■理念なきビジネスの崩壊は、自然の摂理なのかも知れません
Contents
■オススメ度
マブリーの違う一面を観たい人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.9.12(アップリンク京都)
■映画情報
原題:압꾸정(アックジョン)、英題:Men of plastic(形成外科の男たち)
情報:2022年、韓国、111分、G
ジャンル:美容整形外科医と自由人のコンビが巻き起こす騒動を描いたコメディ映画
監督&脚本:イム・ジンスン
キャスト:
マ・ドンソク/마동석(カン・テグク:狎鴎亭の裏の主)
チョン・ギョンホ/정경호(パク・ジウ:免許停止中の敏腕美容整形外科医)
オ・ナラ/오나라(オ・ミジョン:マーケティングに強いデグクの友人)
チョ・ビョンモ/최병모(チョ・テチョン:胡散臭い実業家)
オ・ヨンソ/오연서(ホン・ギョオク:VIP専門エステ経営者)
オン・グァンフン/나광훈(ワン会長:出資者、中国の不動産屋)
キム・ヘウォン/김혜원(ワン会長の通訳)
チョン・ジェイ/전제이(ワン会長のアシスタント)
ギル・ヘヨン/길해연(キム会長:ワン会長の友人)
リュ・スンス/류승수(チャン刑事)
チャ・ウジン/차우진(オ刑事)
キム・チャンヒョン/김찬형(パク刑事)
カン・シンチョル/강신철(財務調査官)
パク・ソンイル/박성일(財務調査官)
ハン・ボレム/한보름(ハンビ:アイドルの卵)
キム・ソヨン/김서연(ドゥビ:ハンビの友人?)
チョン・ボミン/정보민(セビ:ハンビの友人?)
ナム・ミジョン/남미정(ミン・ギチョン:?)
パク・ジフン/박지훈(キム:P&K形成外科の部門長)
ソン・ソンチャン/손성찬(江南区長)
キム・ギョンラン/김경란(「Love Face」のホスト)
オ・ギョンファ/오경화(パク・ミンジュ整形前:「Love Face」出演者)
イ・ジアン/이지안(パク・ミンジュ整形後:「Love Face」出演者)
クァク・ジスク/곽지숙(キムソル形成外科クリニックスタッフ)
ハ・ヘソン/하혜승(キムソル形成外科クリニック看護師)
チョン・ジス/정지소(ユリ:形成外科の受付?)
チン・ソンギュ/진선규(医療品ブローカー)
キム・スク/김숙(本人役、コメディアン)
イ・ジヘ/이지혜(本人役)
ヒョンジュン/임형준(本人役)
■映画の舞台
韓国:狎鴎亭
https://maps.app.goo.gl/naSRo4UzgyNvcBv37?g_st=ic
ロケ地:
上記に同じ
■簡単なあらすじ
韓国・江南にある狎鴎亭にて顔が効くテグクは、様々な人脈を持ちながらも、何をしているかわからない男だった
彼には弟分の実業家テチョンがいて、彼と一緒に様々な事にトライしていた
ある日、美容整形ビジネスを始めようと考えた二人は、腕利きだがハメられて免許停止中の天才美容外科医ジウに声をかける事になった
テグクはジウに可能性を感じ、テチョンを置き去りにして話を進めていく
また、マーケティングのプロであるミジョンを巻き込み、さらにVIP専用の美容店のギュオクらと結託しながら新しいビジネスを始めていく
その目論見は成功するものの、多額の金を巡って想いと欲が錯綜し、事態は急展開を迎えるのであった
テーマ:才能と報酬
裏テーマ:野望の先にある自戒
■ひとこと感想
マブリーが暴れない映画ということで、いろんなヘアスタイルに挑戦し、コメディ全振りの内容になっていましたね
いつの間にか公開になっていて、慌ててスケジュールに組み込みましたが、ちょっとばかし話がとっ散らかりすぎていたように思えます
基本的には成功者に色々群がり、はみごにされたテチョンがやり返すという流れで、ジウが疑心暗鬼になってテグクと距離を置くという展開を迎えます
韓国のビューティービジネスを舞台にして、ほぼ口だけで成り上がっていくテグクを楽しむ映画ではありますが、この会話劇を楽しめるかどうかにかかっています
個人的には少し退屈で、美容整形にそこまで興味もなかったため、起きているための努力が必要な感じになっていました
韓国の美容整形の闇にふれるという感じでもなく、ボディダブルで施術前後のCM作っているぐらいに止まっていたように思います
美容業界の話なので綺麗な女性がたくさん登場しますが、これ全部整形の人なのかなあとか余計なことを考えてしまうとノレないのかもしれません
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
ネタバレ的なものはあまり感じられず、トントン拍子に成功したら足を引っ張られて、お金が絡んで欲望が弾けるという王道展開になっています
自分だけが得をしようと考えて、元ネタぶっ込んできたテチョンを蔑ろにしたらそうなるよねというもので、あんなにお金があるのに家賃で揉めているのは滑稽に思えました
映画は、整形かもしれない美女がたくさん出てくるという展開で、そこら辺はメイクにてそれっぽく見せているのかなと勘繰ってしまいます
個人的には、行き過ぎたメイクと整形はCGと変わらないと思っているので、生成AIが描く絵でOKな人なら問題ないのかもしれません
物語にそこまで深みはありませんが、サラッと見る分には面白いという感じでしょうか
キャラが立っているので飽きませんが、もうちょっとどうにかならなかったのかなあと思ってしまいました
■狎鴎亭ってどんなトコ?
狎鴎亭(アックジョン)は韓国北西部の内陸部にある高級ショッピングエリアがある街として知られています
西に仁川、南に清潭洞(チョンダムドン)があり、こちらも高級ショッピングエリアとして栄えています
プラダやグッチなどの世界的なブランド店が連なっているエリアがあり、周囲は高級アパートで囲まれています
かつての狎鴎亭は農村地帯だったのですが、1960年代にソウル市に編入され、おびただしい数のアパートが乱立することになりました
これらのアパートは一戸あたり30〜40坪もあり、大きいアパートは70〜80坪あったとされています
これらのアパートに大学卒業後にソウルで就職した中産階級、高学歴層、高収入層が入居することになりました
その消費力から、1980年代後半に富裕層の帰国子女などが集まる繁華街が作られ、現在に至っています
狎鴎亭には「整形通り」と呼ばれる場所があり、狎鴎亭駅を出ると「美容整形の宣伝広告」がところ狭しと並んでいて、韓流イケメン医師の紹介サイトなどもあったりします
さすがに興味がないのでググったことはありませんが、ビフォーアフターパネルがずらりと並んでいる場所とか、周囲の人はみんな目深にマスク姿などと言った特徴もあったりするそうですね
コロナ禍だと紛れ込めましたが、今だとどんな感じなのか気になってしまいますね
韓国の整形費用は日本よりも安いそうで、整形ツアーなんてものまで組まれていたりします
でも、普通に考えて、言葉が通じない国で要望を細かく伝えることは難しいでしょうし、ハードルが高いと感じてしまいますね
■韓国の美容整形事情
韓国で美容整形が広まっている理由はたくさんあると思いますが、外見へのこだわりの強さが指摘されていますね
最近ヒットした韓国漫画に『外見至上主義(외모지상주의)』と言う作品があって、容姿に恵まれないいじめられっ子が主役と言う作品になっています
眠ると容姿が変わり運動神経も良くなっていると言うもので、その変化によって他人の反応がどう変わるのかを体験していくと言う作品になっています
2014年からWebToonとして公開され、韓国国内で52億PV、海外を含めると100億PVのアクセスがあったとされています
日本ではLINEマンガにて読むことができるようですね
↓LINEマンガ『外見至上主義』リンク
https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0000193
また、この整形事情を皮肉ったオムニバス映画(制作は韓国人権委員会)もつくられていて、『If You Were Me(邦題:もし、あなたなら〜6つの視線(原題:여섯 개의 시선))』と言う作品もあったりします
本作はシリーズ化もされていて、今のところ2013年の第6弾まで公開されているようです
配信は見つけられませんでしたが、レンタル落ちのDVDがAmazonにありましたので、参考画像として載せておきます
韓国では、行きすぎた外見至上主義に対する反感もあるものの、過剰な競争社会の中で生まれた「選別の種類の一つ」でもあったりします
同じ成績、同じ学歴、同じような家柄の人が競ったとしたら、と言う前提のもと、外見を判断にすると言うことが起きています
それが外見至上主義に拍車をかけていますが、そのような価値観は今に始まったことではありません
根底にあった価値観が競争社会の中で浮き彫りになったと言う現状があり、それによってマーケットが生まれているのですね
個人的には、韓国アイドルグループは見分けがつかないくらい同じような顔で同じようなメイクで同じような整形をして、と言う感じに捉えています
よく見ればとか、その人を知れば、違いがわかるとは思うものの、そのビジュアルが一糸乱れぬダンスとリンクしているところもあるので全体像として見る分には良いのかなと思います
このあたりは価値観の違いというものがありますが、同じようなことも日本のアイドルの中で起こっているので、「同じように見える集団の中から特異点を見つける」と言うものがファン心理としての個人のモチベーションになっているのかな、と思ったりもします
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は、韓国の美容のメッカにて、そこで成り上がろうと考える人々を描いていきます
医師の腕、プロモーション、ルッキズムに対する訴求効果、そしてVIPを相手にすると言う顧客の囲い込み方法など、ビジネス映画としても面白いものだと感じました
いわゆるブランド力を維持するマーケティング&プロモーションをしていて、薄利多売のような商売ではなく、地位(スターダム)至上主義のビジネスを展開していきます
当初は大成功を収めるものの、やがて不穏な感情が動き出すと言うもので、特別視される存在がその感情のままに行動を起こすと不協和音が発生すると言う流れになっていました
元々、能力に見合った評価をされるべきと考えているジウなので、単なる客寄せのパンダになるつもりはなかったでしょう
そこに金銭が絡み、さらに無碍に扱われたテチョンなどが暗躍することで、王国は瓦解すると言う顛末を迎えていました
このあたりはテグクの読み違いと言うところが大きいのですが、彼のハリボテの人生がそうさせたようにも思えます
彼は「人脈に精通している自由人」ですが、実態のない生活をしていて、自分の家賃すらままならない状況でした
彼自身は人を上手いこと丸め込んでと言う、口八丁のビジネスをしてきたので、技術と能力の裏付けがあるジウとは水と油の存在だったと言えます
そういった意味において、ジウがテグクの空洞に気づいた時に、こうなる運命にあったと言えるのだと思います
テチョンはそれを知りつつも、テグクが起こすムーブメントに乗り掛かっていますが、彼自身のビジネスも空洞のようなものだったりします
なので、この空洞化している二人がいがみ合うと言う訳のわからない展開になっていて、それがコミカルさを助長していたように思いました
能力のあるジウは自分の力を最大限に引き出すためのマネジメントがうまくないので、それらの役割分担と言うものを理解していれば問題はなかったでしょう
ビジネスとは、多くの人が集まり、それぞれが特化した分野で能力を発揮する必要があるので、それを結びつけるものがとても重要になります
これをビジネスの世界では「ミッション・ステートメント」と言いますが、この企業理念というものを浸透させるのは、プレイヤーが突出していればいるほど難しいものだったりします
本作は、その1事例を扱っているようにも思えるので、企業経営者などの方が興味を持って鑑賞できる映画だったりするのかも知れません
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP: