■願いを叶えるために必要なものを、あなたは持っていますか?


■オススメ度

 

命についての情操教育を考えたい親子(★★★)

痛快アクションアニメを観たい人(★★★★)

『シュレック』シリーズを鑑賞済みの人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.3.20(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

原題:Puss in Boots: The Last Wish(長ぐつをはいた猫:最後の願い)

情報:2022年、アメリカ、102分、G

ジャンル:ラスト1個の命になった伝説の猫をめぐるアドベンチャーアクション

 

監督:ジョエル・クロフォード

脚本:ポール・フィッシャー&トミー・スワードロー

原作:ジョヴァンニ・フランチェスコ・ストラパロ『長靴をはいた猫(Le Chat botté)』

 

キャスト:(声の出演)

山本耕史/アントニオ・バンデラス/Antonio Banderas(プス:ラスト1個の命になった伝説の猫、長靴をはいた猫)

土屋アンナ/サルマ・ハエック/Salma Hayek Pinault(キティ・フワフワーチ:プスの元カノ、「願い星」の地図を狙う泥棒猫)

 

中川翔子/フローレンス・ピュー/Florence Pugh(ゴルディ:「願い星」の地図を狙う孤児、キティの依頼人)

木村昴/サムソン・ケイオ/Samson Kayo(ベイビー・ベア:ゴルディと一緒に育ったクマ)

魏涼子/オリヴィア・コールマン/Olivia Colman(ママ・ベア:ゴルディの育ての親)

楠見尚己/レイ・ウィンストン/Ray Winstone(パパ・ベア:ゴルディの育ての親)

 

小関裕太/ハーヴィー・ギレン/Harvey Guillne(ワンコ:ママ・ルーナの家で猫に扮装して紛れ込んでいる捨て犬)

 

津田健次郎/ワグネル・モウラ/Wagner Moura(ウルフ:プスの最後の命を狙う凶暴な狼)

 

成河/ジョン・ムレイニー/John Mulaney(ビッグ・ジャック・ホーナー:すべての魔法を支配するために「願い星」の地図を探している富豪、裏の顔は犯罪組織のボス)

吹替俳優不明/ケヴィン・マッキャン/KevinMcCann(おしゃべりコオロギ:ビッグを止めようとする良心の虫)

 

乃村健次/アンソニー・メンデス/AnthonyMendez(プスに引退を忠告する医者)

渡辺明乃/ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ/Da‘vine Joy Randolph(ママ・ルナ:猫シェルターの主)

 

吹替俳優不明/Bernardo De Paula(デルマー総督:プスを指名手配する街の長)

吹替俳優不明/Besty Sodaro(ジョー・サーペント:ジャックに地図を渡す双子)

吹替俳優不明/Artemis Pebdani(ジャン・サーペント:ジャックに地図を渡す双子)

 


■映画の舞台

 

「願い星」が隠されている暗黒の森

 


■簡単なあらすじ

 

伝説の猫・プスは、英雄として崇められる一方で、街の総督からは「泥棒猫」として指名手配を受けていた

ある日、提督の家に勝手に入って好き放題していたプスは、その騒動で眠れる巨人を起こしてしまう

何とか巨人を倒したプスだったが、町の塔にあった鐘が彼の上に落ちてきて命を落としてしまった

 

病院に運ばれたプスは、そこでこれまでに何回死んだか?と聞かれる

ネコには9つの命があると豪語していたプスだったが、今回の死が8回目であることを悟り、医者は伝説の引退を勧告した

 

失意のプスは捨て猫シェルターを管理するママ・ルナの家を訪れる

プスはマントとブーツなどを埋葬し、捨て猫としてその家に潜り込むことになった

そこには人懐っこい捨て犬がネコのふりをして紛れ込んでいた

 

ある日、その家にゴルディと3匹のクマがプスを探しにやってくる

うまく隠れたプスは、そこで彼らが「願い星への地図」を盗ませるためにやってきたことを知る

プスは家を抜け出して、彼らを追ってジャック・ホーナーの邸宅を目指すことになった

 

だが、そんなプスをつけ狙う黒い影は、彼の足元に忍び寄っていたのである

 

テーマ:命の尊さ

裏テーマ:願いとは何か

 


■ひとこと感想

 

続編であることを知らずに参戦

でも、問題ない感じで、ところどころ前作のネタが入り込んでいる印象を受けました

 

物語は、伝説の猫がラスト1個の命になって保守的になる中で、「願い星」の存在を知ることで冒険に出ていきます

そのお供として、ネコシェルターに紛れ込んでいたワンコと、旅先で再会する元カノ・キティが登場します

 

キティとの間に何があったのかをミステリー要因にして、「願い星」を奪い合う痛快アクションエンターテイメントに仕上がっていましたね

特に動きというかカメラワークというか、アニメーションでしかなし得ないカットが多くて、そのクオリティも確かなものだったと思いました

 

大人も楽しめる内容になっていますが、教訓めいたものはそれほど感じない内容になっていて、サクッと見られるエンタメという感じに仕上がっていましたね

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

すべてのキャラクターに愛があり、役割と愛すべき設定がありました

コオロギ一匹に至るまで思慮の深い設定がなされていて、それぞれの行動原理がしっかりとしていました

 

ラストの選択がアイコンタクトになっているところが凄くて、そこに至るそれぞれのキャラクターの描き方が上手いなあと感心してしまいます

敵役も魅力的で、脇役(実質主役級)のウルフの存在もビジュアルも満足の行く仕上がりだったのではないでしょうか

あれは大人でも怖い描写なので、子どもが観たら泣いてしまうんじゃないかと心配してしまいます

 

前作および『シュレック』のネタが盛り込まれていますが、それを知らないと物語に支障が出るというものではないところに脚本のうまさを感じます

ごく稀に「前作鑑賞前提」のロジックが当てはめられることがありますが、シリーズとは言え、きちんと一話完結になっていないと続編は尻窄みになりがちなのですね

 

そう言った意味においては、本作ぐらいの関連で繋げていけるのは、シリーズとしての生命力を維持できる最善策ではないかと思ってしまいます

 


各キャラのあれこれ

 

【長ぐつをはいたネコ(Puss in the Boots)】

映画『シュレック2(2004年)』に登場する架空のキャラクターで、Netflixのテレビシリーズ『The Adventure of Puss in the Boots』にも登場しています

『シュレック2』では、シュレックを殺すためにフィオナ王女の父に雇われるキャラクターです

その後『Shrek the Third(シュレック3、2007年)』『Shrek The Final Chapter(シュレック・フォーエバー、2010年)』『Puss in the Boots(長ぐつをはいたネコ、2011年)』に登場しています

長ぐつをはいたネコ自体は、1697年頃に出版されたシャルル・ペローCharles Perrault)による『寓意のある昔話、またはコント集〜ガチョウおばさんの話(Histoires ou contes du temps passé, avec des moralités : Contes de ma mère l’Oye)』が有名ですね

それ以前では、ジャンバティスタ・バジーレGiambattista Basile)の『物語の物語、または小さき者たちのための楽しみ/ペンタローネLo cunto de li cunti overo lo trattenemiento de peccerille)』にて、1634年に登場しています

 

【キティ・フワフワーテ(Kitty Softpaws)】

『長ぐつをはいたネコ』で登場するシャム猫のキャラクター

元々は野良猫で、飼い猫時代に飼い主に常を抜き取られたという設定があります

 

【ワンコ(Perrito)】

『長ぐつをはいたネコと9つの命』のセラピー犬として登場

元々は飼い犬でしたが、石の入った靴下に一緒に入れられて、そのまま川に流されたキャラクターです

生き延びるために、ママ・ルナの猫シェルターに入るために猫に扮装しています

「Perrito」はスペイン語で「子犬」という意味ですね

 

【ゴルディロックス(Goldilocks)】

Goldilocks and the Three Bears』という19世紀のイギリスのおとぎ話に登場します

当初は擬人化された3匹のクマの家にくる老婆という設定でした

ロバート・サウジーRobert Southey)が1837年に書き下ろしたもので、12年後にジョセフ・クンダール(Joseph Cundall)の『Treasurey of Pleasure Books for Young Children』にて「老婆から少女に」代わっています

 

【ベイビー・ベアー&ママ・ベアー&パパ・ベアー(Three Bears)】

出自はゴルディロックスと同じく、ロバート・サウジーの著作にて登場

それぞれは「お粥のボウル」「椅子」「ベッド」を持っています

お粥を作ったものの、それが熱すぎて食べられずに外に散歩に行き、その時にゴルディロックスが家に侵入するという流れで登場します

 

【ジャック・ホーナー(Little Jack Horner)】

ジャック・ホーナーは「Roud Folk Song Index」の英語詩の童謡に登場しています

1765年のマザーグース、現存の古い英語版は1791年のものとされています

一般的に知られる歌詞は、

Little Jack Horner(小さなジャック・ホーナー)

Sat in the corner,(隅っこに座ってる)

Eating his Christmas pie;(クリスマス・パイを食べている)

He put in his thumb,(彼は親指をパイの中に入れて)

And Pulled out a Plum,(中のプラムを取り出して)

And said, ”What a good boy am I!”(そして、言った「僕はなんて良い子なんだ!」と)

というものですね(訳はブログ主の意訳です)

 

【おしゃべりコオロギ(Talking Cricket)】

カルロ・コッローディCarlo Colldi)の『ピノキオの冒険The Adventure of Pinocchio)』に登場するコオロギのキャラクターです

ピノキオを作ったジュペッタが、ピノキオのイタズラによって捕まった際に助言をします

1940年のディズニー映画『ピノキオ』にて登場し、ピノキオのアドバイザー的な立ち位置になっています

本作では暴走するジャックを諌める役をしていますね

 


願い星がみせる障壁

 

本作では「願いを叶えてくれる願い星」が登場し、その地図は「持ち主によって森を変える」という機能がありました

プスもキティも困難な道で、ワンコだけが「見た目は簡単そうな道」になっていました

これらはキャラクターの純粋性に依るもので、願いそのものというよりは、彼らの抱えている欲望が反映されています

 

プスの願いは「自分のため」で、命を元に戻すという「安全欲求」に基づいています

キティの願いは「自分のため」で、信頼できる人(=心から愛せる人)が欲しいという「生理的欲求」に基づいています

そして、ワンコは「願いそのものを持っていない」という状況で、生きていることが幸福という観点を持っていました

 

これらの関係性を考えると、それぞれの欲求を叶えるための困難というのは、そのまま欲求を脅かすものになっているように思えます

命が一つしかないプスには命の危険が迫り、キティにはプスの負の側面を見せて、それでも信頼できるかを突きつけていきます

そして、ワンコには「どのような状況でも幸福でいられるか」を試すような感じになっています

願いを誰のために叶えるかというのも大事ですが、何のために叶えて欲しいのかも重要なのですね

また、自力&他力という概念もありますが、ワンコの場合は「どのような道でも愛せる」という確認になっていました

 

私たちが願いを思う時、そこには必ず障壁が登場します

それらは願いを叶えるために必要な「視野の拡大」であることが多いように思います

願いを思う時、人は一方向だけに集中しがちですが、脇道や周囲にも気を配る必要があるのですね

これを個人的には「願いが叶うためのタイミング待ち」だと考えています

願いには「叶ってほしい時と今はやめてという時がある」のですね

なので、今はやめてのためにあるのが障壁で、叶うべき時にその恩恵をマックスで享受するためのアイドリングのようなものと考えています

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は続編かつスピンオフという性質がありますが、『シュレック』『長ぐつをはいたネコ』を見ていなくても大丈夫なつくりになっています

観ていれば楽しめるシーン(回想でシュレック出てくるとか)はありますが、それよりも各種童話を知っている方が「ふふふ」となりますね

「3匹のクマとゴルディ」のシーンとか、おしゃべりコオロギのウザったさ、さらにリトルからビッグに変身して「悪い大人」になるビッグ・ジャック・ホーナーなどは、その出自を知っていればアレンジされているものの面白さがわかります

 

子ども向けの映画には「基礎教養」とされる童話が引用されていることが多く、この映画にも多くのモチーフが登場します

それらの引用&進化を繰り返していくのが子ども向けアニメーションの真髄であり、クラシカルな童話を読んで育った大人には懐古を、子どもには新鮮な寓話として存在しています

今の親御さんがどれだけ読み聞かせをするのか分かりませんが、幼児教育において、童話などを読み聞かせる授業があるのは、倫理観を養うことも重要項目ですが、物語の構成というものを理解する上では必要なことだと言えます

多くの物語は起承転結があり、「事の起こり」「冒険への入り口」「ピンチ」「解決」という流れを汲んでいますので、「原因と結果」「努力と犠牲」というものが内包されています

 

本作では、「願いを叶えるための冒険の過程」において、「自分の願いはすでに持っていた」ということになっていて、それが「パラダイムシフトになっているプス(状況への理解)」「自分自身のこだわりの崩壊となっているキティ(固定概念の崩壊)」というものが描かれていました

キティはプスに対して「私も行かなかった」と嘘をつくのですが、それが彼女なりの優しさとこだわりになっていましたね

この流れを見ると、キティの中でプスに対する愛情は失われていないように見えるのですが、実際にはワンコのマインドを理解したことによって、「ありのままのプスを受け入れる」というふうに理解が変化しているのですね

 

これは「相手を変えることはできない」という命題になっていて、自分の身に起こっていることをどのように吸収するかというテーマに繋がっています

そういった意味において、しっかりとした物語になっているので、親子で観るには良いドラマであると思います

とは言え、ウルフのシーンは大人でも怖いので、少々やりすぎの感は否めないですね

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/385684/review/fb5f7bda-7987-4666-8837-bfcca38969c6/

 

公式HP:

https://gaga.ne.jp/nagagutsuneko/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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