■夢のような時間も、見たくない現実も、全ては未来のためにあったのかもしれません
Contents
■オススメ度
奥さん目線のプレスリーの物語を知りたい人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.4.16(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:Priscilla
情報:2023年、アメリカ&イタリア、113分、PG12
ジャンル:実在の人物エルヴィス・プレスリーの妻プリシラを描いた自伝映画
監督&脚本:ソフィア・コッポラ
キャスト:
ケイリー・スピーニーCailee Spaeny(プリシラ・ボーリュー/プリシア・プレスリー/Priscilla Presley:エルヴィスが一目惚れする9年生)
ジェイコブ・エロルディ/Jacob Elordi(エルヴィス・プレスリー/Elvis Presley:アメリカのロックシンガー)
アリ・コーエン/Ari Cohen(キャプテン・ボーリュー:プリシラの義父、アメリカ軍の将校、西ドイツ・ヘッセン州ヴィースバーデン赴任)
ダグマーラ・ドミンスク/Dagmara Dominczyk(アン・ボーリュー:プリシラの母)
Daniel Lipka(ドン・ボーリュー:プリシラの弟)
Raine Monroe Boland(リサ・マリー・プレスリー:エルヴィスとプリシラの娘、3歳時)
(5歳時:Emily Mitchell)
Tonia Venneri(リサ・マリーの乳母)
ティム・ポスト/Tim Post(ヴァーノン・プレスリー:エルヴィスの父)
Stephanie Moore(ディー:エルヴィスの継母、ヴァーノンの後妻)
Lynne Griffi(ドジャー:エルヴィスの祖母)
Dan Beirne(ジョー・エスジポート/Joseph Carmine Esposito:エルヴィスのロードマネージャー、メンフィスマフィア)
Rodrigo Fernandez-Stoll(アラン・フォータス/Alan Fortas:エルヴィスの友人、メンフィスマフィア)
Dan Abramovici(ジェリー・シリング/Jerry Schilling:エルヴィスの友人、マネージャー、メンフィスマフィア)
Matthew Shaw(チャーリー・ホッジ/Charlie Hodge:エルヴィスの友人、ギタリスト、メンフィスマフィア)
Tim Dowler-Coltman(レッド・ウェスト:エルヴィスのいとこ、メンフィスマフィア)
Andrew Mackay(トム・パーカー大佐/Colonel Tom Parker:エルヴィスのエージェント)
R Austin Ball(ラリー・ゲラー/Larry Geller:エルヴィスのヘアメイク担当)
Olivia Barrett(アルベルタ:邸宅の料理人)
Luke Humphrey(テリー・ウェスト:プリシラをエルヴィスに引き合わせる軍人、エルヴィスの友人)
Deanna Jarvis(キャロル・ウェスト:テリーの妻)
Jorja Cadence(パッシー:エルヴィスのレーベルの従業員)
Josette Halpert(ベッキー:エルヴィスのレーベルの従業員)
Evan Annisette(マイク・ストーン/Mike Stone:プリシラに空手を教える先生)
【プリシラの学業関係】
Erin Mackinnon(ドイツ時代の代数教師 )
Sarah Dodd(シスター・エイドリアン:カトリック学校の先生)
Alanis Peart(カトリック学校の数学教師)
Mary Kelly(カトリック学校の先生)
Kelly Irene Whyte(ジョアニー:カトリック学校の隣の席の生徒)
Paige Leblanc(女学生)
Anna Mirodin(女学生)
【その他】
Stephanie Moran(メンフィスのパーティーの女性)
Kamilla Kowal(メンフィスのパーティーゲスト)
Gwynne Phillips(スージー:パーティー参加者)
Conni Miu(サンディ:パーティー参加者)
Megan Dallan(ジャネット:パーティー参加者)
Kelaiah Guiel(ハリウッドの金髪女優)
Shawn Gordon Fraser(ラスベガスのブラック・ジャックのディーラー)
Kassandra C.A. Gray(メンフィスのシンガー)
Fegan DeCordova(ロサンゼルスの聖書の女)
Kelly Penner(若い映画監督)
Natalia Aimola(メンフィス・マフィアのメンバー)
Bryn Brouwers(メンフィス・マフィアのメンバー)
Preston Galli(メンフィス・マフィアのメンバー)
Katie Garyfalakis(ショーガール)
Carl Hines(カジノのディーラー)
Alex Milner(裕福なギャンブラー)
■映画の舞台
1960年代、
西ドイツ:バート・ナウハイム
https://maps.app.goo.gl/Y1voeXGR9VwY3BqH7?g_st=ic
アメリカ:ロサンゼルス州
ラスベガス
アメリカ:テネシー州
メンフィス
https://maps.app.goo.gl/VzQZQoZyNGHsjXw4A?g_st=ic
ロケ地:
カナダ:オンタリオ州
トロント
Scooters Roller Palace(ローラースケート場)
https://maps.app.goo.gl/bTJMUHMceUdcQSTg7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
9年生の少女プリシラは、父の仕事の関係で西ドイツにやってきていた
イーグルクラブというカフェで勉強をする毎日だったが、ある日、彼女に声をかける軍人がいた
彼はテリー・ウェストと言い、友人にエルヴィス・プレスリーがいるという
両親は反対するものの、テリーが責任を持って送り迎えをするとのことでOKが出て、プリシラはエルヴィスに会うことになった
エルヴィスは故郷が恋しいと言い、アメリカの女性との会話に飢えていた
二人は程なく惹かれあうものの、エルヴィスはプリシラが14歳だったこともあり、「その時」を保留し続けることになった
エルヴィスは任務を終え、アメリカに帰ることになり、そこでの芸能活動が再スタートする
多忙の中、約束の電話はなかなか来ず、プリシラは彼に会いたくてメンフィスへと行こうと考える
両親はもちろん反対するものの、メンフィスにいるエルヴィスの家族が守ること、転校して高校を卒業させることを約束し、プリシラは彼の元に来ることができた
だが、多忙で、女優との噂の絶えないエルヴィスは、いまだに「その時」を与えず、プリシラは寂しさを募らせ続けることになるのであった
テーマ:自分の人生
裏テーマ:募り続けて崩壊するもの
■ひとこと感想
タイトルだけの情報で鑑賞を決めていたので、初めは何の映画か知りませんでした
若い女の子がバカをやる映画かと思っていましたが、あながち間違っていなかったのは、どう考えたら良いのか悩みます
映画はエルヴィス・プレスリーの恋人プリシラの物語で、彼女がエルヴィスと恋仲になってから自立するまでを描いています
あまりにも有名な話なのでネタバレも何もありませんが、この映画をエルヴィスファンはどう見るのかは気になってしまいます
物語は、14歳で運命の出会いを果たした二人の恋路を描きますが、ほぼ「おあずけ状態のプリシラを眺める」という癖のある内容になっていました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、完全にプリシラ目線の物語になっていて、14歳の出会いから初恋、結婚後の別居生活までをまとめていました
濃厚なシーンはあるものの「おあずけ状態」がずっと続く感じになっていて、おそらく4年以上はその状態になっていたと思います
物語の起伏はほとんどなく、プリシラが大人のヤバい人たちとつるむようなこともそこまではなく、メンフィス・マフィアの人たちも未成年を巻き込んだりはしません
大人になってから、ドラッグを服用したりしていましたが、それによって人生が破綻するとか、結婚生活がおかしくなるという感じにはなっていません
あくまでも、エルヴィスがプリシラに距離を取り始めたというテイストになっていて、我慢の限界が来て、プリシラが去るという感じになっていました
映画は、エルヴィスの家を出るまでなので、その後の活躍には一切ふれませんし、字幕でも説明はありませんでした
本当にエルヴィスといた時のプリシラ限定という感じになっていて、それをどう評価するかは、映画への期待に因るものかなと感じました
個人的には響くところもなく、エルヴィスの熱狂的なファンでもなかったので、「こんな感じだったんだね」という一歩引いた感じで見ていました
映画のクレジットにプリシラの名前があったので、監修に入っているようですね
Wikiで調べたら78歳で存命、ほぼ生き証人なので、彼女目線の本当のところが描かれているのだと思いました
■プリシラとは何者か
映画の主人公プリシラ・プレスリー(Pliscilla Presley)は、1945年生まれのアメリカ人で、のちに歌手エルヴィス・プレスリーの妻となった人物でした
彼女が生まれたのはニューヨークのブルックリンの海軍病院で、その時の名前はプリシラ・アン・ワグナーでした
これは、実の父である米海軍パイロットのジェームズ・フレデリック・ワグナーの名前で、彼は1945年11月3日に飛行機事故で亡くなっています
その後、1948年に母のアンナ・リリアン・デイヴィスはアメリカ空軍士官のポール・ボーリューと結婚し、1950年にワーグナーからボーリューへと変更されました
それからのプリシラは、父の空軍のキャリアに従って、コネチカット州、ニューメキシコ州、メイン州などに転居を繰り返すことになっています
1956年、テキサス州デル・ヴァッレに定住をするも、すぐに西ドイツのヴィースバーデンに転勤になります
この時のプリシラは中学生になった頃で、アメリカでできた友人たちと別れることになっています
西ドイツに着いた一家は、当初はホテル暮らしをしていましたが、経済的な負担が強く、ヴィンテージ風の建物を借りることになりました
入居後には、その建物が売春宿に使われていたことに気づきますが、転居する資金はなかったとされています
1959年、プリシラは兵役中のエルヴィス・プレスリーと出会います
エルヴィスは24歳で、初めて会った夜の帰宅が遅かったことが両親に動揺を与えていました
その後、エルヴィスの熱意とプリシラの決意によって両親は二人の関係を承諾するに至ります
1960年、エルヴィスが西ドイツを離れることになり、もう2度と会えないのではと、プリシラは覚悟していたと言います
1962年にようやく再会することになった二人ですが、両親に許可を取るために、様々な条件を飲むことになります
この2週間の滞在を経て、1963年3月には両親がプリシラのメンフィスへの移住を許可します
彼女はカトリック系の女子校に通い、その後グレースランドと呼ばれるエルヴィスの邸宅に入ることになります
その後のことは、映画で描かれているので割愛します
1972年2月24日、プリシラとエルヴィスは別居を開始し、法的別居の申請を行います
そして、1973年1月8日に離婚の申請に至っています
この時にエルヴィスは、空手の先生マイク・ストーンとの関係に言及し、殺害を仄めかす発言もあったとされています
1973年10月9日に離婚が成立し、娘の監護権の共有、配偶者養育費、娘の養育費ほか、エルヴィスの版権に関するものなどが与えられることになります
その後、プリシラは自力で成功し、エルヴィスとの結婚は金のためではなかったこと証明したいと思うようになります
交友関係としては、モデルのマイケル・エドワーズと同棲したり、ブラジル人脚本家のマルコ・アントニア・ガルシア(マルコ・ガリバルディ)とは22年の同棲生活をしています
マルコとの間に息子のナバローネ・ガリバルディを授かりますが、マルコとの関係はあっさりと終わりを告げます
プリシラはエルヴィスの妻として有名ですが、離婚後には実業家として名を馳せるようになります
1973年、プリシラは友人のスタイリストのオリビア・ロスとともに「Bis&Beau」という衣料品ブティックを設立します
この事業は成功を収め、数々の著名人を顧客として獲得することになります
1977年、エルヴィスが亡くなり、父ヴァーノンは娘のリサ・マリーの財産の信託人でしたが、自分の死後はプリシラが引き継ぐように計らうことになりました
そして、1979年のヴァーノンの死後にその役割を引き継ぐことになります
グレースランドの維持費は年間50万ドルもかかっており、プリシラは観光名所に帰るために、ジャック・ソーデンという人物をCEOに迎え入れます
そして、1982年6月7日にグレースランドを一般公開することになり、わずか4週間で投資資金を回収することになりました
プリシラはエルヴィス・プレスリー・エンタープライズ(EPE)の会長兼社長として就任し、リサ・マリーが21歳になるまでその職に留まることを宣言しました
1991年にグレースランドは「国家歴史登録財」として登録され、1999年の再開発にて「エルヴィス・プレスリー・ハートブレイクホテル」として稼働するようになります
これらの一連の動きがエルヴィスのイメージを維持し続け、そのために100件以上の訴訟に関わることになります
現在は、Authentic Brands Groupに売却され、エルヴィス・プレスリーの旧邸宅を国際的な観光地に変えるように努めているとされています
■家族目線でスターを描く意味
本作は、プリシラとエルヴィスの恋愛から結婚生活、離婚までを描いていて、その視点はプリシラに固定されています
スーパースターのプライベートを知る人物の目線になっているので、ファンからすれば「見たかったところと見たくなかったところ」が同居している内容になっています
エルヴィスの表に見せているスターの面と、プライベートでプリシラだけに見せているものがあって、多くのドキュメンタリーなどで見える部分とは別に、プリシラ本人しか知らない面というものもあります
映画は、そのプリシラが知っている面だけを強調し、彼女自身のその後は一切描かないという構成になっていました
家族目線で描かれる映画というのは、本人が隠したいものもあると思うのですが、表に出ている面の深層というところもあって、興味が尽きないと思います
本作の場合は、そこまで暴露という感じにはなっていないし、エルヴィスのイメージを損なうような場面はありません
むしろ、本当なの?と思ってしまうほど、プリシラに対する紳士的な言動というものが目立っていました
この姿勢になっているのも、プリシラ自身が財団を設立し、彼の悪いイメージを払拭してきた歴史があって、この映画もその延長線上にあるものだと考えられます
家族との関係が悪いと「暴露」になり、それは家族のイメージを守るためのものとしての働きがあります
でも、本作の場合は「プリシラのイメージを上げる」というよりも、「エルヴィスのイメージを上げる方向」に寄与している部分がありました
14歳で出会い、成人するまで手を出さなかったとか、本当なのと思ってしまうのですが、プリシラ目線でこの紳士的な行動を担保しているところがありました
でも、後半になって、プリシラは「エルヴィスの人形」を脱却するに至ります
これが本作におけるメッセージ性になっていて、しかもエルヴィス自身のイメージを損なうことなく、プリシラの決断であると結んでいるところが潔いのかな、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、いわゆる憧れのスターと結婚した一般人を描いていて、しかもその相手が10歳年下の未成年ということで、当時はかなり物議を醸したと思います
ガチのファンということではないと思うのですが、初めて会った時にプリシラの表情を見る感じだと、自分が対象になることの嬉しさというものは込み上げていたでしょう
そこでのエルヴィスとの会話も本当に14歳なの?という駆け引きになっていて、少し脚色が入っているのかな、と思いました
エルヴィスがプリシラのことをどのように知ったのかは描かれませんが、エルヴィスの使いのような感じでテリー・ウェストが声をかけていましたね
彼が既婚者であることがプリシラの両親を説得できる材料になっていて、ある意味作戦勝ちのようなところがありました
それでも、プリシラの父は「そこまで覚悟があるなら自分で迎えに来い」というのですね
これによって、ほぼOKのような関係になっていたのは、ちゃんとしたステップを踏んだからかなと思いました
14歳でしかも上官の娘との交際というのはなかなか強烈な関係性で、普通は認められないように思います
でも、逆にエルヴィスが軍隊の所属で、その規律の中で過ごしていたこともあって、それが却って関係性を保証していた部分はあるように思えます
相手がロックスターということもありますが、その表面から見えるイメージと、軍にいて規律を守っているという人間性とその言動というものは、上官としての安心材料の一つになったようにも思えます
実際にどのように思われて、どのような感情が入り乱れたのかはわかりませんが、そのような関係性がなかったら、このようにスムーズにはいかなかったのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/99907/review/03723486/
公式HP: