■知られざるユニバースの第2弾を何とか公開してくれませんかねえ
Contents
■オススメ度
ドンパチ系インド映画が好きな人(★★★)
映画『タイガー』を観たことがある人(★★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.9.4(MOVIX京都)
■映画情報
原題:Pathaan
情報:2023年、インド、146分、G
ジャンル:国家を揺るがす大事態に多hcい向かうエージェントを描くアクション映画
監督:シュリーダル・ラーガバン
脚本:シュリーダル・ラーガバン&アッバス・ティレワラ
キャスト:
シャー・ルク・カーン/Shah Rukh Khan(パターン:RAWエージェント、JOCRの創設者)
ディーピカー・パードゥコーン/Deepika Padukone(ルバイ/ルビナ・モーシン:ISIエージェント、医師)
(若年期:Grace Girdhar)
ジョン・アブラハム/John Abraham(ジム:インド政府への復讐を誓う「アウトフィットX」のリーダー、元RAWエージェント)
ディンブル・カパディア/Dimple Kapadia(ナンディーニ・グレーワール:共同作戦&秘密研究(JOCR)の責任者、パターンの上司)
Ashutosh Rana(スニル・ルスラ大佐:インド軍の司令官、ナンディーニの上官)
Prakash Belawadi(サハニ博士:誘拐されそうになったインド人科学者)
Prem Jhangiani(ファルーキ博士:誘拐されて開発に関わったインド人科学者)
Shaji Choudhary(ラザ:JOCRのメンバー)
Ekta Kaul(シュエタ・バジャジ:ハッカー、JOCRのメンバー)
Diganta Hazarika(ジョセフ・マシューズ:狙撃兵、JOCRのメンバー)
Viraf Patel(リシ・アーヤ:インテリジェンスアナリスト、JOCRのメンバー)
Aakash Bhatija(アモル:JOCRの青年部会のメンバー)
Rajat Kaul(ラーフェ:ジムの子分)
Rumi Khan(ジムの子分)
Mansi Taxak(ジムの妻)
Rumi Khan(ジムの母)
Manish Wadhwa(カディール将軍:ジムと密約を結ぶパキスタン軍の将軍)
Mustafa Aksari(ファイド:アフリカの違法武器商人)
Bashir Lone(サラウディン・フセイン:鍵を持っている老人)
Jairoop Jeevan(鍵を持っている老女、医師)
Ashutosh Singh(ルバイの父)
Amanpreet Hundal(ルバイの母)
Keith Sequeira(メーラ:デリー上空を飛ぶ旅客機のパイロット)
Rakesh Khatri(管制塔の管理人)
Nikhat Khan(サバ:パターンの養母)
サルマーン・カーン/Salman Khan(タイガー/アヴィナーシュ・シン・ラードル:インドの伝説のスパイ)
■映画の舞台
2019年、
インド政府がジャンムー・カシミール州の自治権無効を宣言した後の世界
スペイン
フランス:パリ
ロシア:モスクワ
アフガニスタン
パキスタン
ロケ地:
インド:ムンバイ
ドバイ
スペイン
ロシア:シベリア
バイカル湖
https://maps.app.goo.gl/LsFvdVgaDPq1WXVg9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
RAWのエージェントであるパターンは、ある任務にて大怪我を負ってしまい、怪我から復帰した兵士たちの受け皿について考えていた
そこで彼は負傷兵などの活躍の場を作るためにJOCRを設立し、その責任者に上司のナンディーニ少佐を指名する
JOCRは独自に調査を行った結果、元RAWのエージェントのジムが暗躍し、大統領殺害を目論んでいると看過する
そこでJOCRはインド軍大佐のルスラとともに共同作戦を実施し、大統領を守ろうとするものの、それはジムの陽動作戦であることが判明する
ジムはその会合に出席していたインド人科学者の誘拐を目論んでいて、パターンは寸前のところでサハニ博士だけを救うことに成功した
その後、パターンの元にジムがミサイルを購入したと言う知らせが入り、同時にパキスタン人の医師ルビナの口座が使われていることが発覚する
パターンはルビナを負ってスペインに行くものの、彼女はジムの手下で「アウトフィットX」に捕まってしまう
そこでジムはパターンを勧誘するものの、それを拒否し、ルビナもジムの本当の目的を知って彼を裏切ることになった
パターンとルビナはジムの目論見を止めるために共闘を始めるものの、そこには大きな仕掛けが施されていたのである
テーマ:国益と人権
裏テーマ:インドを守る意義
■ひとこと感想
ド派手なスパイアクションと言う情報だけを入れて臨んだのですが、いきなり公開になっていて、フライヤーを入手する間もなくスケジュールに組み込むことになってしまいました
先週に鑑賞予定も、まさかの「時間を間違えて気が付いてたら半分終わってた」と言う事態に遭遇してしまいました
リカバリーができたのは幸運ですが、そのためにスケジュールの組み替えをすることになってしまう、執筆計画も大幅に後ろ倒しになっていたりします
映画は、インド版ミッション・インポッシブルと言う感じで、国家の危機に非公式のスパイが暗躍すると言う内容になっています
組織のエージェントではなく、組織を立ち上げる側になっていて、リーダー&エージェントとして活躍すると言う流れになっていましたね
また、ヒロインが登場し、色気抜群のキャラクターが画面を賑わすと言うムフフな展開も用意されていました
物語は回想による複雑な構成になっていて、時系列がごっちゃになってしまう感じになっていましたね
そこまで混乱はしませんが、もう少しシンプルに作っても良かったように思えます
パターンの過去を挿入し、ルビナとの関係、ジムの過去を負っていく流れになるのですが、ちょっとわかりにくいかなと思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
いわゆる男女バディもので、それが愛に発展するかどうかの瀬戸際を演出しながら裏切りに遭うと言う王道展開を迎えます
ジムは国家の犠牲者で、妻とお腹の中にいた子どもを殺されたことを根に持っていて、同じ境遇を生み出そうと暗躍しています
自分の時と同じように、無関係の人間を犠牲にしろと迫る内容で、その思想がルビナの行動を変えていきます
パターンもジムの妻子を救えたのではないかと考えていて、無意味な犠牲だったと感じていました
国家としてテロリストとは交渉しないと言うスタンスは一貫していましたが、それが新たな脅威を生んでいるところが皮肉でもあります
どうしたら良いかは結果論ではありますが、映画のスタンスとしては、事の発端がカシミール自治権の停止になっていて、それがパキスタンとの国際問題を悪化させている下地があると言うのは興味深い事だと思います
このあたりの歴史的な背景を知っていると物語の導入にスッと入っていけるのですが、ほとんど説明がないので、一般人にはキツい導入になっていると感じました
■ジャンムー・カシミールと第370条撤廃について
冒頭で登場するカシミール紛争ですが、これはアフガニスタン、インド、中国、パキスタンの4カ国がカシミール地方に隣接していることから起こっている「領有権の主張」に関するトラブルのことです
インドは、ジャンムー・カシミール藩王国の藩王が歴史的に統治してきたと全域の領有権を主張し、パキスタンは中国の支配地域以外の領土の領有権を主張しています
この地域を巡る紛争は1947年頃から起こっており、三度の印パ戦争、中印国境紛争などがあります
インド憲法第370条とは、インド国内で唯一イスラム教徒が多数派になっているジャンムー・カシミール州の特別自治権に関する法律のことです
2014年にインドの首相となったナレンドラ・モディの強行路線を取り、その後緊張状態が悪化
それにより、2019年8月5日にこの370条をを撤廃したという経緯があります
映画はこの出来事をモチーフにしていると考えられます
インド憲法第370条(Article 370 of the Constitution of India)とは、1952年に制定された法律のことで、ジャンムー・カシミール地方に特別な自治権を与えているものです
これは370条がインド全州に対する自治権を適用していたものを、ジャンムー・カシミール地方にも適応した、というもので、この条項には完全に廃止することもできるという但し書きのようなものがあります
この地域の地方自治権は1954年の大統領令によって発令されています
ジャンムー・カシミール憲法では、1947年10月26日付けで、インドへの加盟を宣言しています
この宣言の効力を持たなくさせたのが、2019年の憲法命令であり、州としての地位を剥奪し、連邦直轄の領土へと再編する方向に向かいます
ジャンムー・カシミール再編法が可決されたことにより、この地域に副知事を任命し、中央政府の管理下に置かれることになりました
映画では、この動きに反発する形でパキスタン軍のカディール将軍が動いた、という流れになっています
■テロリストと交渉しない国家について
映画では、インド政府がアフガニスタンでの秘密工作にて捕まったジム一家を見殺しにする、という設定がありました
いわゆる「国家はテロリストと交渉しない」というもので、交渉は譲歩を引き出し、国家の威信を揺るがせるものとなります
多くの場合は金銭的な要求になりますが、一度譲歩すると相手のペースで物事が進み、その要求は際限なく続きます
テロリストを善人だと思える人がいれば別ですが、テロリストの要求は一度行えば際限なく繰り返されるもので、武力による交渉を認めることになります
個別の誘拐のように、単純な金銭目的ならいざ知らず、テロリストの目的は国家転覆なので、渡航制限がかかっている国に勝手に行って捕まる人を擁護することはありません
人命優先主義は性善説の上に成り立ちますが、そもそもテロ行為が性善説に則っていないので無理があるのですね
なので、テロリストの思想に影響を受けた邦人がわざと捕まってテロリストの交渉権を与えるということも起きます
これを裏付けることもできなければ否定することもできないので、基本的な方針として交渉しないということになってきます
今回の映画では、民間人が対象になっていますが、特殊部隊の家族と言うのは見なし公人に近い存在だと思います
なので、ジムの家族がテロリストの交渉の材料になり得ると考えて保護するのが一般的な方針になると思います
映画では、その保護の程度がわからず、おそらくは非合法の特殊部隊なので保護適用ではなかったと言うことでしょう
なので、家族が捕まって殺されることも踏まえた上で、ジムは国家と契約を結んでいることになります
そのために高額な報酬があるわけで、それに同意して参加しているジムが保護義務を怠った、もしくは相手の方が上だったと言うことになってしまうのだと考えられます
映画のラストでは、旅客機に新型天然痘が設置されていると言うもので、デリー市民の命と引き換えの交渉を行いますが、これに対してもインド政府は譲歩しません
政府の最終判断は「旅客機の乗客よりもデリー全域を優先する」と言うもので、これは当然の結論であると言えます
ジムもそれを見越した上で、一般人を犠牲にする判断に苦しめと言っているわけで、彼もテロリストと交渉しない国家には理解を示しているのですね
なので、自分の不甲斐なさを国家に転化して、その感情を少しでも和らげるために、無茶な行動をしていたことになると言えるでしょう
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は、インドのスパイ映画のユニバース的な立ち位置にあって、劇中ではタイガーが登場していました
このシリーズをYRF Spy Universeというのですが、その告知はあまりされていません
本作はこのユニバースの4作目にあたります
YRF Spy Universeはこれまでに、『Ek Tha Tiger(2012年、邦題『タイガー 伝説のスパイ』)』『Tiger Zinda Hai(2017年、日本未公開)』『War(2019年、邦題『WAR ウォー!!』)』とつくられていて、今後の予定は『Tiger 3(2023年10月インド公開)』『War 2(2025年予定)』『Tiger Vs Pathaan(2026年予定)』となっています
いわゆる『タイガー2』が日本ではまだまだなので、シリーズを公開していくのであれば、本来は本作の前に公開して欲しかったと言うのが本音ですね
今後の動きは分かりませんが、2026年の『Tiger VS Pathaan』はさすがに観ていないと情報が抜けてしまうので、どのタイミングで日活さんがGOするかにかかっているのかなと思います
それとも他の配給さんが今後の作品も含めて権利をゲットするのでしょうか
『パターン』の配給はツインで、『WAR ウォー!!』の配給はカルチュア・パブリッシャーズなので、同じユニバースなのに配給元が全部違うと言う事態に陥っています
このねじれがどのように解消されるのかはわかりませんが、『RRR』のおかげでインド映画のムーブメント再びと言うことになっているので、ツインさんに頑張ってほしいところでしょうか
ユニバースごと配給をすると言う決断にならなかった理由は分かりませんが、そのためにユニバースであることが宣伝に使われていないのかなと思ってしまいます
今後もこのシリーズは増えていくと思うので、今のうちに何とかしておかないと、とか余計なことを考えてしまいますね
インド映画は、大体敵がイスラムかパキスタンになっているのがお約束で、国策映画に近いノリは感じます
祖国のために戦う男と言うスタンスで一貫していますが、ルビナが踊った際に使用した衣装の色(20秒ほどのシーン)で、内務大臣が文句を言う国なので、なかなか強烈な国だなと思ってしまいます
このあたりの映画の外の騒動も本作は活発でしたので、そのあたりは英語版wikiなどを翻訳して眺めてみると「すごい世界だな」と感じられるのではないでしょうか
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP: