欲求の段階として、承認欲求とか自己実現の世界は、安息の地の真逆にある世界のように思います
自分が生きているという実感を持てるかどうかが大事で、それでも偏りすぎるとダメになってしまいます
紅花のような存在は、興奮状態で得られる安息の着地点であり、それはセックスで満たされるというものではないのでしょう
ある意味、自分のその衝動を理解し、肯定してくれる者が必要で、さらに次の衝動に向かうためのエネルギーを充填してくれる存在を欲することになります
紅花自身はそのような人間にはなりませんが、ヒロトとマサトがそう思えれば良いだけで、二人は紅花に変わってもらおうとは思っていないのだと思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、青春群像劇という感じの映画で、大人までもが青春の真っ只中にいるような感じに描かれていました
かなり狭い世界の話で、組と言っても末端のイキった人間が集まっているだけの組織のように思えます
半グレ集団も同じようなもので、金を稼ぐ場所が被っていることで抗争状態になっていました
話し合いで解決することよりも、暴力でねじ伏せることが念頭にあって、そこにそれぞれのトップが出てくるという幼さというものがあったと思います
幼馴染3人はこの対立構造の中で立場を違えるのですが、そのあたりの起点というものは描かれていません
おそらくは、紅花の母親の騒動の辺りで、どこに属することができるのかの適性検査のようなものがあって、それによってヒロトとマサトは生き別れることになったのでしょう
このあたりは、配役がすでにその選択に真実味を持たせるかというものがあって、逆の配役はあり得ないという感じに描かれていました
マサトの方は半グレ集団にいるけれど、集団の中でどうなりたいとかはなくて、ある種の刹那的な生き方を選んでいるように思えます
熱くなる手下がいても感化されることはなく、彼自身は流されるままに生きていました
一方のヒロトは、自分の存在意義に疑問を感じていて、それを捕まえるために日々を生きているように見えます
それが地位の向上とは結びつかないのですが、彼自身も刹那的な生き方になっていて、ある意味、自分を罰することで生きている価値を模索しているようにも思えました
紅花が彼らの前に現れたことで過去が再燃するのですが、それはこれまでの生き方の否定だったのか、それとも肯定だったのかには意味がないように思えます
組の構成員として生きてきた過去も、流されるように半グレで時間を過ごしてきた過去も、そのどちらもが紅花の存在認知だけで崩れ去るような脆いものとして描かれていました
彼らが物語の中で何を試されていたのかと言えば、あの時の選択の無意味さを痛感させられることだったように思えます
それは、紅花の存在が彼らの選択のさらに上にある概念のようなものになっていて、それ自体が彼らの青春時代がどのようなものだったのかを物語っているとも言えます
結局のところ、彼らは幼馴染に戻ることになりますが、紅花の記憶は戻らないままでした
ここから関係性が再構築され、青春時代とは違う結論へと向かっていくのでしょう
今度は相手に遠慮して動かないということはないと思うのですが、感覚的には「紅花は別の誰か結ばれる」ように思いますね
それは彼女が彼らの世界にいたくないということもあると思いますが、それよりはすでに「恋愛感情が生まれない土壌に成熟してしまっているから」でしょう
そう言った観点から見れば、ヒロトとマサトのオアシスというのは、まだまだ血の匂いから逃れられないのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101969/review/04485995/
公式HP: